ひょんなことから女の子
I'm my sister 8
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hyon
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20 名前:I'm my sister ◆iIl1lB4oT2 :2007/03/11(日) 19:37:24.06 ID:YbKtYV4w0
英雄たちの夏は、ベストエイトに終わった。
八月の、ちょうど日付が二桁になった頃、彼等が帰ってきた。
恵はこの日、駅にいた。英雄に答を告げるために。
ホームで解散したと思われる、部員達がぽつぽつと下りてきた。
目的の顔を見つけるとすぐに駆けていく。
「ヒデ!」
「ただいま。」
「おかえり。」
とりあえず笑い合った。
一息置いて、恵。
「それで…あのことだけど。」
「ああ、ごめんね、弱ってる所に漬け込んだみたいな気がして。」
「いや、そんなことは別にいいけど…。」
また一呼吸。
「私も、好きです。」
「ありがとう。」
「今度デート、しませんか?」
「うーん、じゃあ…明後日の夏祭り、行こうか。」
「はい。」
夏祭りか、浴衣とか着て行ったほうがいいんだろうなあ。
「じゃあ、帰りましょうか。」
とその時、後ろから。
「姉ちゃん、さっきから呼んでるのに無視するなよ。」
「そっちもラブラブなんだから邪魔しませんよーだ。」
「何か拗ねてるの?」
「別に。」
結局、二組は別々に家路に着いた。
八月の、ちょうど日付が二桁になった頃、彼等が帰ってきた。
恵はこの日、駅にいた。英雄に答を告げるために。
ホームで解散したと思われる、部員達がぽつぽつと下りてきた。
目的の顔を見つけるとすぐに駆けていく。
「ヒデ!」
「ただいま。」
「おかえり。」
とりあえず笑い合った。
一息置いて、恵。
「それで…あのことだけど。」
「ああ、ごめんね、弱ってる所に漬け込んだみたいな気がして。」
「いや、そんなことは別にいいけど…。」
また一呼吸。
「私も、好きです。」
「ありがとう。」
「今度デート、しませんか?」
「うーん、じゃあ…明後日の夏祭り、行こうか。」
「はい。」
夏祭りか、浴衣とか着て行ったほうがいいんだろうなあ。
「じゃあ、帰りましょうか。」
とその時、後ろから。
「姉ちゃん、さっきから呼んでるのに無視するなよ。」
「そっちもラブラブなんだから邪魔しませんよーだ。」
「何か拗ねてるの?」
「別に。」
結局、二組は別々に家路に着いた。
21 名前:I'm my sister ◆iIl1lB4oT2 :2007/03/11(日) 19:37:59.23 ID:YbKtYV4w0
あっという間に翌々日、夕方。
「はあ、やっと終わった。」
「お疲れ様。」
「じゃあ、着替えるから出てって。」
「うん。」
いつもなら二人のときは図書館で勉強しているのだが、この日は時間節約のために恵の部屋でやっていた。
着替え終わって鏡で自分の浴衣姿を確認する。自分でも可愛いと思ってしまった。
袖をちょっとつまんでくるっと回ってみたりして。
…やっぱりナルシストなんだな。
「入っていいよ。」
「うん、恵、可愛いよ。」
「お、なかなかいいじゃん。」
「ちょっと、マッキー、誰があんたに言ったのよ。」
なぜか計二人も部屋に入ってきてしまった。
「何か用なの?」
「いや、一緒に行こうかなと思って。」
「またー、奈菜ちゃん放っといていいの?」
「それもそうだ…ってなんで名前知ってんの?」
「あ…ヒデに聞いたから。」
「ふたりとも、そろそろ行くよ。」
マッキーは奈菜の家へ、ふたりは直接公園へ向かった。
「はあ、やっと終わった。」
「お疲れ様。」
「じゃあ、着替えるから出てって。」
「うん。」
いつもなら二人のときは図書館で勉強しているのだが、この日は時間節約のために恵の部屋でやっていた。
着替え終わって鏡で自分の浴衣姿を確認する。自分でも可愛いと思ってしまった。
袖をちょっとつまんでくるっと回ってみたりして。
…やっぱりナルシストなんだな。
「入っていいよ。」
「うん、恵、可愛いよ。」
「お、なかなかいいじゃん。」
「ちょっと、マッキー、誰があんたに言ったのよ。」
なぜか計二人も部屋に入ってきてしまった。
「何か用なの?」
「いや、一緒に行こうかなと思って。」
「またー、奈菜ちゃん放っといていいの?」
「それもそうだ…ってなんで名前知ってんの?」
「あ…ヒデに聞いたから。」
「ふたりとも、そろそろ行くよ。」
マッキーは奈菜の家へ、ふたりは直接公園へ向かった。
22 名前:I'm my sister ◆iIl1lB4oT2 :2007/03/11(日) 19:38:23.69 ID:YbKtYV4w0
「マッキー、ちゃんとやってるかなあ。」
「子供じゃないんだからそんなに心配しなくても。」
結局別行動となった。人ごみの中で目的の人に会うのは簡単なことではない。
「そんなに気になるなら電話でもすれば?」
「めんどくさい。邪魔したくない。されたくない。」
ふと、ある店が目に留まった。
「あ、あれ食べよ。」
「ちょっと…お金使いすぎだよ。」
だって男のときは恥ずかしくて買えなかったんだもん、わたあめとか、りんごあめとか。
「姉ちゃん!」
「あ、どうも。」
「これは奇遇だね。」
簡単なことではないのだが、確率というのはあくまで確率であって、こうして何の前触れもなく出会うこともある。
「姉ちゃん…こんなときだけど、ちょっと大事な話がある。人のいないところへ一緒に来てくれないか?」
「え、や…。」
返事も聞かずに手を取り連れ去ってしまった。
「ここで待ってて!」
残された二人は顔を見合わせた。
「あの…立花君って、シスコンなんでしょうか?」
「いや、多分違うと思うから心配しなくてもいいよ。」
でもあの様子だと、どうやら…。
「子供じゃないんだからそんなに心配しなくても。」
結局別行動となった。人ごみの中で目的の人に会うのは簡単なことではない。
「そんなに気になるなら電話でもすれば?」
「めんどくさい。邪魔したくない。されたくない。」
ふと、ある店が目に留まった。
「あ、あれ食べよ。」
「ちょっと…お金使いすぎだよ。」
だって男のときは恥ずかしくて買えなかったんだもん、わたあめとか、りんごあめとか。
「姉ちゃん!」
「あ、どうも。」
「これは奇遇だね。」
簡単なことではないのだが、確率というのはあくまで確率であって、こうして何の前触れもなく出会うこともある。
「姉ちゃん…こんなときだけど、ちょっと大事な話がある。人のいないところへ一緒に来てくれないか?」
「え、や…。」
返事も聞かずに手を取り連れ去ってしまった。
「ここで待ってて!」
残された二人は顔を見合わせた。
「あの…立花君って、シスコンなんでしょうか?」
「いや、多分違うと思うから心配しなくてもいいよ。」
でもあの様子だと、どうやら…。
23 名前:I'm my sister ◆iIl1lB4oT2 :2007/03/11(日) 19:39:04.26 ID:YbKtYV4w0
公園の隣の神社。人はまばら。そのさらに社務所の裏に、姉弟はやってきた。
いきなりマッキーが核心を突いてきた。
「姉ちゃん、俺に何か隠してるでしょ?」
「え? そんなことないよ。」
精一杯平然を装う。
「前に怒られた時『俺』とか言ってたし、最近俺のことやけに詳しいし…。」
こんなに鋭かったっけ?
何か言わなきゃ…、黙ってると怪しまれるだけだ。でも慌てて口を滑らせても…。
「ほら、言ってみ?」
そんなこと言われたって。俺はお前だ、なんて映画じゃあるまいし。
…んー、でももう、潮時かも。このまま騙し続ける自信はない。別に騙してるわけでもないけど。
「わかった。信じてくれないかもしれないけど。」
そして恵は、すべてを話した。
「…というわけで、私も元はあなただったの。」
とはいえ、情報はまだ少ない。
簡単にいうと、立花恵がいない世界の立花正樹が、ある日を境に立花恵のいる世界の立花恵になっていた。
たったそれだけである。詳しいことは原因も何も分かっていない。
で、マッキーは考え込んでいるようだった。
「ということは…。」
全部つながった。自分は普通に暮らしていたかもしれない。でももしかしたら目の前の人に酷いことを…。
「ごめん!」
「マッキー…、謝らないで。あなたは何もしてないから。」
「でも…。」
「これは私の問題だから。」
そうだ、失ったものは大きい。でも、得たものもある。
もう…、自分としての立花正樹とは、決別しなくちゃいけない。
「もう何があっても大丈夫だから。今聞いたことは、心にしまっておいて。さ、ふたりの所に戻ろ。」
その後、何事もなかったように縁日を楽しむ恵を見て、マッキーの心配も次第に霞んでいった。
いきなりマッキーが核心を突いてきた。
「姉ちゃん、俺に何か隠してるでしょ?」
「え? そんなことないよ。」
精一杯平然を装う。
「前に怒られた時『俺』とか言ってたし、最近俺のことやけに詳しいし…。」
こんなに鋭かったっけ?
何か言わなきゃ…、黙ってると怪しまれるだけだ。でも慌てて口を滑らせても…。
「ほら、言ってみ?」
そんなこと言われたって。俺はお前だ、なんて映画じゃあるまいし。
…んー、でももう、潮時かも。このまま騙し続ける自信はない。別に騙してるわけでもないけど。
「わかった。信じてくれないかもしれないけど。」
そして恵は、すべてを話した。
「…というわけで、私も元はあなただったの。」
とはいえ、情報はまだ少ない。
簡単にいうと、立花恵がいない世界の立花正樹が、ある日を境に立花恵のいる世界の立花恵になっていた。
たったそれだけである。詳しいことは原因も何も分かっていない。
で、マッキーは考え込んでいるようだった。
「ということは…。」
全部つながった。自分は普通に暮らしていたかもしれない。でももしかしたら目の前の人に酷いことを…。
「ごめん!」
「マッキー…、謝らないで。あなたは何もしてないから。」
「でも…。」
「これは私の問題だから。」
そうだ、失ったものは大きい。でも、得たものもある。
もう…、自分としての立花正樹とは、決別しなくちゃいけない。
「もう何があっても大丈夫だから。今聞いたことは、心にしまっておいて。さ、ふたりの所に戻ろ。」
その後、何事もなかったように縁日を楽しむ恵を見て、マッキーの心配も次第に霞んでいった。