香焼の学園都市トラベル
仏教で使われる道具に五鈷(ごこ)と独鈷(とっこ)というものがあるのを知っているだろうか?
この道具は人の煩悩を打ち砕く仏の智慧を象徴するものといわれている。
この道具は人の煩悩を打ち砕く仏の智慧を象徴するものといわれている。
その五鈷と独鈷がひょんなことから、天草式十字凄教の魔術師少年・香焼の元へたどり着く。
香焼と五鈷・独鈷が交わる時、物語は始まる―
香焼と五鈷・独鈷が交わる時、物語は始まる―
第1章 天草の幼き魔術師 kouyagi_travel_to_gakuentoshi
1
天草式が本拠地を置く、ロンドンの日本人街。
ここは天草式がイギリス清教の傘下に入って以来、住みかとなり又治安維持も努めている。
そんな天草式に所属する少年・香焼はとある事情で、元教皇代理・建宮の部屋へ来ていた。
「で、何の用なのよな?」
部屋のなかにあるちゃぶ台の向かいから建宮が香焼に問いかける。
「教皇代理!」
香焼は勢いよく建宮へ詰める
「もうその呼び方はやめるのよな。」
そんな建宮の言葉を無視して続ける。
「俺を今度の、学園都市への遠征メンバーに入れてください!」
そう言って、香焼は机をバンッ!と叩く
建宮は五和の注いでくれたお茶をひとすすりし、
「ダーメ。」
速攻で、香焼の願いを却下した。
「というか、なんでお前が遠征の話を知ってるのよな?アレはイギリス清教の重役しか知らないはずなのよな。」
実は、今度天草式の数人がこの間起きた戦争の事後処理の為に、学園都市へ向かうことになっていた。
だがこのことは、イギリス清教の重役連中しか知らないはずなのだ。何しろ、戦後まもないこの時期に魔術師が学園都市に
踏み込むと多くの人に知られると、あまりかんばしくない状況になると思われたからだ。
ここは天草式がイギリス清教の傘下に入って以来、住みかとなり又治安維持も努めている。
そんな天草式に所属する少年・香焼はとある事情で、元教皇代理・建宮の部屋へ来ていた。
「で、何の用なのよな?」
部屋のなかにあるちゃぶ台の向かいから建宮が香焼に問いかける。
「教皇代理!」
香焼は勢いよく建宮へ詰める
「もうその呼び方はやめるのよな。」
そんな建宮の言葉を無視して続ける。
「俺を今度の、学園都市への遠征メンバーに入れてください!」
そう言って、香焼は机をバンッ!と叩く
建宮は五和の注いでくれたお茶をひとすすりし、
「ダーメ。」
速攻で、香焼の願いを却下した。
「というか、なんでお前が遠征の話を知ってるのよな?アレはイギリス清教の重役しか知らないはずなのよな。」
実は、今度天草式の数人がこの間起きた戦争の事後処理の為に、学園都市へ向かうことになっていた。
だがこのことは、イギリス清教の重役連中しか知らないはずなのだ。何しろ、戦後まもないこの時期に魔術師が学園都市に
踏み込むと多くの人に知られると、あまりかんばしくない状況になると思われたからだ。
149 :KGT:2010/04/28(水) 00:13:38 ID:G.lJ1ags
いや、だって最近ずっと五和が舞い上がってて、あれに気づかないほうがおかしいすよ。」
しかし、遠征メンバーに選ばれた五和が愛しの上条当麻に会えるということで、かなり舞い上がっており、
何があるかは天草式に筒抜けも同然だった。
毎日鼻歌を歌いながらカレンダーに×をつけていたり、ロンドンのブティックショップを練り歩いたり、
恋愛小説や恋愛マニュアル本を読み込んだり、どこか上の空で得意の料理に失敗したりと、天草式全員が気づくほどの気の舞い上がりようだったのだ。
(五和…、恋は盲目ってやつなのよな…)
建宮は心の中で溜息をつくと、
「大体、お前は学校があるのよ、学園都市なんて行く暇あるなら学校行ってあのフロリスとか言う奴といちゃいちゃしてるのよな。」
と、とりあえず正論を言ってみる。
香焼はまだ一応、子供なので現地の学校へ通っているのだ。
「学校なんて、サボればいいじゃないすか!つか、なんでフロリス!?」
香焼は息を荒げながら反論する。
「いやいや、あの娘、最近良くここら辺で会うのよな。で、会うたびに「あのぅ、香焼くんはいますか?」とか恥じらいながら聞いてくる
のよな。香焼、あの娘絶対お前に気があるのよな。」
建宮はニヤニヤしながら答える。
「嘘だぁ!だってアイツ常に俺にツンツンしてるんすよ!?せっかく戦争のとき助けてやったのに。」
実は香焼、あの戦争時に身のより所の無くなったフロリスを庇い騎士達と戦ったりして、立派なフラグを立ててしまったのだ。
その後、フロリスはたっての願いで香焼と同じ学校に通うこととなっている。
「香焼。それはツンデレって奴なのよな。好きな人に辛く当たっちゃうっていう…」
「教皇代理。そんな都市伝説みたいなこと信じてるんすか?だから、いつまでたっても結婚できないんすよ…」
そう言って香焼が溜息をつくと、建宮の方からビキリという不穏な音がした。
「香焼ーッ!それ以上言うとフランベルジェで切り裂いてやるのよなーッ!!!」
建宮は壁に立てかけてあったフランベルジェを手に取り、振り下ろす。
結婚適齢期を越えても未だにまともな恋愛をしたことのない建宮には、結婚の二文字は禁句らしい。
「おわわわ!教皇代理!落ち着いて!落ち着いて!」
その一振りを間一髪でよけた香焼は建宮へ向かって叫ぶ。
だが、建宮の怒りは収まらず二振り目の為に、フランベルジェを振りかぶる。
「なにが結婚なのよ!俺にはディスプレイの中に嫁がいるからいいのよな!」
建宮は最近、日本発のオタク文化に凝っており、それで心を癒しているらしい。
まともな恋愛をしたことが無いのに、ツンデレだの恋愛の知識に詳しいのはそのオタク文化の一つ、ギャルゲーにあるということだ。
「のわッ!」
香焼は慌てて飛びのきフランベルジェを避けようとする。
だがフランベルジェは振り下ろされなかった。
何故なら台所にいた五和が騒ぎを聞きつけ、茶の間の障子をスパーン!と開け、
何故か手に持っていた一升瓶で建宮の頭をぶったたいたのだ。五和の本気の一発を食らった建宮は伸びてしまっている。
どうやら、五和は上条と会う緊張を紛らわす為に昼間から酒を飲んでいたらしく
「しんみりと1人酒を楽しんでたのに、うるさいですよ?建宮さん♪」
そして、完全に酔っ払っている五和は気を失った建宮をズルズルと引っ張っていた。
「た、助かった…」
とりあえず香焼は一難を逃れた。
(どうしよう、遠征の件は女教皇か最大主教に頼むかな…)
建宮はのびてしまってどうしようもないので、とりあえず女教皇・神裂火織のいる女子寮へ向かうために香焼は教皇代理の家を出た。
いや、だって最近ずっと五和が舞い上がってて、あれに気づかないほうがおかしいすよ。」
しかし、遠征メンバーに選ばれた五和が愛しの上条当麻に会えるということで、かなり舞い上がっており、
何があるかは天草式に筒抜けも同然だった。
毎日鼻歌を歌いながらカレンダーに×をつけていたり、ロンドンのブティックショップを練り歩いたり、
恋愛小説や恋愛マニュアル本を読み込んだり、どこか上の空で得意の料理に失敗したりと、天草式全員が気づくほどの気の舞い上がりようだったのだ。
(五和…、恋は盲目ってやつなのよな…)
建宮は心の中で溜息をつくと、
「大体、お前は学校があるのよ、学園都市なんて行く暇あるなら学校行ってあのフロリスとか言う奴といちゃいちゃしてるのよな。」
と、とりあえず正論を言ってみる。
香焼はまだ一応、子供なので現地の学校へ通っているのだ。
「学校なんて、サボればいいじゃないすか!つか、なんでフロリス!?」
香焼は息を荒げながら反論する。
「いやいや、あの娘、最近良くここら辺で会うのよな。で、会うたびに「あのぅ、香焼くんはいますか?」とか恥じらいながら聞いてくる
のよな。香焼、あの娘絶対お前に気があるのよな。」
建宮はニヤニヤしながら答える。
「嘘だぁ!だってアイツ常に俺にツンツンしてるんすよ!?せっかく戦争のとき助けてやったのに。」
実は香焼、あの戦争時に身のより所の無くなったフロリスを庇い騎士達と戦ったりして、立派なフラグを立ててしまったのだ。
その後、フロリスはたっての願いで香焼と同じ学校に通うこととなっている。
「香焼。それはツンデレって奴なのよな。好きな人に辛く当たっちゃうっていう…」
「教皇代理。そんな都市伝説みたいなこと信じてるんすか?だから、いつまでたっても結婚できないんすよ…」
そう言って香焼が溜息をつくと、建宮の方からビキリという不穏な音がした。
「香焼ーッ!それ以上言うとフランベルジェで切り裂いてやるのよなーッ!!!」
建宮は壁に立てかけてあったフランベルジェを手に取り、振り下ろす。
結婚適齢期を越えても未だにまともな恋愛をしたことのない建宮には、結婚の二文字は禁句らしい。
「おわわわ!教皇代理!落ち着いて!落ち着いて!」
その一振りを間一髪でよけた香焼は建宮へ向かって叫ぶ。
だが、建宮の怒りは収まらず二振り目の為に、フランベルジェを振りかぶる。
「なにが結婚なのよ!俺にはディスプレイの中に嫁がいるからいいのよな!」
建宮は最近、日本発のオタク文化に凝っており、それで心を癒しているらしい。
まともな恋愛をしたことが無いのに、ツンデレだの恋愛の知識に詳しいのはそのオタク文化の一つ、ギャルゲーにあるということだ。
「のわッ!」
香焼は慌てて飛びのきフランベルジェを避けようとする。
だがフランベルジェは振り下ろされなかった。
何故なら台所にいた五和が騒ぎを聞きつけ、茶の間の障子をスパーン!と開け、
何故か手に持っていた一升瓶で建宮の頭をぶったたいたのだ。五和の本気の一発を食らった建宮は伸びてしまっている。
どうやら、五和は上条と会う緊張を紛らわす為に昼間から酒を飲んでいたらしく
「しんみりと1人酒を楽しんでたのに、うるさいですよ?建宮さん♪」
そして、完全に酔っ払っている五和は気を失った建宮をズルズルと引っ張っていた。
「た、助かった…」
とりあえず香焼は一難を逃れた。
(どうしよう、遠征の件は女教皇か最大主教に頼むかな…)
建宮はのびてしまってどうしようもないので、とりあえず女教皇・神裂火織のいる女子寮へ向かうために香焼は教皇代理の家を出た。
2
香焼は日本人街を出て、必要悪の教会の女子寮へ向かうためロンドンの街を歩いていた。
今は丁度昼時で、街は活気にあふれている。
香焼がトボトボと歩いていると、
「あれ?香焼?アンタなにやってんの!?」
後ろから聞きなれた声がした。
声のしたほうを振り向くと、そこには学校の制服姿のフロリスがいた。
最近、イギリスの女子学生の間では日本の女子高生の格好を真似るのが流行っているらしく、
フロリスもその例外ではないのか、黒いニーソにかなり短くなっているスカート、上はブラウスとカーディガンを着用している。
いかにも、日本の女子高生らしい格好だ。
香焼はフロリスのユニフォーム姿に見慣れていた為か、制服効果により普段よりカワイク見えてしまう。
「どうしたの?ボーッとして?」
思わずフロリスに見とれていた香焼はハッと我に返る。
「いや、なんでもないすよ!つか今日休日なのになんで制服なんすか!?」
「いや、ちょっと学校に用事があって…それにユニフォーム姿は目立つし…、何?似合ってないって言いたいの?」
フロリスは自信の勝手な勘違いで、少し機嫌を悪くする。
「いや、似合ってるっすよ…、カ、カワイイと思うすよ。」
「か、カワイイ!?ななな、何恥ずかしいこと言ってんの!バッカじゃないの!?」
顔を真っ赤にしてフロリスが言い返してくる。
「いや、褒めただけなのにバカ呼ばわりって…。つか用が無いんなら俺いくっすよ?」
どうにもフロリスのテンションについていけない香焼は先を急ごうとする
「用ならある!コレ拾ったから、アンタにあげようとおもったの!」
そう言ってフロリスは何かを握った手を突き出す。
「なんだコレ?」
「分かんないけど、さっきバッキンガム宮殿に行ってきてさ、何か大掃除したら色々出てきたからコレもらったの。
よく知らないけど、特殊な霊装らしいよ?」
今は丁度昼時で、街は活気にあふれている。
香焼がトボトボと歩いていると、
「あれ?香焼?アンタなにやってんの!?」
後ろから聞きなれた声がした。
声のしたほうを振り向くと、そこには学校の制服姿のフロリスがいた。
最近、イギリスの女子学生の間では日本の女子高生の格好を真似るのが流行っているらしく、
フロリスもその例外ではないのか、黒いニーソにかなり短くなっているスカート、上はブラウスとカーディガンを着用している。
いかにも、日本の女子高生らしい格好だ。
香焼はフロリスのユニフォーム姿に見慣れていた為か、制服効果により普段よりカワイク見えてしまう。
「どうしたの?ボーッとして?」
思わずフロリスに見とれていた香焼はハッと我に返る。
「いや、なんでもないすよ!つか今日休日なのになんで制服なんすか!?」
「いや、ちょっと学校に用事があって…それにユニフォーム姿は目立つし…、何?似合ってないって言いたいの?」
フロリスは自信の勝手な勘違いで、少し機嫌を悪くする。
「いや、似合ってるっすよ…、カ、カワイイと思うすよ。」
「か、カワイイ!?ななな、何恥ずかしいこと言ってんの!バッカじゃないの!?」
顔を真っ赤にしてフロリスが言い返してくる。
「いや、褒めただけなのにバカ呼ばわりって…。つか用が無いんなら俺いくっすよ?」
どうにもフロリスのテンションについていけない香焼は先を急ごうとする
「用ならある!コレ拾ったから、アンタにあげようとおもったの!」
そう言ってフロリスは何かを握った手を突き出す。
「なんだコレ?」
「分かんないけど、さっきバッキンガム宮殿に行ってきてさ、何か大掃除したら色々出てきたからコレもらったの。
よく知らないけど、特殊な霊装らしいよ?」
そして、フロリスはその何かを香焼に押し付けてくる。そのとき、一瞬だけフロリスの手が香焼と触れ合う。
「ッ!!!!!」
その受け取った”何か”から目を離し香焼が顔を上げフロリスを見ると、タコのように真っ赤になっていた。
「どうしたんすか?フロリス?」
「ななな、何でもないッ!じゃあ、ワタシ帰るからッ!!」
そう言うとフロリスは香焼の目の前からあっという間に消え去ってしまった。
「なんなんだ?アイツ。」
フロリスの行動を不思議に思いながらも、受け取った物をもう一度確認してみる。
それは、二つあり、一つはダンベルのような形状で両端の膨らんだ部分が5個に分かれていて色は金。
もう一つは、ナイフのような形状で色は銀。
手で握れるぐらいの大きさではあるが、その大きさの割には重みがあった。
「これは、確か…仏具だったよなぁ…?」
仏具というのは、仏教で使われる道具のことであり、仏壇なども仏具の一つといわれる。
こう見えても、香焼は天草式の魔術師なので仏教などの法具に関しては詳しいのだ。
「確か…五鈷と独鈷だっけ?魔術的意味は、”煩悩を打ち消す”だったっけ?つかなんでこんな物がバッキンガムに?」
とりあえず、五鈷・独鈷よりも今の香焼にとっては学園都市遠征の問題のほうが優先事項なので、ちゃっちゃと女子寮へ向かうことにした。
「ッ!!!!!」
その受け取った”何か”から目を離し香焼が顔を上げフロリスを見ると、タコのように真っ赤になっていた。
「どうしたんすか?フロリス?」
「ななな、何でもないッ!じゃあ、ワタシ帰るからッ!!」
そう言うとフロリスは香焼の目の前からあっという間に消え去ってしまった。
「なんなんだ?アイツ。」
フロリスの行動を不思議に思いながらも、受け取った物をもう一度確認してみる。
それは、二つあり、一つはダンベルのような形状で両端の膨らんだ部分が5個に分かれていて色は金。
もう一つは、ナイフのような形状で色は銀。
手で握れるぐらいの大きさではあるが、その大きさの割には重みがあった。
「これは、確か…仏具だったよなぁ…?」
仏具というのは、仏教で使われる道具のことであり、仏壇なども仏具の一つといわれる。
こう見えても、香焼は天草式の魔術師なので仏教などの法具に関しては詳しいのだ。
「確か…五鈷と独鈷だっけ?魔術的意味は、”煩悩を打ち消す”だったっけ?つかなんでこんな物がバッキンガムに?」
とりあえず、五鈷・独鈷よりも今の香焼にとっては学園都市遠征の問題のほうが優先事項なので、ちゃっちゃと女子寮へ向かうことにした。
3
神裂火織は悩んでいた。
それは例の学園都市遠征のメンバーについてだ。
(やはり、遠征メンバーに五和を入れるのはやめましょうか…)
彼女が何故こんなことを思っているのか。それは彼女自身が自らの気持ちに気づいた為だ。
ついこの間の戦争で、彼女にとっての大切な人である”禁書目録”こインデックスという少女を再びあの少年に助けられた。
あれ以来彼女は、あの少年のことを考えるだけで夜も眠れなくなるほどだった。
そして、彼女は気づいた。これが”恋”なのだと。
かりにもまだ18歳である、神裂にとってこの想いは重い物だった。
自分があの少年に恋をしていると気づいた以上、同じ対象に同じ想いを抱く少女を対象に近づけたくなくなるのはごくごく自然なことである。
自らの魔法名である「救われぬ者に救いの手を」という言葉を捻じ曲げてしまうほど、神裂にとって、この想いは重要な物だった。
(い、いけませんいけません!このような傲慢な感情をもってしまうなど私もまだまだ未熟ですね…)
いろいろと神裂が悩んでいるところに、他人の声が割り込んでくる。
「神裂さん?来客者ですよ!」
それは、神裂の部屋のドアの外からの声だった。声の主はこの女子寮にすむシスター・ルチア。
「聞いてますか?神裂さん!?」
「は。はい!今行きます!」
一旦思考を中断し、神裂は部屋から出る。
するとそこには、ルチアと並んで天草式の少年魔術師・香焼がいた。
「ち、ちわっす。」
女子寮という空間にやや緊張気味の香焼はどこか動きがぎこちない。
「どうしたんですか香焼?」
「いや、ちょっと女教皇様に頼みたいことがあるんすよ…」
香焼はかなり深刻そうな顔をしている。
並ならぬ空気を感じたのかルチアは「私はこれで…」と言いながら立ち去っていく。
「まあ、立ち話もなんですから部屋に入りなさい、香焼。」
「は、はい!」
神裂火織は悩んでいた。
それは例の学園都市遠征のメンバーについてだ。
(やはり、遠征メンバーに五和を入れるのはやめましょうか…)
彼女が何故こんなことを思っているのか。それは彼女自身が自らの気持ちに気づいた為だ。
ついこの間の戦争で、彼女にとっての大切な人である”禁書目録”こインデックスという少女を再びあの少年に助けられた。
あれ以来彼女は、あの少年のことを考えるだけで夜も眠れなくなるほどだった。
そして、彼女は気づいた。これが”恋”なのだと。
かりにもまだ18歳である、神裂にとってこの想いは重い物だった。
自分があの少年に恋をしていると気づいた以上、同じ対象に同じ想いを抱く少女を対象に近づけたくなくなるのはごくごく自然なことである。
自らの魔法名である「救われぬ者に救いの手を」という言葉を捻じ曲げてしまうほど、神裂にとって、この想いは重要な物だった。
(い、いけませんいけません!このような傲慢な感情をもってしまうなど私もまだまだ未熟ですね…)
いろいろと神裂が悩んでいるところに、他人の声が割り込んでくる。
「神裂さん?来客者ですよ!」
それは、神裂の部屋のドアの外からの声だった。声の主はこの女子寮にすむシスター・ルチア。
「聞いてますか?神裂さん!?」
「は。はい!今行きます!」
一旦思考を中断し、神裂は部屋から出る。
するとそこには、ルチアと並んで天草式の少年魔術師・香焼がいた。
「ち、ちわっす。」
女子寮という空間にやや緊張気味の香焼はどこか動きがぎこちない。
「どうしたんですか香焼?」
「いや、ちょっと女教皇様に頼みたいことがあるんすよ…」
香焼はかなり深刻そうな顔をしている。
並ならぬ空気を感じたのかルチアは「私はこれで…」と言いながら立ち去っていく。
「まあ、立ち話もなんですから部屋に入りなさい、香焼。」
「は、はい!」
こうして二人は部屋へと入っていく。
二人とも腰を落ち着けてから、神裂が口を開く。
「で、相談事とはなんのことですか?」
「あ、あのー女教皇様、俺を今度の学園都市への遠征メンバーに入れてくれないすか?」
香焼はどこか申し訳なさそうに、相談事を話す。
「な、何故あなたがソレをしっているんですか!?あれは重役だけの…」
一方、神裂は驚きを隠せない。何しろ先ほどまで彼女の頭を悩ませていたことが香焼の口から出てきたのだから仕方がない気もするが。
「いや、それはっすねー最近の五和の浮かれ具合を見れば分かるんすよ…」
(五和…やはり侮れませんね…)
神裂は五和への対抗心を心に隠し、香焼との会話を続ける。
「でも、香焼。あなたには学校があるじゃないですか。」
「学校なんてどうでもいいじゃないすか!たった一週間だけっすよ!お願いしますよ、女教皇様!」
そういって、香焼は土下座をする。
「うーん、でも…」
「そこをなんとか!」
「いや、しかし!」
「何でもしますから!」
「うーん…」
「女教皇様!」
「わ、分かりました。考えておきましょう。」
結局、香焼の粘りに神裂は屈する形となる。
「本当すか!?ありがとうございます!女教皇様!頼みますよ!」
わずかな希望がさした香焼は目を輝かせている。
(困りましたね…最大主教になんといえば良いのか…)
「救われぬ者に救いの手を」を魔法名とする神裂はこのような熱心な頼みごとに弱いのだ。
しかし、なぜ香焼はここまでして学園都市に行きたいのだろうか…?
神裂はそこを不思議に思いながら、悩みの種が増えたことに困惑していた。
二人とも腰を落ち着けてから、神裂が口を開く。
「で、相談事とはなんのことですか?」
「あ、あのー女教皇様、俺を今度の学園都市への遠征メンバーに入れてくれないすか?」
香焼はどこか申し訳なさそうに、相談事を話す。
「な、何故あなたがソレをしっているんですか!?あれは重役だけの…」
一方、神裂は驚きを隠せない。何しろ先ほどまで彼女の頭を悩ませていたことが香焼の口から出てきたのだから仕方がない気もするが。
「いや、それはっすねー最近の五和の浮かれ具合を見れば分かるんすよ…」
(五和…やはり侮れませんね…)
神裂は五和への対抗心を心に隠し、香焼との会話を続ける。
「でも、香焼。あなたには学校があるじゃないですか。」
「学校なんてどうでもいいじゃないすか!たった一週間だけっすよ!お願いしますよ、女教皇様!」
そういって、香焼は土下座をする。
「うーん、でも…」
「そこをなんとか!」
「いや、しかし!」
「何でもしますから!」
「うーん…」
「女教皇様!」
「わ、分かりました。考えておきましょう。」
結局、香焼の粘りに神裂は屈する形となる。
「本当すか!?ありがとうございます!女教皇様!頼みますよ!」
わずかな希望がさした香焼は目を輝かせている。
(困りましたね…最大主教になんといえば良いのか…)
「救われぬ者に救いの手を」を魔法名とする神裂はこのような熱心な頼みごとに弱いのだ。
しかし、なぜ香焼はここまでして学園都市に行きたいのだろうか…?
神裂はそこを不思議に思いながら、悩みの種が増えたことに困惑していた。