第一章 [そして悪役は動き出す Operation_Pandora]
早朝、鳥の声が聞こえる。上条当麻は部屋に軽く射し込む日差しと美味しそうな匂いに釣られて目を開けた。
眠そうに目をこすりながら起き上がると上条は違和感を感じる。
「………あれ?」
上条が起き上がったそこはベッドだった。
普通の家ではベッドで起きることに違和感はないだろうが、あの銀髪碧眼の修道女が来てからというもの上条はベッドを占領され、バスタブで寝ていたはずなのに今上条はベッドの上にいる。
「あ、とうま起きた?」
ベッドの隣にあるテーブルでナイフとフォークを両手に持ち、ご機嫌なご様子の我が家の居候が上条に声をかける。
そちらの方をむいた上条は目に映る光景に愕然とした。
「い、インデックスさん?その格好は……どうされたんでせう?」
「え?なにが?」
おどけたような表情を浮かべるインデックスの格好はいつもの修道服、別名『針のむしろ』とは違った、普通の女の子が着そうな普通の服装だった。
ありえない。今まで破れても安全ピンで修復するほどに執着していたあの修道服をインデックスが脱いでいる。
「お前……ホントにインデックスか?」
「そんなに失礼なこと言うとうまにはお仕置きが必要かも…」
ギラリ、と口から歯を覗かせる。
彼女、インデックスの悪癖の一つに噛みつきというものがある。彼女がお怒りモードに突入するとなんでもかんでも噛み砕いてしまうのだ。
それは家主である上条の頭も例外ではない。前々からこの悪癖を直そうと努力している上条なのだがまったく直る気配がなくて困っていた。
「インデックス………こんな下らないジョークで人の頭を噛むのはどうかと上条さんは思いますよ?」
「むう~なんだか今日のとうまは反抗的かも」
なぜだろう。今ならばなんでも出来る気がする。例え、一方通行が五人いても圧勝する自信がなぜか上条にはあった。
「ふ…インデックス……いつまでも上条さんが遅れをとるとお思いか!?」
「ふ…上等なんだよ、とうま」
そう言って適当に構える上条。対してインデックスはゆらりと立ち上がった。その口の中には綺麗な歯が光っている。
「懺悔をするなら今のうちだよ、とうま?私はシスターだから迷える子羊には救いの手を差し伸べるんだよ」
言葉だけは優しいが目が笑っていない。もし、ここで謝ったとしても噛みつかれることに変わりはないだろう。
その言葉に対し、上条は不敵に笑う。
「何を言いますか?上条さんは何も悪いことはしていませんよ?」
今ならばなんでも出来る気がする。もし襲いかかってきたらこの暴食シスターの攻撃を全て避け、スキを見てから毛布でくるんで無力化してやろうと、上条は考える。
そして、暴食シスターは身をかがめ、飛び掛かる体勢に入った時だった。
眠そうに目をこすりながら起き上がると上条は違和感を感じる。
「………あれ?」
上条が起き上がったそこはベッドだった。
普通の家ではベッドで起きることに違和感はないだろうが、あの銀髪碧眼の修道女が来てからというもの上条はベッドを占領され、バスタブで寝ていたはずなのに今上条はベッドの上にいる。
「あ、とうま起きた?」
ベッドの隣にあるテーブルでナイフとフォークを両手に持ち、ご機嫌なご様子の我が家の居候が上条に声をかける。
そちらの方をむいた上条は目に映る光景に愕然とした。
「い、インデックスさん?その格好は……どうされたんでせう?」
「え?なにが?」
おどけたような表情を浮かべるインデックスの格好はいつもの修道服、別名『針のむしろ』とは違った、普通の女の子が着そうな普通の服装だった。
ありえない。今まで破れても安全ピンで修復するほどに執着していたあの修道服をインデックスが脱いでいる。
「お前……ホントにインデックスか?」
「そんなに失礼なこと言うとうまにはお仕置きが必要かも…」
ギラリ、と口から歯を覗かせる。
彼女、インデックスの悪癖の一つに噛みつきというものがある。彼女がお怒りモードに突入するとなんでもかんでも噛み砕いてしまうのだ。
それは家主である上条の頭も例外ではない。前々からこの悪癖を直そうと努力している上条なのだがまったく直る気配がなくて困っていた。
「インデックス………こんな下らないジョークで人の頭を噛むのはどうかと上条さんは思いますよ?」
「むう~なんだか今日のとうまは反抗的かも」
なぜだろう。今ならばなんでも出来る気がする。例え、一方通行が五人いても圧勝する自信がなぜか上条にはあった。
「ふ…インデックス……いつまでも上条さんが遅れをとるとお思いか!?」
「ふ…上等なんだよ、とうま」
そう言って適当に構える上条。対してインデックスはゆらりと立ち上がった。その口の中には綺麗な歯が光っている。
「懺悔をするなら今のうちだよ、とうま?私はシスターだから迷える子羊には救いの手を差し伸べるんだよ」
言葉だけは優しいが目が笑っていない。もし、ここで謝ったとしても噛みつかれることに変わりはないだろう。
その言葉に対し、上条は不敵に笑う。
「何を言いますか?上条さんは何も悪いことはしていませんよ?」
今ならばなんでも出来る気がする。もし襲いかかってきたらこの暴食シスターの攻撃を全て避け、スキを見てから毛布でくるんで無力化してやろうと、上条は考える。
そして、暴食シスターは身をかがめ、飛び掛かる体勢に入った時だった。
「こ~ら、インデックス!簡単に人を噛んだらいけないって言ってるでしょ?」
と部屋のキッチンから声が聞こえた。
その言葉で白シスターは動きを止めた。〔言葉だけで〕インデックスは動きを止めた。あの銀髪碧眼、白い暴食シスターが〔人の言葉〕で止まった。
「うう……ううううううううううっ!!」
うなり声をあげながら歯をガチン!!ガチン!!と噛み合わせるインデックス。目が据わっていてとっても怖い。
「でもでもでも!とうまが私に酷いこと言ったんだよ!!」
親の仇を見るような目でインデックスは上条を睨み付けながら抗議する。自分はこの修道女様に何をしたと言うのだろうか。まったく思い当たる節がない。
「いや、待て!!」
なぜここにインデックスと上条以外の人間がいるのだ。それにさっきから匂ってくる美味しそうな朝飯の香りはなんだ。
上条は何もせずに朝飯を作り、インデックスを止めることが出来るようなハイテクメイドロボを買った覚えはないし、買うお金もない。
誰かが上条家のキッチンを使っている。
確認のため上条がキッチンに目を向けると、
「はあ……ま~た当麻はインデックスに変なこと言ったの?いい加減にしなさいよ…」
と言いながら長い髪を後ろで纏めたポニーテールの知らない女の子が美味しそうな匂いをする味噌汁をトレイにのせてキッチンから出てきた。
(誰だ…この可愛い女の子は………ッ!?)
その女の子は制服の様なものの上にエプロンという夢のような姿だった。男のロマン、『女の子のエプロン姿』。その破壊力は着ける着けないで大きく変わる。
と土御門が力説していたのを聞き流していた上条は今、本当の意味でその言葉を理解していた。
(だ、ダメだ………エプロンの破壊力がこれほどとは…っ!)
もうどうしていいか理解できない。上条はボウと放心したように女の子を見つめる。
茶色い髪に茶色い瞳、化粧は必要ない程度にデフォルトで整った顔立ち。着ている制服を見ると、常盤台中学のものだろうか。
(………………………あれ?)
誰かに似ている。
その疑問について考える前にインデックスが口を開いた。
「もっと言ってよ、みこと!!とうまはみことの言うことしか聞かないんだから!!」
みこと、この女の子をインデックスはそう呼んだ。はて、どこかで聞いたことのある名前だ。
(みこと……ミコト………美琴…………御坂…美琴?)
「お前……御坂か?」
おそるおそると言ったふうに上条がポニーテールの少女に問いかけると、少女は笑って、
「当麻が私のことを『御坂』って呼ぶの久しぶりね。もしかして、美琴ちゃんのエプロン姿が可愛すぎて記憶が飛んじゃった?」
と上条の問いかけを肯定した。
どうやらここにいる少女はあの御坂美琴らしい。
その状況を把握して、上条は携帯を取り出した。
「どうしたの、とうま?」
「やるべき事を見つけたんだよ、インデックス」
そして、出来れば押したくなかった番号をプッシュする。
「もしもし?警備員(アンチスキル)ですか?すぐに来てください。不法侵入です」
瞬間、インデックスが大きく口を開けて襲いかかってきた。
「とうまあああああああああああああああ!!」
「なぜお前が怒る!?お前ら仲悪かったんじゃ…ぎゃああああああああああ!!」
「まったく…ホントにぎやかね」
上条の視界が、日光を反射して光る歯で覆い尽くされた。
その言葉で白シスターは動きを止めた。〔言葉だけで〕インデックスは動きを止めた。あの銀髪碧眼、白い暴食シスターが〔人の言葉〕で止まった。
「うう……ううううううううううっ!!」
うなり声をあげながら歯をガチン!!ガチン!!と噛み合わせるインデックス。目が据わっていてとっても怖い。
「でもでもでも!とうまが私に酷いこと言ったんだよ!!」
親の仇を見るような目でインデックスは上条を睨み付けながら抗議する。自分はこの修道女様に何をしたと言うのだろうか。まったく思い当たる節がない。
「いや、待て!!」
なぜここにインデックスと上条以外の人間がいるのだ。それにさっきから匂ってくる美味しそうな朝飯の香りはなんだ。
上条は何もせずに朝飯を作り、インデックスを止めることが出来るようなハイテクメイドロボを買った覚えはないし、買うお金もない。
誰かが上条家のキッチンを使っている。
確認のため上条がキッチンに目を向けると、
「はあ……ま~た当麻はインデックスに変なこと言ったの?いい加減にしなさいよ…」
と言いながら長い髪を後ろで纏めたポニーテールの知らない女の子が美味しそうな匂いをする味噌汁をトレイにのせてキッチンから出てきた。
(誰だ…この可愛い女の子は………ッ!?)
その女の子は制服の様なものの上にエプロンという夢のような姿だった。男のロマン、『女の子のエプロン姿』。その破壊力は着ける着けないで大きく変わる。
と土御門が力説していたのを聞き流していた上条は今、本当の意味でその言葉を理解していた。
(だ、ダメだ………エプロンの破壊力がこれほどとは…っ!)
もうどうしていいか理解できない。上条はボウと放心したように女の子を見つめる。
茶色い髪に茶色い瞳、化粧は必要ない程度にデフォルトで整った顔立ち。着ている制服を見ると、常盤台中学のものだろうか。
(………………………あれ?)
誰かに似ている。
その疑問について考える前にインデックスが口を開いた。
「もっと言ってよ、みこと!!とうまはみことの言うことしか聞かないんだから!!」
みこと、この女の子をインデックスはそう呼んだ。はて、どこかで聞いたことのある名前だ。
(みこと……ミコト………美琴…………御坂…美琴?)
「お前……御坂か?」
おそるおそると言ったふうに上条がポニーテールの少女に問いかけると、少女は笑って、
「当麻が私のことを『御坂』って呼ぶの久しぶりね。もしかして、美琴ちゃんのエプロン姿が可愛すぎて記憶が飛んじゃった?」
と上条の問いかけを肯定した。
どうやらここにいる少女はあの御坂美琴らしい。
その状況を把握して、上条は携帯を取り出した。
「どうしたの、とうま?」
「やるべき事を見つけたんだよ、インデックス」
そして、出来れば押したくなかった番号をプッシュする。
「もしもし?警備員(アンチスキル)ですか?すぐに来てください。不法侵入です」
瞬間、インデックスが大きく口を開けて襲いかかってきた。
「とうまあああああああああああああああ!!」
「なぜお前が怒る!?お前ら仲悪かったんじゃ…ぎゃああああああああああ!!」
「まったく…ホントにぎやかね」
上条の視界が、日光を反射して光る歯で覆い尽くされた。
<8:35 AM>
「どうわあっ」
そんなすっとんきょうな声を上げて、上条は夢から覚めた。
布団から起き上がるとそこはいつも見慣れたバスタブだ。
「今のは……夢?」
夢にしては妙にリアルだった。なんというか、その場特有の臨場感というか焦りというか。
とにかく違和感がでるのを違和感に感じるほどにその夢は自然だった。
何気なく、上条は時計を見た。
「やっべ!!今日は10時から御坂と約束があったんだった!!」
遅れたらビリビリだ。そんな不本意なお仕置きを受けたくない。
そう思って風呂のドアの鍵を開けた瞬間。
銀髪シスターが口を大きく広げて襲いかかってきた。
「お腹すいたんだよおおおおおおおおお!!」
「ぎゃあああああああああああ!!インデックス!ご飯なら今から作るからもう少し我慢を………ッ!!」
「もう充分待ったんだよ!?何回何回呼び掛けてもとうまが起きても来なくて心配してたんだから!!」
「ごめん!ごめんなさいだから頭を噛まないでえええ!!」
不幸だあああああ!!と少年の叫びが学生寮に響いた。
そんなすっとんきょうな声を上げて、上条は夢から覚めた。
布団から起き上がるとそこはいつも見慣れたバスタブだ。
「今のは……夢?」
夢にしては妙にリアルだった。なんというか、その場特有の臨場感というか焦りというか。
とにかく違和感がでるのを違和感に感じるほどにその夢は自然だった。
何気なく、上条は時計を見た。
「やっべ!!今日は10時から御坂と約束があったんだった!!」
遅れたらビリビリだ。そんな不本意なお仕置きを受けたくない。
そう思って風呂のドアの鍵を開けた瞬間。
銀髪シスターが口を大きく広げて襲いかかってきた。
「お腹すいたんだよおおおおおおおおお!!」
「ぎゃあああああああああああ!!インデックス!ご飯なら今から作るからもう少し我慢を………ッ!!」
「もう充分待ったんだよ!?何回何回呼び掛けてもとうまが起きても来なくて心配してたんだから!!」
「ごめん!ごめんなさいだから頭を噛まないでえええ!!」
不幸だあああああ!!と少年の叫びが学生寮に響いた。
<? AM>
「アレイスター。お前は何を考えているんだ?」
「何のことかな?」
「とぼけるな…また魔術師が学園都市に侵入したぞ……ッ!!」
「落ち着け土御門。今さら騒いだところでどうすることもできまい」
「そんなに落ち着けるような相手じゃない!!相手はローマ正教の『神の右席』候補者だぞ!」
「学園都市は『神の右席』なる前方のヴェントを撃破している。候補者など恐るに足りん」
「あれだけの被害を出しておいて…」
「その『被害』を最小限に抑えたいなら君が頑張ればいい」
「キサマ……ッ!!ヤツラの目的は『幻想殺し(イマジンブレイカー)』だ…お前はそれをわかって……」
「理解しているさ」
「ならば何故手を打たない!?学園都市内にいる妹達(シスターズ)はほとんどヤツラの手に落ち、それを…」
「理解している、と言っているだろう?私のプランの短縮のために使えるんだ。それを利用しない手はない」
「そこまでして欲しいか…『虚数学区・五行機関』」
「…………………………………」
「クソッ……お前は戦争を起こすつもりなのか!?」
「それは君の努力次第だ。頑張ればこの前のように死者を出さないことができるかもしれんぞ?」
「アレイスター。お前は何を考えているんだ?」
「何のことかな?」
「とぼけるな…また魔術師が学園都市に侵入したぞ……ッ!!」
「落ち着け土御門。今さら騒いだところでどうすることもできまい」
「そんなに落ち着けるような相手じゃない!!相手はローマ正教の『神の右席』候補者だぞ!」
「学園都市は『神の右席』なる前方のヴェントを撃破している。候補者など恐るに足りん」
「あれだけの被害を出しておいて…」
「その『被害』を最小限に抑えたいなら君が頑張ればいい」
「キサマ……ッ!!ヤツラの目的は『幻想殺し(イマジンブレイカー)』だ…お前はそれをわかって……」
「理解しているさ」
「ならば何故手を打たない!?学園都市内にいる妹達(シスターズ)はほとんどヤツラの手に落ち、それを…」
「理解している、と言っているだろう?私のプランの短縮のために使えるんだ。それを利用しない手はない」
「そこまでして欲しいか…『虚数学区・五行機関』」
「…………………………………」
「クソッ……お前は戦争を起こすつもりなのか!?」
「それは君の努力次第だ。頑張ればこの前のように死者を出さないことができるかもしれんぞ?」
<10:36 AM>
「くっそ~また遅刻だ!」
上条は美琴と約束している場所、あの自販機の近くのベンチを目指しながら走る。
あの後、インデックスに朝食を作り、ご機嫌になったところを見計らい、
『今から御坂と遊んでくるから、お留守番しててくれ』
と言うとまた頭をかじられた。何がいけなかったのだろうか。きちんと朝食は作ったのに。
しかも、ただでも遅れているのにいつも使う道が通行止めになっていた。何やら爆発事件があったらしい。
学生寮の隣で爆発事件なんて誰が何のためにしたのだろう。現場をチラッと見たら、道路に亀裂が走っていたり、木が何本か折れていた。
(最近は物騒な事件が多いな……)
そう考えながら上条は約束の場所へと走り続けた。
「くっそ~また遅刻だ!」
上条は美琴と約束している場所、あの自販機の近くのベンチを目指しながら走る。
あの後、インデックスに朝食を作り、ご機嫌になったところを見計らい、
『今から御坂と遊んでくるから、お留守番しててくれ』
と言うとまた頭をかじられた。何がいけなかったのだろうか。きちんと朝食は作ったのに。
しかも、ただでも遅れているのにいつも使う道が通行止めになっていた。何やら爆発事件があったらしい。
学生寮の隣で爆発事件なんて誰が何のためにしたのだろう。現場をチラッと見たら、道路に亀裂が走っていたり、木が何本か折れていた。
(最近は物騒な事件が多いな……)
そう考えながら上条は約束の場所へと走り続けた。
<10:49 AM>
天候は曇り。
そのためもう朝だというのにその路地裏には光が入らず、まるで夜のような暗闇が通路に続いていた。
コンクリートとコンクリートに阻まれた、直線のような道。そのコンクリートの壁はボロボロで整理されていない。
暗い道だからという理由からか常日頃から人が通らないようで、まるで長らく掃除をしていない体育館倉庫のようにホコリが充満していた。
そんな道のほこりを舞い上げながら数人の人間が走り抜ける。
逃げる一人の少女と、追いかける数人の黒ずくめ達。
黒ずくめ達は一般人が手に入れられると思えないようなサブマシンガンを持ち、少女を追いかける。対して、追いかけられる少女は何の武器も持たない普通の少女だった。
いや、普通というのは少し違うだろうか。学園都市の能力開発による成果とも言うべき能力を持つ少女。
というところも普通ではないのだが、ここ学園都市では特におかしいことではない。
普通ではないおかしな点。路地裏の道を走り抜ける少女には約1万人の姉妹がいる。
能力名[欠陥電気(レディオノイズ)]
名称[妹達(シスターズ)]
とある実験で造り出された、[超電磁砲(レールガン)]御坂美琴の劣化型クローン。
(ここで……こんなところで捕まるわけにはいかない、とミサカは決意を新たにし必死に足を動かします)
学園都市にいる妹達は今、路地裏を走っている少女以外すべて捕まってしまっていた。
ちょうど、身体の調整のため病院を抜けて散歩に出ているときだった。一人のミサカが黒ずくめに捕まった。
妹達は能力で互いの脳をリンクさせ、記憶を共有することができる。その名も『ミサカネットワーク』。
『ミサカネットワーク』によりミサカの一人が捕まったのを知るのに時間はかからなかった。
捕まったミサカの記憶により、黒ずくめ達の狙いは学園都市に残るすべての妹達であることが判明。
病院に迷惑をかけないように学園都市に残るミサカの全ては病院から抜け出した。
その後、10時間が経過している。
逃げ出したミサカはほとんどが捕まり、残るは路地裏を走る少女のみ。
その最後の少女さえ、すでに捕まるのは時間の問題だった。
「クッ…………!?」
少女が曲がり角を曲がるとそこは行き止まり。
行き止まりに一瞬思考と動きが停止する。
その一瞬の間に黒ずくめの一人が少女に追い付き、地面に身体を叩きつけた。
「グ……ウウ……ッ!?」
少女は手足を動かし抵抗するが、
「動くな…死ぬぞ?」
黒ずくめが頭にハンドガンを突きつけてきたため動きが止まる。
(……………こんなところで…)
死ぬわけにはいかない。
――『俺はお前を守るためにここにたってんだよ』
とある少年が助けてくれた命を、
――『お前は世界にたった一人しかいねえだろうが!』
とある少年が教えてくれた大切なものを、
――『勝手に死ぬんじゃねえぞ』
失うわけにはいかないのだ。
「く、あぁぁぁあぁぁああああぁぁぁ!!」
バチン、という音が少女の身体から響いた。
少女のもつ能力が発動し、青白い電流が辺りに撒き散らされる。
否、撒き散らさされるはずだった。
ズガン!!という鈍い銃音が路地裏に響き、銃弾は正確に少女の右腕を撃ち抜く。
「あ………ぐぅ…」
右腕に響く痛みで少女の能力が中断させられた。
「動くな、と言っただろうが…」
面倒くさそうに銃を片手に黒ずくめの男が呟く。
しかし、右腕を撃ち抜かれても少女は諦めない。諦めるわけにはいかない。
すると他のさっきまでの逃走劇で少女が少しずつ引き離していた黒ずくめ達が追い付いてきた。
合計、10人くらいはいるだろうか。
これで、さらに状況は絶望的となる。しかし、少女は諦めない。
例え、右腕を撃ち抜かれようとも、手足を引き千切られようとも、少女は絶対に諦めない。
(捕まるわけには……いかないッ!!)
少女は唇を噛み締める。
何か。
何かあれば。
この絶望的な状況を突破できる何かが。
もうこの際なんでもいい。
あの少年やお姉様でなくとも、不良でも先生でも風紀委員(ジャッジメント)でもいい。
この絶望的な状況から助けてくれる何か。
この絶望的な状況から助けてくれる誰か。
「誰でも、何でもいいから…」
震える声で少女は呟く。
過去に自分の命をどうでも良いと思っていた少女は誰ともわからない、いまだ見たこともないものに救いを求める。
「ミサカを助けて……ッ!!」
恥も外聞もないその叫びが路地裏に響いた。その叫びは自分勝手な願い。自己中心で、意地汚くて、自分しか得をしない醜い願い。
しかし、その叫びはとても純粋だった。
しかし、その叫びはなぜか透き通った音で路地裏に響いた。
しかし、その叫びはまるで小さな女の子が泣いているような印象を受けた。
天候は曇り。
そのためもう朝だというのにその路地裏には光が入らず、まるで夜のような暗闇が通路に続いていた。
コンクリートとコンクリートに阻まれた、直線のような道。そのコンクリートの壁はボロボロで整理されていない。
暗い道だからという理由からか常日頃から人が通らないようで、まるで長らく掃除をしていない体育館倉庫のようにホコリが充満していた。
そんな道のほこりを舞い上げながら数人の人間が走り抜ける。
逃げる一人の少女と、追いかける数人の黒ずくめ達。
黒ずくめ達は一般人が手に入れられると思えないようなサブマシンガンを持ち、少女を追いかける。対して、追いかけられる少女は何の武器も持たない普通の少女だった。
いや、普通というのは少し違うだろうか。学園都市の能力開発による成果とも言うべき能力を持つ少女。
というところも普通ではないのだが、ここ学園都市では特におかしいことではない。
普通ではないおかしな点。路地裏の道を走り抜ける少女には約1万人の姉妹がいる。
能力名[欠陥電気(レディオノイズ)]
名称[妹達(シスターズ)]
とある実験で造り出された、[超電磁砲(レールガン)]御坂美琴の劣化型クローン。
(ここで……こんなところで捕まるわけにはいかない、とミサカは決意を新たにし必死に足を動かします)
学園都市にいる妹達は今、路地裏を走っている少女以外すべて捕まってしまっていた。
ちょうど、身体の調整のため病院を抜けて散歩に出ているときだった。一人のミサカが黒ずくめに捕まった。
妹達は能力で互いの脳をリンクさせ、記憶を共有することができる。その名も『ミサカネットワーク』。
『ミサカネットワーク』によりミサカの一人が捕まったのを知るのに時間はかからなかった。
捕まったミサカの記憶により、黒ずくめ達の狙いは学園都市に残るすべての妹達であることが判明。
病院に迷惑をかけないように学園都市に残るミサカの全ては病院から抜け出した。
その後、10時間が経過している。
逃げ出したミサカはほとんどが捕まり、残るは路地裏を走る少女のみ。
その最後の少女さえ、すでに捕まるのは時間の問題だった。
「クッ…………!?」
少女が曲がり角を曲がるとそこは行き止まり。
行き止まりに一瞬思考と動きが停止する。
その一瞬の間に黒ずくめの一人が少女に追い付き、地面に身体を叩きつけた。
「グ……ウウ……ッ!?」
少女は手足を動かし抵抗するが、
「動くな…死ぬぞ?」
黒ずくめが頭にハンドガンを突きつけてきたため動きが止まる。
(……………こんなところで…)
死ぬわけにはいかない。
――『俺はお前を守るためにここにたってんだよ』
とある少年が助けてくれた命を、
――『お前は世界にたった一人しかいねえだろうが!』
とある少年が教えてくれた大切なものを、
――『勝手に死ぬんじゃねえぞ』
失うわけにはいかないのだ。
「く、あぁぁぁあぁぁああああぁぁぁ!!」
バチン、という音が少女の身体から響いた。
少女のもつ能力が発動し、青白い電流が辺りに撒き散らされる。
否、撒き散らさされるはずだった。
ズガン!!という鈍い銃音が路地裏に響き、銃弾は正確に少女の右腕を撃ち抜く。
「あ………ぐぅ…」
右腕に響く痛みで少女の能力が中断させられた。
「動くな、と言っただろうが…」
面倒くさそうに銃を片手に黒ずくめの男が呟く。
しかし、右腕を撃ち抜かれても少女は諦めない。諦めるわけにはいかない。
すると他のさっきまでの逃走劇で少女が少しずつ引き離していた黒ずくめ達が追い付いてきた。
合計、10人くらいはいるだろうか。
これで、さらに状況は絶望的となる。しかし、少女は諦めない。
例え、右腕を撃ち抜かれようとも、手足を引き千切られようとも、少女は絶対に諦めない。
(捕まるわけには……いかないッ!!)
少女は唇を噛み締める。
何か。
何かあれば。
この絶望的な状況を突破できる何かが。
もうこの際なんでもいい。
あの少年やお姉様でなくとも、不良でも先生でも風紀委員(ジャッジメント)でもいい。
この絶望的な状況から助けてくれる何か。
この絶望的な状況から助けてくれる誰か。
「誰でも、何でもいいから…」
震える声で少女は呟く。
過去に自分の命をどうでも良いと思っていた少女は誰ともわからない、いまだ見たこともないものに救いを求める。
「ミサカを助けて……ッ!!」
恥も外聞もないその叫びが路地裏に響いた。その叫びは自分勝手な願い。自己中心で、意地汚くて、自分しか得をしない醜い願い。
しかし、その叫びはとても純粋だった。
しかし、その叫びはなぜか透き通った音で路地裏に響いた。
しかし、その叫びはまるで小さな女の子が泣いているような印象を受けた。
そして、その叫びを一人の少年が確かに聞いていた。
轟ッ!!と少女の周りに凄まじい勢いで風が吹き荒れる。
「な、なんだ!?」
という黒ずくめ達の叫びを打ち消すように風はうねりをあげた。
風速一二〇メートルの疾風の槍が黒ずくめ達を襲う。
数秒後。
その場で意識を保っているのは二人だけとなっていた。
地面に押し倒される少女とその少女を地面に押し倒す黒ずくめの男。
その二人の周りには黒ずくめ達が意識を刈り取られ、地面に転がっていた。
「の、能力……?能力者?いったい…誰が……」
心の声がそのまま出ているかのように男が呟く。男は少女に銃を突きつけたまま、周りを忙しく見渡す。
(か、風……?)
対して、少女はいたって冷静に状況を分析していた。
風。
そんなものを操ることのできる能力者はたくさんいるだろう。
しかし、少女の思う人物は一人しかいなかった。
間違い、勘違い、思い違いかもしれない。
それでも、少女はこの時一人の白い少年のことを思い浮かべていた。
カッ…と路地裏に足音が響く。
足音がした方向に男が勢いよく振り向き、思わず少女に突きつけていた銃をそちらに向けていた。
行動からどれだけ男が焦っているかわかる。
そして、その焦りは足音のした方を向いた瞬間に恐怖へと変わった。
「ひ……ィ…ッ!?」
男の喉が急激に乾上がる。
こちらに歩いてくる一人の『怪物』がいた。その『怪物』は異常なまでの白い肌と髪を持ち、普通ではありえない紅い目をしていた。そして、その白さを強調するような黒い服。
白濁の『怪物』が引き裂かれたような笑みを浮かべ、こちらに歩いてくる。
その足音の一つ一つが死刑へのカウントダウンのような錯覚を男は覚えた。
このままじゃ、殺られる。
死にたくない、という感情が男の思考を支配する。
そこから逃げるための最善策は少女を人質にとることだという考えに男がたどり着くのにそう時間はかからなかった。
「くっ…来るなあぁ!!」
男は少女の髪を掴み、無理やり立たせて少女の頭に銃を突きつけた。
「…………………………………」
その行動で白い少年の足が止まる。
「ひ、ひひははあ…」
少年が足を止めたのを見て男は泣きながら無理やり笑うような表情を浮かべた。
効いている。
そう男は思った。
この作戦はあの学園都市最強に確かに効果的だ。このままいけば、男は助かるかもしれない。
あの『怪物』から無傷で逃げることができるかもしれない。
そこで男は気づいた。
この状況を利用すれば。
うまくやれれば。
もしかすると、この『怪物』を殺せるのかもしれない。
「は、はは…ははは…」
乾いた声を男があげる。
そう、考えれば簡単なこと。
逃げれるのなら。
言うことを聞かせることができるなら。
殺すことだってできる。
殺すことができるなら…
「なァ……お前、ジブンが何やってンのか理解してンのか?」
男の思考をさえぎるように白い少年が口を開いた。
それに対して男は、はあ?と呟く。
「理解もなにも…お前こそ自分のおかれてる状況がわかってるのか!?適当なこと言ってるとコイツの頭ぶっ飛ばすぞ!!」
男は少女の頭に銃を叩きつけるように当て、白い少年へと叫ぶ。
「あ、う…う…」
少女のうめき声が男の気分を妙に上昇させた。
「おらぁ!この人質が見えねえのか!?言うこと聞かないとこの女の子死んじまうぞ!!」
男は顔に気味の悪い笑みを貼り付けながら言葉を吐く。
その言葉に白い少年は呆けた表情を一瞬だけ見せると、吹き出すように笑い始めた。
「ギャアッハハハハハハハハ!!」
「な、何がおかしい!?」
その意味のわからない挙動に男が叫んだ瞬間だった。
ダン!!と白い少年が勢いよく地面を踏む。
たったそれだけで。
それだけの動作で男の後ろにあった換気扇が爆発した。
「な、ああぁ!?」
突然の出来事に男は一瞬だけ意識がそちらに向く。
その一瞬が命取りだった。
少年が足を踏み込む。
すると、バゴン!!とコンクリートを爆散させながら少年は弾丸のように駆けた。
両者の距離は一秒に満たない時間で〇になる。
息を呑む暇もなく、声をあげる暇もなく、男は少年の細い腕で地面へと叩きつけられた。
「ぐ、ハァ…ァ……!!」
触れれば折れてしまいそうな細くて白い腕で顔を押さえつけられながら、男は後悔していた。
効いていた。
男はそう思った。
今の作戦はあの学園都市最強に確かに効果的だった。
しかし、その効果は少年の怒りをあげるだけものでしかなかった。
「さァて…お前、わかってンだろ?」
手を出すべきではなかった。
今、男を押さえている超能力者だけでなく、
「テメェらのくだらねえ思惑かなにか知らねェけどなァ…」
あの少女にも。
手を出すべきではなかったのだ。
「人が護りてェもンに手ェだしてただで済むわけねェってことぐらいよォ!」
男の悲鳴が誰もいない路地裏に響いた。
「な、なんだ!?」
という黒ずくめ達の叫びを打ち消すように風はうねりをあげた。
風速一二〇メートルの疾風の槍が黒ずくめ達を襲う。
数秒後。
その場で意識を保っているのは二人だけとなっていた。
地面に押し倒される少女とその少女を地面に押し倒す黒ずくめの男。
その二人の周りには黒ずくめ達が意識を刈り取られ、地面に転がっていた。
「の、能力……?能力者?いったい…誰が……」
心の声がそのまま出ているかのように男が呟く。男は少女に銃を突きつけたまま、周りを忙しく見渡す。
(か、風……?)
対して、少女はいたって冷静に状況を分析していた。
風。
そんなものを操ることのできる能力者はたくさんいるだろう。
しかし、少女の思う人物は一人しかいなかった。
間違い、勘違い、思い違いかもしれない。
それでも、少女はこの時一人の白い少年のことを思い浮かべていた。
カッ…と路地裏に足音が響く。
足音がした方向に男が勢いよく振り向き、思わず少女に突きつけていた銃をそちらに向けていた。
行動からどれだけ男が焦っているかわかる。
そして、その焦りは足音のした方を向いた瞬間に恐怖へと変わった。
「ひ……ィ…ッ!?」
男の喉が急激に乾上がる。
こちらに歩いてくる一人の『怪物』がいた。その『怪物』は異常なまでの白い肌と髪を持ち、普通ではありえない紅い目をしていた。そして、その白さを強調するような黒い服。
白濁の『怪物』が引き裂かれたような笑みを浮かべ、こちらに歩いてくる。
その足音の一つ一つが死刑へのカウントダウンのような錯覚を男は覚えた。
このままじゃ、殺られる。
死にたくない、という感情が男の思考を支配する。
そこから逃げるための最善策は少女を人質にとることだという考えに男がたどり着くのにそう時間はかからなかった。
「くっ…来るなあぁ!!」
男は少女の髪を掴み、無理やり立たせて少女の頭に銃を突きつけた。
「…………………………………」
その行動で白い少年の足が止まる。
「ひ、ひひははあ…」
少年が足を止めたのを見て男は泣きながら無理やり笑うような表情を浮かべた。
効いている。
そう男は思った。
この作戦はあの学園都市最強に確かに効果的だ。このままいけば、男は助かるかもしれない。
あの『怪物』から無傷で逃げることができるかもしれない。
そこで男は気づいた。
この状況を利用すれば。
うまくやれれば。
もしかすると、この『怪物』を殺せるのかもしれない。
「は、はは…ははは…」
乾いた声を男があげる。
そう、考えれば簡単なこと。
逃げれるのなら。
言うことを聞かせることができるなら。
殺すことだってできる。
殺すことができるなら…
「なァ……お前、ジブンが何やってンのか理解してンのか?」
男の思考をさえぎるように白い少年が口を開いた。
それに対して男は、はあ?と呟く。
「理解もなにも…お前こそ自分のおかれてる状況がわかってるのか!?適当なこと言ってるとコイツの頭ぶっ飛ばすぞ!!」
男は少女の頭に銃を叩きつけるように当て、白い少年へと叫ぶ。
「あ、う…う…」
少女のうめき声が男の気分を妙に上昇させた。
「おらぁ!この人質が見えねえのか!?言うこと聞かないとこの女の子死んじまうぞ!!」
男は顔に気味の悪い笑みを貼り付けながら言葉を吐く。
その言葉に白い少年は呆けた表情を一瞬だけ見せると、吹き出すように笑い始めた。
「ギャアッハハハハハハハハ!!」
「な、何がおかしい!?」
その意味のわからない挙動に男が叫んだ瞬間だった。
ダン!!と白い少年が勢いよく地面を踏む。
たったそれだけで。
それだけの動作で男の後ろにあった換気扇が爆発した。
「な、ああぁ!?」
突然の出来事に男は一瞬だけ意識がそちらに向く。
その一瞬が命取りだった。
少年が足を踏み込む。
すると、バゴン!!とコンクリートを爆散させながら少年は弾丸のように駆けた。
両者の距離は一秒に満たない時間で〇になる。
息を呑む暇もなく、声をあげる暇もなく、男は少年の細い腕で地面へと叩きつけられた。
「ぐ、ハァ…ァ……!!」
触れれば折れてしまいそうな細くて白い腕で顔を押さえつけられながら、男は後悔していた。
効いていた。
男はそう思った。
今の作戦はあの学園都市最強に確かに効果的だった。
しかし、その効果は少年の怒りをあげるだけものでしかなかった。
「さァて…お前、わかってンだろ?」
手を出すべきではなかった。
今、男を押さえている超能力者だけでなく、
「テメェらのくだらねえ思惑かなにか知らねェけどなァ…」
あの少女にも。
手を出すべきではなかったのだ。
「人が護りてェもンに手ェだしてただで済むわけねェってことぐらいよォ!」
男の悲鳴が誰もいない路地裏に響いた。
「ふン…」
一方通行(アクセラレータ)は首筋の電極のスイッチを通常モードに戻して、呟いた。
「オレも人のこたァ言えた義理じゃねェな…」
男だったものから目を離し、御坂妹の方を向く。
「大丈夫か?その右腕、病院に…」
「そんなことより…」
アァ?と一方通行は御坂妹の顔を見る。
「お姉様が………お姉様が大変なんですと、とミサカはあなたに助けを求めます!!」
その顔は泣いている少女のようにぐちゃぐちゃに歪んでいるように彼には見えた。
一方通行(アクセラレータ)は首筋の電極のスイッチを通常モードに戻して、呟いた。
「オレも人のこたァ言えた義理じゃねェな…」
男だったものから目を離し、御坂妹の方を向く。
「大丈夫か?その右腕、病院に…」
「そんなことより…」
アァ?と一方通行は御坂妹の顔を見る。
「お姉様が………お姉様が大変なんですと、とミサカはあなたに助けを求めます!!」
その顔は泣いている少女のようにぐちゃぐちゃに歪んでいるように彼には見えた。
<10:52 AM>
天候は曇り。
今にも雨の降りそうな天気にほとんどの人が傘を持って歩いていた。
(……俺も傘持ってくればよかった)
肩で息をしながら上条は美琴と約束した、あの自販機のある公園にたどり着いた。
この天候のためかいつも見る子供たちや学生の姿がない。
そんな天候を見て、上条は憂鬱な気分になった。
息を整えながらポケットから携帯を取りだし、時刻を確認する。
「………………10:52?マジかよ…」
遅刻だ。
約束の時刻は10:00。
現在時刻は10:52。
完全なる遅刻。
怒られるのを覚悟しなければならない。
「やっぱ…おごらされたりすんのかな…」
小さな財布を取りだし中身を確認してみると、雀の涙ほどの金額しかないことに上条は泣きそうになった。
今日一日だけ遊ぶ金すらも危ないのに、おごらされたりしたらそれこそ終わりである。
もし、そんなことになったなら、
今にも雨の降りそうな天気にほとんどの人が傘を持って歩いていた。
(……俺も傘持ってくればよかった)
肩で息をしながら上条は美琴と約束した、あの自販機のある公園にたどり着いた。
この天候のためかいつも見る子供たちや学生の姿がない。
そんな天候を見て、上条は憂鬱な気分になった。
息を整えながらポケットから携帯を取りだし、時刻を確認する。
「………………10:52?マジかよ…」
遅刻だ。
約束の時刻は10:00。
現在時刻は10:52。
完全なる遅刻。
怒られるのを覚悟しなければならない。
「やっぱ…おごらされたりすんのかな…」
小さな財布を取りだし中身を確認してみると、雀の涙ほどの金額しかないことに上条は泣きそうになった。
今日一日だけ遊ぶ金すらも危ないのに、おごらされたりしたらそれこそ終わりである。
もし、そんなことになったなら、
『インデックス~今日から次の支給日までご飯はお茶漬けだよ~』
『ホント~?毎日毎日お茶漬けなんて私は幸せなんだよ~』
『あはは~噛みつくなよインデックス~』
なんてことになりかねない。
(あ、マズイ…想像しただけで頭が痛くなってきた…)
古傷が痛むぜ…と上条は左手で自分の頭をさする。そう簡単に朝の一撃は忘れられないようだ。
そんなことをしている内に自販機の前に着いた。
約束の場に怒り狂った電撃姫が君臨していると予想していた上条だが、
「あれ?」
そんな予想に反して、自販機の近くに美琴はいなかった。
(集合場所って…ここで良かったよな?)
携帯のメールボックスを開き、美琴とのメールを確認する。
「集合時間は10:00、集合場所はこの前の自販機の前…っと。間違ってねえよな」
もしかして帰っちまったかな、と上条は嘆息しながら、携帯の電話帳を開き『御坂美琴』にカーソルを合わせた。
上条としても今日という日を楽しみにはしていたのだ。
それを自分の不手際で潰すなんてことを上条はしたくなかった。
(謝って許してくれるかわからねえけど…やらないよりはマシだろ)
そして、上条は電話の『発信ボタン』を押そうとした時だった。
ドン!と上条は誰かが抱き着いてきたような感触を右腕に感じた。
「へ!?」
抱き着いてきた人物は、
「アンタ、デートに遅れるなんてヒドイじゃない?」
上条の右腕を強く抱き締めて、頬を膨らませている少女だった。
「う、おぉぉい!お前、御坂か?それにデートって…」
右腕に女の子のあらぬ部分が当たっているため、上条は顔を真っ赤にして言葉を紡ぐ。
そんな上条を見て、
「私以外の誰に見えるってのよ?それに女の子と遊びに行くなんてデート以外のなにものでもないでしょう」
意地悪そうな表情を浮かべ少女、御坂美琴はそう言った。
「み、御坂!腕を離してくれ!む、胸が当たってる、胸が!」
「ダメよ。それじゃあ罰にならないもん」
美琴は上条の腕を引っ張りながら笑う。
「遅刻しておいてなんの罰もないわけないじゃない」
その笑みに上条は思わずドキン…とする。
(こいつ…いつもとキャラ違いすぎるだろ……ッ!?)
さあ、行くわよ!!と美琴は上条の腕をさらに強く引っ張った。
「待て!どこに行くんだ!?連れていく場所ぐらい教えてくれ!」
「秘密よ。着いてからのお楽しみってやつ」
ギャアギャア、と騒ぎながら二人は公園から立ち去った。
公園に人の気配はなく、妙な雰囲気が辺りを支配していた。
(あ、マズイ…想像しただけで頭が痛くなってきた…)
古傷が痛むぜ…と上条は左手で自分の頭をさする。そう簡単に朝の一撃は忘れられないようだ。
そんなことをしている内に自販機の前に着いた。
約束の場に怒り狂った電撃姫が君臨していると予想していた上条だが、
「あれ?」
そんな予想に反して、自販機の近くに美琴はいなかった。
(集合場所って…ここで良かったよな?)
携帯のメールボックスを開き、美琴とのメールを確認する。
「集合時間は10:00、集合場所はこの前の自販機の前…っと。間違ってねえよな」
もしかして帰っちまったかな、と上条は嘆息しながら、携帯の電話帳を開き『御坂美琴』にカーソルを合わせた。
上条としても今日という日を楽しみにはしていたのだ。
それを自分の不手際で潰すなんてことを上条はしたくなかった。
(謝って許してくれるかわからねえけど…やらないよりはマシだろ)
そして、上条は電話の『発信ボタン』を押そうとした時だった。
ドン!と上条は誰かが抱き着いてきたような感触を右腕に感じた。
「へ!?」
抱き着いてきた人物は、
「アンタ、デートに遅れるなんてヒドイじゃない?」
上条の右腕を強く抱き締めて、頬を膨らませている少女だった。
「う、おぉぉい!お前、御坂か?それにデートって…」
右腕に女の子のあらぬ部分が当たっているため、上条は顔を真っ赤にして言葉を紡ぐ。
そんな上条を見て、
「私以外の誰に見えるってのよ?それに女の子と遊びに行くなんてデート以外のなにものでもないでしょう」
意地悪そうな表情を浮かべ少女、御坂美琴はそう言った。
「み、御坂!腕を離してくれ!む、胸が当たってる、胸が!」
「ダメよ。それじゃあ罰にならないもん」
美琴は上条の腕を引っ張りながら笑う。
「遅刻しておいてなんの罰もないわけないじゃない」
その笑みに上条は思わずドキン…とする。
(こいつ…いつもとキャラ違いすぎるだろ……ッ!?)
さあ、行くわよ!!と美琴は上条の腕をさらに強く引っ張った。
「待て!どこに行くんだ!?連れていく場所ぐらい教えてくれ!」
「秘密よ。着いてからのお楽しみってやつ」
ギャアギャア、と騒ぎながら二人は公園から立ち去った。
公園に人の気配はなく、妙な雰囲気が辺りを支配していた。
<11:07 AM>
「な……ンだとォ…」
一方通行(アクセラレータ)は目の前の少女、御坂妹が話した内容にかろうじて言葉を紡いだ。
「ってこたァ、ヤツラの目的ってのは…」
「おそらく貴方の考えていることで間違いはないでしょう、とミサカは相手の心理を読み取ります」
クソッ!と吐き捨てるように一方通行は呟く。
御坂妹から聞いた話は一方通行にとって、耳を疑うようなものだった。
一方通行(アクセラレータ)は目の前の少女、御坂妹が話した内容にかろうじて言葉を紡いだ。
「ってこたァ、ヤツラの目的ってのは…」
「おそらく貴方の考えていることで間違いはないでしょう、とミサカは相手の心理を読み取ります」
クソッ!と吐き捨てるように一方通行は呟く。
御坂妹から聞いた話は一方通行にとって、耳を疑うようなものだった。
敵対勢力名〔パンドラ〕
作戦名〔希望ト絶望ノ箱(オペレーション パンドラ)〕
そして、その目的と手段。
作戦名〔希望ト絶望ノ箱(オペレーション パンドラ)〕
そして、その目的と手段。
予想外だった。
一方通行が予想していたことの数倍上をいくような内容ではない。
予想はできるがありえない、と思ってしまうようなことを〔パンドラ〕は実行しようとしている。
「なら…いま超電磁砲(レールガン)は〔パンドラ〕の作戦どォりに…」
「はい、おそらくお姉様は何も知らずに街を歩いているはず、とミサカは確信に近い予想を伝えます」
「打ち止め(ラストオーダー)はァ?」
「心配は必要ありません、とミサカはロリコンを冷たい目で見つめながら自分の予想を述べてイタイイタイ!無言チョップを止めなさい、とミサカはあなたにお願いします」
「…………………………………」
一方通行は無言チョップを止め、空を仰ぐ。
かろうじて見える空は雲しかない殺風景なものだった。
「あなたは他の妹達を助けに行くのでしょう?ならばミサカも協力します、とミサカは提案して………」
「まずは病院だァ…その手じゃ、軽いものでも持てやしねェ」
「な………ッ!?」
一方通行の言葉の意味を数秒をかけて理解し、その言葉に御坂妹は怒りを覚えた。
思わず身を乗り出しながら、
「そんなことをしている暇はありません!とミサカは…」
「足手まといだってのがわかンねェかなァ?」
仕方なく、といった表情でため息混じりに一方通行は言った。
御坂妹はその言葉に口をつぐむ。
おそらく、一方通行は御坂妹に傷ついて欲しくないのだろう。あの冷たい表情の裏にそんな気遣いがあるのだろう。
そして、実際に足手まといだということを御坂妹は自覚していた。
御坂妹は悔しさに唇を噛む。
護りたい世界を自分で護れないと言われたことが御坂妹には悔しくて仕方がなかった。
ふざけるな、と噛んだ唇から血が流れる。
キッ、とにらみつけるように御坂妹は一方通行に視線を向けた。
「ミサカにも、やれることはあります…」
「あァ?」
「ミサカにだってやれることが、やりたいことがあるんです!それをあなたに止められる理由はありません!!」
感情が乏しいはずの顔に『怒り』という明確な表情が浮ぶ。
そんな御坂妹を見て、一方通行は唇の端をつり上げながら思う。
自分は間違っていなかった。
一万の妹達(シスターズ)を殺した自分が残り一万を護ろうとしたことに間違いはなかった。
一万の妹達を殺したことをよかったとは言わない。
しかし、残り一万の妹達を救ったことに間違いはなかったと一方通行は自信を持って言える。
そう言えるほどに目の前にいる少女は『善人』だった。
そんな『善人』が『悪党』についていく必要はない。
「何もねェよ…」
心の中で考えていることをおくびに出さずに、一方通行は御坂妹を見る。
「お前にできることなンて、何一つ」
胸がチクリと痛む。
「ありはしねェンだ」
「…………………………………」
御坂妹はその言葉を聞いても一方通行を真っ直ぐ見続けた。
一方通行の瞳に御坂妹が映る。
その表情は意志の強い姉を思い出させ、一方通行は心の中で舌打ちをした。
(妙なとこばっか似やがってェ……)
そして、御坂妹が口を開こうとして、
一方通行が予想していたことの数倍上をいくような内容ではない。
予想はできるがありえない、と思ってしまうようなことを〔パンドラ〕は実行しようとしている。
「なら…いま超電磁砲(レールガン)は〔パンドラ〕の作戦どォりに…」
「はい、おそらくお姉様は何も知らずに街を歩いているはず、とミサカは確信に近い予想を伝えます」
「打ち止め(ラストオーダー)はァ?」
「心配は必要ありません、とミサカはロリコンを冷たい目で見つめながら自分の予想を述べてイタイイタイ!無言チョップを止めなさい、とミサカはあなたにお願いします」
「…………………………………」
一方通行は無言チョップを止め、空を仰ぐ。
かろうじて見える空は雲しかない殺風景なものだった。
「あなたは他の妹達を助けに行くのでしょう?ならばミサカも協力します、とミサカは提案して………」
「まずは病院だァ…その手じゃ、軽いものでも持てやしねェ」
「な………ッ!?」
一方通行の言葉の意味を数秒をかけて理解し、その言葉に御坂妹は怒りを覚えた。
思わず身を乗り出しながら、
「そんなことをしている暇はありません!とミサカは…」
「足手まといだってのがわかンねェかなァ?」
仕方なく、といった表情でため息混じりに一方通行は言った。
御坂妹はその言葉に口をつぐむ。
おそらく、一方通行は御坂妹に傷ついて欲しくないのだろう。あの冷たい表情の裏にそんな気遣いがあるのだろう。
そして、実際に足手まといだということを御坂妹は自覚していた。
御坂妹は悔しさに唇を噛む。
護りたい世界を自分で護れないと言われたことが御坂妹には悔しくて仕方がなかった。
ふざけるな、と噛んだ唇から血が流れる。
キッ、とにらみつけるように御坂妹は一方通行に視線を向けた。
「ミサカにも、やれることはあります…」
「あァ?」
「ミサカにだってやれることが、やりたいことがあるんです!それをあなたに止められる理由はありません!!」
感情が乏しいはずの顔に『怒り』という明確な表情が浮ぶ。
そんな御坂妹を見て、一方通行は唇の端をつり上げながら思う。
自分は間違っていなかった。
一万の妹達(シスターズ)を殺した自分が残り一万を護ろうとしたことに間違いはなかった。
一万の妹達を殺したことをよかったとは言わない。
しかし、残り一万の妹達を救ったことに間違いはなかったと一方通行は自信を持って言える。
そう言えるほどに目の前にいる少女は『善人』だった。
そんな『善人』が『悪党』についていく必要はない。
「何もねェよ…」
心の中で考えていることをおくびに出さずに、一方通行は御坂妹を見る。
「お前にできることなンて、何一つ」
胸がチクリと痛む。
「ありはしねェンだ」
「…………………………………」
御坂妹はその言葉を聞いても一方通行を真っ直ぐ見続けた。
一方通行の瞳に御坂妹が映る。
その表情は意志の強い姉を思い出させ、一方通行は心の中で舌打ちをした。
(妙なとこばっか似やがってェ……)
そして、御坂妹が口を開こうとして、
「やることならさ。君にはたくさんあるよ」
そんな声が路地裏に響いた。
一方通行はゆっくりと振り返り、やってきた『敵』を見据えて、
「予想より早かったな…〔パンドラ〕」
そう呟いた。
二人の少年少女が道を歩いてくるのが見えた。
少年のほうは見たことのないブレザーを着ており染めでもいるのかボサボサの髪は緑。
極め付きには無表情。
あったばかりの妹達を思い出させる、感情のない顔だった。
対する少女はスポーツ少女のような短い髪。
ある程度デフォルトで整った綺麗な顔。
明らかに日本人ではない、青色の目をしていた。
そこまではまだいい。
問題はその服装だ。
まるで劇のような。
世代の違う時代にいるような服装だった。
「………あれが一方通行だよ」
無表情な顔の少年が唇だけを動かして呟いた。
その言葉に少女はニヤリと笑う。
「君が学園都市最強の能力者?弱そうだね~そんな細い体してさ」
一方通行は少女の言葉に対して、小さく笑って答えた。
「お前がローマ正教が開発した能力者?可愛い可愛い女の子がこンな暗いとこに来たらだめだろォ」
「能力者?何を言ってるのかな?ボクら魔術師と、無粋な脳開発なんかを一緒にされるなんて侵害だな」
そりゃとンだ失礼を、と一方通行は耳をほじりながら答えた。
そんな一方通行の仕草に少女はピクリと眉を動かす。
「………………ミーナ」
「うん…わかってる」
何かを確認するようにして二人は言葉を交わした。
「キミは面白いね…殺すのが惜しいくらいだよ」
「なァに言ってンのかわからねェなァ…テメェみたいな三下にオレが殺れるわきゃァねェだろ」
少女はポケットに手を入れながら、
「それはやってみないと…」
その言葉は最後まで続かなかった。
一方通行が懐から出した拳銃で発砲したからだ。
バァン!という銃声と共に少女の頭が弾けたように後ろにのけぞり、よろよろと数歩だけ足を後退させる。
「………あァ!?」
しかしそれだけだった
一方通行は銃口を少女に向けたまま目を見開く。
少女が倒れない。
銃弾で頭を撃ち抜いたはずの少女は傷一つない顔で薄い笑みを浮かべた。
「人が話してる途中に撃つなんて、悪だね~。障壁を作ってなかったら死んでたよ?」
そして、少女は手をいれたポケットから手を出した。
その手の中にはテニスボールくらいのガラス玉が一つ握られている。
「仕返し♪」
少女はそのガラス玉を下投げで一方通行の方に放った。
綺麗なガラス玉は周りのものを写しながら放物線を描くようにして宙を舞う。
「大いなる五大元素の一つ『水』」
少女は笑いながら独り言のように呟く。
「その役は罪を洗い流すことっていうのが有名だけどね。洗い流すことのできないほどの大罪を犯したときには…」
少女はここで言葉を区切り、一方通行に満面の笑みを向けた。
「『水』そのものが断罪を与えるんだよ」
瞬間――――――
ゴキュッ!とガラス玉が破裂した。
破裂したガラス玉の中から信じられないほどの質量の水が溢れだし、大きな津波を形成する。
「この汚れた世界に生きて、ローマ正教の信徒にならないことがすでに神への裏切り」
少女は何かを掴むように頭上に手を伸ばす。
「異教徒のクズに洗い流せる罪なんてないさ!」
それに呼応するように水の流れが渦を巻く。
周りのものを巻き込みながら水の壁が天を突くかのように舞い上がる。
「最初で最期の交渉。そこにいるクローンを渡してくれないかな?」
人間すら軽く飲み込む水流の壁が一方通行と少女の間で待機した。まるで見えない壁に阻まれて通れないような。
水流は一方通行と御坂妹を飲み込みそうに渦を巻いている。交渉を無下にすれば少女はすぐに壁を消すだろう。
おそらく、こんな水などを喰らっても一方通行は傷一つつかない。
しかし、今は御坂妹がいる。一方通行の能力は自分を守る最強の盾だが、他人を守るどころか傷つけてしまうものだ。
そんなもので御坂妹を守れるのか、と少女は聞いているのだ。
これ以上御坂妹を傷つけたくなかったらおとなしく渡せ、と。
しかし、見えない壁を間に挟みながら一方通行は少女にこう言った。
「寝ぼけたこと言ってンじゃねェよ」
死んじゃえ!!と笑いながら少女は叫ぶ。
見えない壁から解放された、コンクリートを簡単に粉砕する高さ5メートルの水の壁は獲物を見つけ、歓喜の声を上げながら一方通行と御坂妹のほうに雪崩れ込んだ。
一方通行はゆっくりと振り返り、やってきた『敵』を見据えて、
「予想より早かったな…〔パンドラ〕」
そう呟いた。
二人の少年少女が道を歩いてくるのが見えた。
少年のほうは見たことのないブレザーを着ており染めでもいるのかボサボサの髪は緑。
極め付きには無表情。
あったばかりの妹達を思い出させる、感情のない顔だった。
対する少女はスポーツ少女のような短い髪。
ある程度デフォルトで整った綺麗な顔。
明らかに日本人ではない、青色の目をしていた。
そこまではまだいい。
問題はその服装だ。
まるで劇のような。
世代の違う時代にいるような服装だった。
「………あれが一方通行だよ」
無表情な顔の少年が唇だけを動かして呟いた。
その言葉に少女はニヤリと笑う。
「君が学園都市最強の能力者?弱そうだね~そんな細い体してさ」
一方通行は少女の言葉に対して、小さく笑って答えた。
「お前がローマ正教が開発した能力者?可愛い可愛い女の子がこンな暗いとこに来たらだめだろォ」
「能力者?何を言ってるのかな?ボクら魔術師と、無粋な脳開発なんかを一緒にされるなんて侵害だな」
そりゃとンだ失礼を、と一方通行は耳をほじりながら答えた。
そんな一方通行の仕草に少女はピクリと眉を動かす。
「………………ミーナ」
「うん…わかってる」
何かを確認するようにして二人は言葉を交わした。
「キミは面白いね…殺すのが惜しいくらいだよ」
「なァに言ってンのかわからねェなァ…テメェみたいな三下にオレが殺れるわきゃァねェだろ」
少女はポケットに手を入れながら、
「それはやってみないと…」
その言葉は最後まで続かなかった。
一方通行が懐から出した拳銃で発砲したからだ。
バァン!という銃声と共に少女の頭が弾けたように後ろにのけぞり、よろよろと数歩だけ足を後退させる。
「………あァ!?」
しかしそれだけだった
一方通行は銃口を少女に向けたまま目を見開く。
少女が倒れない。
銃弾で頭を撃ち抜いたはずの少女は傷一つない顔で薄い笑みを浮かべた。
「人が話してる途中に撃つなんて、悪だね~。障壁を作ってなかったら死んでたよ?」
そして、少女は手をいれたポケットから手を出した。
その手の中にはテニスボールくらいのガラス玉が一つ握られている。
「仕返し♪」
少女はそのガラス玉を下投げで一方通行の方に放った。
綺麗なガラス玉は周りのものを写しながら放物線を描くようにして宙を舞う。
「大いなる五大元素の一つ『水』」
少女は笑いながら独り言のように呟く。
「その役は罪を洗い流すことっていうのが有名だけどね。洗い流すことのできないほどの大罪を犯したときには…」
少女はここで言葉を区切り、一方通行に満面の笑みを向けた。
「『水』そのものが断罪を与えるんだよ」
瞬間――――――
ゴキュッ!とガラス玉が破裂した。
破裂したガラス玉の中から信じられないほどの質量の水が溢れだし、大きな津波を形成する。
「この汚れた世界に生きて、ローマ正教の信徒にならないことがすでに神への裏切り」
少女は何かを掴むように頭上に手を伸ばす。
「異教徒のクズに洗い流せる罪なんてないさ!」
それに呼応するように水の流れが渦を巻く。
周りのものを巻き込みながら水の壁が天を突くかのように舞い上がる。
「最初で最期の交渉。そこにいるクローンを渡してくれないかな?」
人間すら軽く飲み込む水流の壁が一方通行と少女の間で待機した。まるで見えない壁に阻まれて通れないような。
水流は一方通行と御坂妹を飲み込みそうに渦を巻いている。交渉を無下にすれば少女はすぐに壁を消すだろう。
おそらく、こんな水などを喰らっても一方通行は傷一つつかない。
しかし、今は御坂妹がいる。一方通行の能力は自分を守る最強の盾だが、他人を守るどころか傷つけてしまうものだ。
そんなもので御坂妹を守れるのか、と少女は聞いているのだ。
これ以上御坂妹を傷つけたくなかったらおとなしく渡せ、と。
しかし、見えない壁を間に挟みながら一方通行は少女にこう言った。
「寝ぼけたこと言ってンじゃねェよ」
死んじゃえ!!と笑いながら少女は叫ぶ。
見えない壁から解放された、コンクリートを簡単に粉砕する高さ5メートルの水の壁は獲物を見つけ、歓喜の声を上げながら一方通行と御坂妹のほうに雪崩れ込んだ。
<11:12 AM>
上条は美琴に連れられ一つの建物の地下駐車場にたどり着いた。
「御坂…ここに何かあるのか?」
面倒くさそうに声を出しながら、上条は美琴に尋ねた。
上条は疲れきっていた。
その理由は単純。美琴が上条の右腕に抱きつくようにくっついてきたからだ。
普通高校生、上条当麻には精神的ダメージが大きすぎる。
第一に周りの目が痛い。美琴が有名な常盤台の制服を着てるからか周りから好奇の目でみられ、後ろ指を刺され上条は『もういやぁ~!』と叫びそうになった。
そんな上条のことなんて知らない美琴は少し目を伏せながら問に答える。
「アンタに…ううん…上条当麻に聞いて欲しいことがあるの」
「やっと、自分の日ごろの行いの悪さを自覚したのか。よしこい!誠意ある謝罪をきっちり受け止め―――」
言い終わる前に美琴は上条の顔をグーパンチした。
グフォ…、と上条の口から声が漏れる。
「………空気読みなさいよ、このバカ」
「すいませんでした」
上条は頬を左手でさすりながら謝罪の言葉を口にする。
美琴はそんな上条を見て、もう、と頬を膨らませた。
「あんたのせいで雰囲気台無しじゃない、どうすんのよこれ?」
「そんなこと言われても……、」
雰囲気ってなんのだよ、と上条はうめき、
「そもそもなんでこんなとこまで来たんだ?駐車場なんてなんの楽しみもないだろ?」
まさか人気のない場所で上条さんをやる気ですか、と一人戦々恐々する。
そんな上条を見て、美琴はわざとらしいため息を吐く。
「なんでデートに来てまでケンカしないといけないのよ?」
「そうだ、それを聞きたかったんだ」
上条は先ほどから思っていたことを口にする。
「いつお前と俺が恋人同士になったんだ?意味がわから―――」
口を塞ぐように再びグーパンチが飛んできた。心なしかさっきより痛い。
「どうなったらそんな結論になんのよ…、」
「いや、だってデートって言えば恋人同士がやるもんだろ?」
上条は知識の中にある『デート』という単語の意味を引きずり出す。
「お前がデートって言うからおかしいと思ってよ」
「別に恋人同士じゃなくてもデートで言うじゃない」
美琴が空いた手で髪の毛をいじる。
「そんなことも知らないの、常識じゃない?」
ぐぅ、と上条は言葉を詰まらせた。
日ごろから電撃飛ばしてくるお嬢様に常識がどうこう言われたくない。
「ともかく、私は当麻に言いたいことがあるの!!」
そう言うと美琴は上条の右腕から手を離して正面に立ち、上条を見据える。
「誰にも聞かれたくないから……上条当麻だけに聞いて欲しいから」
顔を赤らめながら言う美琴に上条は再びドキンとした。
(御坂が……御坂が可愛く見えるッ!?)
「目を閉じて」
「へ?」
「はやくッ!!」
うええい!とうろたえながら上条は目を閉じた。視界が暗闇に覆われる。
「ねえ…アンタは私の言うことを聞いてくれる?」
「で、できる範囲でなら」
そう…と美琴は呟いた。
(なんだこれ?なんだこの雰囲気?なんなんですかこの状況はああああああああああ!?)
手から汗がにじみ出てきた。
視界がゼロなため一層焦りを加速させる。
「なら…一つだけ聞いてくれないかしら……ホントに大事なことを一つだけ」
震えるような声で美琴は話す。
目を閉じた上条には美琴の姿が見えないが、たぶん震えているのだろう。
見えない美琴は拳を握り、まっすぐと上条を見ているのだと予想できた。
ここまで来て、やっと上条は美琴が何をしたいのかを理解した。
(雰囲気って……そういうことかよ)
「ああ。聞いてやる。悩みがあるなら俺が聞いてやるから」
「ホントに?」
美琴は今にも泣きそうな声を絞り出す。
上条は見えない美琴に笑いかけた。
「ホントだ。約束する」
手探りで美琴の肩に右手を置くと、右手から伝わる感触は思った通り震えだった。
「じゃあ…言うよ?」
美琴が肩に置かれた上条の右手を握る感触がした。
「私、御坂美琴は…」
上条は胸の高鳴りが大きくなっているのを自覚する。
(俺が緊張してんのかな…?)
心の中で苦笑する上条。
そんな上条を尻目に美琴は言葉を続ける。
「あなた、上条当麻のことが…」
その続きを予想し、上条は息を呑む。
そして、美琴が震える口を開いた。
「御坂…ここに何かあるのか?」
面倒くさそうに声を出しながら、上条は美琴に尋ねた。
上条は疲れきっていた。
その理由は単純。美琴が上条の右腕に抱きつくようにくっついてきたからだ。
普通高校生、上条当麻には精神的ダメージが大きすぎる。
第一に周りの目が痛い。美琴が有名な常盤台の制服を着てるからか周りから好奇の目でみられ、後ろ指を刺され上条は『もういやぁ~!』と叫びそうになった。
そんな上条のことなんて知らない美琴は少し目を伏せながら問に答える。
「アンタに…ううん…上条当麻に聞いて欲しいことがあるの」
「やっと、自分の日ごろの行いの悪さを自覚したのか。よしこい!誠意ある謝罪をきっちり受け止め―――」
言い終わる前に美琴は上条の顔をグーパンチした。
グフォ…、と上条の口から声が漏れる。
「………空気読みなさいよ、このバカ」
「すいませんでした」
上条は頬を左手でさすりながら謝罪の言葉を口にする。
美琴はそんな上条を見て、もう、と頬を膨らませた。
「あんたのせいで雰囲気台無しじゃない、どうすんのよこれ?」
「そんなこと言われても……、」
雰囲気ってなんのだよ、と上条はうめき、
「そもそもなんでこんなとこまで来たんだ?駐車場なんてなんの楽しみもないだろ?」
まさか人気のない場所で上条さんをやる気ですか、と一人戦々恐々する。
そんな上条を見て、美琴はわざとらしいため息を吐く。
「なんでデートに来てまでケンカしないといけないのよ?」
「そうだ、それを聞きたかったんだ」
上条は先ほどから思っていたことを口にする。
「いつお前と俺が恋人同士になったんだ?意味がわから―――」
口を塞ぐように再びグーパンチが飛んできた。心なしかさっきより痛い。
「どうなったらそんな結論になんのよ…、」
「いや、だってデートって言えば恋人同士がやるもんだろ?」
上条は知識の中にある『デート』という単語の意味を引きずり出す。
「お前がデートって言うからおかしいと思ってよ」
「別に恋人同士じゃなくてもデートで言うじゃない」
美琴が空いた手で髪の毛をいじる。
「そんなことも知らないの、常識じゃない?」
ぐぅ、と上条は言葉を詰まらせた。
日ごろから電撃飛ばしてくるお嬢様に常識がどうこう言われたくない。
「ともかく、私は当麻に言いたいことがあるの!!」
そう言うと美琴は上条の右腕から手を離して正面に立ち、上条を見据える。
「誰にも聞かれたくないから……上条当麻だけに聞いて欲しいから」
顔を赤らめながら言う美琴に上条は再びドキンとした。
(御坂が……御坂が可愛く見えるッ!?)
「目を閉じて」
「へ?」
「はやくッ!!」
うええい!とうろたえながら上条は目を閉じた。視界が暗闇に覆われる。
「ねえ…アンタは私の言うことを聞いてくれる?」
「で、できる範囲でなら」
そう…と美琴は呟いた。
(なんだこれ?なんだこの雰囲気?なんなんですかこの状況はああああああああああ!?)
手から汗がにじみ出てきた。
視界がゼロなため一層焦りを加速させる。
「なら…一つだけ聞いてくれないかしら……ホントに大事なことを一つだけ」
震えるような声で美琴は話す。
目を閉じた上条には美琴の姿が見えないが、たぶん震えているのだろう。
見えない美琴は拳を握り、まっすぐと上条を見ているのだと予想できた。
ここまで来て、やっと上条は美琴が何をしたいのかを理解した。
(雰囲気って……そういうことかよ)
「ああ。聞いてやる。悩みがあるなら俺が聞いてやるから」
「ホントに?」
美琴は今にも泣きそうな声を絞り出す。
上条は見えない美琴に笑いかけた。
「ホントだ。約束する」
手探りで美琴の肩に右手を置くと、右手から伝わる感触は思った通り震えだった。
「じゃあ…言うよ?」
美琴が肩に置かれた上条の右手を握る感触がした。
「私、御坂美琴は…」
上条は胸の高鳴りが大きくなっているのを自覚する。
(俺が緊張してんのかな…?)
心の中で苦笑する上条。
そんな上条を尻目に美琴は言葉を続ける。
「あなた、上条当麻のことが…」
その続きを予想し、上条は息を呑む。
そして、美琴が震える口を開いた。
「殺したくて殺したくて仕方がありません」
は?と呟き目を開けると目の前の『御坂美琴』が後ろに手を回しているのが見えた。
『御坂美琴』は今まで見たことのないほどの凶悪な笑みを浮かべ、背中に隠していた銃を手にとり上条に突きつける。
「み、みさ…か?」
目の前の出来事に体がついていかない。
その前に目の前の出来事を受け入れられない。
さっきまで楽しく話していた『御坂美琴』が上条当麻に銃を突きつけて、上条当麻が『御坂美琴』に殺されかけていることが理解できない。
なぜ、美琴が銃を持っているのだろう。
なぜ、美琴が上条に銃を突きつけているのであろう。
なぜ、上条は美琴に殺されそうになっているのだろう。
そのすべてが上条には理解できない。
完全に思考が停止した。
「アハハハハァハハハハァハハハ!!ずっと…ずっとこの時を待ってたよ、当麻ぁ」
銃を片手に美琴は笑う。
「ねぇ初めて出会ったときのこと覚えてる?」
「………………、」
「覚えてないよね。だって当麻は記憶喪失だもんねえ!!」
「え………ッ!?なんでそれを………」
上条の背筋に冷たい何かが走った。
目の前の『御坂美琴』を彼女を知るものが見たら『偽物だ』と言うだろう。
目の前の『御坂美琴』は見るものを凍らせるような笑みを浮かべる。
「お前は……お前は御坂……『御坂美琴』なのか?」
「それ以外の誰に見えるの?私は正真正銘、皆大好き美琴ちゃんよ」
肩まで伸びる髪に、勝ち気な瞳。
上条より少し背の短い身長。
常盤台中学の制服を着た目の前の少女はどこからどう見ても、上条のよく知る『御坂美琴』だった。
極めつけは右手だ。
上条の右手には超能力であろうが魔術であろうが問答無用で打ち消す『幻想殺し(イマジンブレイカー)』が宿っている。
その右手で今この瞬間、『御坂美琴』に触れているのだ。
(変装じゃない?魔術でも超能力でも……ならこいつは誰なんだ!?)
「お前はいったい…誰なんだ!?」
思わず叫ぶ上条。
それに対し『御坂美琴』は、
「だからね当麻…」
悪意のある視線で上条を貫いた。
「私の名前は御坂美琴って言ってんでしょ?いい加減覚えなさいよクソバカ」
そして『御坂美琴』は一瞬のためらいもなく引き金を引いた。
誰もいない地下駐車場に一発の銃声が響き、血が辺りに撒き散らされる。
『御坂美琴』は今まで見たことのないほどの凶悪な笑みを浮かべ、背中に隠していた銃を手にとり上条に突きつける。
「み、みさ…か?」
目の前の出来事に体がついていかない。
その前に目の前の出来事を受け入れられない。
さっきまで楽しく話していた『御坂美琴』が上条当麻に銃を突きつけて、上条当麻が『御坂美琴』に殺されかけていることが理解できない。
なぜ、美琴が銃を持っているのだろう。
なぜ、美琴が上条に銃を突きつけているのであろう。
なぜ、上条は美琴に殺されそうになっているのだろう。
そのすべてが上条には理解できない。
完全に思考が停止した。
「アハハハハァハハハハァハハハ!!ずっと…ずっとこの時を待ってたよ、当麻ぁ」
銃を片手に美琴は笑う。
「ねぇ初めて出会ったときのこと覚えてる?」
「………………、」
「覚えてないよね。だって当麻は記憶喪失だもんねえ!!」
「え………ッ!?なんでそれを………」
上条の背筋に冷たい何かが走った。
目の前の『御坂美琴』を彼女を知るものが見たら『偽物だ』と言うだろう。
目の前の『御坂美琴』は見るものを凍らせるような笑みを浮かべる。
「お前は……お前は御坂……『御坂美琴』なのか?」
「それ以外の誰に見えるの?私は正真正銘、皆大好き美琴ちゃんよ」
肩まで伸びる髪に、勝ち気な瞳。
上条より少し背の短い身長。
常盤台中学の制服を着た目の前の少女はどこからどう見ても、上条のよく知る『御坂美琴』だった。
極めつけは右手だ。
上条の右手には超能力であろうが魔術であろうが問答無用で打ち消す『幻想殺し(イマジンブレイカー)』が宿っている。
その右手で今この瞬間、『御坂美琴』に触れているのだ。
(変装じゃない?魔術でも超能力でも……ならこいつは誰なんだ!?)
「お前はいったい…誰なんだ!?」
思わず叫ぶ上条。
それに対し『御坂美琴』は、
「だからね当麻…」
悪意のある視線で上条を貫いた。
「私の名前は御坂美琴って言ってんでしょ?いい加減覚えなさいよクソバカ」
そして『御坂美琴』は一瞬のためらいもなく引き金を引いた。
誰もいない地下駐車場に一発の銃声が響き、血が辺りに撒き散らされる。