虹と太陽の丘(後編) ◆gry038wOvE






 ──そして、彼らの山籠もりの修行が終わり、二日はあっという間に過ぎた!







 東京都練馬区に位置する天道道場には、かなりの人だかりができていた。門の外から、何人もの人が覗いている。それは、そこで行われる処刑に立ち会おうとしている者たちだ。
 通常なら、管理下の人間に自由は与えるべきではないが、この場の処刑の立ち合いはあくまで自由参加である。
 ただ、人々から見れば、あかねは殺人を犯した大罪人であり、この天道家の人々はそれを生みだし、育てた人間たちだ。──悪趣味で鑑賞しようとする人間、変な正義感を持って見に来ていた人間が大多数であった。

 人目に晒されながら、磔のなびきは、この二日間、「見物料をよこせ」などと喚いていたが、勿論、誰もそんな事をしようとは思わず、それは却って天道家の威信を下げる発言となっていた。
 天道道場を取り囲む人々はこの短期間で、暴徒のような性質を見せ始めた。
 ただ、その一方で、そんな中でも守ってくれる人がいるのも事実で、かすみに向けてビールの缶を投げつけた男が、突如として全身の関節の痛みを訴え、動けなくなるという事態も発生している。──実は、近所の接骨院の男が、こっそりと財団Xに紛れて、天道家の三人にマッサージや忠告を施し、野次馬をたまに、指一本で撃退しているのである。



 ──そんな野次馬たちが大きくざわついたのが、その「二日後」なのであった。

「おい、あれ……」

 天道道場に至るまでの道のりをゆっくり歩いて来る、たった二人の男を見て、人々は道を開け始めていた。
 それは、まさに異様というか、誰も近寄れない空気を醸し出していた。
 白い服を着た長い髪、めがねのアジア人男性が、モニターで中継されていたあの「響良牙」を縄で縛り、無理やり歩かせているのである。──それを知っていた人々は息を飲んだ。
 良牙の身体は、何度も痛めつけられた痕があり、表情は、もはや限界寸前なほどに憔悴し切っている。倒れかけであった。

「あ、あんた、もしかして……良牙を捕まえたのか……」
「──ならば、何だという」
「い……いや、何でもない……」

 その男の、まるで暗殺者のような佇まいに、近寄れる者は誰もいなかった。
 あの良牙を捕えた者だというだけでも、この白い服の男の格は上がる。あの映像だけでも、良牙たちは、自分の手に負える相手ではないのを理解していた住民たちだ。麻酔銃が効くだけ、虎でも相手にした方がまだマシという気がしていた。
 それを仕留めたというのだから、この男がただならぬ者であるというのは一瞬で、誰にも伝わった。

「どけっ!」

 財団Xが警備していた天道道場の門に、良牙を連れて悠々と入ってくるその男。
 その警備兵が男の肩に触れたが、次の瞬間、男の拳が警備兵たちの顔に一撃ずつ叩きこまれ、すぐに気を失う羽目になった。

「良牙くん! ……それに、君はムース!」

 その男の姿が、いよいよ、天道道場の庭で十字架に磔にされていた天道早雲たちの目にも入った。
 庭に、落ち着いて、ただゆっくりと入ってくる白い服の男は──やはり、ムースであった。

 レム・カンナギたちはどこかで休憩していたようだが、テレビカメラがそこには設置されていた。
 早雲たちの周囲を囲む財団Xの人間が、慌ててテレビカメラを回すと、遂に──痛めつけられた良牙の顔は、世界中に中継される事になってしまう。

「おじさん……すまない」

 早雲を見て、良牙は弱弱しい声で呟く。
 汚れた子犬のような目で、助けを求めるのか、あるいは、謝るのかといった目で、早雲を見つめる彼──それを見て、早雲は無念を悟った。
 かすみとなびきの顔色も、流石に曇っている。

「──おい、レム・カンナギとやら! おらが良牙を連れてきたぞ」

 ムースがそこで、大きな声をあげた。
 すると、天道家の奥から、自分が呼ばれたと気づいた財団Xの服を着た中年男性──レム・カンナギが、何が起きたのかと顔を顰めて歩いて来る。居間を土足で通り抜けているが、彼はそれを全く意に介す様子はない。

「……おお」

 そんな彼であったが、ムースにお縄頂戴されている良牙の姿を見ると、少し驚いたような表情をした。カンナギとしても、まさか今になって良牙を連れてくる者が現れると思っていなかったのだろう。

「この良牙を連れてきたら願いを叶えてくれると言ったはずじゃ。じゃあ、おらの願いを聞いてくれるな?」
「ムース! 君は良牙くんの友達なんじゃないのか! まさか、彼を裏切ったのかっ! 一体何故!?」

 ムースは、早雲の方を一瞥し、それで一度は目が合ったものの、すぐに目を逸らし、彼の言葉を無視して続ける。


「──シャンプーを生き返らせてもらおうか、カンナギ!」


 ムースのその一言が、早雲の胸に衝撃を与える。
 ムースは、ただ一図にシャンプーを生き返らせたいだけなのだと──それに気づき、彼も黙って、少し項垂れた。彼にも、乱馬やあかねを生き返らせたい気持ちが少しあるだけに、どうしてもムースの想いだけは否定できなかった。
 しかし、それでも──それは間違っている、と、早雲は心の中では理屈抜きにそれを否定しようとしていた。

「……おい」

 一方、カンナギは、カメラマンに目配せした。──どうやら、「映像を差し替えろ」というような趣旨の合図らしいが、良牙たちにはそれはわからなかった。カメラマンは、その合図に、頷き、何やらカメラのボタンを押した。

「おやおや。これはこれは……珍しい客人だ。ムースくん、だったな? わざわざご苦労だ。君の、我々への協力は素直に感謝しよう。君の要件も概ね理解した」

 カンナギは、そうして、ムースたちから少し距離を置いた早雲たちの前に立ち、互いに顔を見合わせていた。
 そんなカンナギの元に、何人かの財団Xのメンバーがわらわらと集まってくる。黒人男性もいれば、女性もいた。カンナギの身を守ろうとする側近のような立場なのだろう。
 カンナギは薄く笑い、一見するとこうしてやって来たムースを歓迎するような表情をしたが、すぐにその表情を崩す。

「……だが、一つだけ言っておこう。──君はバカか?」

 カンナギは、この冷徹な言葉を、ムースに向けて放った。
 無表情でありながら、ムースを嘲笑っているかのようなその言葉に、カンナギは付け加えていく。

「もう私たちは君が何をしなくとも、良牙くんをここにおびき寄せる算段は立っていた。だから、もう君が何か手伝う必要はなかった。──告知し忘れていたが、もう、良牙くんを捕まえるゲームはあの放送の時点で終わっていたというわけだよ。良牙くんを倒すのには随分苦労しただろうが、残念ながら、君のしてきた事には意味はない」

 ムースは、彼の言葉をただ冷静に、黙って聞いていた。周囲の人々がざわめきだす。
 良牙を捕まえる「第二ラウンド」の終了など、誰も聞いていない。今、こうして良牙を連れてくる者が現れたというのに、それは一切無視されているというのである。

「それに、折角、来てくれたから言っておくが、『願いを叶える』などという話──悪いがね、あれも、全部嘘なのだよ。まあ、連れてきた者を洗脳し、幹部待遇を与える場合もあるというのは本当だが……」

 カンナギは、この事を言う為に映像を差し替えたのだ。
 ムースを絶望させ、嘲笑う為に──。

 見ていた人々の間には、あからさまな不満の波が広がっていた。

「──わかりやすく言うと、君が求めている彼女は……、『死んだ』という事だ」

 カンナギは、トドメとして、ムースにそう告げた。
 財団Xが協力しなければ、シャンプーが蘇る事はない。そして、彼らは一切協力する気はなく、それどころか、その事実を嬉しそうにムースの前で突きつける。
 それを聞かされたムースは、流石に、その瞬間ばかりは、眼鏡の奥でカンナギを睨みつけた。──その怒りを受けても、カンナギは一切、意に介さない。

「さて、全て話してしまったところで────響良牙は拘束し、この人質は皆殺しにしろ!……この場にいた者も全員だ! 良牙とムース以外はお前たちでも殺せる」

 その時、天道道場の周りを、どこからともなく降って湧いてきた怪物たちが取り囲む。
 マスカレイド・ドーパント、屑ヤミー、星屑忍者ダスタード。──本来、この世界には存在しないはずの異世界の怪物たちだ。
 いくら雑魚とはいえ、それらは人間が立ち向かったところで敵わない肉体を持っている連中である。良牙やムースを相手にするには力不足だが、「それ以外」ならば殺せる。
 叫び、怯え出す一般市民たちに、その目線を変えた。怪物たちと目が合い、ターゲットとしてロックされた一般人たちは、その瞬間、先ほど逃げ出そうとした人々同様、逃走を図ろうとする。

「ふっふっふっ、ここにいる者たちには、我が財団が開発した技術の実験台になってもらうよ。……良牙くん、君の目の前でね」

 既に天道道場の周囲一帯が完全に包囲されており、人々に逃げ場はなかった。
 ここにいた全ての野次馬は、財団X側が提示した約束が反故にされているのを今、目撃してしまっている者たち──という位置づけだ。一刻も早く逃げ出そうとした者は何人もいたが、彼らは軒並み、戦闘員たちの包囲を受ける事になった。
 ──処刑を待ちわびていた人間だけではなく、中には通りがかりの子供や、ただの近隣の住民、それどころか、この現場を見てすらいない人間などもいる。
 そんな人たちの断末魔が、次々とカンナギたちの耳に入って来た。
 早雲は、カンナギの背中に怒りの声を浴びせ続けるが、彼は無視する。


 ──まるで、それは、カンナギが最初から、処刑の現場に来る人間を皆殺しにするショーを計画していたようであった。
 ──ここで全てを明かしてしまうのは、「真実を知った者を殺す」という、状況を作る為の大義名分。
 ──新しい道具や技術の、体の良い実験台として、良牙や、彼の周囲の人間を利用しようとしていたという事だ。


「そして、ムースくん。君は無駄な事の為に仲間を売って、ここまで来たのだ。暗器の達人ムース……最後まで卑怯者のまま死ぬ気分はどうだ?」

 そして、カンナギとムースとの間を隔てていくダスタードの群れと、財団Xの側近たち。
 ムースならば、辛うじて倒せるレベルの敵であったが、その障壁を崩しているうちに、おそらくカンナギはその前に逃げてしまうだろう。──おそらく、彼が逃げる為の時間稼ぎをさせる為の連中である

「……愛する者に殉じたまえ!」

 カンナギは冷徹で卑怯な命令を下す。
 ムースと良牙を囲むように、四体の怪人軍団が出現した。財団Xが作りだしたクローンの怪物たちである。
 ウヴァ、カザリ、ガメル、メズール──財団Xの出資してきた技術「コアメダル」によって生まれる欲望の怪物たちのコピーだ。その力は、異世界で仮面ライダーオーズと戦ったオリジナルの彼らには及ばずとも、ムースでさえ苦戦するレベルの能力を持っているのは間違いない。

「汚いぞぉ、カンナギぃっ!」
「自分で勝手に全部喋っておきながら!」

 そんな大きな喧噪が生まれ、天道道場の周囲は大混乱に陥っていた。
 しかし、カンナギはどうも腑に落ちない違和感ばかり覚え、眉を顰めている。
 妙に、良牙とムースが大人しく、何の反抗や反論もしてこない。──二人は、ただ黙ってカンナギを睨み続けていた。

「……おい、カンナギ」

 そんな騒ぎの中、天道道場内で、ただ一人、俯いたままカンナギに声をかけたのは、拘束されている良牙だった。

「なんだね、良牙くん。……友達に裏切られて、随分とボロボロのようだが、口が利けたのかね」
「──確かに俺たちはバカだが、お前たちよりは、バカじゃない」
「何?」

 良牙を縛っていたロープは、良牙が少し力を入れると、一瞬ではじけるように破れ、解けた。岩石を抱きしめて砕くような男なのだから、このくらいは当然の芸当である。
 憔悴していたように見せていた良牙だが、あれは別に体力の限界というほどではない。──まあ、この二日間、地獄のような特訓を続けていたのもまた確かな話で、そこでムースに厭というほど打ちのめされたのもまた事実だが。

「……そうだ。おらは別に、この豚男を裏切っていたわけじゃない。本当は仲が良いのだ!」
「ああ、このアヒル野郎と結託して、ある作戦を立てていたんだっ!」

 ──ばきっ!

 仲が良いはずの良牙とムースが今、クロスカウンターの形で殴り合った。
 互いの顔面にまともに一発拳が入っている。豚男、アヒル野郎などと呼ばれたのが相当気に入らなかったらしい。

「……」

 その場にいた全員が呆気にとられていたが、気を取り直し、良牙は言う。

「お前たちは昨日、天道道場を襲ったようだが、何故、天道道場には、おじさんとかすみさん、なびきさんしかいなかったと思う……!?」

 良牙の言葉に、カンナギたちは眉を顰めた。
 そう──確かに、天道道場には、早乙女玄馬も住み込んでいるほか、この町一帯には、他にも乱馬の関係者や友人はいるはずだった。それらは一切、財団Xの手で見つけ出す事ができず、良牙の脱出後は捜索対象になっていたほどである。

 ──その捜索対象者たちは、実は今、ここに集っているのだ。

「──早乙女玄馬、参上!」

 中年男性の声が、カンナギの元に聞こえた。
 彼が見ると、磔にされていた人質三名の周囲のダスタードたちが軒並み打ちのめされて伸びており、人質の腕の拘束を一人の男が解いている。
 カンナギが玄馬の存在に気づいたのは、なびき、かすみに続いて、遂に早雲の拘束が解かれる段階であった。
 名乗った通り、彼は早乙女玄馬──乱馬の父である。三人の殺害が決行される前に、彼が格闘でダスタードを倒したのである。

「早乙女くん……てっきり君は、パンダになって逃げたとばかり……」
「何を言う! いくらなんでも、息子を殺され、大事な友達がこんな所に磔にされているのを黙って見捨てるわしではないわ……! 今日までは良牙くんを探しておったのよ」
「早乙女くん……私は君が助けてくれると、この二日間ずっと信じていたぞ……!」

 玄馬の態度を見て、掌を返す早雲の姿を、なびきは冷やかな目で見つめていた。
 そんな時、外からも、何か騒がしい声が聞こえ始めた。
 カンナギが慌てて外の様子を見ると、そこにあったのは、部下たちによる民間人の虐殺の光景ではなく、──データで軽く閲覧した人物たちの様子であった。
 先ほどから聞こえていた断末魔は、ダスタードに殺される一般人の声ではない。──一般人に倒されるダスタードたちの声なのだ。
 カンナギたち、道場内にいた財団Xの人間には、まさに「予想外」な行動をされたが為の、動揺が広がっている。

「大阪から、乱ちゃんとあかねちゃんの仇やっ!!」

 久遠寺右京が、愛用の巨大な鉄のヘラを使ってマスカレイドたちを一掃している。
 彼女の幾つものお好み焼き技が敵に炸裂し、マスカレイドたちは見事料理されていった。
 もはやマスカレイドたちに成す術はなく、右京のお好み焼き攻撃に敗れ、何人かは本当にお好み焼きにされている。

「北海道より、おさげの女と天道あかねの仇!」

 九能帯刀は、熊を引き連れてそれに乗り、屑ヤミーたちの頭を木刀で叩き割っていた。
 この様子では、どうやら、あの映像を見ても、男の早乙女乱馬の出てくる瞬間は全て脳内で不要な情報として切り捨て、女の乱馬が出てくる場面だけちゃんと見ていたようである。──この男の頭の中は実に都合が良い。

「沖縄より、乱馬さまの仇を取りに参りましたわ!」

 日に焼けてきた九能小太刀が、薔薇を投げ、ダスタードの首元に突き刺す。
 薔薇の刺さったダスタードは、もがく苦しんだ後に倒れた。──何せ、この薔薇は毒針付だ。薔薇は、的確にダスタードたちに刺さっていく。
 おそらく、彼女も兄と同じく、女乱馬の事は記憶から封印されているのだろう。

「──そして、天道道場内・財団Xから、スパイのこの私です」

 その声を聞いて、見てみると、天道道場内に設置されたカメラの元に、財団Xの制服を着た──しかし、部下ではない男がいた。カンナギの命令を無視して、ここまでの映像をカメラに収め続けている男は、小乃東風である。
 財団Xもすっかり存在を忘れていた為、紛れ込んでも全然気づかなかったのだろうか。
 慌てて、財団Xのミュータミットが三人がかりで彼を襲うが、東風は、敵の方を見もせずに、足で蹴とばし、纏めて吹き飛ばしてしまう。
 先ほどまでカメラマンは部下だったはずだが、──いや、実は、彼が本来のカメラマンと入れ替わり、彼に変装していたのだ。

「どういう事だ……っ!!」
「俺は帰ってきても、どうせ道に迷って東京の外に出ているからなっ! 仲間たちが、全国をバラバラに探していたらしいんだ」

 良牙が、左腕の肘でウヴァの首を締めながらそう言う。
 解放された早雲も、かつて極めた格闘により、何なくマスカレイドたちを撃退しているようだ。それどころか、かすみもフライパンで何度も敵の頭を叩き、なびきは上手く逃げながら池に突き落としたり灯篭に敵を叩きつけたりするトラップで応戦している。
 流石は天道家の娘という所であろう。……そんな姿を見て、良牙も少し安心する。

「──そして、お前たちが人質を取った事で、全員それを優先してここに集まってきてしまった! おらたちに限らず、全員がだっ! こいつらを集めてくれたのは貴様の悪趣味な放送じゃっ!」

 ムースは、そう言うと、後方のカザリとメズールに肘鉄を叩きこんだ。
 天道道場の外でも、同じように、コロンや二ノ宮ひな子、早乙女のどかや小夏などが戦い続けており、結果的に財団Xは怪物を使っても、一般人を一人も殺せていなかった。
 そもそも、先ほどの会話の内容が東風のせいで既に全国に放送済である以上、最早、隠蔽の為に目撃者を殺す必要はどこにもない。

 良牙とムースは二人並んで背中を合わせ、カンナギにその指を突きつける。
 この二人は、これまでに見せた事もないような精悍な瞳でカンナギたちを見つめる。

「俺たちの目的は、おじさんたちを助けて、お前たちを潰す事!」
「そして、あわよくばシャンプーを生き返らせる秘術を奪う事だったが、貴様らはそれを渡す気はないと見たっ! ──ならば貴様らを殺すのみ!」

 そんな所に、残ったガメルというヤミーが立ちふさがり、良牙の腹部を殴った。
 しかし、固い体を持つガメルの一撃も、同じく打たれ強い良牙を相手には無意味だ。
 それどころか、次の瞬間、良牙の爆砕点穴によってその体が吹っ飛ぶ。
 ──命もなく、「人体」ではないガメル・クローンは、「物」であった。
 それならば、例外なく、それを壊す事が出来るツボがある。──それを突いて粉々に破壊するのが、爆砕点穴。

 ガメルの姿だったそのつぶてが、カンナギに降りかかる。カンナギたちが周囲を見回しても、恐ろしい事に、そんな光景ばかりが繰り広げられ、たかが人間に怪物たちが圧迫されている姿がある。

「ば、バカな……我が財団の支援した科学の結晶たちを……こんなに簡単に、生身で倒しているだとっ!? この世界の人間には、管理の力も全く効いていないのか! このバカたちは、私に歯向かえばどうなるのかわかっていないのか……!?」

 この世界の住人の、NEVERやクオークス、ミュータミットのような超進化した異常な身体能力──誰もひるむ事なく怪人たちに挑み、何なく全て倒しているのだから、そこらの拳法の達人とは次元が違う。
 レム・カンナギも殺し合いゲームの発足に関わっていた為、「早乙女乱馬」、「響良牙」、「早乙女玄馬」、「シャンプー」、「ムース」、「パンスト太郎」など、変身エネルギーを有する存在と、その近しい関係者である「天道あかね」くらいは頭に入れていたが、この世界の人間を全て知っているわけではない。
 乱馬たちが数少ない特異な能力者なのかと思えば──なんだ、この惨状は。

「さっきはデータだとか何だとか言っていたが、調査不足だ、バーカ。お前の下っ端ごときにやられて、お前ら如きに従うような奴は、俺たちの仲間にはいないっ!」
「──そう。この世界の人間を敵に回したのが貴様の敗因じゃ!」

 変身者及び参加候補者にばかり目をやっていたが、この世界の人間は──軒並み、格闘において人外レベルに発達した人間なのである。
 あらゆる流派、あらゆる格闘術が、だんだんと、マスカレイド、屑ヤミー、ダスタードたちの数を減らしていた。──残っているのは、カンナギとその側近の数名、それから、息の根が止まる直前の雑魚たちのみだ。

「くっ……! 今だけは不覚を認めよう。だが! 我々三人だけは甘く見ないでもらおうか!」

 ミュータミットの能力を持つ眼鏡の女性・ソラリスが素早く前に出て、ムースに向けてキック主体の格闘技で襲い掛かる。
 ムースが、そのうち二発を両腕でいなすが、確かに、彼女からは人間離れした強さを感じた。──この女、できる。
 そして、そんな彼女が足を高く上げて狙ったのは、ムースの顔面──。
 ムースは直前に回避しようとしたが、ミュータミットらしい攻撃の圧力により、眼鏡は真ん中からぱっくりと二つに裂け、割れる。

「そうだ、ムースくんはどうせ眼鏡がなければ何も見えない……やれっ!」

 その瞬間、ムースを狙い、再度ソラリスが謎のスイッチを持って前に出る。
 ムースを一度蹴りで引き離してから、このスイッチを使って怪物に変身する予定だった。

「──ふんっ」

 ──が。
 その次の瞬間、ソラリスの顔面には、ムースの飛び蹴り──秘技ダチョウ脚が、「みしっ」と音を立てて正確に叩きこまれていた。
 ソラリスは、そのムースの一撃に耐えきれず、気を失ってしまう。そのまま、スイッチを握っていた右手からも力がなくなり、彼女の十八番のゾディアーツスイッチは地面を転がって、池の中に沈んだ。
 あまりにも一瞬で倒された部下のミュータミットの姿に、カンナギが唖然としている。

「な、何故っ!? 眼鏡がないくせに何故、私たちを識別し、攻撃している。……まさか!?」

 目の前のムースは、眼鏡をかけていない。超ど近眼の彼は、下手をすると味方を巻き込んで攻撃しかねない状況のはずだ。
 それにも関わらず、彼は、正確に目の前の敵を攻撃した。
 だとすれば、答えは一つしかない。

「そのまさかだ……」

 ムースは、事実をカンナギに美しい素顔で告げる。

「──今のおらは、コンタクトレンズをはめているのさ!」
「な、やられたぁっ……!?」

 カンナギもソラリスも眼鏡派なので気づかなかったが──ムースは眼鏡の下にコンタクトレンズを嵌め、もし眼鏡がなくても戦えるようにしていたのである。
 眼鏡派であったムースがコンタクトレンズを嵌めるなどという覚悟が起こる事など、カンナギも予測していなかっただろう。
 ソラリスもそこで油断し、今、敗北したという事である。

(はっ……!)

 こうしている間にも、次々と財団Xの怪人たちは敗北を喫していた。
 ──ふと、カンナギもこの世界にいるうちに、自分がだんだんとばかばかしい思考に取りつかれはじめていた事に気づき、気を取り直して、また普段の思考に戻ろうとする。

(いかん……。奴らめ……我々と同じく、全ての部下を全て鎮圧して、残る我々だけを全員で追い詰めようとしているな……!)

 その時、遂に天道道場の外壁が破壊され、戦闘員の束が、全員顔にお好み焼きを叩きつけられて伸びたまま、カンナギの足元に降って来た。
 叩きつけられた後方の壁から現れたのは、この世界の数多の女性たちの中でも一番可愛い少女・久遠寺右京──乱馬のもう一人の許婚──であった。彼女のお好み焼き格闘は、財団Xの怪物たちも簡単に打ちのめしてしまったのである。
 彼女は、良牙に向けて叫ぶ。

「……良牙っ! あんたの彼女も向こうの丘におるでっ! ずっとウチらと一緒に行動しとったからな!」
「俺の彼女? まさか……それってあかりちゃんっ!?」

 右京も良牙も、未だ、わらわらと湧いて来る怪物たちを倒しながら会話していた。カンナギが調達した怪人軍団の数も、こうしてどんどん減っている。
 彼らにしてみれば、むしろ格闘しながらの方が会話は捗るくらいである。物が壊れ、怪人が倒れ、轟音が鳴り響いて、会話はすべからく、かなりの大声の物になっている。

「せやっ! だから、こんな所で油売ってないで、そっちに会いに行ったれっ!」
「わかった! 恩に着るぜっ!」

 良牙がそう言って、天道道場の塀を突き破って、外に走りだすが、彼は方向音痴であった──向かったのは、右京が差した方向と逆だ。
 思い込みが強い状況ほど、彼は自分が方向音痴である事を忘れてしまう。

「あっ、待て! そっちは逆や!」

 右京が、ダスタードの頭をヘラで叩きつけ、打ちのめした後、慌てて良牙を追いかける。──だが、良牙のスピードは速く、右京でもそう簡単に追いつける相手ではない。
 一度走りだした良牙に追いつくのは、当然、カンナギたちでは無理であった。幸いにも、良牙は逆方向に突き進んでいったらしく、それならば、待ち伏せすれば良い。
 しかし、そんな思考のカンナギの前には、まだムースが残っていた。

「──良牙が行ったか。ならば、貴様らをぶちのめすのはわしじゃっ!」

 一方、カンナギの部下はまだ残っている。
 特に強力な力を持っている黒人男性カタルが取ってあったのは、こういう時の為だ。──彼は、ミュータミットでありながら、人間体の時はそこまで強力な戦闘能力を持っていない。
 だが、変身さえすれば、ここにいる中でカンナギに次ぐ能力を持つ怪物になる事ができるというカンナギにとって都合の良い切り札であった。

「カタル。……任せた」
「──抹殺」

 ムースとカンナギの間にカタルが立ちふさがったカタルは、呟くようにそう言う。
 すると、彼は、その直後、濃い藍色の怪鳥──サドンダスへと変身した。
 更に次の瞬間、サドンダスが口から吐き出した青い熱線が、走っていたムースを襲う。

「おっと……!」

 地面にぶつかったそれを、辛うじて回避したものの、ムースはその爆風に耐えきれず、空中でバランスを崩して倒れる。
 顔から落ちたが、顎を手の甲で撫ぜると、彼はすぐにサドンダスを睨み返した。

「くっ……本物のバケモンか」

 いずれにせよ、サドンダスはムースの足止めには充分だったらしい。サドンダスが攻撃をし、ムースの視界が煙に包まれた隙に、カンナギは去って行ってしまう。
 カンナギは良牙と右京に任せるとして、この怪物はムースが倒さなければならないらしいと気づく。はっきり言って、面倒な上に厄介であった。こんな鳥の怪物などに現を抜かしている場合ではない。

「どけっ、トリ公。貴様など、アヒル以下だと教えてやるっ!」

 ──だが、彼はその一方で歓喜もしていた。
 直接的ではないながら、シャンプーの命を奪った主催者どものけしかける怪物をぶちのめせるという事に。

「──でやぁっ! 死ぬがいい、トリ公!」

 ムースの袖から出現する鉤爪付の縄たち。それらは、一瞬でサドンダスの身体中を巻き、彼を雁字搦めにする。良牙よりもきつく、複雑に、そして大量に絡まり、怪物たりとも一瞬ではほどけない状況が作り上げられた──。
 そして、そんなサドンダスに向かって、駆け出したムースは、体中から剣、爆弾などをばら撒いていく。
 天道道場は、こうして財団Xが現れる前よりもボロボロになっていくが、実際、こんなのはいつもの話であった。






 良牙がようやく追いついた右京に導かれ、正しい方向に向かって走りだしていると、そこには、白い服の男性──カンナギの姿があった。

「──逃がしはしないよ。ひとまずは、君たちの首をベリアルに捧げておきたいからね」

 彼が道を阻んでおり、右京の言う丘には辿り着かないようにしている。
 とはいえ、カンナギが待ち伏せこそすれ、雲竜あかりを直接殺害しに向かおうとしなかったのは不幸中の幸いといえようか。
 右京も、戦闘能力を有さないあかりの事は、なるべく隠そうとしているし、何よりあかりのもとには、ブタ相撲の横綱・カツ錦が護衛している為、生半可な相手ならばいずれにせよ敵わない。
 カンナギとしても、今は別段、あかりという人間には興味がなかった。人質にすれば使えるかもしれないが、立地に詳しくない為、丘と言われてもはっきりとした場所はわからなかった。

「てめえごときにやられるかっ!」

 良牙は先走って、カンナギの元に駆け出そうとするが、カンナギは、そんな良牙に向けて口から衝撃波を吐き出し、良牙の身体を吹き飛ばす。
 良牙、右京ともにその人間の身体ではありえない攻撃に口をあんぐりと開けていた。

「「!?」」
「──なんや、あいつっ!?」
「まさか、仮面ライダーみてえな改造でも受けてるのかっ!?」

 良牙が、村雨良や大道克己の事を思い出したのは言うまでもない。
 ……とはいえ、カンナギからすれば充分、良牙やムースや右京も怪物級の実力だが。
 まあ、闘気ではない力を口から吐き出した超能力に、物珍しさも感じたのだろう。

「いや、超進化兵士ミュータミットだ……。しかし、私の力はこんな物だと思われては困る。異世界や未来と繋がった機会に、良い道具を拝借させてもらったのでね」

 繋がった世界線よりも未来からやって来た仮面ライダーや戦士が、管理と戦う為に加勢している事もある現状である。お陰で、財団Xもあらゆる力を調査する事が出来た。
 ベリアルとの取引によって加頭が得た“未来のコアメダル”や、“コズミックエナジー”をカンナギは無断で拝借し、ベリアルや自分の属する組織の存じぬ所で、こうした勝手な実験をしていたのである。
 天道道場の奥に、勝手に施設の研究班を移動させ、あらゆる研究をそこでやらせていたほどの力の入れようである。本来の天道道場の管理責任者のキイマは始末済だ。

「……響良牙くん、見たまえ!」

 ──カンナギは、決して、財団Xの一端に甘んじる気はない。
 このベリアル帝国が完成した際に、全てを乗っ取る野望を胸に秘めている男だった。

「これが、いずれベリアルさえも支配し、全てを乗っ取る……銀河王の姿だっ!!」

 カンナギは、その腰に「ギンガオードライバー」を巻いていた。
 ギンガオードライバーに未来のコアメダルとSOLUスイッチを装填すると、彼の身体は、光を放ち、それを収束させて、これまで良牙が見てきたような異形の戦士へと変身する。

「なっ……!」

 鋼を身に纏ったかのような銀色の肌に、胸部や肩部だけを覆うように重なっている金色の外殻。細長く、まるで鳥籠のような仮面。夜空の色のマントには、そこを流れる星のような銀が走っていた。
 彼が名乗る名によると、それは銀河王──。
 右京も、直にその変身の瞬間を見るのは初めてだった。恐る恐る、良牙に訊く。

「良牙。あれが、仮面ライダーか!?」
「いや、違う、この世界に仮面ライダーがいるとしたら、──!」

 右京の問いを否定する良牙──。
 そんな彼もまた、いつの間にか、腰部にロストドライバーを装着していた。──これを装着するのは、だいたい三日ぶりの話になる。
 これまでは骨のある相手に出会えなかったが、目の前の敵が放つ邪悪な闘気に、今から対応しておくべきだと、反射的にドライバーを巻いていたのだ。

「──そいつは、俺だけだっ! あんな奴に名乗らせる名前じゃねえ!」

──Eternal!!──

「変身!!」

 良牙の身体に、久々に変身の感覚が湧きだす。
 大道克己との戦いの果てに、何故か運命的に良牙の元に渡ったそのロストドライバーとエターナルメモリ。それは、亡き克己に代わり、どういうわけか響良牙の物となって彼の運命を変えていた。
 乱馬や良牙でさえ敵わない相手に向けて、その能力値の補填を行うドーピングという所だが、こうでもしなければ、ドーピング済の相手には敵わない。
 白い死神の仮面ライダー──仮面ライダーエターナルは、青い炎を両手に纏い、背中に真っ黒なローブをはためかせた。黄色の複眼が輝き、それが再び消える。変身のエネルギーの影響か、後方で巨大な竜巻が発生する。右京がエターナルを見て目を輝かせる。
 未だ、彼を認めているブルーフレアの姿であった。

「地獄に迷った一本の牙、仮面ライダー……エターナル! こうなったからには、貴様を一瞬で地獄に送ってやるぜっ!」

 中指を突きたてて、以前、花咲つぼみに触発された名乗りを叫んだ。
 後方の竜巻の姿もあり、非常にそれは映えた物になっている。──いや待て。今まで、エターナルに変身して竜巻が出てきた事なんてあったか? まあいっか。

「おおっ。良牙、ちゃんとかっこええやんっ! ──」

 右京はエターナルに変身する良牙に対して、素直な感想を口にする。江戸っ子気質の右京はこうした見栄も気に入りやすかったのだろう。
 よりにもよって、目の前の相手は響良牙なのだが、それにしても、顔が見えなければ、彼も随分と輝いて見える物である。
 考えてみると、変身という物の利点だろうか──。右京はこの戦いまで、乱馬以外の変身体質を一切知らなかったが、「性別が入れ替わる」よりもずっと凄まじい光景であった。

「──まあ、上から怪物が降って来なければやけど……」

 次の瞬間、縄で縛られたサドンダスが、「ごちん」と音を立ててエターナルの頭の上に降りかかり、エターナルが潰され、全てが台無しになる。
 おそらく、エターナルの変身の瞬間に発生した竜巻に巻き込まれ、そこからこのサドンダスも落ちてきたのだ。
 もうかなりボロボロで、目が「×」になって小さく涙が出ている状態のサドンダスが、エターナルの上で圧し掛かっている。

「……人が折角決めているのに、何をするんでいっ!」

 エターナルがサドンダスを片手で引きははがし、超銀河王に向けて放り投げる。超銀河王の一歩手前の地面にサドンダスが叩きつけられ、衝撃音が鳴った。サドンダスも、予想外の出来事の連続で、すっかり伸びたようである。
 超銀河王が一瞬ひるみ、サドンダスが誰も存じぬところで何者かによって倒された事に驚いていた。
 果たして、一体何者が──と、超銀河王は恐る恐る、エターナルたちの方を見る。

「はぁ……はぁ……良牙。そのバケモンはおらが倒したぞ……」
「ムース!」

 そう言って、彼らの前に現れたのは、かなり疲労の激しい様子のムースであった。
 サドンダスとの直接対決をしていたようだが、一体、どのようにして倒したのだろうか。
 ふと、そんな時、エターナルの方が、ある事に気づいたようだ。──いかにムースであろうとも、敵をこのようにあっさりと倒せるはずがない。

「お前、まさか……飛竜昇天破を……!?」
「ああ……おらも、あのばあさんに一週間修行をしてもらったからな……」

 先ほどの竜巻は、エターナルの変身による物ではなく、ムースが放った飛竜昇天破によって発生する物だったのである。
 元々、乱馬が修得した飛竜昇天破も、コロンの教えによる技だ。──それは、敵が強ければ強いほど意味を成す為、ムースとサドンダスの間の実力差など簡単にひっくりかえる事になる。
 そのうえ、闘気の際に発生する熱を利用した技であった以上、熱線を吐き出すサドンダスを相手には非常に使いやすい技であった。
 つまるところ、変身前でも倒せるような連中の仲間に負けるエターナルではないという事である。

「……というわけだっ、銀河王!」
「銀河王? ……いや、私は超銀河王だよ!」
「さっき銀河王だって言ってたじゃねえか!」
「だが超銀河王なのだよ」

 こうもあっさり側近のサドンダスが倒されたというのに、まだ、超銀河王は自信に満ちた尊大な態度を崩さないままだった。彼まで始末されたという事態には多少驚いたようであったが、まだ自分だけは勝利を確信しているようである。

「まあいい……。ただ、わかっている事は、一つある! 君たちは、絶対、私には勝てない……!」

 超銀河王が、そんな言葉と共に掌にえ全身のコズミックエナジーを収束させる。
 その瞬間、本能的に危険を察知したエターナルは、背中のエターナルローブを広げ、ムースと右京を両手で抱きしめ、敵に背中を向け丸まった。
 彼が掌に集めたコズミックエナジーが彼らに向けて放たれたのはそれと同時だった。

「ぐっ……!」

 どんっ!

 背中で爆ぜる敵の攻撃。──ローブの中で、右京とムースが唖然とした表情でエターナルの方を見ている。
 超銀河王がエターナルに向けて放ったコズミックエナジーのエネルギーの塊は、背中で吸収されるが、まともに受けていれば消し飛んでいたかもしれないレベルの闘気であった。
 この攻撃から辛うじて二人を守ったエターナルローブは、熱や冷気、電気や打撃を全て無効化する鉄壁だ。
 二人とも、突如としてエターナルに守られた事には驚いていたようだが、仮にもし攻撃を受けていたら……と想像し、息を飲んだ。
 エターナルは、敵の攻撃が来ていないのを察知し、再び敵に向き直す。ムースと右京は、エターナルに全てを任せ、後ろに退がった。

「ほう、このくらいの攻撃ならば効かないかね!」
「ふざけるなっ! 俺は……俺たちは、貴様ら如きには絶対負けんっ! この程度の攻撃で俺たちを倒せると思うなっ!?」
「つまり、矛盾が生じたわけだが、何の事はない。私の絶対の方が、正しい絶対なのだから……! そう、この力さえあればね!」



 ──その瞬間、超銀河王は、切り札であった『時間停止能力』を作動する。

(これこそが、全ての世界を手にする『王』の力だよ……!)

 ──そう、これが、超銀河王だけが持つ世界。
 この時間停止能力を使えるのは、この未来のコアメダルを利用し、この世界の時間を超越する能力を持っている彼だけだ。
 後は、実験で更なる強化を極秘裏に重ね、この時間停止能力も更なる改良を重ねれば、あの巨大な怪物・ベリアルにも対応できるようになるに違いない。
 これは全て、その為の実験だ。

 ましてや、このエターナル、ムース、右京などはこの力を前にすれば踏み台に過ぎないのである。
 ここまで遅れを取ったが、ここで遂に勝利は目前だ。──時間を超えるというこの切り札さえあれば、対応できる敵はいない。たとえ、コズミックエナジーや物理攻撃で彼らに敵わないとしても、
 超銀河王は、止まった時間の中でエターナルを倒すべく前に駆け出す。

(──そう、悪いが、この私の時間の中で君たちを倒させてもらうよ!)

 ……だが、直後、──超銀河王の腹に一撃、鋭く、重いパンチが、叩きこまれる。
 エターナルに向かっていたはずの超銀河王の動きが突如として止まり、彼の全身に痛みが駆け巡っていた。

「あれ……?」

 自分の動きが止まっている事に気づいて、真下を見てみれば、超銀河王の腹部に突きだされている拳──それは、まぎれもない仮面ライダーエターナルの物だ。
 超銀河王の身体は、その衝撃で、膝をついて崩れ落ちる。

 何ゆえ──エターナルは動いているのだ?

「バカな……貴様、な……何故、この時間停止が効かない……っ!」
「だから、言っただろバカがっ! ──俺たちは、貴様ら如きに絶対に負けねえとな……!!」

 エターナルが、一度後方に退き、メモリをエターナルエッジに装填する。
 呆気にとられているが、今の重々しいパンチによって動けない超銀河王に向けて、冷徹な機械音が鳴り響いた。

──Eternal!! Maximum Drive!!──

 超銀河王の時間は、『止めていた』と思ったら、『止まっていた』。
 良牙の体力に加え、エターナルのパンチ力──そして、何より、自分自身が敵に猛スピードで向かっていた事による衝撃。──超銀河王の身体は、エターナルが自分に向けてマキシマムドライブを放つ瞬間を、膝をついて見ているしかなかった。

「うわああああああああああああああああああああああッッッ!!!!!!!!」

 螺旋を描くエターナルの回転蹴りと、青い炎──。
 それは、その直後に超銀河王の頭部に向けて叩きこまれる。

「世界をこの手にするこの私が……この王があああああああああああああああッッッッ!!!!!」

 ──それが、レム・カンナギの儚い野望の、あっけない終わりであった。

「残念、無念ッッッ!」

 そんな、文字通り無念の叫びと共に、超銀河王の身体がサドンダスを巻き込み、大爆発を起こした。──勿論、二人の身体は粉々である。
 元は人間であったようだが、エターナルには既に財団Xの人間への慈悲はない。人間の心を喪った彼らは、最早人間ではない──そう思ったのだろう。
 そんな彼らの死に対して、エターナルが言う。

「……ばーか。こいつが──エターナルが、お前の能力を無効にしたんだよ」

 燃え盛る炎に向けて、エターナルローブをはためかせた。
 この『エターナルローブ』は、先述の通り、熱や冷気、電気や打撃を無効にする他、敵の特殊能力も例外なく無効にしてしまう不思議な性質を持つ。かつて、大道克己は、これによりヴィレッジで敵の『未来予知』を破った経験もあった。
 つまるところ、時間系の攻撃も一切効かない。──エターナルが存在する限り、超銀河王は自信の特殊能力をまともに発動できないのである。
 ゆえに、超銀河王の持つ時間停止能力もエターナルを前には無効化された。──しかし、カンナギは最後まで、何故自分の攻撃が効かなかったのか知る事はなかったようだった。

「これが乱ちゃんたちの苦しみや……」
「シャンプーの仇……」

 レム・カンナギとカタルという二人の敵の死に、右京とムースの二人の若者は、自分の知る者たちの死を重ねる事になる。だから、そんな言葉もどこか渇いたように、怒りや喜びの欠片も含まれないまま、ただ虚しく響いた。
 良牙がエターナルの変身を解除し、その炎の残滓が揺れているのを、全く哀れむ気もなく見下ろす。
 ──彼が次に見つめたのは、初めて敵の死に触れた二人の仲間だ。

「右京、ムース……」

 仮にも敵であったカンナギとカタルであったが、勿論、殺人に対して良い気分はない。
 彼らを倒したところで、結局のところ、久遠寺右京がずっと想い続けていた早乙女乱馬も、ムースがずっと思い続けていたシャンプーも、──そして、響良牙がずっと思い続けていた天道あかねも、帰ってくる事はない。
 ただ、そんなどこか抜け殻のような瞳の右京とムースに、良牙は言葉をかけた。

「………なあ、二人とも。俺がベリアルを潰して仇を取っても、必ず、ここで待っててくれよ。俺も、正直言えば、あかねさんのいない世界に意味はないと思ってたけど──」

 二人の肩に手を乗せる良牙。
 自分がこんな立場になる事など、ありえなかった事だったし、実際、良牙は自分の肩を叩いてくれる人間が一人でも多くいてほしいと思っていた。

「……でも、帰ったら、お前らがいた。それで少し救われたんだ! だから、必ずみんな、ここにいてくれ……!」

 自分の目から涙が出てくるのを良牙は確かに感じた。
 乱馬もあかねもおらず、最初は、「その死を報告する」という事ばかりに気を取られていた。──だが、こうして、残った右京やムースと出会い、共に戦った時、死んだ者たちに限らず、自分には一緒にいて楽しい仲間が何人もいる事に彼は気づいたのだ。
 ムースや右京はどう思っているのかわからないが、少なくとも、良牙には──彼らも大事だった。

「……貴様に言われんでもわかってる。……たとえ、シャンプーのいない世界でもな、おらは、いつか……いつか、必ず乱馬に勝って見せる! 良牙、勿論、貴様にもな……!」

 ムースは、良牙が肩に乗せていた手を振り払った。
 右京は、もっと優しくその手をどけた。

「ウチもや。あの世での乱ちゃんのお嫁さんになるのは、あかねちゃんじゃなくて、ウチやって教えたるわ……!」

 乱馬と右京、良牙とあかね、ムースとシャンプーがそれぞれくっつけば、この世界のそれぞれの恋はかなりつり合いが取れたのかもしれないが、結局今日までその均衡が保たれた事はなかった。
 それぞれが全く別の人間を追いかけ、矢印は向き合う事がなかった。
 そして、そのバランスが悪いまま、結局、乱馬とあかねとシャンプーの死で、全ては中途半端になってしまったのかもしれない。──そのせいで、彼らの想いは消えない物になってしまったような気がする。

 彼らは、きっと、いつまでも、死んだ者たちに恋し続けるのではないかと思う。
 特に、ムースや右京は、幼少期から、幼馴染にずっと想いを抱えてきたのである。
 三人を結んでいた、片想いの一途な恋と、その終わり──それは、互いに自然と手を取らせた。

「じゃあ、俺たち全員、あの世で奴らに会うまで──」
「ああ、あいつらに負けない人になろう!」
「こっから先も延長戦や!」

 それぞれは、手を取り合い、ここに美しき友情が生まれた──!!


【カタル@仮面ライダー×仮面ライダー フォーゼ&オーズ MOVIE大戦MEGA MAX 死亡】
【レム・カンナギ@仮面ライダー×仮面ライダー フォーゼ&オーズ MOVIE大戦MEGA MAX 死亡】







 ……しかし、忘れてはならない!
 この中で、良牙だけは、二股をかけていた事を!






 ……一応、右京とムースは、良牙を、ちゃんと約束の丘の上まで案内した。
 丘の上には、異世界から良牙を迎えに来た船団──つまり、彼の仲間、ガイアセイバーズの生存者たちの船・アースラが既にやって来ていた。
 まるでエイリアンが良牙を故郷の星に連れて行こうとしているかのようなシチュエーションだ。言ってみれば、クライマックスの感涙の別れのシーンにあたるだろう。

 そして、その下には、ちゃんと雲竜あかりが待っていた。
 既に夕焼けの時刻で、あかりの顔はその中で憂いを帯びているように見えた。

 右京とムースは、どうも、内心で腑に落ちないというか、何かが違うような気がしたが、むすっとした表情にだけそれを表し、遠目で二人の様子を見つめる。
 二人とも、「なんであいつには、あかねの事を忘れられるような相手がいるんだよ」と、苛立ちが収まらないのは勿論の事、良牙の優柔不断ぶりを思うだけで周辺の岩石を砕きたくなるくらいの衝動に駆られてしまう。

(あかん……本当に腹が立ってきた!)

 右京が、巨大なヘラを無意識のうちに振り回し、ムースがそれを必死で避けようとしている。──そんな殺伐とした光景の五十メートル前で、良牙とあかりは、少し俯きながら、会話を交わしていた。

「良牙さま。あのあかねさんの事が好きだったんですね。……わたし、泣いちゃいました。自分が失恋してたからじゃなくて、良牙さまがあんまり辛そうで……」
「……ごめん。ずっと隠していて」

 まあ、あかりも二股については、モニター映像で知ってしまっていたのである。何も知らないままではないというのは、せめてもの良牙への報いであったが、それにしては、あかりの言葉は良牙に罰を一切与えていなかった。
 よもや、良牙も自分の積年の想いが全世界中継されているなどとは思わず、今になって恥ずかしさも込み上げているのだが、それを必死に抑え、あかりに素直に謝っていた。
 自分が最低の男だと、思い知っている真っ最中である。

「いいえ、良牙さまは決して軽い気持ちで誰かを好きになったわけじゃないですから。それに、前にも一度、同じような事があったので……」

 前にも一度、同じような事があった──という言葉を聞いた瞬間、彼らの後ろで右京が直接良牙を巨大なヘラで殴りに行こうとしていたが、それはボロボロのムースが必死で止めた事で事なきを得ていた。
 まあ、実際は、乱馬のせいで起きた誤解の一件の事なのだが、彼女たちが知る由もない。

「絶対に……たとえ、何があっても死なないでくださいね」

 どこか気まずくしていた良牙に対する、健気なあかりの言葉は、彼の胸を打った。
 やはり──たとえ、早乙女乱馬や天道あかねがいなくとも、自分には帰るべき世界があるのだと、良牙は悟る。

 あかりの言う通り、何があっても死にたくはない。死にたくないどころか、もう戦いに行って死ぬリスクを負う事が嫌な気持ちもある。
 はっきり言って、良牙でもベリアルの事は少し怖い。──ましてや、帰るべき場所や、そこで待っている人がこれだけ楽しいならば、何で意地をかけて戦わなければならないのだろう。

 永遠に、ずっと……ここにいたいと思っている。
 だが、その気持ちを抑えて、この安息の地を一度離れてでも、良牙は決着をつけに行かなければならない。
 それは──これまで言ってきた通り、乱馬に負けない為でもあるが、おそらく乱馬と出会わなくても、良牙はそうしたのではないかと思う。

「──あかりちゃん……大丈夫だよ。俺は、必ずここに帰る。……ここにいたいから」

 帰れるかはわからないが、帰りたいという想いさえあれば、いつか帰れるんじゃないかと良牙は信じた。
 今まで、生き残る為に帰ろうとしていた気持ちの方が強く、生き残れば、それに付随して「帰還」が起こるだけだと思っていた。だが、今は、ここに帰る為に生き残ろうとしている。
 ……そういう気分だった。
 だから、もっと、いくつでも、この場所に帰りたくなるような事を考えた。

「……そうだ、あかりちゃん。帰ってきたら、ここでデートしよう」

 咄嗟に、そんな言葉が口から出てしまい、あかりはきょとんとした。
 良牙は、それから数秒後に、自分らしからぬ言葉を発していた事にふと気づき、それから一瞬で顔を赤らめた。
 あまりにも、これからの事を考えすぎて、女の子をデートに誘う恥ずかしさなど全く考えもせず、突発的に口から出てしまったのだ。

 ましてや、あかりは、あかねとの事を知ってしまったばかりである。本命のあかねが死んだからといってあかりとデートする……というのは、当然、勝手な行為だ。
 生き残りたいが為に、彼女のデートを方便にするというのも、かなり身勝手で、彼女の心を弄んでいるという事に、今更ながら良牙は気づいた。

 ……それに、あかりが良牙をあそこまで好きでいてくれたのは、ブタになる体質のお陰でもある。
 今は、それは失われ、良牙は体が頑丈なだけの普通の人間なのだ。
 あかりがまだ、良牙を好きでいるという保証はない。

「……いや、勝手かな。ごめん、忘れてくれ」

 良牙は、あかりの方を見る事ができなくなった。
 自分の想いがどうしても不誠実で、それをこんなに純粋で健気なあかりにぶつけるのが、彼には辛くなったのだろう。それに、またフラれると思った気持ちがあった。
 だが、そんな良牙に突きつけられたあかりの言葉は、いつまでも優しく在りつづけた。

「──待ってます」

 待っている──そんな、良牙が聞きたかった言葉。
 良牙が驚いて、あかりの方を見ると、彼女はにこやかに笑っていた。

「ずっと、ここで待ってます。私が好きなのは、永遠に良牙さまだけですから」
「でも、俺はもう、ブタ体質じゃないんだぜっ……!?」
「構いません」

 ブタ体質に限らず、あかりは良牙の事が好きなのである。
 そもそも、ブタ体質も、元々、普通の人間を相手に交際しようとすれば、絶対にありえない物で、偶々、好きになった良牙が持っていた物だ。
 ブタ体質の有無は良牙を嫌いになる理由にはならない。

 それに──。

「良牙さまが帰ってくるその時まで、この子は私の相撲部屋で鍛えてもらいます」
「ぶきっ」

 あかりの傍から顔を覗かせた、掌より多少大きいほどの黒い子ブタ──彼が、豚の良牙の代わりになる。
 彼は、良牙と同じバンダナを首に巻いていた。尻尾には、花の形をしていた黄色いヘアゴムを尻尾に巻いており、それはどこかで見た事があった。
 あの支給品の鯖が変化した子ブタである。

「あっ、お前……! いなくなったと思ったら、あかりちゃんに拾われてたのか!」

 まさか、同じ世界に転送されていたとは、良牙も思わなかった。──というか、正直言って、すっかり忘れていたほどである。
 しかし、こうして、生きていて、渡したかったあかりの元に辿り着くとは想定外の事態であった。──ブタ好きのところに運命はやってくるようである。

「ええ。……ところで、あの。良牙さまが、この子豚を渡したがっていたブタ好きの子って、私ですか?」

 良牙はそう言われて少し考えた後、第四回放送後のあたりで、つぼみたちに、警察署でそんな話をした事を思い出した。
 あの変身ロワイアルの真っ最中、良牙自身も言われるまで覚えていなかった話である。

──……つぼみ、やっぱりその豚、おれにくれっ!
──え?
──ぶきっ?
──元の世界に帰ったら、その豚を渡したい相手がいるんだ! 何というか、その……豚が凄く好きな子で

 良牙ですら覚えていなかったというのに、あかりはちゃんと覚えている。
 そもそもあれだけ多数の参加者が放送された中で、ちゃんと良牙の動向を追っていたのだ。しかも、あれは二日目の未明ごろであったはずである。──その時も寝ずに見ていたというのなら、良牙の事を余程心配していたのだろう。
 確かに自分はこの少女に思いやられているのだと、良牙は実感する。

「……ああ。そうだよ」
「良かった。……あの時も、私の事、ちゃんと考えてくれていたんですね」

 良牙は、連れて来られた当初も、名簿にあかりの名前がないかは早い段階で確認し、安堵していた事もある。あかりはそれも見ていた。
 そのお陰もあってか、あかりは良牙自身の不安に反して、変身ロワイアルを見ながら、むしろ良牙への想いを強めていったようである。

「……じゃあ、私は、毎週日曜日は、必ず、この子と一緒に、この間の双六高原で待っています。そこで、良牙さまが帰ってくるのを待ってます」
「わかったよ。……でも、おれは方向音痴だから、また少し遅れるかもしれない。もし遅れたら、ごめん」

 少しの不安だけが残っている言い方だった。
 必ず帰るとは、言えない。──だが、そのつもりでいるし、良牙にとっても、そうでなければならない。
 良牙とあかりのその時の会話が終わると、良牙の合図で、アースラは良牙を連れて行く事になった。

 あかりや、鯖豚や、ムースや、右京は、その姿を見守る。
 この街のどこかで、玄馬や、早雲や、コロンや、なびきや、かすみや、九能や、小太刀もまた──アースラが空中で消えていくのを見届けた事だろう。
 隣町では、愛犬のシロクロが、空を見上げていた。
 彼らは、誰も一緒には行けない。



 たとえ、方向音痴でも、ここで、この世界で──この場所に、いつか辿り着いて来る良牙を待っていなければならないのだ。






 良牙は、アースラの内部で、仲間たちに会い、今は自分の部屋に向かおうとしていた。
 ひとまず、集まっていても仕方がないので、しばらくは一人の時間も有効にしようという提案だった。まだ、全員揃っておらず、ベリアル戦までは時間はかかるので、しばらくは自由行動も多くなる。
 一応つぼみが教えてくれた生還者たちの部屋は全て良牙の近くにあり、そこを行き気する場合には、概ね、迷う余地もなさそうだといえるだろう。
 ……で、それでも念を押して先ほど、つぼみに部屋までの案内を頼んだばかりなのだが、どういうわけか怒られて断られてしまい、良牙は一人で寂しく部屋に向かっている。

(──俺は必ず元の世界に帰るぞ……。たとえ、乱馬やあかねさんやシャンプーがいないとしても……あそこには、あかりちゃんがいる!)

 良牙は、一人で部屋に向かいながら、一人で勝手に燃えていた。

(その人がいる世界の為に……! 待ってろ、ベリアル!! ムースの“あの技”も、貴様に叩きこんでやる!!)



 ……そして、どうやらつぼみに教わった自分の部屋らしき場所に辿り着いた彼は、その部屋の様子を見て、不思議そうに頭を傾げた。

「ここが俺の部屋か! 随分、人がいっぱいいるな……!」

 ──良牙の目の前で、ブリッジの艦長やオペレーターが呆れ果てていた。



【響良牙@らんま1/2 GAME Re;START】


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最終更新:2015年09月07日 19:58