【初出】
禁書SS自作スレ>>954-957
禁書SS自作スレ>>954-957
◇◇◇
トントントン
ピュピュ、ぴとぴと
「・・・・・っ」
「あ、ごめ、染みた?」
「い、いや、大丈夫・・・」
傍らに置かれた救急箱から脱脂綿と消毒液、ピンセットを取り出し、すりむいた腕の傷に優しくトントンと脱脂綿を当てていく。
(うはぁ、ドキドキ治療イベント発生中ですよ!!回避不可能!!)
「で、なんだってあんな無茶なことしてたわけ?」
「へ?無茶って何のこと?・・・っていってぇぇぇぇぇぇ!!」
脱脂綿をはさんだピンセットを持つ美琴の右手がブルブルと震えて当麻の傷口に押し付けられる。
「どこの世界に200人以上いる能力者の中に開始早々突っ込む馬鹿がいるのよ。」
プンプンと顔は不機嫌になりつつも、頬は赤く染めながら、目線はチラチラと傷と当麻の顔を行ったりきたりしながら美琴は当麻の右手に包
帯を巻いていく。
「はい、これで完了!」とかいいながらと包帯の端をチョチョイと折り込んでいく。
「その・・・ありがとな、美琴」
当麻が頬をぽりぽりと掻きながら礼を言うと
「ば、ばか、そ、そんなの、別に、お、お礼言われることでもない、わよ」
ズバァとかいう効果音が聞こえそうな程の速度で座ったまま180度方向を変える。
(き、器用な方向転換するな、座ったまま180度ターンしたよ、いま)
「じゃ、私は次の競技に出ないといけないから!!」
美琴は救急箱を両手で抱えて、ズダダダダダダダダっと走っていってしまった。
当麻は右手に巻かれた包帯を見て、一息ついてから自分の学校のメンバーがいるテントへ戻っていった。
「ふう、これ保健委員に返しとくか。」
ポリポリ
◇◇◇
「ああ、日差しが・・・クラっ・・・」
「ああ、日差し強いですよね、私は帽子かぶってるから平気ですけど。」
車椅子に座ったツインテールの少女が病弱なヒロインを演じ
車椅子を押す小柄で頭に大きな麦わら帽子・・というか花をかぶった少女がさらりと受け流す。
「入院中の私をわざわざ連れ出してどうなさるおつもりですの、初春飾利さん」
「いやぁ、この炎天下の中で白井さんだけがエアコン+ふかふかベッドのコンボなんていてもたっても居られなくなっちゃいまして、白井さんにもお仕事手伝ってもらいたくなっちゃいました、あはは」
「素敵すぎる友情をありがとう、傷が完治したら真っ先に衣服だけ空間移動して素っ裸なにして差し上げますから、心の底から楽しみにしていてくださいまし。」
白井黒子はぐったりとして答えたが、正直大覇星祭というイベントの中で自分だけ病室に・・・・なんてのも嫌だった。
というか病室は割と退屈だ、TVがあっても好きな番組ばかり流してるわけではない。
大半が寝る時間に当てられてしまう。
ぶっちゃけ退屈だったのだ、だからこの強引な誘いはうれしく思っていた。
でもそれを悟られるのは絶対に嫌なのだ。
「どうせお姉さま率いる常盤台中学の独走トップに決まってますが、入院中で不足しているお姉さまエナジーをここらで補給する必要ありですわね」
「御坂嬢ですかー、丁度そこに映ってますねー、ほら」
初春が指差したのはデパートの壁面に設置された大画面のエキシビジョンだ。
「これは生中継ですの?」
「カメラの動きが生っぽいですよね。」
画面には常盤台中学のレベル5 御坂美琴が映っていた。
◇◇◇
美坂美琴は走っていた、競技場ではなく学園都市の普通の町並みを
割りと全力で
いま居る場所は競技場ではないが美琴は現在競技中だ。
[四校合同借り物競争]
通りを挟んだ歩道には他校の学生もちらほらと見える。
この競技は第七、八、九区画を会場として行われる広範囲競技だが
いろいろと学園都市ならではの要素がある
まず[超能力]の使用
そして[借り物]
ルールこそ紙に書かれたものを借りてくるという単純なものだが
毎年、実行委員の趣味なのか借りてくるものが困難極まるのだ。
それゆえにかなりの高得点競技でもあるのだが
「この競技!!会場がひろすぎんのよ!!」
学園都市の一区画はかなりの広さを持つ
しかもそれが三区画使用という大盤振る舞いだ。
(こういう競技は[空間移動]の使える白井黒子や[肉体強化]の使える連中の本分でしょうに。)
彼女の能力である[超電磁砲]は冗談のような破壊力を持っているがこういう平和な競技には心底向いてない。
文句を言いながら辺りを見回して目標を探す。
目標発見デキズ
向かい側の歩道にいた女子学生が
一般客の赤髪の神父に頭を下げてる
赤髪の神父はウーンとうなると懐からタバコを1本だして女子学生に渡した。
(ってたばこかい!!)
おそらくそれが彼女の[借り物]なのだろう、学生にタバコを借りて来いなんて随分と無茶な借り物だ。
買うには身分証明が必要だし、借りるっていっても普通の人は学生にタバコなんて渡さないだろう。
しかしこのままではあの女子学生に1位を取られてしまう。
(どこ居るのよ!!アイツ!)
手の中の[借り物競争]の[借りてくる物が書いてある紙]を見ながら
「うん、この条件だとアイツしかいないわよね」
自分に言い聞かせる様に呟き、紙から目を離しキョロキョロしてると50m程先の人ごみの中に見覚えのある後姿を発見した美琴は
「目標発見!!」
速度を上げて目標(借り物:未承諾)との距離を詰めた。
◇◇◇
大覇星祭中は学園都市は一般客にも解放される
普段は学生しか見当たらない街もこの期間だけはお祭り状態なので公園や商店街にはフランクフルトやイカ焼きの屋台が並んでいる。
「なんだか楽しそうーってミサカはミサカははしゃいでみたりする」
「おィ、あんまりウロチョロするんじゃねェよ、クソガキ」
白髪の少年の回りを10歳ぐらいの少女が駆け回ってる。
「ねぇねぇ、アレ食べたいなぁとかミサカはミサカはあなたのシャツを引っ張ってお菓子を要求したりする」
学園都市の一角にある公園のベンチに腰掛けて学園最強の能力者[一方通行]は空を見上げた。
「ウゼェ・・・てかおまえ金なら渡してあるだろゥがよ!!」
ビシっと自分のシャツを引っ張る少女-[打ち止め]に指を突きつける。
「ひとつのわたあめを二人で食べる・・・ミサカはミサカはこの前見た恋愛ドラマを思い出してアナタにそれを要求してみたりする」
グイグイ、グイグイ シャツを引っ張るのをやめないこの子供をどうしたものかと[一方通行]は再度、空を見上げた。
視線をわたあめの方に向けてめんどくさそうに立ち上がると足元で[打ち止め]が期待に満ちた眼差しを向けていた。
(いつからこんなに丸くなッちまたんだろうなァ)
「ベンチで待ッてろ」
「は~~~い、ってミサカはミサカは元気よく答えてみる」
公園の中央の噴水の脇に据えつけられた木製のベンチに[打ち止め]はちょこんと座って[一方通行]の方見る。
それを確認してから5mほど先にあるわたあめの屋台に向かい
50m程先の人ごみに彼のよく知る黒いツンツン頭が見えた気がした。
「ねーねー、3段重ねがいいなとミサカはミサカは更に要求をしてみたりする」
「寝ろ!!」
「うわーい、なんか久しぶりに聞いた、それってミサカはミサカは思い出の世界に入ってみたり」
振り返って先ほどの人ごみを見ると・・・何も発見できなかった、普通の人ごみがあるだけで
彼の宿敵たる[幻想殺し]の少年の姿は見つからなかった。
彼の宿敵たる[幻想殺し]の少年の姿は見つからなかった。
「さっきから悲鳴みたいなのが聞こえるねとかミサカはミサカは報告してみたりする」
◇◇◇
◇◇◇