ひょんなことから女の子
I'm my sister 4
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hyon
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233 :I'm my sister ◆iIl1lB4oT2 :2007/03/02(金) 22:50:19.92 ID:qpsaIcFt0
金曜日、午後四時、雨。
「せん…ヒデー!」
「図書室では静かに。」
二人は微笑みあった。
「じゃあ始めるね。英語の文法書持ってきた?」
「この厚いのです…だよね?」
「ええっと、無理しなくてもいいよ。」
「うん…。」
「よし、じゃあ…まずどこまでやったか教えてくれるかな?」
「せん…ヒデー!」
「図書室では静かに。」
二人は微笑みあった。
「じゃあ始めるね。英語の文法書持ってきた?」
「この厚いのです…だよね?」
「ええっと、無理しなくてもいいよ。」
「うん…。」
「よし、じゃあ…まずどこまでやったか教えてくれるかな?」
チャイムが下校時刻を知らせる。
二人は生徒玄関にいた。
「雨、止んだね。」
小走りで外まで出て、手を仰向けに空を見上げる。
「よかったー、私傘持ってきてなかったんだー。」
英雄の靴を履き替える手が一瞬止まった。
「…どうかしました?」
「いや、たまにすごく女の子っぽくなるから…。」
「え? そ…そう…なん…だ…。」
英雄が傘立てから傘を取り出す。
「ほら、行くぞ。」
うつむいて硬くなっていた恵の肩をぽんと叩いた。
二人は生徒玄関にいた。
「雨、止んだね。」
小走りで外まで出て、手を仰向けに空を見上げる。
「よかったー、私傘持ってきてなかったんだー。」
英雄の靴を履き替える手が一瞬止まった。
「…どうかしました?」
「いや、たまにすごく女の子っぽくなるから…。」
「え? そ…そう…なん…だ…。」
英雄が傘立てから傘を取り出す。
「ほら、行くぞ。」
うつむいて硬くなっていた恵の肩をぽんと叩いた。
234 :I'm my sister ◆iIl1lB4oT2 :2007/03/02(金) 22:50:40.44 ID:qpsaIcFt0
「パラレルワールドって知ってる?」
「ん、何、突然?」
「平行世界って言ってね、この世界と似たような歴史を歩んでいる、
でもちょっとずつ違う世界がたくさんあるかもしれないっていう説があるんだ。」
「えっと…、」
「恵…正樹君がこっちに来たことに何か関係あるのかなと思って…。」
「そうですね…。」
そういえば今まで忙しくて原因なんて考えてなかったな。
でも…たとえ原因が分かったところで、元に戻れるのだろうか。
もしくは、そもそも元に戻ることが最良なんだろうか。
「分からないことが多すぎるんです…けど…、」
「けど?」
「考えても出てきそうにないですし、何か情報が入るまで、あんまり堅苦しいこと考えない方がいいですよ。」
「…恵?」
「へ?」
恵が恵に見えた。その考え方、その笑顔。姉弟だからだろうか、それとも…。
恵、三日前までの恵は…どうなっちゃったのかな…。
「先輩?」
「あ…ごめん。」
「じゃあもう家もすぐそこですし、ここまででいいですよ。」
「そう、じゃ、また明日。」
「うん。」
交差点で別れた彼を見送り、歩き出そうとした瞬間、
「きゃああああああああああああ!」
恵の悲鳴が、もう暗い静かな住宅街に響いた。
「ん、何、突然?」
「平行世界って言ってね、この世界と似たような歴史を歩んでいる、
でもちょっとずつ違う世界がたくさんあるかもしれないっていう説があるんだ。」
「えっと…、」
「恵…正樹君がこっちに来たことに何か関係あるのかなと思って…。」
「そうですね…。」
そういえば今まで忙しくて原因なんて考えてなかったな。
でも…たとえ原因が分かったところで、元に戻れるのだろうか。
もしくは、そもそも元に戻ることが最良なんだろうか。
「分からないことが多すぎるんです…けど…、」
「けど?」
「考えても出てきそうにないですし、何か情報が入るまで、あんまり堅苦しいこと考えない方がいいですよ。」
「…恵?」
「へ?」
恵が恵に見えた。その考え方、その笑顔。姉弟だからだろうか、それとも…。
恵、三日前までの恵は…どうなっちゃったのかな…。
「先輩?」
「あ…ごめん。」
「じゃあもう家もすぐそこですし、ここまででいいですよ。」
「そう、じゃ、また明日。」
「うん。」
交差点で別れた彼を見送り、歩き出そうとした瞬間、
「きゃああああああああああああ!」
恵の悲鳴が、もう暗い静かな住宅街に響いた。
235 :I'm my sister ◆iIl1lB4oT2 :2007/03/02(金) 22:51:07.83 ID:qpsaIcFt0
そこにはひとりの男が立っていた。全裸で。
「めぐみーっ!」
「ちぃっ!」
駆け寄ってくる英雄に気付き、男は逃げ出した。
「大丈夫?」
「ヒ、ヒデ…。」
なぜか名前の方が出てきた。
彼女は彼に固く抱きついた。腰が抜けて、立てない。
「怖かった?」
優しく語りかける英雄。
「う、うん…でも…、」
「どうしたの?」
「怖かった…以上に…男の裸見て『怖い』と思った自分が…嫌だった…。」
そう、温泉でもプールの着替えでも何回も見てるはずなのに…、なのに…。
「…僕だって全裸の男がいきなり襲ってきたら怖いよ?」
本当? 俺を安心させようとして言ってるんでしょ?
でも…男の頃の俺だったら…正樹だったら…ん…あれ? もう分かんないや…。
「立てる?」
立てそう。でも…もう少し先輩の胸で泣いていたい。
首を大げさに横に振り、深く顔をうずめた。
「めぐみーっ!」
「ちぃっ!」
駆け寄ってくる英雄に気付き、男は逃げ出した。
「大丈夫?」
「ヒ、ヒデ…。」
なぜか名前の方が出てきた。
彼女は彼に固く抱きついた。腰が抜けて、立てない。
「怖かった?」
優しく語りかける英雄。
「う、うん…でも…、」
「どうしたの?」
「怖かった…以上に…男の裸見て『怖い』と思った自分が…嫌だった…。」
そう、温泉でもプールの着替えでも何回も見てるはずなのに…、なのに…。
「…僕だって全裸の男がいきなり襲ってきたら怖いよ?」
本当? 俺を安心させようとして言ってるんでしょ?
でも…男の頃の俺だったら…正樹だったら…ん…あれ? もう分かんないや…。
「立てる?」
立てそう。でも…もう少し先輩の胸で泣いていたい。
首を大げさに横に振り、深く顔をうずめた。