既にその建物は戦火を余すところなく受け、図書館と呼ぶにはとてもではないが不可能になっていた。
呪力と魔法の争いと、それに伴って広がった炎は、図書館を図書館だった廃墟にしてしまうには充分だった。
「何をしているんだ。あの窓から出るんだ。」
その荒れ果てた図書館の2階で、影の女王は同行者の二人に吐き捨てるかのように言った。
普段のミドナなら、そのセリフの後に『丸焼きになっても知らないぞ』といった軽口を付け足していただろう。
だが、彼女はそのような軽口を紡ぐ余裕は露ほどもなかった。
自分の判断ミスが、自分の命の恩人を殺したのだから。
「ミドナさん。」
ゼルダの死骸の近くにあった道具を回収していたアイラが、そっと声をかけた。
「どうした。」
短い言葉を短く返す。
ゼルダのことでの同情ならば聞かないぞとばかりに目を吊り上げた。
「図書館の外から、何か聞こえないかしら?」
ミドナにとって最も嫌がる言葉では無かったが、どうやら別方向に厄介な言葉だったようだ。
「え?これ、どういうこと?」
いち早く窓の外を見たクリスチーヌが、驚嘆の声を上げた。
「何があったの?」
「満月博士が……!!」
その言葉に合わせるかのように、アイラとミドナも図書館の窓から下を見る。
そこには衝撃的な光景が広がっていた。
蹲っているデマオンと満月博士。そして満月博士を攻撃し続ける柊ナナが3人の目に入った。
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
時は遡り、まだ廃墟が図書館の姿を辛うじて保っていた頃。
燃え盛る図書館の入り口では、一人の人間と魔王が睨み合っていた。
しかし、形勢は完全に人間の方に傾いていた。
人間の方は両目の焦点が合ってないが、目立った外傷はない。
一方で、魔王の身体はあちこちに裂傷や凍傷、火傷や打撲が出来ていた。
「立てよ!火柱!!」
(身体が動かん……あの奇妙な剣のせいか……。)
地面から湧き出た炎の蛇が、デマオンに絡み付く。
元々デマオンは銀のダーツを受けねば死なず、それも遠く離れた星にある心臓を刺さねば意味が無いという二重の不死の術をかけていた。
だが、この殺し合いでそのどちらも制限されている今、傷も負うし攻撃の威力によっては命に関わる。
今のデマオンの生命力は、並の人間や悪魔を優に上回っているが、無限という訳ではない。
「落ちよ!水柱!!」
そこを、満月博士の水魔法が、さらに襲い掛かる。
巨大な水の塊が滝のように、デマオンに降り注ぐ。
(くそ……身体が動かぬ上に、魔法も使えぬとは……)
今の魔王の状況を例えるなら、鎖につながれたライオン。
虚脱を齎す魂の剣と、魔力を封じる魔封じの杖により、地球を恐怖に陥れようとしていた魔王は、格好の的にしかならなくなった。
魔封じの力は時間経過で切れるが、それを知ってか知らずか、常に掲げ続けてそれが切れることは無い。
「まだだ……まだ終わらさん。これで美夜子の仇を討ってくれる。美夜子の苦しみを味わってもらう。」
邪剣に魂を侵された満月は、支離滅裂な言葉を呟きながら、魂の剣で斬りかかろうとする。
両者の目だけを見れば、どちらが悪魔なのか全く分からない。
「舐めるな!!」
鎖につながれた獅子は、間合いに狩人が入ってきた瞬間を逃さず、自らの爪で引き裂こうとした。
「ぬぐぅ……!」
しかし、先手を打った満月はデマオンの手を魂の剣で斬り裂き、更なる虚脱感を与える。
魔王の片手は、満月博士に当たることが無かった。
お返しとばかりにもう一撃魂の剣で魔王を斬りさく。
出血は無い。斬られたのは、命の核となる魂だ。
異なる世界の似たような状況で使われていた魔剣は、かつてほどの力を発揮し無いが、存分に魔王の魂を刻んで行った。
「立てよ!火柱!!」
そして、デマオンの攻撃範囲内から出ると満月は再び魔封じの杖を掲げ、魔法を唱え始める。
しかし、この場のどちらもが気づいていない存在が、いつの間にか目を覚ましていた。
〇〇〇
(くそ……やられた!!警戒していたというのに……!!)
柊ナナは、満月博士とデマオンが戦っている場所から少し離れた所で、様子をうかがっていた。
図書館の外から襲って来た敵のことを考えすぎていたせいで、内部の争いに気付いていなかった。
そんな自分の間抜けさに、嫌気が刺してきたが、今はそれどころでは無い。
図書感からは、なおも煙が上がっている。
あの場所に留まると行った4人の無事は分からないし、周りにはまだ襲撃者がいるかもしれない。
(ダメだ、こんな状況で全体を一度に俯瞰するのは逆効果だ。まずは問題を脳内で箇条書きして、それぞれの優先度とどうするかを考えよう
随分と時間をロスしたが、誰も私に気付いていない今が考えを纏めるチャンスだ。)
Q1:図書館に放火した襲撃者が辺りにいるか?
Q2:デマオンか満月博士か、どちらに加担するか?あるいは中立の立場を取るか?
Q3:図書館に取り残されたであろう4人はどうするか?
ナナは即座に、脳内で目下の疑問を大雑把に3つまとめる。
彼女はここで最も優先して答えを探るべき問題として、Q1を選んだ。
何故なら後の二つの問題は極端な話、優先順位を後回しにしても死に直結することは無い。
だが、それを優先するあまり、他の味方を全て捨ててしまうのは後々厄介になることも分かっていた。
(Q1のメリットは、他のこととも並行して出来る……)
常にナナは姿勢を低く、気絶した時の体勢のまま辺りを伺った。ただし空気砲を付けた右手はいつでも動かせるようにしておいた。
そして同時並行的に、満月とデマオンの戦いも観察し初めた。
満月博士の超能力で木にぶつけられたため、まだ頭はズキズキするが、思考や活動に差し支えるわけではない。
しばらく気絶していたため、ナナが見た戦況はほんの一部だが、それだけでデマオンの旗色が悪いことは伝わった。
そして満月博士がデマオンを圧倒しているタネもすぐに気づいた。
片手に持っている杖と、もう片方の手に持っている怪しく光る剣。
(やはりあの禿げ頭の男も、『アイツら』と同じか。)
柊ナナは満月博士の、ド素人と言っても過言ではない太刀筋を見て、連想するものがあった。
自らの力を絶対的なものと過大評価するあまり、殺された能力者のクラスメイトのことだ。
満月に至っては支給された道具であり、自分の力でさえ無いから、より付け入るスキはあるはず。
(Q2は……当たり前だがデマオンに加担すべきだな……)
Q1は、これだけ隙を晒しておいて殺気一つ感じないことから、「もう襲撃者は辺りにいない」をファイナルアンサーにすることにした。
同時に、Q2もデマオンに加担するというアンサーでほとんど固まった。
武器に頼った上での感情論に動いている満月は論外だとして、この場からリスクを捨てて逃走をしてしまうのもありだと考えた。
信頼の価値が元の世界以上に高いこの場所で、これだけいる対主催との信頼感を溝に捨ててしまうのは勿体ない。
主催者を倒すにしろ、生還するにしろ、仲間(しんらいのかくれみの)は1人でもあるに越したことは無い。
デマオンもデマオンで、人間らしからぬ(そもそも人間ではないのだが)考えを抱いていることは察することは出来たのだが、「彼女の世界の能力者」ではない以上問題はない。
柊ナナの目的とは、あくまで「彼女の世界の能力者の殺害」のみである以上、この殺し合いが終われば他の世界の人間などどうなろうと知ったことではない。
(Q3は……一度保留にすべきか……)
2階の方から立て続けに物音が響くということは、少なくとも全滅はしておらず、戦いが何らかの形で起こっているということだ。
満月とデマオンのような内輪揉めの可能性も無いわけでは無いが、自分の力で炎燃え盛る図書館の2階まで行くのは無謀なことこの上ない。
デマオンを救助した後、どうするか相談した上で決めることにした。
方針が定まると、即座に如何にして満月博士を攻略すべきか思考する。
とは言っても、あの禿げ頭の男が能力者達と同じような相手だと考えれば、すぐにどうすべきか決めることにした。
「ドカン。」
「うわっ!」
ナナの掛け声と共に、銀の砲口から空気の弾が飛ぶ。
それ一発で殺すことは出来ないが、完全に予想外の方向からの攻撃を受けた満月は吹き飛んだ。
「邪魔を………。」
「ドカン。ドカン。」
それでもなおナナは満月に攻撃を加える。
「立てよ、火………」
「ドカン。ドカン。」
柊ナナが選んだ戦術は、極めて単純なもの。
不意を突き、持っている道具で反撃を受ける前に徹底攻撃して、殺すか抵抗の意欲を奪うまで攻め続ける。
彼女が孤島の学園で能力者を殺害する際に取っていたやり方とさほど変わりはない。
満月がデマオンに対し、ヒット&アウェイを繰り返していたことから、生命力や防御力が強化されているわけではないと結論付けた。
「ぐ……。」
「これで終わりだな。オマエは最期に言い残すことはあるか。」
誰もが身を竦めてしまうほど冷たく鋭い視線を、泥だらけになり倒れた満月に投げかける。
勿論、魂の剣の届かない範囲に立ちながら。
「魔法を使おうとするな。その素振りを見せたらその口に空気の弾を打ち込む。」
このまま言葉を聞かずに殺しても良いとも思ったが、空気砲はかつて彼女が愛用していた毒針と異なり殺傷力に欠けるので、時間がかかる。
それに、殺す場合は最低限デマオンにどうするか確認しておいた方が、信頼を維持出来るかもしれないと考えた。
「私は……美夜子のためにあの魔王を殺さねばならんのだ!!」
黒い服がボロボロになりながらも、殺気立った目でナナを睨みつけた。
その言葉を聞いたナナは小さくため息をついた。
この男は、自分勝手な理屈を立てて、それを侵害して来る相手は殺しても構わないと考えている点で、佐々木ユウカと同じなのだと分かってしまった。
最もユウカの場合は元から破綻した性格の持ち主だったのに対し、満月はこの世界の魔剣によって変わってしまったのだが、ナナにとってはどうでもいいことだった。
「そうか。」
短く返答すると、満月が反撃をしてくる前にナナは空気砲を発砲しようとする。
「オマエ!!何やってるんだ!!」
上空からミドナが飛んできて、柊ナナを止めようとした。
彼女の仮面に付いている手が、ナナの空気砲を奪った。
「な、何をやっていたのですか?心配しましたよ?」
「こっちのセリフだ!!アンタら、この大事な時に外で揉めていたというのか!?」
ミドナは、図書館の外で起こったことは柊ナナが満月を集中攻撃していたという事しか分からない。
普段の軽口を叩きつつも冷静な彼女ならば、いきなり柊ナナに食って掛かることも無かったかもしれない。
だが、今の彼女には「外で揉めている暇があったのなら、どうして姫を守るのに加勢しなかったんだ」という怒りが胸にあった。
勿論、それが理にかなった怒りではないし、ゼルダを殺してしまった原因は自分であることも分かっていた。
それでも、ミドナの心に巣くっていたやりきれなさが、その行動へと駆り立てた。
「ち、違います!!満月さんが……」
「うわあああああああああ!!!」
ミドナと柊ナナの言い争いの間に、満月博士は雄たけびを上げて、剣と杖を携えて走って行く。
「おのれ……満月……!!」
なおも入らない力で、抵抗を試みようとする。
「大魔王よ、これで終わりだ!!」
だが、チャンスは今しか無いと判断した満月が、魔封じの杖を柄の方を先に向け、ダーツのごとく投げた。
「チンカラ・ホイ!!」
投げた杖を自らの魔術で加速させる。
それはかつてデマオンの心臓へと投げられた、銀のダーツを彷彿とさせる軌道だった。
緑の杖が、黒の魔王の胸へと吸い込まれていく。
「グェーッ!!」
彼の心臓は、この殺し合いの制限によってありふれた武器でも刺さるようになっていた。
急所を貫かれた黒の魔王は、炎に包まれて崩れ落ちる。
「ウソ……だろ?」
「しまった……!!」
ミドナも柊ナナも、唖然としていた。
「ははは……やったやった!!美夜子!!仇は取ったぞ!!ハハハハハハ!!」
満月は猶も持ち続けている剣を掲げ、高笑いをしている。
その笑いは、感情的になる所はありながらも穏やかな彼のものとはとても思えなかった。
「返せ!!ドカン!!」
ナナはすぐに唖然としていたミドナから空気砲を奪い返し、満月目掛けて空気の弾を撃つ。
しかし、時すでに遅し。
満月は空気の弾を受けてしまうが、既にデマオンの命を奪ったことを確信した満月は笑っていた。
その時、アイラがクリスチーヌを抱えて、2階から猫のようにひらりと降りて来た。
スーパースターの経歴を積んだ彼女のバランス感覚なら、この程度の高さは少し足を痛める程度で済む。
「ねえ、ちょっとこれ、どういうことよ?」
「満月博士!!あなたは何をしているのですか!!」
戦いの舞台に遅れてやって来たアイラとクリスチーヌも、満月博士に物申す。
「何を言うか。私の娘を殺した魔王を倒し、仇を討ったことの何が悪い……。」
その時、ミドナも、他の者達も気づいた。
満月博士の異常と、持っている剣が放つ怪しい光を。
元からデマオンを憎んでいたこの男が彼を襲い、ナナ達はそれを止めようとしていたのだと。
(………ワタシは、また間違えたというのか?)
ミドナは、自分がした間違いと、いかに自分のしたことが短絡的だったか気付いた。
「胸が苦しい……だが、私のやったことを否定するなら、君たちも許さないぞ……。」
満月博士はナナ達に剣を向ける。
「岩よ。雷となり、地球人を打ち砕け。」
その時、野太い声が辺りに響いた。
その声は、女性が出せるものでも、満月博士が出せるものでもなかった。
「ウロ~~~~~~ン!!」
魂の剣の色に似た怪しい光を帯びた岩は、不気味な声を上げて満月に襲い掛かった。
人の胴体の大きさぐらいある岩の邪精霊が、満月に襲い掛かる。
邪悪な魔力を籠めた岩は、流星の様に炎を纏って飛んできて、満月を圧殺した。
「私は……私は……!!」
掠れた言葉と、両手に持った武器もろとも、彼の命は焼失した。
「アンタ……生きていたのか!!」
魔王と言え度心臓を穿ち抜かれば死ぬと思っていたので、ミドナは驚いた。
炎から再誕する不死鳥の様に、デマオンは炎の中から立ち上がった。
「ワシの力ではない……。不死の魔法はここでは封じられていたはずだ。」
「じゃあ、何か支給された道具を持っていたのか?」
ミドナの世界における妖精や、アイラの世界における世界樹の葉、はたまたクリスチーヌの世界におけるきんきゅうキノコの様に、一度きりだが死から身を守ってくれる道具はある。
「なるほど。あの葉か……。」
この世界にある大魔王の城を出る時に確認した道具の中で、名前も知らぬ葉が一枚あった。
どう見ても不要な道具だったが、魔力が勿体ないので燃やさなかった。
何の因果か屈辱か、不死の力を奪われた自分が、他者から与えられた道具で蘇ってしまった。
また、世界樹の葉は死した者にかけられたいかなる呪縛も蘇生と同時に消し去ることが出来る。
魔法を封じられていたのにも関わらず、蘇生後魔法が使えたのもそれが理由だ。
「皆さん、無事で良かったです。」
ナナは朗らかに見える笑顔を浮かべ、3人の無事を祝福する。
それは演技ではない。
「良いワケ……ないわよ。」
しかし、ゼルダの犠牲をクリスチーヌは嘆く。
「それに、この図書館を攻撃した敵を、逃がしたしね……。」
アイラも同じ表情をしていた。
それから、誰も言葉をしばらく話さなくなった。
近くに燃えている建物があるとは思えないほど、冷たい空気が覆っていた。
そして、先程まで大規模な争いをしていたとは思えないほど静かだった。
「ククク……アッハハハハハハハハハ……」
その時、静寂を破るかのようにミドナは突然高笑いをし始めた。
彼女がかつてリンクと共に冒険をしていた時、よくしていた笑いとは異なる、どこか乾いた笑いだった。
自分の判断を誤ったがために守るべき姫を殺してしまい、そして今度は頼れる王を殺してしまった。
王は世界樹の葉で生き返ったのだが、それはあくまで結果論でしかない。
もしあの時、満月博士が呪われた武器を持っていたことに気付けば、柊ナナではなく満月博士を止めようとしたら、デマオンが彼を殺さずに済んだのかもしれない。
判断が、決断が、行動がひたすらに悪い結果を呼び続ける、自分の間抜けさに、怒りを通り越して乾いた笑いがこみあげてきた。
「気でも触れたか。」
デマオンが声をかける。
「別に。ワタシは全くの正気さ。アタマがおかしくなるほどぶつけた訳じゃないし、変な病気も貰っちゃいない。
その方がずっと良かったんだけどな。」
先程と違って、口を吊り上げて軽口をタイプライターの様に叩くミドナ。
だがその目は笑っていなかった。
「そうか。」
「それとピンク髪、謝って済むことじゃ無いが、早とちりして悪かったな。」
「いえ、良いですよ。あの状況ならば仕方が無いことです。それよりも皆さんこれからどうするのですか?」
柊ナナは先の冷徹な表情とは全く異なる顔をミドナに見せつけ、その後周りにどうすべきか案を募った。
「拠点と何人かの部下を失ったのは痛いが、このまま残された者だけでデパートへ向かう。動きに差し支えるものはおらぬようだしな。」
デマオンは世界樹の葉の治癒力のおかげで、満月から受けた傷は残っていない。
ミドナ達はゼルダの死ぬ間際の力により、傷は全てでは無いが回復した。
「悪いけど、ワタシは行かない。」
デマオンの提案を、ミドナは静かに拒絶した。
「馬鹿者が!!己の感情に身を任せて、足並みを乱すことが良いと思っておるのか!!」
全体のリーダーとして、ミドナの集団行動に反した発言を咎める。
「そうですよ。さっきのことなら、私は怒ってませんから。」
(違うんだよ。)
2人共も、自分の感情に任せたせいでデマオンを殺してしまったことや、大口をたたいていた自分がゼルダを死なせてしまったことは全く責めてこなかった。
(ワタシがいれば、アンタたちもワタシのせいで死ぬかもしれないんだぞ。
なぜそれを言おうとしないんだ。)
それが、彼女にとってただただ腹立たしかった。
「どこへ行こうとしてるのですか?」
1人で背を向けるミドナに対し、アイラが声をかけた。
「姫さんを殺した奴を殺しに行く。」
それで償いにならないのは分かってはいたが、そうせずにはいられなかった。
「……好きにするがよい。感情に己を委ねる馬鹿者は我がデマオン軍には必要ない。」
(そうだよ。それでいいんだ。)
またしても一喝するかと思いきや、ひどく力の抜けた言葉を返した。
魔界星にいた時代、部下の悪魔たちが失敗するたびに怒鳴り散らしていた彼とはとても思えぬ態度だった。
デマオン本人としても、今度ばかりは自分にも非があったと考えていたからだ。
襲い掛かって来た満月博士を殺したことは、正当防衛だと考えれば仕方が無いことだと分かっていた。
だがあの時、満月が持っていた武器を確認していれば、
外からの敵にばかり警戒していなければ。
それ以前に、一時のこととはいえ図書館に見張りを付けずに、全員集めることをしなければ。
大魔王の胸の内に、初めて水たまりのような後悔の念が生まれ、それがアメーバのように増えて行った。
ミドナの姿が見えなくなってしばらくした後、彼ら5人の近くにあった図書館が、ゼルダと重清を残したまま音を立てて崩れた。
まるでそれは、主催に反旗を翻す8人の団結の崩壊を表しているかのようだった。
「行くぞ。」
「はい!!」
「ええ。」
「…………。」
残された者達は、それぞれの目的地を目指して、歩き始めた。
この図書館で起こったことが、この殺し合いにおける最悪の瞬間だったと信じて。
【満月博士@ドラえもん のび太の魔界大冒険 死亡】
【残り 29名】
【B-5西/一日目 午前】
【柊ナナ@無能なナナ】
[状態]後頭部に打撲
[装備]空気砲(80/100)@ドラえもん のび太の魔界大冒険
[道具]基本支給品、ランダム支給品0〜1(確認済み)、名簿を七並べ順に書き写したメモ、
[思考・状況]
基本行動方針:最低でも脱出狙い。可能ならオルゴ・デミーラ、ザントの撃破。最悪は優勝して帰還。
1.デマオン、アイラと共に、デパートへ向かう
2.殺し合いに乗っていない参加者と合流を目指す。
3.回復能力を持つ東方仗助と合流したいが、1よりは優先順位は低め
4.小野寺キョウヤはこの殺し合いの中なら始末できるのか?
5.佐々木ユウカは出会ったら再殺する。
6.スタンド使いも能力者も変わらないな
7.満月博士、デマオンの関係に警戒
※参戦時期は20話「適者生存PART3」終了後です。
※矢安宮重清からスタンドについて、東方仗助について聞きました。
※広瀬康一、山岸由香子、ヌ・ミキタカゾ・ンシをスタンド使いと考えています。
※異世界の存在を認識しました。
【デマオン@のび太の魔界大冒険 】
[状態]:健康 魔力消費(小) 精神疲労(小)
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ランダム支給品×1〜2
[思考・状況]
基本行動方針:不遜なるデク人形(オルゴ・デミーラ、ザント)をこの手で滅し、参加者どもの世界を征服する
1.デパートへ向かい「鍵」の正体が何なのか調べる
2.何だ……この気持ちは……。
3.デマオン軍団の一員として、対主催の集団を集める。
4.刃向かうものには容赦しない
【アイラ@ドラゴンクエストVII エデンの戦士たち】
[状態]:ダメージ(小) 軽い火傷 職業 調星者 (スーパースター)
[装備]:ディフェンダー@ FINAL FANTASY IV
[道具]:基本支給品、ランダム支給品×0〜1モーテン星@魔界大冒険 魔法の盾@ドラゴンクエストVII、イツーモゲンキ@ペーパーマリオRPG、不明支給品0~1
[思考・状況]
基本行動方針:オルゴ・デミーラを再度討つ
1.デマオン、ナナと共にデパートへ向かう
2.アルスとメルビンが心配
※職業は少なくとも踊り子、戦士、武闘家・吟遊詩人・笑わせ師は極めています。
参戦時期はED後。
※満月博士の支給品、魔封じの杖、魂の剣は焼失しました。
影の女王は行く。
図書館で自分がしでかしたことへの後悔と、秋月真理亜を殺して自分勝手な償いをしようという決意のみを胸に秘めて。
すでに行動を共にした者達のことは全く考えていない。
頭の中にあるのは、図書館からいなくなった真理亜がどこにいるのかということだけだった。
そのはずだったのに、今この場所にいない仲間の顔を思い出してしまう。
(リンク……教えてくれ……私はどうすればいいんだ?)
一人で良いと思ったはずなのに、心のどこかで信頼できる仲間を頼ってしまう。
矛盾だらけの自分を、どうしようもなく憎く思った。
1人で道なき道を行くミドナの背後に、足音が聞こえてくる。
「何しに来たんだ。オマエはデマオン達とデパートに向かえばいいだろ。」
「…………。」
共に行かせろとも言わず、理由も話さず、クリスチーヌはミドナの後ろについていく。
「ワタシに付いてきたら、姫さんみたいなことになるって分かってるのか?」
半ば八つ当たり気味に、棘の含んだ言葉を投げつける。
「分かってるわよ。でも、私だって間違えたせいで、モイさんがあの女の人に殺されてしまった。
償いなら私もしなければならない。」
「死にたいのなら好きにしろ。」
刺だらけの言葉のボールは、ぶつけた相手よりも投げた者を傷付けた。
それからはどちらも話をせず、青空の下を進んでいった。
辺りを氷柱のような刺々しく冷たい空気が、辺りを包んでいた。
【B-5東/一日目 午前】
【ミドナ@ゼルダの伝説 トワイライトプリンセス 】
[状態]:ダメージ(小) 精神疲労(大) 後悔(大)
[装備]:ツラヌキナグーリ@ ペーパーマリオRPG
[道具]:基本支給品、ランダム支給品×1
[思考・状況]
基本行動方針:ザントを討ち、
光と影の両世界を救いたい
1:………。
2:秋月真理亜を殺す
参戦時期は瀕死の状態からゼルダにより復活した後
陰りの鏡や影の結晶石が会場にあるのではと考えています。
【クリスチーヌ@ペーパーマリオRPG】
[状態]:HP1/2 悲しみ
[装備]:なし
[道具]:基本支給品 アイアンボーガン(小)@ジョジョの奇妙な冒険 キングブルブリンの斧@ゼルダの伝説
[思考・状況]
基本行動方針:首輪解除のヒントを見つける
1.ミドナに付いていく
2.モイやゼルダへの償いの為にも、秋月真理亜を倒す
3.仲間(マリオ、ビビアン)を探す
4.クッパ、バツガルフ、真理亜に警戒
5.モイやノコタロウ、ピーチの死を無駄にしない
6.首輪のサンプルが欲しい。
※図書館の本から、DQ7.FF4にある魔法についてある程度の知識を得ました。
※首輪についてある程度仮説を立てました。
• 爆発物ではないが、この首輪が原因で死ぬ可能性は払拭できない。
• 力を奪うのが目的
最終更新:2022年06月16日 10:23