第二部 その1
最終更新:
homuhomu_tabetai
-
view
二週間ほど前。巴マミは魔女の結界の中で一匹の幼いほむほむを拾った。
魔女の玩具として虐殺されたほむほむの群れの、ただ一匹の生き残りだった。
仔ほむはマミに保護されて飼いほむとなり、しばらくはマミ達と幸せに暮らした。
そして仔ほむは、無事に若ほむと呼ばれる大きさまで成長した。
しかし昨夜、悲劇は起こった。
……昨日の夜。とある魔女の結界の中で巴マミが死んだ……
ほむほむは暁美ほむらから、そう伝えられた。
…………………………
………………
……
── マミホーム ──
「…ホビィ…ォアァッ…」ポロポロ…
「……いつまで泣いているつもりなの? 悪いけど、あまり時間は無いの」
「…ホッ…ホビィ ?」グスッ…
「私の家に来なさい、飼ってあげるわ。準備して」
「…ホムゥッ…」……
「……嫌なの?」
「…ホムムッ…」…ゴメンナサイ…
「……まあいいわ。餌は多目に置いておくけど、毎日これるわけじゃないから……」
「ホムゥ…」アリガトウ…
「帰るわ。私も暇じゃないのよ。またね、ほむほむ……」
「ホムムゥ…」グスッ…
「…………」(……ごめんなさい、ほむほむ。次はもっと上手くやるわ……)
……ガチャッ……バタバタッ……
「ホムッ !?」ピクッ…
「……だれ?」
「……転校生?」
「……美樹さやか」
「アンタ、なんでマミさんの家にいんのよ」
「…………」
「ホムゥ ?」?
「答えなさいよ。アンタなんでマミさんの家にいんのよ」
「ほむほむに会いに来ただけよ」
「ホムッ…」ピクッ
「……は?」
「耳が悪いの? ほむほむに会いに来ただけ……」
「アンタ、マミさんのほむほむまで盗む気なの?」
「盗む? 人聞きが悪いわね」
「だってそうでしょ。アンタ、ただの腹黒い泥棒じゃん」
「…………」
「何? 言い返せないの。認めるの? マミさんのグリーフシード返すの?」
「……馬鹿の相手はしたくないだけ」
「馬鹿? 誰が馬鹿よ。ケンカ売ってんの!」
「五月蝿いわね。ほむほむが怯えてるわよ」
「……ホ…ムゥッ…」プルプル…
「あっ……」
「ホム…ゥ…」ピクッ…
「……ごめん……」
…………………………
………………
「ふうっ。心配しなくても、その子にはさっき振られたわ……」
「え?」
「その子はまだ、ここを離れたくないそうよ」
「離れたくない?」
「……ホムゥ」コクリ…
「ええ。ここで、巴マミの帰りを待つそうよ」
「……マミさんを待つ?」
「ホムッ」…
「でも、マミさんは……」
「心の整理がつかないんでしょ。頭では分かってるみたいよ」
「ほむほむ……」
「……ムゥ」…
「好きにさせてあげなさい。賢い子だから、餌だけ置いておけば大丈夫よ」
「……転校生……」
── 隣町 ──
「やあ、佐倉杏子」
「ん? ようQB」
「少し、話があるんだ」
「……なんだ、いい話か?」
「……判断に困るね」
「……?」
「もしかしたら、君にはいい話かも知れないけど……」
「とりあえず、聞くだけ聞いてやるよ」
「ありがとう」
「言えよ」
「うん。実は昨日、マミが死んだんだ」
「……え?」
「マミが、魔女に殺されたんだ」
「…………」
「いい話かな?」
「……笑えねぇよ」
「……そう」
…………………………
………………
「そんで、その魔女はどこにいるんだよ」
「え?」
「魔女はアタシ達魔法少女の餌だ。食物連鎖は守らせねぇとな」
「杏子」
「マミの敵討ちじゃねえぞ。馬鹿に自然界のルールを教えたいだけだ」
「…………」
「どうした?」
「気持ちは嬉しいけど、その魔女はもう退治されてるよ」
「……?」
「イレギュラーな魔法少女にね」
「……イレギュラー?」
…………………………
………………
「ねえ杏子。さっき食物連鎖って言ってたね」
「あぁ」
「杏子は、ほむほむは好きかい?」
「おう、好きだぞ。安くて美味くて、栄養あるし」(おふくろの味っぽいしな……)
「そう。でも、ほむほむは人間の餌だよね?」
「……ん?」
「君は、魔女を食べる魔法少女じゃないか」
「……ふざけてるのか?」
「自分より下位の存在を全て食べるなら、魔法少女が人間を食べても不思議は無いよね?」
「……おい、やめろ……」
「よく分からなくなったんだよ」
「何がだよ」
「ほむほむを食べる魔女が出てきたり、ほむほむを食べない人間が出てきたり……」
「…………」(ほむほむを食べる魔女?)
「マミはいきなり、ほむほむを食べなくなったしね」
「バカかよ。死んじまったら、そりゃ何にも食えねぇよ……」
「違うよ。ちょっと前から急に、ほむほむはお友達とか言い出したのさ」
「……そっちか……」
「人間のする事は、僕にはわけがわからないんだ」
「余裕があったんだろ」
「余裕?」
「連鎖の一番上に立ったら、気まぐれをする余裕くらいは生まれるさ」
「気まぐれ?」
「貧乏で飯を食えない人間は、ほむほむを食料として大事にするだろ」
「うん」
「ほむほむをペットにしたり玩具にしたりすんのは、食うに困ってないからだよ」
「なるほどね。君らしい意見だね。参考にするよ」
「…………」(アタシは、まだ余裕がないのかもな……)
「……杏子?」
「……おい、QB。ほむほむ食うか? 奢ってやるぜ」
「どうしたの杏子。優しいね?」
「……マミが死んで、落ち込んでんだろ? 慰めてやんよ」
「ほむほむはもらうよ。別に、落ち込んではいないけどね……」