「マリオ。」
向かってくる堕ちた英雄に、彼女は優しく声をかける。
彼女が話すのは、同じ仲間でマリオを想っていたビビアンの言葉の続き。
「覚えている?初めて出会った時のこと。」
彼女が発するのは、言葉の弾丸だけではない。
かつて戦い方を教える時に、マリオに放った頭突きを食らわせる。


「あなたに何があったのかだけは、私には分からない。けれど、私にとって分かることは、あなたが私を助けてくれた人ことなのよ!!」


そしてまた頭突きを入れる。
マリオはハンマーを振り回すが、躱して何度も頭突きを食らわせる。
彼女は否定はしない。
例え今どうなろうと、彼女がゴロツキタウンでマリオから助けられた過去は変わらないのだから。
揺るがない過去があるからこそ、マリオを肯定し続ける。
代わりに、思い出せと感情をぶつけ続ける。


それは、クリスチーヌの想いだけではない。
ビビアンが言いかけたけど、言えなかった言葉を繋ぐ。


「何をしても変わらないわ。あなたはずっと、私達のマリオなんだから。」


「アアアァァァアアア!!!」

マリオは苦しみ始める。
頭突きを食らったショックか、クリスチーヌの想いが伝わったのか分からない。
けれど、真っ黒になったはずの心の中で、ビビアンと手をつなぎかけた時と同じ感覚が、またフラッシュバックする。
そこでは、仲間と共に培われてきた暖かいつながりがあった。


ゴロツキタウンで
ドラドラ平原で
ふしぎの森で
ウーロン街の闘技場で
ウスグラ村で
トロピコアイランドで
リッチリッチエクスプレスで
メガバッテンのアジトの、コンピュータールームで


仲間と共に作られた、温かい記憶が蘇って来る。



(痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い)
マリオの脳裏を、凄まじい激痛が駆け巡る。
かつて、ピーチの死をこの殺し合いで告げられた時の痛みと同じだった。
思い出が、情報の洪水が、マリオの脳を侵食して来る。
でも、これを受け入れれば、自分の魂をマモノに売り渡してまで、ピーチを守ろうとした決意も無駄になってしまう。


自分がしたこと、それを無駄にしたくないという子供のような意地で、カゲの力を全て解放した。


「来るなら来なさい!!何があっても私はマリオを信じるわ!!」
黒い色をしたエネルギーが、大津波のように彼女に押し寄せた。
だが、凄まじい力を前にしても、クリスチーヌは彼を否定しなかった。


「ホーリー!!」
カゲの力が1人のクリボーを飲み込む寸前、女性の声が響いた。
ローザが最初の黒い衝撃波に対して使ったシェルのおかげで、2人は死を免れたのだ。
彼女が放った聖なる魔法が、衝撃波を食い止める。
「ワタシも生きてるってことを忘れるなよ!!」
ミドナが影の力をその手に集め、小さな衝撃を打ち出す。


2人の力は、クリスチーヌを死から守る。
だが、マリオの全てを使った力は、それだけでは止まらない。

「馬鹿野郎――ッ!!決めたんなら!早く行けえーーーーーッ!!」

彼女の守るために、スタンドを出した東方仗助が立ちはだかる。
クレイジー・ダイヤモンドは回復の為ではなく、今度は両腕をクロスさせて、防御のために使う。


「嘘?やめて!!」
「やめねえよ……そんなことよりどうしたいか考えるっすよ……」

遠くからならいざ知らず、ゼロ距離で最強の技を受ければ、ただでは済まない。
スタンドのダメージのフィードバックが容赦なく来る。
既に何度も攻撃を受け、元々限界寸前だった。
それでも、彼はグレートだと認めた仲間を、その命尽きるまで守り続けた。
スタンドは消え、凄まじいエネルギーの濁流が、杜王町のヒーローを飲み込む。
それは真っ黒い色をした津波に人が抗うようなものだ。
いくら人が鍛えても、災害とまともにぶつかりあえば死ぬのも道理でしかない。
両腕が千切れ飛び、彼のアイデンティティーの1つである学ランも破け、その身体もカゲの力には勝てず、吹き飛ばされる。


(ダメ……せめて何かあと一手……誰でも、何でも良いから!!)
圧倒的な力の前では、説得も彼女の力も無意味でしかない。
そして彼女までも、その力の餌食になろうとしたその時。


奇跡は起こった。


「ウオオオオオオオオオ!!!」
怪物からゴロンの姿に戻ったダルボスが、その身体を広げ、岩のような巨体でクリスチーヌを守ったのだ。
今の彼は、この殺し合いのことさえ知らない。
最早その命さえ無かったはずなのに、なぜそんなことが出来たか分からない。
ただ分かることは、のび太や覚の記憶を時間が巻き戻されたことで失っても、ゴロンの族長の矜持は失わなかったことだ。
そして、自分は取り返しのつかないことをしてしまったのだと、償いをしなければならないと、その心で分かっていた。


「ありがとう!みんな!!」
全ての力を耐えきり、クリスチーヌは最後の一撃の頭突きをマリオに見舞う。
それは今まで仲間だったクリスチーヌではなく、この戦いで英雄を救う彼女としての一撃だった。


それは、新たに生まれたヒーローが撃った一発にしては、ひどく弱かった。
だけれど、確実にマリオの心に巣くっていたカゲを確実に討った。




――――ようやく、気付いたようだね。
――――君は、肯定されたかったんだよ。
――――君はやったことを肯定されたいんじゃない。君自身を肯定されたかったんだ。


かつてピーチを失った時に出会った、もう一人の『マリオ』が言う。


――――君は、助けてばかりじゃない。助けられる人だっているんだ。
――――白か黒かだけで生きる必要は無いんだ。


ずっと真っ暗な世界をさまよってたマリオの視界が、急に明るくなる。
「あの……マリオさん、おつかれさまです。」
「マリオ、会えてうれしいよ。でももう一人、マリオに会いたがってた人がいるんだ。」
その世界で、ビビアンが、ノコタロウが手を差し伸べてくれる。
マリオはその手を優しく握り返す。

「アタイも、やっと誰かを助けることが出来た。やったよ、早季。」
「ふふ、ビビアンさん、やっぱりすごいですよね。」


仲間達は満足した様子で消えて行く。


マリオの目の前に現れたのは、ピーチ姫だった。


「ぴー……ちひめ?」
声を絞り出すように発する。目の前に、大切な人がいる。
白くて綺麗な手は、そっとマリオの両手に触れた。


それを拒絶するマリオ。
血で汚れ切った自分は、美しい姫が触ってはいけない。
「あなたはね、どうなっても私のヒーローなのよ。」

にも関わらず、ピーチは優しく彼を抱きしめてくれる。
マリオはその言葉を待っていた。
あの時、女王に乗っ取られたピーチを傷付ければ、白のままでいることは出来ない。
だから、黒として生きる道を選んだ。
けれど、どちらでもない灰色の英雄でも、灰色の人でも許してくれる者がいる。
もう、誰かを殺す必要も、リーダーとして常に選び続ける必要もない。


「さあ、帰ろう、マリオ。」
手を繋いで、光の方へ歩いていく。


仲間とも、恋人とも。
ずっと、ずっと一緒だ。




「う………」
クリスチーヌは意識を取り戻す。
気が付くと、マリオが彼女自身に触れていた。
もう息は無かったが、これまで破壊の限りを尽くしていた彼とは思えないほど優し気な笑みを浮かべていた。


「目が覚めた?」
ローザが、傷ついた人たち全員に回復魔法をかけ続けていた。
「みんなは?」


「遠くにいたミドナと私は無事だったけど……黒い髪の男の人は……もう……。」
ミドナは気絶しており、東方仗助とダルボスはもう生きていなかった。
間近で衝撃波を受けたのだから当然だろう。
本当ならば1度目の黒い衝撃波を受けた時、全滅していてもおかしくなかった。
3人生きているだけでも、おつりがくるほどの奇跡だ。


全ての力を使い果たしたマリオは光に包まれ、消えて行った。
残されたのは、彼のトレードマークの、赤い帽子だけ。
「これで……良かったんだよね。さようなら。マリオ。」

最後に、同じように動かないビビアンの、ほとんど煤けてしまった帽子をザックに入れる。
「ビビアン、あなたが手伝ってくれたおかげで、マリオを取り戻せたよ。」


「次は私がこの殺し合いを止めるわ。だから安心して。今まで頑張った分もゆっくりやすんでね……。」
その言葉をかけた時、次第に涙が出てきた。


「マリオ………マリ……オ………うわああああああぁぁぁぁぁああああ!!!!」


本当は、マリオと一緒に帰りたかった。
ああしてマリオを何度も攻撃して、救うことがベストアンサーだったかもしれない。
けれど、本当は正義も何もかも捨てていいから、マリオと一緒に居たかった。
それが、一緒に破壊の限りを尽くすことでも。
彼女もまた、白一色のクリボーではないのだから。



(お願いです。今だけ、今だけで良いので、こうしてそばにいさせてください。
それが済んだら、マリオの為にこの殺し合いを壊しますから。)

堕ちた英雄を救った者ではなく、一人のクリボーの少女として、彼女は泣き続けた。




【ビビアン@ペーパーマリオRPG 死亡確認】
【ダルボス@ゼルダの伝説 トワイライトプリンセス 死亡確認】
【東方仗助@ジョジョの奇妙な冒険 ダイヤモンドは砕けない 死亡確認】



【マリオ@ペーパーマリオRPG 消滅】
【残り 24名】





【C-7 荒野 昼】

【ミドナ@ゼルダの伝説 トワイライトプリンセス 】
[状態]:ダメージ(特大) 精神疲労(大) 後悔(大) 気絶
[装備]:ツラヌキナグーリ@ ペーパーマリオRPG
[道具]:基本支給品、ランダム支給品×1
[思考・状況]
基本行動方針:ザントを討ち、光と影の両世界を救いたい
1:………。
2:秋月真理亜を殺す
参戦時期は瀕死の状態からゼルダにより復活した後
陰りの鏡や影の結晶石が会場にあるのではと考えています。



【クリスチーヌ@ペーパーマリオRPG】
[状態]:HP1/10 悲しみ(特大)
[装備]:なし
[道具]:基本支給品@ジョジョの奇妙な冒険 キングブルブリンの斧@ゼルダの伝説 マリオの帽子 ビビアンの帽子 グリンガムのムチ@ドラゴンクエストⅦㅤエデンの戦士 ビビアンの基本支給品、ランダム支給品1~2(確認済み) クローショット@ゼルダの伝説トワイライトプリンセス ランダム支給品(×0~1 確認済) ジシーンアタックのバッジ@ペーパーマリオRPG
[道具]:基本支給品×2(マリオ、セシル) ランダム支給品0~3 
[思考・状況] 
基本行動方針:首輪解除のヒントを見つける
0.マリオ……。
1.ミドナに付いていく
2.モイやゼルダへの償いの為にも、秋月真理亜を倒す
3.クッパ、バツガルフ、真理亜に警戒
4.モイやノコタロウ、ピーチの死を無駄にしない
5.首輪のサンプルが欲しい。
※図書館の本から、DQ7.FF4にある魔法についてある程度の知識を得ました。
※首輪についてある程度仮説を立てました。
• 爆発物ではないが、この首輪が原因で死ぬ可能性は払拭できない。
• 力を奪うのが目的



【ローザ・ファレル@Final Fantasy IV】
[状態]:HP 1/10 MP:0 決意
[装備]:勇者の弓@ゼルダの伝説+矢20本 トワイライトプリンセス ふしぎなぼうし@ドラゴンクエストVII
[道具]:基本支給品、 カチカチこうら@ペーパーマリオRPG×2ランダム支給品0~1
[思考・状況]
基本行動方針:一先ず休む
1.仲間(カイン、エッジ、ヤン)を探す。
2.ガノンドロフ、ボトク、バツガルフ、ユウカ、レンタロウ、吉良に警戒
※参戦時期は本編終了後です。
※この殺し合いにゼムスが関わっていると考えています。
※ジョジョ、無能なナナ、DQ7、ペーパーマリオの参戦者に関する情報を得ました。


※D-7には、承太郎が盗んだバイク@ジョジョの奇妙な冒険 があります。


【E-7 草原 昼】


【野比のび太@ドラえもん のび太の魔界大冒険】

[状態]:気絶 ダメージ(小) 出血多量  情緒不安定
[装備]:ミスタの拳銃(残弾3)@ジョジョの奇妙な冒険
[道具]:基本支給品
[思考・状況]
基本行動方針:ダルボス、覚と共に脱出する
0.…………。
1. 仲間(ドラえもん、美夜子、満月博士)を探したい
2. デマオン、スクィーラ、ガノンドロフには警戒
※参戦時期は本編終了後です
※この世界をもしもボックスで移った、魔法の世界だと思ってます。
※主催者はもしもボックスのような力を持っていると考えています。
※放送は主催が危機感を煽るために嘘だと考えています。


【朝比奈覚@新世界より】
[状態]:ダメージ(小) 早季への疑問
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、北風のテーブルかけ(使用回数残り17/20)@ドラえもん のび太の魔界大冒険 ランダム支給品0~2
[思考・状況]
基本行動方針:仲間を探し、脱出する
1. 安全な場所を探す
2. のび太の仲間を探す。生きていても死んでいても。
3. 神栖66町の仲間(早季、守、真理亜が心配)
4. 仲間を探す過程で写真の男を見つけ、サイコ・バスターを奪い返す
5. デマオン、スクィーラ、ガノンドロフに警戒

※参戦時期は26歳編でスクィーラを捕獲し、神栖66町に帰る途中です。




[カチカチこうら@ペーパーマリオRPG]
ローザに支給されたアイテム。使うと仲間の防御力を上げる



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078:あいつをさがせ! 時系列順 080:第二回放送
投下順
073:みらいのないかいぶつ マリオ GAME OVER
ダルボス
野比のび太 086:忘却も、思い出も
朝比奈覚
071:ここは裏の一丁目 名物は可能性の扉 東方仗助 GAME OVER
ビビアン
ローザ・ファレル 087:未来へ
070:It is no use crying over dropped moon ミドナ
クリスチーヌ
最終更新:2022年08月20日 11:08