地球に生きる僕らが奇跡 ◆gry038wOvE



 時刻は午後二時を回ったほどだっただろうか。

「あっ! 一文字さん、あれ……」
「ん?」
「誰かいます!」

 桃園ラブがそう声をかけた事で、一文字隼人はその一人の男の姿に気が付く事になった。
 男は、長い髪をオールバックにして後ろで纏めた、一見すると上品な印象を受けさせる風貌であった。
 何故にして、こうもあっさり他の参加者の姿を見つける事が出来たかというと、やはりここが禿げあがった土地であるからだろう。先ほどまで歩いてきた場所とは違い、草原にさえ草は生えない。焦げ茶色の草は既に煙さえあげていないせいもあり、元からこんな土地だったのではないかと錯覚させる。
 ここは桃園ラブにとっては忘れられない場所でもあった。
 そう、この場所は、かつて巴マミとともにテッカマンランスと戦った場所である。

「……話しかけてきましょう」
「待て。危ない奴かもしれないぞ」

 一文字が警戒するのは当然だった。
 改造人間のように、人の姿をしておきながら人を殺す者も多くいる。……だいたい、広間にいたほとんどが、そして加頭でさえ人間の姿をしていたではないか。
 本当の悪は常に人の姿をしているものだと一文字は思う。
 一文字やショッカーの数多なる構成員が変身する動物や器物には、善も悪もないのだ。

「……でも、話しかけてみなきゃわからないじゃないですか。もし良い人なら、一人にしておくよりみんなで一緒にいた方が……」
「まあ、確かにそうだけどな……」

 しかし、そういいながらも、一文字はやはり警戒心を失わない。
 一文字が認知する危険人物とは違うが、赤の他人である以上、話しかけるべき相手か否かはわからないのである。

「よし、じゃあ俺がちょっと行ってくる」
「待ってください!」

 一文字が向かおうとしたところで、ラブが制止する。
 ラブも、男に接触をしてみる事に異存はない。だが、その役目を一文字にやらせたくなかった。
 理由はごく簡単だ。
 この時の一文字の顔が怖かったから──。できれば、こんな表情で人と最初の挨拶を交わすような事はしたくなかったのだ。
 だから、

「やっぱり私が行きます」
「……おい、あぶねえぞ?」
「大丈夫です。いざっていう時は一文字さんがついてるし」

 ラブは一文字を頼りにしていた。

「……仕方ねえな」

 とにかく、ラブが先に歩き、その真後ろを一文字が歩く……という形で二人はその男に近づいた。その途中で相手も二人に気づいたらしいが、顔をきつく締めて歪めるだけで、特に戦意をむき出しにするような事はなかった。
 ラブも少し安心する。突然、襲撃してくるような相手ではないと思った。
 ただ、実際のところ、相手方がいきなり襲ってくるような行動をしないのは、背後の一文字がやはり鋭い眼光のまま歩いていたからだろう。

「……あの、すみません。あー…はろー? ないすとぅーみーとぅー?」

 ラブがその男に話しかける事にした。
 相手が善人か悪人か、変身能力を有する者か一般人か。それさえわからない。
 顔立ちは外国人のようにも見えるし、背も高い。結局国籍さえわからない。
 ただ、ラブはそんな隔てりを持たず、純粋にこの男性との挨拶を交わそうとしていた。
 どんな人間か、それは会話を交わした時に初めてわかる。ラブという名前自体、世界に伝わるために名づけられた名前である────尤も、ラブ自身、英会話は苦手で、異国の王子と話す時にしどろもどろになった経験があったが。

「……何だ? 貴様は」

 男は日本語でそう返したが、相手は友好的ではなかった。鋭い眼光に冷たい面持。その男の眼光に威圧され、ラブはしどろもどろになってしまう。
 この男の言葉づかいは、決して優しい好青年的ではないだろう。ラブは、この男の声にも少し怯えた。学校にいるなら応援団でもおかしくないほど低く男性的な声でありながら、同時に喉の奥まで冷えたような……感情のこもらない声でもあった。やはり応援団は無理だろう。
 それに、ラブはこの男の声をどこかで聞いた事があるような気もした。──どこかで会った誰かに、よく似ているような、そんな不思議な感じ。
 それが尚更恐怖を煽る。
 ラブは隣の一文字を見て、少し安心した。しかし、その一文字の表情も少し強張っていた。

「えっと……私は桃園ラブで、こっちが一文字隼人さん。あなたは……」
「……」
「えっと……あなたはこの……殺し合いに乗っていますか?」

 殺し合い、という言葉を発する時にラブは微かな抵抗感を感じたが、「ゲーム」などと言うのは余計に抵抗があった。
 戦いとでもいえば良かった、と少し後悔する。彼女の口から「殺し」という言葉が出てくるのは、やはり似つかわしくなかった。
 そんなラブの姿に我慢が行かなくなったのか、一文字が前に出た。

「……おい。ラブ、やっぱりちょっと下がってろ」
「え?」
「少しは警戒ってものを知った方がいい。こいつは何かおかしいぜ……」

 やはり、一文字はこの眼前の男の態度に対して、明らかな警戒を示している。
 殺し合いという状況にしては、淡々と乾いた表情をしており、他人の挨拶に対して一言、「何だ貴様は」と答える態度の悪さを見せる。冷たいまなざしと冷たい言葉──警戒するに充分なほど、人間的な感情からかけ離れた男であった。
 一文字は強引にラブの肩を掴んで自分の背に引き寄せた。
 その様子を見て、その男は嗤う。

「フフフ。……貴様は一文字隼人か。私の記憶によると、仮面ライダー二号という別名を持つ男だな」
「……だったら、何だ?」
「──テッカマンの名にかけて、その命を貰い受ける!」

 気づけば、男は、その右腕に奇妙な形の宝石を握っていた。
 ラブと一文字は、テッカマンという名前を聞いてぎょっとしながら、身体の筋肉を強張らせる。
 この男はテッカマンと名乗っているというのだ。
 男は笑みと共に宝石を天高く掲げると、腹の底から声を出して叫ぶ。────

「テック・セッタァァァァァァァァッッ!!」

 ────そして、男の身体はラブのよく知る異形の戦士のものへと変容させる。
 テッカマンランスである。
 半日ほど前にラブとマミが交戦した敵であり、またマミの仇とでも言うべき相手だった。
 先ほどまで目の前にいた男こそがテッカマンランスの人間時の姿だったという事に気づいたのである。一歩間違えば話しかけようと近づいた瞬間に殺されていたかもしれないと思い、背筋が凍る。
 そして、同時に怒りも沸いた。
 ラブの中に一つの戦いの記憶が蘇る。ちょうど、その戦いがこの場所での話であったのは、何の因果だろうか──。

「テッカマンランス……!」
「フン。私の名を知っているか」

 一方のランスは、ラブがあの時のキュアピーチである事にはまだ気付いていなかった。

「そうか、こいつが……。……なら、こっちも行くぜ」

 ラブから顛末を聞いていた一文字もまた、この戦士の事を知っていた。危険な相手であり、一人の少女を殺害した悪鬼である事もまた、一文字は知っていた。
 ならば、仮面ライダーが戦わねばならぬ相手に違いない。
 一文字の両腕が高く翳された。────その腕は、半円を描くように回転する。

「ライダァァァァァ…………変身!!」

 一文字の腹に発現したタイフーンが回転する。
 今のポーズは、一文字の体内に存在する変身スイッチを起動するための動作であった。
 このポーズを決める事によって、ライダーの体内に存在するスイッチが押され、一文字隼人は仮面ライダーに変身するのだ。

「とう!!」

 一文字が空高く飛び上がると、その姿はラブたちの目の前にありながらも、いつの間にか仮面ライダー二号のものへと変身していた。変身する瞬間というのが、はっきり視認できなかったのだろう。
 ともあれ、仮面ライダー二号──正義の名のもとにテッカマンランスを討とうという戦士が、ここに現る。
 二号は、ラブを左手で庇うように制する。

「……それが仮面ライダーとやらの姿か」

 テッカマンランスは、ニヤリと笑いながらその拳を二号の顔面へと振るう。
 ラブよりもまず、この戦闘力を有する戦士に対して戦いを挑む事で、初めてテッカマンの力というのは証明できるのである。

「まるで虫けらだな!」

 二号は、その拳を両腕で掴むと、ランスの勢いを利用して両足を浮かせ、目の前に突き出す。両足のキックがランスの腹部に命中する。
 鈍い音がするが、それでもランスは怯まない。

「虫けらねぇ……その虫けらにこれからやられるのはどこのどいつだと思う?」

 二号はその男を挑発するように言うと、すぐに一言、「ラブ!」と叫んだ。
 後方にいたラブは、その一言だけで何をしろというのかを理解した。彼女自身、言われずとも準備はできていた。
 左手のリンクルンに、桃色の鍵型の妖精・ピルンを差し込んだ。

「チェインジ! プリキュア! ビィーーーートアァーーーップ!!」

 叫びとともに、ラブの姿がキュアピーチへと変身する。キュアピーチは、プリキュアの名に恥じず可愛く純なドレスで──かつ、その華奢な体の中に巨体さえも倒す力を込めている。
 もしもテッカマンランスがただのでくのぼうであれば、マップの端まで吹き飛ばしてみせよう。
 ……ラブもここで決着をつけないわけにはいかない。
 マミと誓った平和のために、キュアピーチは戦わなければならない。テッカマンランスは、その誓いをする起源となった因縁の相手なのだ。

「ピンクのハートは愛あるしるし! もぎたてフレッシュ! キュアピーチ!」

 キュアピーチはそう名乗るとともに飛び上がると、キュアピーチはそこから斜めに風を切りながらランスへと跳び蹴りをする。
 それがどうやらいきなりのクリーンヒットだったらしく、テッカマンランスはバランスを崩して、両腕を宙に泳がせ、二三歩ばかり後退した。先ほどライダーから受けた一撃よりも重かったらしい。形としては不意打ちに近いが、今までのランスならばこの程度でひるむ事はなかっただろう。
 ラブが意外な相手であった事に気を取られてしまった事と、これまでの戦いで深刻なダメージを受けてきた事が原因の大部分を占める。

「な……キュア、ピーチだと……? 生きていたのか!?」

 キュアピーチ──テッカマンランスが最初に交戦した相手だ。
 まさか、あの後も生きていたとは思いもよらなかった。
 あれだけ痛めつけたのだから、おそらく共倒れしているものだと思っていたが……。
 それでも、驚くのは一瞬だった。その生命力にはすぐに納得し、そのまま思考を切り替える。

「……なるほど。また私に倒される運命とも知らずに向かってくるか。面白い……」

 ランスはテックランサーを取り出すと、その切っ先をキュアピーチに向ける。薙刀の刃を向けられたピーチは、少しばかり戦慄するが、怖気づくのは一瞬だった。
 プリキュアを根絶やしにしようとするモロトフと、マミをモロトフによって喪ったピーチ──そこには計り知れない因縁があったに違いない。

「しかし何度挑んで来ようとも結果は同じだ! 貴様もこの私が屠ってくれる! あの魔法少女やキュアパッションのようになっ!!」

 そして、その因縁を膨らませるようにランスが太い声で叫んだ。
 あの魔法少女……それはマミの事に違いない。何度も怒り尽くした分、ラブの中で一時的に魔法少女に傾ける優先順位が下がってしまう。
 いま名指しされたもう一人の戦士──その名前がここで出てくるのが意外だったために、キュアピーチは混乱し、状況を理解するのに数秒を要した。

「え……!?」

 その瞬間、キュアピーチは思わずテッカマンランスの顔へと強い視線を浴びせた。その驚愕に満ちた顔をテッカマンランスは嬉しそうに見据えた。
 ──動揺。
 キュアパッション──東せつなの名前に、キュアピーチは反射的に動きを止めたのである。何故、キュアパッションの名前が出たのか。その意味、その答えを脳内が導き出すのに、身体を止める必要があった。反射的に、脳細胞以外のすべてが動きを止め、同時に時間も止まった。
 テッカマンランスは──キュアパッションを……? 放送で呼ばれた東せつなの名前。誰によって殺されたのかも、殺されてないにしろ、なぜ死んでしまったのかもわからなかったせつなの死因──それが桃園ラブの中で、答えを出す。
 しかし、答えが出ても、ラブの中の時間が動くのに、また少しだけ時間を要した。
 それを見て、ランスは嗤った。

「動きを止めたな、キュアピーチ! フンッ!」

 テッカマンランスは、その長刀でキュアピーチと二号を同時に凪ぐようにして叩きつける。実際は、ここまでの時間自体はそんなに経っていない。ただ、キュアピーチの中で長く、静かな時が流れただけだったのであろうか。
 ランスの豪快な一撃に、二人は吹き飛ばされていく。
 それでいて、着地は非常にあっさりしており、バランスを崩す事も無く、二人とも両足で地面に立っていた。
 キュアピーチは左脇を押さえていたが、テッカマンランスを睨む目つきは変わっていた。

「プリキュアに仮面ライダー! 貴様らのような邪魔者のせいで、私はまだ二人しか殺せていない……有能なテッカマンたるこの私がな! だが……私は幾度の戦いを超え、より強く進化している……今の私を、蟻如きの止められるかな?」

 テッカマンランスの身体的な状態は非常に悪いと言わざるを得ない。
 ブラスター化したテッカマンの戦いに自ら首を突っ込んでは吹き飛ばされ、ダグバと戦っては再び返り討ちに遭い、とまあ、これでは戦闘に差し支えるレベルのダメージを受けるのも当然だろう。
 ……しかし、彼はそのたびに自信に代る何かを得た。より強い力、何事にも負けぬ強い意志、強い者に立ち向かうための策……そう、それ以前のつまらないプライドなどちっぽけに見えるほどに。
 だが、自信に代る何かを得たはずでありながら、それを得たことでまた無用な自信ができてしまい、結果的にはまた元の鞘に返ってしまった。やっぱりモロトフは身の丈に合わない自信を持ち続ける戦士なのである。
 そして、何より厄介なのは……いつの間にか、身の丈の方がモロトフの自信に見合うように姿を変えていった事だろうか。
 つまり────テッカマンランスは、度重なる強者との決戦により、この時には、かつてキュアピーチやマミと戦った時より格段強くなっていたのである。

「……あなたが、せつなを……」

 キュアピーチは、なおも険しい表情でランスを睨んでいた。
 大切な友人を二人もテッカマンランスによって奪われたピーチには、ランスを許す度量を忘れていた。……無論、ランスが行った罪は許されないし、許されてはならないものだ。
 これからもランスはきっと、人の命を奪うために戦う。
 それなら────

「……許さない……絶対に許さない!!」

 ピーチが跳ね、ランスへと大きく羽ばたくように一歩近づく。
 ランスの胸部にピーチのパンチが当たり、そのまま何発ものパンチがランスのボディに繰り出される。ドスッ、ドスッと、鈍い音が繰り返しランスの装甲かピーチの拳の上で鳴り止まない。

「はぁぁっ!! どりゃああああぁぁぁっっ!!!」


 変身前が女子中学生とは思えないほどの荒々しい掛け声とともに、ランスの身体の節々に向かって、プリキュアのキックが繰り出される。
 ランスの装甲にその重々しい一撃が連続して繰り出されていく。
 ランスに反撃の隙がないのは、それがあまりに速い攻撃であったからだ。拳速、脚速は目くるめくもので、それでいて鋭さにおいても逸品であった。

「小蝿がっ!!」

 しかし、そんな中でパターンを見出したランスは、すぐにピーチの拳が来る位置を補足し、右腕を掴むと、ピーチの身体全体を持ち上げて地面へと叩き付ける。
 かつてのランスの攻撃によって草も枯れ果てた地で、大きな土埃が舞う。焼き尽きた草は灰となっており、ピーチの姿を土埃に隠すのに一役買っていた。
 完全に土埃に隠され、ピーチの姿は見えなくなった。

「ピーチ!」

 二号が駆け出し、その土埃の中へと消える。
 次の瞬間、ランスのテックグレイブがピーチのいた地面に突き刺された。全ては土埃に隠されて見えないが、そこに誰かが居るとすれば、串刺しになるに違いない。
 だが、ランスはすぐにそれを引き抜いた。
 ……そこには既にキュアピーチも仮面ライダー二号もいないのだ。

「ふう、間一髪か」

 ランスが自分の背後を見ると、キュアピーチを抱えた二号が膝をついている。どうやら、間一髪キュアピーチを救出したらしい。
 改造人間であるゆえに、二号の目にはキュアピーチはすぐ補足できていたのである。この程度の土埃ならば、二号にとっては透き通っているも同じである。

「……ちょこまかと逃げようと同じ事!」

 ランスはテックグレイブを構え直して、その刃を二人に向け、駆けだす。
 二つに分かれるように二号とキュアピーチは互いがいる方向と逆に飛び上がり、地面に激突したテックグレイブが次の土埃を作り出す。風が強い日のグラウンドを想像すればわかりやすいだろうか。
 二手に分かれた戦士のうち、テッカマンランスが射止めようとしたのはキュアピーチであった。
 彼女はプリキュアである。それも、かつてランスにダメージを与えたプリキュアである。
 この会場の中で生かしてはならず、ランスの手で倒さなければならない相手の優先度ではトップに食い込みかねないほど、彼女はランスの恨みを買っていた。ランスの中での敵対心は、ダグバと並ぶほどである。

「消えろっ! キュアピーチ!」

 ランスはそう叫びながら、ピーチの方に向けて飛ぶため、地面を蹴った。
 ホバー移動するほどの距離でもなく、また一歩で届くほどの距離でもない。だが、このテックグレイブのリーチを最大にして凪げば充分にピーチの腹を掠める。怯んだところにもう一撃……という算段を頭の中で思い描く。
 だが、前方のピーチは──

「悪いの悪いのとんでいけ……!!」

 近づいていくランスに恐れを抱いてもおかしくなかろうに、キュアピーチは立ち止まって構えたままだった。
 それがある技の構えに近いのを知る。
 ──あれは、マミと呼ばれた魔法少女と共謀してキュアピーチがランスと交戦した時、キュアピーチが使ってきた技だ。
 なるほど。ボルテッカを相殺できるほどの力を持っている技である。この技でランスを吹き飛ばそうというのだから、彼女が逃げないのは当然。

「プリキュア!」

 キュアピーチの手に着々とエネルギーが溜まっていき、ランスの距離も縮まっていく。
 このままいけば、ランスは確実にキュアピーチの攻撃の餌食となる。テックグレイブもおそらく発動より前には届くまい。
 だが────

「ラブ・サンシャイィィィィン!!!」

 その技が発動した瞬間、ランスは背中からエネルギーを放出し、上空へと飛ぶ。
 テッカマンの能力の一つで、背中からエネルギーを噴出して空中へと飛ぶものがあるが、ある程度制限されているとはいえ、軽い使用は問題ない。
 真っ直ぐにピーチのもとへと向かっていたランスの身体は軌道を変更し、プリキュア・ラブ・サンシャインは先ほどまでランスがいた場所へと消えていく。
 ボルテッカほどの威力があるはずなのに、その攻撃は周囲の何も破壊せず、地面の草を消し去る事さえ無かった。……無論、草など、もとよりほとんど残ってはいなかったが。

「……フンッ! 何度も同じ手を食うと思ったか!」

 ランスはそう吐き捨て、テックグレイブをキュアピーチに向けて放り投げた。
 長刀の刃はキュアピーチのいる足元を刺す。その直前、ピーチは咄嗟に真上に飛んでいた。
 真上に飛んだピーチの正面にあるのは、無論テッカマンランスの顔であった。

「くっ……!」
「覚えておけ、キュアピーチ! 攻撃とは、相手が避けられない状況で放つものだ!!」

 見れば、ランスの首に反物質フェルミオンのエネルギーが充填されていた。彼は、最初からキュアピーチが避けた瞬間を狙う気だったのだ。
 キュアピーチもこの技をよく知っている。
 避けなければならぬ技だが、キュアピーチは空中を自由に移動することができるわけではないので、このままでは避けられない。
 ランスの首は、エネルギーを溜めるのをやめた。それは、放出に充分なエネルギーが充填され尽くした証でもある。

「いくらプリキュアといえど、至近距離からのボルテッカではひとたまりもあるまい……食らえぇぇぇぇぇ、ボルテッカァァァァァァ!!!!!」

 そのままランスのボルテッカの眩い光が放たれた。
 テッカマンランスのボルテッカをこの距離で受けてしまえば、キュアピーチの身体はそれこそ塵ひとつ残さず消滅していたかもしれないだろう。
 何せ、タワーを消し去るほどの力であり、ダグバさえダメージを負うほどの攻撃だ。いくらプリキュアとて、無事で済むはずがない。
 しかし、それが噴射される瞬間────


「ライダァァァァァキィィィィィィック!!!!」


 ────当人にとっては実に残念な事ながら、ランスの身体は蹴飛ばされ、真横へ吹き飛ばされていた。
 ボルテッカはあらぬ方向で焼けた地面を再び焼いて、ランスの身体が転げ落ちていく。地面から反射したエネルギーが、少しばかりランスの身体へと命中する。
 仮面ライダー二号が隙を見て、キュアピーチを救うために一発お見舞いしたのである。二号のジャンプ力からすれば、この程度の高度は大した事がないのだ。
 テッカマンランスの巨体を吹き飛ばすにも充分なキック力の持ち主だった彼は、間一髪キュアピーチの救出に成功する。

「……ったく、俺を忘れるなっての」

 と、言いながら二号とキュアピーチが地面に着地する。二人は、ほとんど無傷同然であった。
 放っておいたもう一人の攻撃を受けて好機を逃すとは、多人数を相手にする意識がランスには欠けていたのだろうか。何度となく多人数との激戦を強いられてきたランスではあるが、二人の属性が違いすぎたためか、二人の連携はランスが思うほど上手くはなかったのである。
 一撃一撃に精魂を尽くしていく二号と、何発ものパンチとキックの嵐を浴びせるキュアピーチ。
 敵に直接キックを送り込む必殺技の二号と、遠距離から敵を浄化するキュアピーチ。
 二人の戦闘のタイプは大きく違うため、同時に戦えない。──そのため、片方が攻撃している間にもう一方が攻撃できる状況が作られにくいのである。
 ランスもピーチも二号も、一人ずつ相手にしなければならない形になっていたのである。
 二人が戦闘している中で、ランスか二号かのどちらかが上手なタイミングで現れなければ、一対一を繰り返す戦いになる。……タイミングを計り、上手く戦いに参入できたのが結果的に二号だったのである。
 それに、ランスは随分と強くなったとはいえ……やっぱり弱っていた。疲労極大、ダメージ極大であるこの状況下、やはり判断能力なども鈍っていたのだろうか。
 あるいは、クリスタルの破損から、戦闘への執着心も少しずつ薄らいでいるのかもしれない。

「おのれ……私の邪魔を……!」

 あと一歩でキュアピーチを消せたというところだというのに、横から邪魔をされた挙句、無様に転げまわったランスは憤怒する。
 ランスが起き上がると、キュアピーチは二号に相手を譲る事なく、前に進み出た。

「どうして…………」

 拳を引き、

「どうして、あなたは…………」

 走り、

「そんなに戦いたがるの!!?」

 拳を突き出した。
 ランスの胸の装甲へとぶち当たったパンチは、それを砕いた。連撃ではなく、一撃に魂を込めたパンチである。
 何度とない戦闘に、ランスの身体は簡単にひび割れてもおかしくないほどのダメージを受けていたのである。

「言ったはずだ。この宇宙に貴様らのような種族は邪魔なのだ!!」

 胸部に穴を作り出そうとするピーチの右腕をランスが掴み、強い力で握る。
 ものすごい力で締め付けられるピーチの腕は、ぴきぴきと音を立て、今にも折れそうなほどの圧力を受けていた。

「……違う! ……この世界に……邪魔な生き物なんて……いない……!!」

 ランスによる締め付けによって顔を苦痛に歪めながらも、ランスの言葉に反論する。
 その言葉の意味が、ラブの心の根っこの部分で反芻される。
 自分自身が何気なく返した言葉が、やがてラブ自身の本心から出た言葉であるという事がわかってきたのだろうか。
 頭は苦痛から解放されたい思いでいっぱいだったはずが、だんだんと強い思いになっていく。
 何も考えず、しかしラブ自身の本心はすらすらと口から出て行った。
 そして、キュアピーチは右腕を強く引く。凄まじい勢いで右腕を引くと、ピーチの腕に摩擦熱による真っ赤な跡と痛みが残った。
 しかし、テッカマンランスの両腕は虚空を掴んでいる。湧き上がる力が、ランスの腕を弾いたのだ。

「……マミさんにも……せつなにも……私は何度だって……支えられてきた……! 誰かがいるから頑張れて……みんなが誰かに幸せを与えて……それが世界を作るから……邪魔な生き物なんて、いない!! 二人を邪魔だったなんて言わせない!!」

 キュアピーチは右腕に痛みを感じながらも、力強く構えてランスを睨む。

「……ほう、面白い。ならば何故、私を排除しようとする? それは貴様が私を邪魔だと感じているからだ。……所詮は自分の信念さえも偽りの貴様ら如きが、この私に勝てるはずがない!!」

 ランスはそう言いながら、その右拳をピーチに向けて突き出した。
 体格差があるゆえに、腰を折るようにして殴ろうとしていたが、そんな大がかりな動作はすぐに見破られ、ピーチが跳び、ランスの顔へとキックを放つ。

「……あなたもこの世界にとって邪魔だとは思えない。私はあなたが邪魔だから倒すんじゃない! でもあなたはマミさんとせつなの命を奪った……!」
「なるほど……仲間の仇討ちか。だが、その必要はない。すぐに貴様も奴らのもとに送ってやるからな!!」

 ランスの肩から光弾が放たれ、何発も何発もキュアピーチの身体に至近距離で直撃する。
 ランスの顔の前にいたピーチはそれで打ち落とされた。身体の至るところで光弾が爆ぜたゆえ、もはや右腕の痛みなど忘れ去られていた。
 倒れたピーチの身体をランスは蹴飛ばし、ピーチの身体は地面を力なく転がる。

「ピーチ!」

 二号が駆けつけようとするが、

「来ないで!」

 今までになく強い声で、ピーチは二号に叫んだ。
 そのあまりの迫力に、歴戦の勇者・力の二号でさえ一瞬立ち止まる。
 土埃にまぎれながら、ぼろぼろの身体をピーチは起き上がる。左肩から血が出ており、右腕はそこを押さえている。他にも、全身が擦り傷を作り、結構出血しているようだった。
 そこに、ランスは再びレーザー砲撃を放つ。
 バックステップの要領で後方に跳び、ピーチはそれを避ける。ピーチの身体は二号の真隣にまで移動する。

「……この人とは、私が決着をつけます。この人は私が……私のやり方で決着をつけなきゃいけないんです!!」

 至近距離で見たピーチの目は真剣そのものだった。






(戦いの音が聞こえて来てみれば……)

 ──天道あかねの眼前で、巨大な敵と戦う二人の戦士。
 川沿いを進んでいたあかねだが、その巨大な戦闘音──おそらくはボルテッカが発射される音──が聞こえたから、彼女もこちらに来てみたのである。
 もしかすれば、蒼乃美希が追ってきたのではないかという不安などもあった。
 だが、どうやらそうではなく、全く別の戦闘らしい。巨大な装甲の戦士に対し、二人の戦士が戦っている。
 片方は、微かに記憶にあるキュアベリーの仲間と思われる。もう片方は、仮面ライダーダブルに酷似していた。

(……様子を見るべきかしら)

 仮に今乱入したとして勝てるのだろうか?
 伝説の胴着に加え、ここにはナスカメモリもある。あかね自身の戦闘力も元からそれなりに高い部類だったため、戦力としては充分なほど整っていた。
 ある程度弱っている相手ならば、問題なく倒せるかもしれない。
 本来、弱い者を狙うなどはしたくはなかったが、あかね自身もあまり体調面では整っていなかったし、事情が事情であるため、そんなポリシーに縛られ続けるわけにもいかない。

 しかし──

 このままでは自我の崩壊が起こるのではないだろうか。レベル3に耐えられないのではないか。そんな悩みも右手に握られていた。ナスカメモリに完全に食われれば、乱馬への想いさえも消えた完全な殺戮マシーンに変身してしまうかもしれない。ナスカメモリに耐えられなければ、それこそあかねが死んで本末転倒だ。
 もし、それが起こったらあかねは……。

(それでも……)

 あかねは右手のメモリを強く握る。
 それでも、これしかないのである。
 仮に伝説の胴着を装着としても、あかねが他の参加者に対して優位になれる力を持てるのは、これを使い変身した時のみだ。

 ──戦況を見る。

 あかねが見たところ、彼らの状況は二対一の形になっているようである。
 この場合、乱入の仕方も様々である。二人の戦士に加勢する、一人の戦士に加勢する、第三勢力として三人を同時に相手にする……。
 三つ目は効率が悪いだろう。あかねも強さという意味では自信がない。
 そして、あかねは決断する。

(まずはあの大きい奴に加勢する形で二人を襲う。二人がかりだと厄介だから、おそらく一対一の戦いを二組作る形になるわね……)

 組手のような形にしては各々の実力が拮抗しすぎているため、複数相手は辛そうだ。
 ならば、あの巨大な戦士も少し自分の負担を減らす形を望むのではないか。
 戦闘を見たところでは、巨大な戦士が積極的に相手しているのは、ドレスアップした少女のような戦士の方である。

「……この人とは、私が決着をつけます。この人は私が……私のやり方で決着をつけなきゃいけないんです!!」

 あかねの耳に、その言葉がはっきりと聞こえた。
 どうやら、実際に一対一の形を取って戦うらしい。ならば、あかねとしてはチャンスだ。これなら、あの大きな敵に協力する必要もない。
 残りの仮面ライダーの方を相手にしようと、あかねは模索する。
 あの戦士も半分こに分かれるのだろうか……? と少し考えながらも、あかねはその右手のメモリを挿す。

 ──Nasca──

 あかねの姿がナスカ・ドーパントに変身する。
 やはり、姿は青い──ナスカ・ドーパントの姿だった。メモリの力はレベル2に抑えられている。

(……とりあえず、意識はあるみたいね)

 あかねとしての意識が残っている事に安堵しながら、ナスカは仮面ライダー二号に向けて加速を始める。
 奴を倒す。
 どういう戦法を取ればいい? ……まず、不意打ちを上手く決めたいが、決められなかったら、どうする?
 いろいろと考えながら、何となくの策を頭に思い浮かべながら、ナスカは進んでいった。






「……駄目だ。戦いは子供の喧嘩じゃない。倒すべき相手はどうやってでも倒すべきなんだ。……勝てる確率は少しでも上げるべきなんだよ」

 二号はそう諭す。
 ピーチの提案に乗れるわけがない。彼女がいかに真剣であれ、彼女は中学生だ。
 本気で殺す覚悟で向かってくる相手に一人で戦わせるわけにはいかないし、それを黙って見ているわけにもいかない。
 大人がその判断を下すのは当然であるし、どちらが間違っているかと言われれば、ピーチの方が間違っていると言えるだろう。

「……でも、この人は何も知らないんです……人の命がどれだけ重いかも、自分がしたことがどれだけ大変な事かも……」

 人を殺すという事は、当然重い罪だ。
 もし殺人を犯した人の多くは、後できっと、ものすごくそれを悔やんでいると思う。
 しかし、テッカマンランスは違った。ランスは、命の価値も尊さも知らないように、平然と人を殺し、それを嗤う。

「……だから、この人に大切な人を奪われた私がそれを教えなきゃならないんです!」
「フン。何を言うかと思えばくだらん!!」

 ランスがそんなピーチを遠目で見ながら、鼻で笑っていた。

「ラダムこそが正義だ! テッカマンこそがこの世界の全てとなる!! 貴様ら人間など、そのための憑代に過ぎん……そして、我々が欲するのはごく一部の人間のみだ。この会場の人間が全て消え去ったところで、また元の世界で集めればいいだけの話……そんな駒のような命に価値があると思うか……?」

 テッカマンランスにとって、人の命とはその程度のものであった。
 その命を守ろうとするブレードも理解できず、ブレードの側に回ったレイピアも理解不能な存在だ。最後に人に戻ったエビルもそう……。
 何故、ラダムこそが全てであるはずの我々テッカマンが、人という枠から逃れられないのか。ラダムが人をコントロールし、支配しているに過ぎないはずではないか。
 ランスはそれを考える気さえない。
 考える余地などないほど充分に、モロトフという男にはラダムの洗脳がいきわたっていた。

「……来たまえ、キュアピーチ。貴様の同胞の仇が討ちたいのならな!」

 ピーチはぼろぼろの身体で駆け出した。力を込めるほどに痛みが突き刺さるが、それでも数歩で痛みという感覚は麻痺を始め、ピーチに力を与える。

「おい、待てピー────」

 二号が再びキュアピーチの名を呼ぶその刹那──

「────はぁぁぁぁっ!!」

 二号の背後に殺気が現る。テッカマンランスでも、キュアピーチでもない。
 それはこの戦いへの新たな参戦者──ナスカ・ドーパントであった。
 こうして、戦いは自動的に、テッカマンランス対キュアピーチ、仮面ライダー二号対ナスカ・ドーパントの二つに分かたれた。






「おぉぉぉりゃああああぁぁぁぁっ!!」

 キュアピーチが吠え、テッカマンランスに向かっていく。
 ランスは、ピーチが完全に近づく前にテックレーザーを照射してピーチが近づくのを妨害する。
 しかし、ピーチは何の問題もなく前方に進みながら、その爆煙を逃れていった。
 ピーチの足元に決まったように見えた光弾は、微かにピーチの足を掠める。土埃が舞っただけで、ピーチは瞬き一つしなかった。
 ピーチの胴体を狙った光弾は、ピーチは体操選手のように華麗にジャンプをして避ける。まるで重力をコントロールでもしたかのようなしなやかさで、的確にそれを避けた。
 一秒に幾つも降り注ぐランダムな動きの光弾を、ピーチは平然と避けていく。
 避けながらも、キュアピーチは叫ぶ。

「私は、仇が討ちたいんじゃ、ない!」
「……ならば、何故私と戦う!」
「これ以上、あなたが誰かの命を奪わないようにするため!」

 土埃と煙の中から、ランスの眼前へとピーチが顔を出す。突然の出来事だったが、ランスはもう驚かない。
 ピーチの中には、ランスを倒す覚悟があった。だから、ここまで辿り着くのは当然の事。
 一撃。ランスの肩をピーチのパンチが抉り、肩を割る。
 一撃。ピーチのキックがランスの腰に決まり、ランスの強固な身体が跳ね返す。
 一撃。ランスの胸をピーチのパンチが突き刺す。
 それはほんの一部にすぎない。いちいち解説できないほど、雨嵐のようにピーチはパンチとキックを繰り出した。それもまためまぐるしいスピードだった。
 ランスは、それを時にかわし、時に受ける。
 だが、話す余裕はあったようで、眼前のピーチへと答えた。

「……なるほど。私が誰かを殺す前に殺しておくという事か」
「それも違う!!」
「ならば、何だというのだ!!」

 ランスは右手で真横からキュアピーチの腕を凪ぐようにして叩き、ピーチを地面に激突させる。
 相手の思いを返すだけの隙と余裕があるのだ。ピーチを振り払えないわけがない。
 宙を舞い、肩から地面に落ちたピーチの背後には、地面に向けて堂々とテックグレイブが突き刺さっていた。

「……貴様に逃れる道はない。そこから後ろには退けないと思え、キュアピーチ」

これがまるで、ピーチの後ろにロープを張り巡らせるコーナーの役割を果たしているようであった。
 まさしく逃れる道はないように見える。これを避けるように走る事もできるはずが、奇妙な威圧に襲われた。
 ピーチはそこから後ろへは退かない。だが、それでも、その向こうを見るだけはした。

 仮面ライダー二号は、そこにはいなかった。協力してくれない。
 冷静に後ろを見直してみると、そこでは二号は新しい敵と戦っていた。
 テッカマンランスとは全く違う敵で、青い姿の怪人である。
 先ほどまで、この怪人──ナスカ・ドーパントがキュアベリーと戦っていた事など、キュアピーチが知る由もない。

(……ライダー……)

 仮面ライダー二号は、ラブの背中を守ってくれている。
 ピーチが負ければ、テッカマンランスは二号を狙うだろう。それと同じように、あの怪人も、二号が負けたらキュアピーチを狙うに違いない。
 ……それなら、倒れるわけにはいかないのだ。
 大丈夫、仮面ライダーが別の敵から背中を守ってくれている。これなら、キュアピーチは思う存分、テッカマンランスと一対一で戦えるはずだ。

 キュアピーチは立ち上がり、自分の背後にあるテックグレイブを引き抜いた。地面に深く刺さっていたためか、四角く固まった地面が一緒に抜ける。ピーチはそれを軽く蹴って払うと、そのテックグレイブを軽くランスに向けて投げた。

「……これ、返すよ」

 それはランスを串刺しにするような好戦的なものではなく、むしろ優しくランスにそれを返すような、そんな返し方だった。

「何のつもりだ……?」

 ランスは、彼女の行いが理解できずに問う。
 困惑するランスに、彼女は行動で答える。

「届けっ! 愛のメロディー! キュアスティック・ピーチロッド!」

 ピーチはリンクルンとピルンによって、キュアスティックを出現させる。
 片手にスティックを持ったピーチは、爆煙の中を駆けだす。

「……フンッ。自分が武器を使うから、相手にも武器を渡したというのか……? 理解できんな、貴様ら人間は……!」

 ランスには、キュアピーチの行動は疑問であった。自分が戦闘の中で優位になっても、それを利用しようとしない武士のような精神は時代遅れというほかない。
 まさか、どちらにせよテッカマンランスに敗れようというのだから、正々堂々の戦いで有終の美を飾ろうとしたのだろうか。……いや、そうだとしてもこんな武器で突き刺される方が遥かに辛い死となるはずだ。
 やはり、理解不能である。

「はぁぁぁぁっ!!」

 ピーチは大きく地面を蹴り、ランスの眼前に飛び上がると、ランスの顔面へと何発もの蹴りを放った。まるで足踏みでもするかのように……それでいて、重力の限界に放てる数を制御されているので、一撃一撃を素早く。
 ランスはそれを受ける顔にも痛みを感じたし、受けるたびに後ろへと垂れ下がる首のほうが痛んだ。息もしにくい。
 顔を上げようとしても、ピーチが蹴り続ける限りは、それは無理だ。

「どりゃぁっ!!」
「ぐっ……!」

 スティックを攻撃武器として使うと思っていただけに、ランスはその意外な肉弾戦術に困惑する。
 もともと、キュアスティックはこんな状態での武器として有能なものではないのだ。
 ランスは、以前の戦いでキュアピーチがあれをどのように使っていたかを思い出そうとする。

「貴様……!」

 ランスはピーチに向けて拳を突き出した。だが、ピーチはその拳に向けて足を突き出し、拳のエネルギーごと跳ね返して飛ぶと、宙返りして地面へと着地する。
 ランスはギリギリ足が届く箇所に着地したピーチに蹴りを放つ。
 が、それもピーチは飛び、避けた。
 ピーチは突き出されたランスの右足へと着地する。伸びた右足は、一本のルートを作り出した。

「何ぃっ!?」

 それはまるで、テッカマンランスが忍者のように壁や天井に留まる術のように奇怪な姿であった。ランスの脚は重みを感じない……それほどに華奢なピーチである。
 彼女はランスの脚の上を駆けぬける。一瞬で、ほぼ眼前まで迫った。
 ランスの身体との距離が一メートルほど。そこで、キュアピーチは二つの指でピーチロッドを鳴らす。

「悪いの悪いの飛んで行け!」

 あの技を使う気か────と、ランスは理解する。そうだ、このキュアスティックという棒は、あの技の時に使っていたのだ。
 まさしく、ランスには回避の術がなかった。先ほどピーチに向けて言ったとおり、回避不能な状況下での必殺技である。
 回避する隙さえ与えないほど一瞬の出来事であった。

「プリキュア・ラブサンシャイン・フレェェェェェッシュ!!!」

 プリキュア・ラブサンシャイン・フレッシュがランスの巨体に直撃する。
 ハートマークの光がランスへと至近距離で到達し、無数のハートがランスの周囲に浮かび上がった。ランスは、その間抜けなハートの姿に眉をしかめる。
 このあたりが不愉快な技だ。
 何がハートだ。──戦いの場に、少女趣味を持ち込むな。
 ピーチは、そのまま後方に跳び、ランスの脚から離れながらも、ランスに向けてピーチロッドを回転させ、繰り、叫ぶ。

「はぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」

 ピーチの叫びが終わるとともに、ランスの身体を包み込んだハートマークが弾けた。
 ランスの身体もはじけたかと思ったが、ランスの身体はそれを受ける直前から変わってはいない。

 ────この瞬間に、完全にその一撃は決まったといえよう。

 そこから先のランスの行動は、あまりにも単純であった。

「ぐあああぁぁぁぁぁぁぁっっ!!!」

 ──慟哭。

 慟哭するのみだった。
 至近距離からのプリキュア・ラブサンシャイン・フレッシュによって、ランスは膝から倒れる。ただでさえ膨大なダメージによって倒れかけていた身体である。
 戦闘できる身体ではないにも関わらず、ランスは自分自身のプライドに戦闘を強いられていた。あのダグバに勝った自分が、ただの人間ごときに──あの時のプリキュアごときに倒れるはずがないと。

「はぁ……はぁ…………ぐんっ……あ……」

 それだけではない。なぜか、ランスは身体の内側から何かが弾けるような痛みを感じた。それは、必殺技による一時的な痛みを受けた先に作用する。
 しかし、かつてよりもずっと強い痛みだ。


 この痛みは何だ────


 ピキッ。


 装甲に亀裂が走る。
 モロトフのテッククリスタルにも、同様に罅が出来ていただろう。
 その亀裂はやがて大きくなる。
 ランスの左腕は、胸からはじけていくその亀裂の一か所を抑えた。
 しかし、それも無駄とばかりに、別の場所から亀裂は走る。


 ピキッ。


 トドメを刺しにか、ランスのもとへピーチが近づいてきた。
 ランスは、その身体が近づいてくる時、死の恐怖というものを実感した。
 体の自由も効かない。これほど全身に力が入らない状態に誰かが近づいてくる。
 キュアピーチは自分を殺しに来る。
 かつて、ダグバと戦った時の感覚とほとんど同じであった。


 ピキッ。


 死ねない。
 テッカマンの名誉に懸けて、プリキュアごときに倒されてはならない。
 ランスは、麻痺する身体に鞭を打ち、テックグレイブの先端をキュアピーチへと向けた。
 だが、それがキュアピーチの身体を射抜けるほど強い力で握られていない事を知っているのか、彼女はその横を平然と歩いてくる。


「く、来るなっ!! 私の命を奪おうというなら、容赦はせんぞ……!! い、いい……今すぐ、塵に返してくれる……!!」


 ランスの言葉も虚しく響く。
 ランスは肩にエネルギーを充填するほどの力もなかった。
 仮にそれを使ったとして、ランスは全身の力を使い切る事になってしまう。そうすれば、結局ランスは死んでしまうのだ。


「……わかった? それが、死の怖さ……命の重さだよ」


 見れば、ランスの身体は震えていた。
 近づいてくるキュアピーチの不気味さに、ランスはたじろいでいた。
 自分に攻撃してくる様子はない。先ほどの攻撃を使って来れば、ランスは死ぬではないか。何故、それをしてこないのか。
 ……そうか。何度も殴り、蹴り、刺し、蹂躙し、痛みを浴びせてから殺そうというほどの恨みを持っているに違いない。
 それは嫌だ。そこには相当の痛みと苦痛が伴う。どうにかして逃げられないのか。
 …………待て。……逃げる? 逃げるだと? 私が? 愚かな人間を相手に?

「……クッ」

 気づけば、キュアピーチはテッカマンランスとの距離を再び一メートルほどまでに縮めていた。テックグレイブの真横を通り、ランスとキスを交わせそうなほどの距離で、キュアピーチはランスの頬を拳で殴る。

「ぐはぁっ!!」

 やっとの思いで膝をついていたランスの身体は、地面へと転がった。
 やはり、この女はいたぶってから自分を殺すつもりなのか。一体、どんな目に遭うのだろうか。──それを想像しながら、ランスは起き上がろうとする。
 逃げるためだった。
 はいつくばってでも、ここは逃げなければならない。
 逃げなければやられる。
 どんなひどい仕打ちを受けるかもわからない。
 もはや、テッカマンなどどうでもいい。
 今は、自分の命だけ助かれば……。
 そこへ、ピーチが激昂し、ランスに怒号を浴びせ始めた。しかし、怒号というにはあまりに悲しみに満ちていて、少しの優しさがあった。


「……痛いでしょ!? あなたは同じだけの事を、たくさんの人にしてきたの……。マミさんは、死んじゃうその時まで、笑ってた。せつなが……キュアパッションがどういう風に死んじゃったのか私は知らないけど、……それでも、せつなは諦めたりなんかしなかったはずだよ」


 ランスはその言葉を聞いて、直感的に──彼女の言葉をちゃんと聞くつもりはなかったが、それでも耳に入ったので、キュアパッションの死に様を思い出す。
 キュアパッションは死ぬ時に、何度もランスに懇願したはずだ。
 ──昔のあなたに戻って。
 元の自分とは何だ? モロトフという男は、一体どんな男だったのか。誰かそれを知っているのか?
 あの女が自分の命が消えようという時に優先されるほど、尊いものなのか?
 そんなはずはないのだ。そんなはずはない。ラダムとしての自分が至高。テッカマンとしての自分を超えるべきものなど存在しないはずである。


 ピキッ。


「……ねえ、弱いかな!? あなたがこんなに死ぬのが嫌で震えてる時……同じ状況の時に、誰かを励ましたりできる人たちが……そうやって、誰かに強さを分けてくれる人たちが弱いかな!?」


 気づけば、ランスの目の前で、ピーチは涙を流していた。──きっと、マミやせつなの事を思い出しているのだろう。ランスには、同胞の死を涙する人間を理解する事はできなかった。
 強い……? 奴ら人間が……? この有能たるテッカマンであるこの私より、強い……? そんな事があるわけがない。奴らはバカなだけだ。
 そうだ、強いわけがない。
 テッカマンであるこの私が遅れを取るほど、奴らが強いはずがないのだ。
 いや、テッカマンが人間如きに負けていいはずがないのである。

 しかし、死を恐れぬ強さというのを、ランスは理解した。……そう、ランスがこれまでの戦いに勝利した時、そこには強い者に立ち向かう勇気があったのではないか。ダグバの戦いなどはその極みだろう。
 死とは、絶対に生物が逃れる事のできない運命にして、死に際で微笑む事のできる奴らは、相当な精神の強さを持っているはずだ。
 ピーチの言っている事は、確かに一理ある。
 では、どうすれば、奴らに負けないか?
 どうすればこのキュアピーチや、マミ、キュアパッションとやらに勝利し、自分こそが完全なる生物であると証明できるのか……?
 ランスは少し考える。
 少しだけ考えて、答えを出す。


「……フフフフフフフフ。フッハッハッハッハッハッハ!!!」


 ランスは、笑う。
 その場に倒れたまま、しかし、その全身の力を駆使して、起き上がった。
 テックグレイブを杖代わりにして、そこに全身の体重を持たれかけ、テッカマンランスは立ち上がる。
 その重量を支えるというだけで、テックグレイブは折れそうになった。


「なるほど……! それが強さか! それが奴らの強さだと、貴様は言うのか!! フッハッハッハッハ!!」

 ランスの口調は、むしろピーチの言葉をあざ笑うかのようだった。
 しかし、あざ笑いながらも、彼自身が道化と化しているように見えるほど、その高笑いは滑稽であった。


「……だが、それならば……それが強さならば、宇宙にただひとつしかないこの私の命を貴様如きに奪わせるわけにはいかないな! そして、有能なテッカマンたるこの私を震える弱虫と思わせるわけにもいかない……!!」


 ランスの首に、肩に、全身のエネルギーが充填されていく……。
 ピーチの目にも、光が見えた。彼が何をしようとしているのか、ピーチにはわからなかった。


 ピキッ。


 ピキッ。


 ピキピキッ……ピキッ。


 その音が尽きる前に、ランスは肩と首に全身に残る微弱なエネルギーさえも寄せ集め、高笑いを始めた。
 ランスは己の身体にエネルギーの全てを蓄えなければならない。身体が全て砕ける前に。


「見ろ! キュアピーチ!! 私の残りの全ての力が充填されていく……!! 貴様に殺されるくらいならば、このまま貴様を巻き込んで砕け散ってくれるわ!!」


 そう、悲しい事だが、人一倍プライドの高いテッカマンランスにとっては、それこそが完全な強さとなってしまったのである。
 死さえも恐れず、キュアピーチを倒す。……キュアパッションやマミがキュアピーチに強さを明け渡したのなら、テッカマンランスは交戦した彼女ら全ての力を否定するために、キュアピーチを殺し、彼女によって自分の命が奪われる結末を変えようとしているのだ。


「……私にはもう立つ力などないと思ったか……? そんな私ならば拷問し殺す事が出来ると思ったか? ……そんな結末は全てボルテッカでブチ壊してやる!!」


 ランスの首や肩の光は、もはや彼の顔を隠すほど強い物へと変わっていった。本来なら一度のテックセットにつき一度しか使えないはずのボルテッカの力さえも、微かにでも残っているならば使い果たそうとしていた。
 そう、彼は既に──「死」への恐怖を消し去っていた。そして、「死」へと向かおうとしていた。
 キュアピーチが言ったように、死の間際に微笑み、誰かに影響を及ぼす事が強さだというのならば、テッカマンランスはその身を持ってキュアピーチを破壊する事で強さを証明する。
 命が尊いというのなら、その命を他人なぞにくれてやるわけにはいかない。他人に自分の最後を明け渡すわけにもいかない。
 それこそが、テッカマンランスにとっての、テッカマンとしての最後の誇りであった。
 魂の限り、力の限り、全てを振り絞って、────テッカマンランスは叫ぶ。


「宇 宙 の 騎 士 ( テ ッ カ マ ン ) を な め る な よ ! !」


 そして────


 轟音と光は全てを包み込む。ランスの身体はそのまま、内側から溢れ返す膨大なエネルギーにより爆発音を立てた。全てが、爆発する。
 キュアピーチの視界も光に飲み込まれ、消えていく。
 爆風が砂埃を作り上げる。
 遅れてキュアピーチの身体が地面に向けて吹き飛ばされ、次にキュアピーチの身体に砂嵐がぶち当たる。
 砂が跳ぶ音は、まるで波の音のようだった。



 ────やがて、光が消えていき、世界は色を取り戻す。



 終わってみると、それは巨大とは言えない小さな爆発であった。ピーチは自分が死んだと思ったが、負ったのは、かすり傷程度の怪我であった。
 キュアピーチを巻き込むと言って爆発したものの、キュアピーチは万全だったのである。考えてみれば、あまりにも皮肉な死に様であった。
 ピーチは、必死にランスの姿を捜したが、そこにテッカマンランスの姿などない。
 彼はキュアピーチに倒される事や、死の恐怖に震える事よりも、自らの手で壮絶な最期を遂げる事にしたのだ。
 生半可な覚悟ではない。
 そこに身体がひとかけらでも残っていたというのなら、それはランスの覚悟の弱さの分量と言えるだろう。
 その覚悟の弱さを、ピーチは願った。彼が、プライドを捨て、命を尊び、わかってくれる事を願っていた。
 しかし、彼の覚悟は本物だった。

「……そんな」

 敵が消えたというのに──キュアパッションと巴マミを倒した仇がこうして跡形もなく消えたというのに、キュアピーチは悲しそうだった。
 彼女の勝利は、テッカマンランスの死という形では果たされないのだ。
 できるだけ多くの人を救いたいし、たとえどんなに許されない罪を負ったとしても、償う事はできると彼女は思っていた。
 東せつな──彼女も、かつてはラビリンスの幹部として、人々を不幸にしていたのだ。
 彼女を知っているから、キュアピーチはどんな敵でも──せつなの命を奪ったテッカマンランスでさえ改心させようとしていた。
 命の重みを教えてあげようとした。
 ……それは、彼の解釈の違いによって、結果的にランスの自爆を手伝う形になってしまったのだが。

「……私は、あなたの命を奪うつもりなんて、最初から無かったのに……」

 ランスは死に際に、何度もピーチが自分を殺そうとしていると言っていた。
 しかし、当のキュアピーチにそんなつもりはなかったのである。
 ランスが最後まで攻撃技だと勘違いし続けたプリキュア・ラブサンシャイン・フレッシュも決して、ただの攻撃技ではない。
 それにより、彼の身体が崩壊を始めたのは、それが浄化技であった事が大きいのである。
 彼のクリスタルは、かつてのプリキュアとの戦いで崩壊していた事は、ダグバとの戦いの後にも判明している事実であるように、彼を支配する「テッカマン」の殻を破ろうとしていたに違いない。実質的に、それは死を意味する物であるが。

「くっ……」

 それでも……。
 それでも、キュアピーチは、そこで立ち止まっている時間がなかった。
 すぐ後ろでは、一文字隼人が──仮面ライダー二号が私を守ってくれているはずなのだ。
 ピーチは、彼を助けるためにそこに向かわなければならない。
 悲しい事だが、ここで割り切って動かなければならない。それは、心優しき少女にとっては苦汁の決断でもあったが、いつまでも引きずるわけにはいかなかった。
 せめて、この男の何かを見つけたいと思ったが、ここには彼の欠片すら見当たらなかった。


 キュアピーチの姿は、確かに此処に存在した。
 此処で歩いていた。
 彼女は、テッカマンランスが元はモロトフという人間であった事も、その所業のほとんどがラダムという異形の怪物による支配が原因での行いであった事も知らないままだった。

 ────そして、ここから先に記する事は誰も知らないだろう。
 実は、テッカマンランスの余力を考えれば、キュアピーチを巻き込む爆発くらいは容易だった事。
 彼が最後に一瞬でも、モロトフとしての意識を取り戻したかもしれない事。
 それが、爆発の規模を最小限に留め、キュアピーチを爆発に巻き込まないように力を緩めさせた事。
 彼がブチ壊した結末は、己がキュアピーチによって命を奪われる結末ではなく──キュアピーチの命がテッカマンランスによって奪われる結末であった事。
 結局、そんな事は今となっては誰も知らない。
 当の彼でさえ、おそらくそんな事は知らないし、既にこの世にいないのである。


 誰が見ても、これは悪が勝手に自爆し、正義の戦士が奇跡の力で生存した──そんな単純で皮肉な勧善懲悪だっただろう。



【モロトフ@宇宙の騎士テッカマンブレード 死亡】
残り30人

※モロトフの支給品はI-5エリアに放置されているか、一緒に爆発した可能性があります。
 あるとすれば、支給品一式、拡声器、グリーフシード@魔法少女まどか☆マギカ、ランダム支給品0~1が放置されています。






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最終更新:2015年12月27日 23:05