A New Hero? ◆gry038wOvE


 一条薫と響良牙は、グロンギ遺跡のある山頂まで来ていた。
 わざわざ山を登る必要はなかったが、周囲に誰かがいないか確認する意味も含めて、一条と良牙はこの遺跡を通りがかった。
 一条にとっては、一度訪れてみても良い場所だ。未確認生命体の別称であるグロンギの遺跡といえば、五代が身に着ける事になったアークルが掘り出された始まりの地に違いない。
 ……少しの間なら、思い出に浸るのも良い。勿論、あまり長い時間浸る気はない。
 それに、グロンギ遺跡があるとして、それが冴島邸にようにほとんどあの場所を再現したものであるとしたら、どの程度近いものなのか確認したかったのである。

 ────だが

「……妙だ」

 一条は呟く。
 グロンギ遺跡と名付けられたマップの施設は、おそらく九郎ヶ丘の遺跡だろうと考えていた。超古代──かつて平和な民族・リントでありながら、グロンギ族に立ち向かった勇敢な男がグロンギとともに封印されていた場所に違いないだろう、と。
 しかし、ここは────一条の知る九郎ヶ岳の遺跡ではない。
 一条も九郎ヶ岳にあるグロンギの遺跡には何度か立ち寄ったので、あの場所がどんな場所であったかはよく覚えているのだ。
 五代と最初に出会った場所でもあり、何度か調査のために訪れたのだから、忘れるはずもない。
 全く違う。
 注意して見ればよくわかるだろう。
 確かにリントの文字が点在し、棺も祀られているが、これはあの遺跡とは別物だ。

「ああ、確かにこの棺……誰かにブッ壊されてるな。先に誰かがブッ壊していったのかもしれん」

 良牙はそう言う。
 一条が妙だと言ったのは全く別の事だったが、まあ無理もないだろう。良牙は一条と同じ世界の人間でもないし、当然一条の知るグロンギ遺跡がどんなものであるかも知らない。
 それに、一条としては良牙の言う破壊跡も気になってはいた。この遺跡に荒らされた跡があり、本来戦士が眠っているはずの遺跡が破壊され、中のミイラが剥き出しになっていたのである。
 これは果たして、元からこうなっていたのだろうか……?
 何者かが破壊したのではないか……?

 ──だとすれば

 ふと一条の背筋に冷や汗が流れ、一条は闇の向こうにライトを照らした。
 グロンギが現代に復活した理由──それは九郎ヶ岳の遺跡で、棺の蓋が開けられたからではないか。
 この遺跡を誰かが人為的に開いたならば、此処に新しく復活したグロンギがいてもおかしくはない!

(……………………どうやら、誰もいないようだな」

 ……しかし、未確認生命体が現れている様子はない。一条はほっと胸をなでおろした。
 どうやらその心配は無用だったらしい。
 流石に、あれだけの敵が何体も現れてしまえば、一条としても難しいところだ。

「おい、これ……」

 良牙がまた何かに気づいたらしく、棺の中のミイラを指差している。
 一条がそこに近づいて、目を凝らした。
 良牙が指差していたのは、戦士の腹部であった。
 戦士の腹──そこには、当然の如く、それが巻かれていた。

「……クウガのベルトと同じものだと!?」

 そう、アークルが巻かれていたのである。
 アークル──古代の戦士から五代雄介へ、五代雄介から一条薫へと受け継がれたこのベルトが、何故ここにあるのだろう。アークルは一条の身体の中にあるはずだ。
 これは果たして、この世に幾つも存在しうるものなのだろうか……?
 確かに、このゲームの参加者はそれぞれが全く違う世界の出身であるため、主催者側が似通った世界からアークルを持ち出す事も難しくはないだろう。何なら、同一人物を連れてくる事だって可能かもしれない。
 ……が、

「……無茶苦茶だ。こんなものが幾つもあるなんて……」

 一条は額に手を当てて、落胆したように呟く。
 古代リントがグロンギに対抗しうる術として作られたのがこのアマダムという霊石によるベルト──アークルである。
 クウガという戦士に変身する術を閉じ込めた不思議な霊石であるが、これははっきり言ってしまえば、暴力のための兵器なのである。
 これが無いに越した事はない。
 無いに越した事はないのだが、それでもグロンギと戦うためには必要不可欠なモノだった。

「……どうする?」
「……念のためだ。我々の手元に置いておこう」

 一条はすぐにそう答えた。
 どうやら、ダグバやガドルといった者はまだここには来ていなかったらしい。
 彼らが来ていたなら、かつてダグバがそうしたように、彼らはベルトの装飾品を破壊しようとするだろう。
 これが人類にとって希望となりうる事はまた間違いようのない事実である。
 ダグバたちに破壊されてはならない品なのだから、今のうちに確保しておかなければならない。

 一条たちは丁寧にアークルをその戦士の身体から取り出した。
 何故ここにアークルがあるのか。
 一条の身体の中にもアークルがあり、この右手にもアークルを持っている。……不思議な気分だ。

「帰ったらこれも調査してもらわないとな……」

 榎田や椿、桜井など、あらゆる分野の専門家が一条の周囲にはいる。
 そうした人物には、同時に五代の死も伝えなければならないのが辛いところだが、こうしてもう一つのアークルの存在を知った一条は、まず警察や彼女たちにこれの存在を伝えなければならないだろう。

 正しい歴史の中では、一条薫がもうひとつのアークルの存在を知る事になるのは、実に13年後の話である。
 このアークルは、五代雄介が装着したものとは別のアークルであり、現代においても全く別の人物が装着する事となるアークルである。
 同じくクウガの名が冠された戦士で、その外見もまたクウガに酷似しながら、彼らが知る五代雄介のクウガよりももっと前に作られたクウガ────いわば、プロトタイプのクウガが装着していたはずのものなのである。
 このアークルと五代のアークルとの違いは、「不完全なアマダム」の一点に尽きる。
 プロトタイプであるがゆえに心の闇が増幅しやすくなっており、凄まじき戦士となる時にも五代のアークルのように警告を行う事がない。
 そのため────


 ────万が一、これを装着する者がいた時、そのクウガは心を闇へと支配され、戦うための機械へと変化する可能性が高いという事である。






「……周囲には誰もいないようだな」

 この遺跡は山の頂上に作られている。
 周囲を見渡してみると、だいたい誰かがいるかどうかは簡単にわかる。
 まあ、ここから見る人間は木陰に隠れられてしまうほどに小さいので、動いていればわかるという程度だ。
 誰かがいるかもしれないが、観測できる地点で戦っている人間や動いている者はいなかった。

「とにかく、目的はこのまま呪泉郷でいいかい?」
「……ああ」

 一条と良牙は、そのまま下山を開始する。
 呪泉郷には誰もいないように見えるが、社務室があるので、その中に人がいる可能性だって否めないのである。
 あかねがそこで休んでいる可能性もゼロじゃない。

(あかねさん……)

 良牙は、あかねを思い出すと同時に、乱馬の死を再び思い出した。
 乱馬が死んだと聞いて、あかねはどう思っているのだろうか。
 悲しんでいるのだろうか、それとも信じていないのだろうか。
 果たして、これまであかねを想ってきた良牙の中には、あかねの心に付け入る隙はあったのだろうか……その答えが、あかねが乱馬の死を知った反応にあるだろうと思うと、少し良牙はあかねに会いたくない気持ちが出てきてしまった。
 それでも、会わなければならない。
 あかねがどうなっていたとしても、良牙には、乱馬の友として、好敵手として、あかねを想った一人として、絶対にやらなければならない事がある気がしたのだ。



【1日目/午後】
【D―6/グロンギ遺跡付近】
※グロンギ遺跡は、九郎ヶ岳の遺跡ではなく、闇の棺がある“屈辱の丘”でした。

【響良牙@らんま1/2】
[状態]:全身にダメージ(中)、負傷(顔と腹に強い打撲、喉に手の痣)、疲労(中)、腹部に軽い斬傷、五代・乱馬・村雨の死に対する悲しみと後悔と決意 、ゾーンメモリの毒素については不明
[装備]:ロストドライバー@仮面ライダーW+エターナルメモリ、昇竜抜山刀@侍戦隊シンケンジャー
[道具]:支給品一式×2(食料一食分消費)、水とお湯の入ったポット1つずつ(お湯変身3回分消費)、秘伝ディスク@侍戦隊シンケンジャー、ガイアメモリ(ゾーン)@仮面ライダーW、ムースの眼鏡@らんま1/2 、細胞維持酵素×2@仮面ライダーW、グリーフシード@魔法少女まどか☆マギカ、歳の数茸×2(7cm、7cm)@らんま1/2
[思考]
基本:天道あかねを守る
1:天道あかねとの合流
2:1のために呪泉郷に向かう
3:つぼみと鋼牙とはいずれまた会いたい
4:いざというときは仮面ライダーとして戦う
5:良の腹部の欠損されたパーツ(メモリキューブ)も探したい
[備考]
※参戦時期は原作36巻PART.2『カミング・スーン』(高原での雲竜あかりとのデート)以降です。
※良牙のランダム支給品は2つで、秘伝ディスクとガイアメモリでした。
 なお、秘伝ディスク、の詳細は次以降の書き手にお任せします(ガイアメモリはゾーンでした)。
 支給品に関する説明書が入ってる可能性もありますが、良牙はそこまで詳しく荷物を調べてはいません。
※シャンプーが既に死亡したと知りました。
※シャンプーの要望は「シャンプーが死にかけた良牙を救った、乱馬を助けるよう良牙に頼んだと乱馬に言う」
 「乱馬が優勝したら『シャンプーを生き返らせて欲しい』という願いにしてもらうよう乱馬に頼む」です。
 尚、乱馬が死亡したため、これについてどうするかは不明です。
※ゾーンメモリとの適合率は非常に悪いです。
※エターナルでゾーンのマキシマムドライブを発動しても、本人が知覚していない位置からメモリを集めるのは不可能になっています。
 (マップ中から集めたり、エターナルが知らない隠されているメモリを集めたりは不可能です)
※主催陣営人物の所属組織が財団XとBADAN、砂漠の使徒であることを知りました。
※第二回放送のなぞなぞの答えを全て知りました。
※つぼみ、一条、鋼牙と125話までの情報を交換し合いました。

【一条薫@仮面ライダークウガ】
[状態]:疲労(小) 、ダメージ(中、特に背部)、アマダム吸収
[装備]:滝和也のライダースーツ
[道具]:支給品一式×3(食料一食分消費)、ランダム支給品2~5(一条分1~2確認済み、五代分1~3未確認)、警察手帳、コートと背広、ランダム支給品0~2(十臓)、プロトタイプアークル@小説 仮面ライダークウガ
[思考]
基本:民間人の保護
0:警察として、また仮面ライダーとして人々を守る。
1:良牙と共に呪泉郷へと向かう
2:鋼牙、つぼみとはいずれまた合流したい
3:他に保護するべき人間を捜す
4:未確認生命体に警戒
※参戦時期は少なくともゴ・ガドル・バの死亡後です
※殺し合いの参加者は異世界から集められていると考えています。
※この殺し合いは、何らかの目的がある『儀式』の様なものだと推測しています。
※アマダムを吸収したため、仮面ライダークウガに変身できます。アマダム自体が強化されているため、ライジングフォームへの無制限の変身やアメイジングマイティフォームへの変身も可能かもしれませんが、今の所実践していないので詳細は不明です。
※主催陣営人物の所属組織が財団XとBADAN、砂漠の使徒であることを知りました。
※第二回放送のなぞなぞの答えを全て知りました。
※つぼみ、良牙、鋼牙と125話までの情報を交換し合いました。

【支給品解説】
【プロトタイプアークル@仮面ライダークウガ】
グロンギ遺跡に配置。
テレビ版の続編「小説 仮面ライダークウガ」に登場する、もう一人のクウガに変身するためのアークル。変身後の姿は作中では、変身形態がほとんど白いクウガの状態であることから、「二号」と呼ばれている。
本来、テレビ本編のクウガよりも先に作られたが、アマダムが不完全であるため容易に心の闇が増幅させられてしまう。そのため、これを装着した古代戦士は、自分が完全に暴走するのを防ぐために自ら命を絶ち、グロンギの一部を封印した。
作中では白いクウガに変身していることが多く、五代のクウガと同じように四フォームに変身する事が出来るかは不明。変身者が半人前だったために戦う覚悟が足りなかった可能性もある。
戦闘力はおそらく、五代が変身するグローイングフォームよりも高く、作中では戦闘力が高いグロンギを圧倒している。
更には、黒のクウガに変身した際には東京タワーを巨大兵器に変えるなど、プロトタイプでありながら、能力は非常に高いものと思われる。また、このクウガは黒になった場合でも角が通常のクウガに比べて短いらしい。


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最終更新:2013年09月10日 01:28