終末
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homuhomu_tabetai
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作者:VNE+bPdSO
852 名前:「終末」[sage] 投稿日:2011/09/17(土) 19:00:08.70 ID:VNE+bPdSO
――――一人と、三匹だけの世界。
「ホムッ♪」
「マドッ♪」
「ふふ、可愛いわね…」
この世界の最後の一人は、暁美ほむら。
その姿によく似た、小さな生物が一匹。
暁美ほむらが守りたかった、親友の姿によく似た、生物が一匹。
そして、かつての敵が一匹。
「…君はまだこの星にいるつもりかい?」
「ええ…この世界には消えた人類の恨みや妬みが、まだ濃く残っているわ」
「僕の星に来れば人類はまた復活するよ?もう魔獣に襲われる人間も、いないじゃないか」
暁美ほむらは首を振る。
「それでも、ここにはまだまどかがいる。かつて彼女が守りたかった世界が、ここにある」
「…そうかい。好きにするといい…僕のノルマは達成された。君の最後を見届けたら、僕は母星に帰るよ」
インキュベーターは少し残念そうにそう言った。
「そう言うことを言うってことは、もうすぐ私の終わりは近いのね」
「ああ。…その生物は君無しで生きていけるのかい」
「まどかとこの子達が自力で何とかしてくれる筈、よ」
「確証は?」
インキュベーターは問う。
「50年位、前かしらね。魔獣と戦っている時に、まどかが応援してくれたの」
「そして、無事家に帰ったら、この子達がいたのよ。まどかがくれたんだからなんとかなるわ」
「ふむ。まぁ、この生物が飢え死にしようと、僕には関係ないしね。おやすみ、ほむら」
「おやすみ、キュウべぇ」
暁美ほむらは小さな生物を撫でながら、そう言った。
朝
「じゃあ、狩りに行ってくるわね」
インキュベーターを肩に乗せ、彼女は言った。
「ホムッ!」 「マドッ!」
僅かにほむらは微笑むと、翼を広げ飛び立った。
しかし、彼女は帰ってこなかった。
「ホミュウ…」 「マデョ…」
一日経っても。
「ホミャアァ…」 「マデョウ…」
二日経っても。
もう小さな生物は空腹で限界が来ていた。
仕方なく外に主人が植えた林檎の木から林檎を取りに二匹は行った。
「ホミャアァ?」
小さな生物は首を傾げた。そこに誰かが横たわっていたからだ。
…横たわるのは、暁美、ほむら。
「マデョウ!?」
小さな生物は主人の死を理解した。
「ホミャアァ!?ホビャアアアアアアアアアアア」
「マドォオオオオオオオ」
二匹の泣き声が響き渡る。
二匹は、かつての主人の亡骸に近寄る。
とても満足した顔で、主人は眠っていた。
声も出ず、小さな生物は亡骸を抱きしめる。
瞬間、亡骸を囲むように光が指す。
「マ…ドッ?」
「ごめんなさい…すぐに迎えにいけることになっちゃったわ」
懐かしい、主人の声。
「もう、ほむらちゃんったら人に任せるつもりしちゃって…」
その声に並び、聞き慣れない声。
「じゃあ、一緒に行きましょうか」
差し出された手に、小さな生物は泣きながら飛び付いた。
天に吸い込まれるように、全ては消えた。
「…奇跡、ね」
一匹だけ残されたインキュベーターは、呟いた。
world end.