土曜日同時刻、学園都市内某ビルの一室に一人の少女が飛び込んできた。
「なにごとです!?建宮」
少女は世界でも20人程しかいない聖人でありロンドンでも五指に入る実力を持つ魔術師である。
齢18歳にして女教皇として天草式十字凄教をまとめる少女はナイスバディと落ち着いた話ぶりから
実年齢よりも年上に見られることが多く、上条からは「結婚適齢期を過ぎているようにしか見えない」
とまで思われている、ある意味で幸薄い少女である。
齢18歳にして女教皇として天草式十字凄教をまとめる少女はナイスバディと落ち着いた話ぶりから
実年齢よりも年上に見られることが多く、上条からは「結婚適齢期を過ぎているようにしか見えない」
とまで思われている、ある意味で幸薄い少女である。
「実は我々では対処できない不測の事態が起こりまして。
是非とも女教皇様(プリエステス)のお力をお貸し頂きたいのです」
是非とも女教皇様(プリエステス)のお力をお貸し頂きたいのです」
深刻そうに話し始める建宮斎字につられ、神裂火織もその表情を真剣なものに変える。
「一体何があったのです?」
「実は……………………津島がギックリ腰になってしまいました」
「はあ?…………それは大変…………なのでしょうが……………………
どうしてそれが私を呼び出すほどの不測の事態なのです?」
「実は……………………津島がギックリ腰になってしまいました」
「はあ?…………それは大変…………なのでしょうが……………………
どうしてそれが私を呼び出すほどの不測の事態なのです?」
先が見えない展開につい間抜けな返事をしてしまう。
「我々は今学園都市の依頼で動いている傍ら、我ら独自の判断で上条殿の協力者となって
頂けそうな能力者への対魔術師戦闘訓練を行っているのはプリエステスもご存じのはず」
「ええ。五和が随分と頑張ってくれたと聞いています」
頂けそうな能力者への対魔術師戦闘訓練を行っているのはプリエステスもご存じのはず」
「ええ。五和が随分と頑張ってくれたと聞いています」
「先日行った模擬戦闘では彼女達は五和を打ち破る程までに成長いたしました。
今回の模擬戦闘では津島に腕を振るってもらうハズだったのですが……………………
このような事態となりどうしたものかと思案していたところなのです」
「そういうことですか。…………では津島の代役を立てるしかありませんね」
「おおッッ!!プリエステスがそう言って頂けるとはありがたい。ではこれをどうぞ!」
「えっ????」
今回の模擬戦闘では津島に腕を振るってもらうハズだったのですが……………………
このような事態となりどうしたものかと思案していたところなのです」
「そういうことですか。…………では津島の代役を立てるしかありませんね」
「おおッッ!!プリエステスがそう言って頂けるとはありがたい。ではこれをどうぞ!」
「えっ????」
不意に建宮から押しつけられた風呂敷包みを訳も判らぬまま受け取ってしまった神裂火織は
頭の上に?マークをいくつも浮かべてしまう。
頭の上に?マークをいくつも浮かべてしまう。
「これは………………一体、なんなのです?」
渡された風呂敷包みの結び目に手を掛けた神裂火織であったが、結び目を解いた瞬間その手が
ピタッと止まってしまう。風呂敷包みの中からウサギの耳が飛び出したせいなのだが、それをウサギ
の耳だと正しく認識するに至り風呂敷に掛けた右手がプルプルと震えだす。
そして下を向いていた顔がクワッ!!とあがり建宮を睨み付けたかと思うと風呂敷包みごとお色気
エロバニーを床に叩き付けた。そして建宮の胸ぐらを掴むと脅すように問いかける。
ピタッと止まってしまう。風呂敷包みの中からウサギの耳が飛び出したせいなのだが、それをウサギ
の耳だと正しく認識するに至り風呂敷に掛けた右手がプルプルと震えだす。
そして下を向いていた顔がクワッ!!とあがり建宮を睨み付けたかと思うと風呂敷包みごとお色気
エロバニーを床に叩き付けた。そして建宮の胸ぐらを掴むと脅すように問いかける。
「建宮!あれは一体何ですか!?」
「はあ?
あれは津島の代役を引き受けて頂いたプリエステスに着て頂くコスチュームですが…………
何か問題でも?」
「大ありですッ!!何故私があんな破廉恥なものを着ないといけないのです!?」
「なにを仰る、プリエステス!!これは全て上条当麻殿のためなのですぞ!」
「うっ!」
「はあ?
あれは津島の代役を引き受けて頂いたプリエステスに着て頂くコスチュームですが…………
何か問題でも?」
「大ありですッ!!何故私があんな破廉恥なものを着ないといけないのです!?」
「なにを仰る、プリエステス!!これは全て上条当麻殿のためなのですぞ!」
「うっ!」
上条当麻の名を出されると神裂火織も弱い。それを知っている建宮は一気にたたみ掛ける。
「上条殿は今や魔術サイドにおいて最も耳目を集める科学サイドの存在なのですぞ。
我ら天草式十字凄教が公然と上条殿と関わりを持てば魔術サイドにおいて良からぬ憶測をされる
可能性がある。だから我らはキシサクマアという架空の秘密結社を創ったのではありませんか?
プリエステスもそのことはご承知のはず!ならば事ここに至ってなにを躊躇なさるのです!?」
「くっ………………ッ」
「先ほどプリエステスが仰ったではありませんか。これは津島の代役なのですぞ。
上条殿のお仲間との模擬戦闘を行うのにプリエステス以上の適任者などおりましょうか!?」
我ら天草式十字凄教が公然と上条殿と関わりを持てば魔術サイドにおいて良からぬ憶測をされる
可能性がある。だから我らはキシサクマアという架空の秘密結社を創ったのではありませんか?
プリエステスもそのことはご承知のはず!ならば事ここに至ってなにを躊躇なさるのです!?」
「くっ………………ッ」
「先ほどプリエステスが仰ったではありませんか。これは津島の代役なのですぞ。
上条殿のお仲間との模擬戦闘を行うのにプリエステス以上の適任者などおりましょうか!?」
こめかみに青筋を浮かべ怒りに身体を震わせる神裂火織であったが、一見正論にも思える建宮の
たたみ掛けに反論の糸口すら見つけることができない。
かといって怒りの炎を鎮めることもできるハズなかった。
たたみ掛けに反論の糸口すら見つけることができない。
かといって怒りの炎を鎮めることもできるハズなかった。
「………………………………建宮。これは誰の入れ知恵です?
はっ、そうか!土御門ですね。土御門でしょ!こんなことするのは土御門に違いありません。
あん畜生!ごぉぉらあぁぁぁぁあああああ!!土御門ぉぉおおおおおおおおおお!
どうせどこかで覗き見して笑ってやがるんだろぉがああああああああああああ!
とっとと出て来やがれ!
そのニヤけた面ぁぁぁ真っ二つに叩き切ってやらぁぁああああああああああ!」
はっ、そうか!土御門ですね。土御門でしょ!こんなことするのは土御門に違いありません。
あん畜生!ごぉぉらあぁぁぁぁあああああ!!土御門ぉぉおおおおおおおおおお!
どうせどこかで覗き見して笑ってやがるんだろぉがああああああああああああ!
とっとと出て来やがれ!
そのニヤけた面ぁぁぁ真っ二つに叩き切ってやらぁぁああああああああああ!」
完璧にブチ切れモードに突入した神裂火織を前にしても建宮斎字は涼しい顔を崩さない。
「はしたないですぞ。プリエステスともあろうお方が。少しは落ち着いて下さい」
「何を呑気なことを言っているのです!こんなことをされて冷静でいられる訳ありません!」
「勘違いをなされているようですが今回はたまたま津島の体調不良のせいでプリエステスに
代役をお願いしただけのこと。この件に土御門殿は関わっておりませんぞ」
「いいえ!きっとあの野郎が裏で糸を引いている筈です!さあ正直に白状なさい!!」
「考え過ぎです。それより、そろそろお覚悟をお決めになって下さい」
「何を呑気なことを言っているのです!こんなことをされて冷静でいられる訳ありません!」
「勘違いをなされているようですが今回はたまたま津島の体調不良のせいでプリエステスに
代役をお願いしただけのこと。この件に土御門殿は関わっておりませんぞ」
「いいえ!きっとあの野郎が裏で糸を引いている筈です!さあ正直に白状なさい!!」
「考え過ぎです。それより、そろそろお覚悟をお決めになって下さい」
「イヤ、それは…………そのッ…………そ、そうです!今すぐ回復魔術で津島を治療しましょう!
そうすれば全て丸く収まるではありませんか!?」
「それが申し上げにくいのですが、あいにく津島は今女性の日でもありまして………………」
「な……………………ッ、そっ、それなら…………
そう!首領が別に女性である必要など無いでしょう?
建宮!あなたが首領だという設定で予告ビデオを撮り直せば良いのではありませんか!?」
「いえ、既に犯行予告ビデオは発送済みでして………………」
そうすれば全て丸く収まるではありませんか!?」
「それが申し上げにくいのですが、あいにく津島は今女性の日でもありまして………………」
「な……………………ッ、そっ、それなら…………
そう!首領が別に女性である必要など無いでしょう?
建宮!あなたが首領だという設定で予告ビデオを撮り直せば良いのではありませんか!?」
「いえ、既に犯行予告ビデオは発送済みでして………………」
そう言った建宮が指を鳴らすと室内の照明が落ち、壁際に設置されたスクリーンに上条達が見た
犯行予告ビデオが映し出される。
そして首領登場のシーンに差し掛かると神裂火織が大声をあげる。
犯行予告ビデオが映し出される。
そして首領登場のシーンに差し掛かると神裂火織が大声をあげる。
「なっ!なんですか!?建宮!このシルエットは!?」
「何ですかと言われましてもこれは津島ですが。どう致しました?プリエステス」
「このシルエットは私のものでしょッ!!」
「何を仰います。どこから見ても津島ではありませんか」
「何ですかと言われましてもこれは津島ですが。どう致しました?プリエステス」
「このシルエットは私のものでしょッ!!」
「何を仰います。どこから見ても津島ではありませんか」
「しかし建宮!津島にしては………………その、なんです。少し、胸が豊か過ぎませんか?」
津島に気を遣ったのか、問い詰める声も最後がゴニョゴニョと尻すぼみになっては迫力不足になる
のは否めない。建宮もそれを承知しているのかしれっと返答する。
のは否めない。建宮もそれを承知しているのかしれっと返答する。
「それは仕立屋が迂闊にも寸法を間違えまして急場をしのぐため仕方なく胸に詰め物をしたから
です。まあそのせいもあってシルエットにせざるを得なかったのですが、そのおかげでこうして
プリエステルのご協力を得ることができるのですから『人生塞翁が馬』とはよく言ったものです」
です。まあそのせいもあってシルエットにせざるを得なかったのですが、そのおかげでこうして
プリエステルのご協力を得ることができるのですから『人生塞翁が馬』とはよく言ったものです」
「なにを白々しい。
ではなぜポニーテールなのです?しかも七天七刀まで持っているではありませんか?」
「これは上条当麻殿の女性の好みが『寮の管理人のお姉さん』タイプだという情報を入手しました
ので急遽津島にロングヘアーと竹箒をセットしただけのことです。
しかし、そう言われて見れば何となくプリエステスに似ている気もしてきました。
何にせよ。これでプリエステスの御出陣になんも問題が無いことが確認できました。
ですからご遠慮なさらずに。さあ!!」
「いえ、それは…………「「「「「「 さ あ 」」」」」」…………」
ではなぜポニーテールなのです?しかも七天七刀まで持っているではありませんか?」
「これは上条当麻殿の女性の好みが『寮の管理人のお姉さん』タイプだという情報を入手しました
ので急遽津島にロングヘアーと竹箒をセットしただけのことです。
しかし、そう言われて見れば何となくプリエステスに似ている気もしてきました。
何にせよ。これでプリエステスの御出陣になんも問題が無いことが確認できました。
ですからご遠慮なさらずに。さあ!!」
「いえ、それは…………「「「「「「 さ あ 」」」」」」…………」
神裂火織の最後の抵抗は周囲から一斉に掛けられた声に遮られてしまった。
ここに至り神裂火織はいつの間にか建宮をはじめとする浦上、牛深、香焼、諫早、野母崎ら天草式
十字凄教の男衆に取り囲まれていることに気付く。
ここに至り神裂火織はいつの間にか建宮をはじめとする浦上、牛深、香焼、諫早、野母崎ら天草式
十字凄教の男衆に取り囲まれていることに気付く。
「どっ、どうしたのですか?あなた達のその迫力は…………」
不退転のオーラをまとわせ神裂火織に迫る天草式十字凄教の男衆。
その迫力に思わず後ずさる神裂火織であったがとうとう壁際まで追い詰められてしまう。
その迫力に思わず後ずさる神裂火織であったがとうとう壁際まで追い詰められてしまう。
「「「「「「 さ あ 」」」」」」
天草式十字凄教の男衆に逃げ道を全て塞がれた神裂火織はとうとう力無く項垂れてしまった。
それを首肯と判断した男衆は揃って喜びの声を上げる。
それを首肯と判断した男衆は揃って喜びの声を上げる。
「「「「「「おお、それでこそ。我らが女教皇様(プリエステス)」」」」」」
その時、隣室のモニターでその様子を冷ややかに見ていた対馬と五和は呆れたように呟いいた。
「全く!ウチの男どもときたら、この情熱を他の何かにつかえないものかしら」
「はは、まあ、そう…………ですね、はあぁぁ────ぁ」
「はは、まあ、そう…………ですね、はあぁぁ────ぁ」
土曜日19:30 第21学区天文台テラス
ようやく夜の帳に包まれた天文台のテラスのベンチに一組の少年と少女が並んで腰掛けていた。
天体観測用に開放されたテラスは一切の照明が落とされており少女の紅潮した頬を照らすのは
星明かりのみだった。その少女が右手を挙げて夜空に輝く一つの星を指差す。
天体観測用に開放されたテラスは一切の照明が落とされており少女の紅潮した頬を照らすのは
星明かりのみだった。その少女が右手を挙げて夜空に輝く一つの星を指差す。
「あれがデネブ。それにあっちがアルタイルにベガ。今の時期でも夏の大三角ってまだ西の空に
よく見えるのよね」
「へぇ────!御坂ってなんでも良く知ってるなあ」
「なに言ってんのよ。こんなの常識でしょ!高校生にもなってなんで知らないのよ」
「あのな────ッ!そうそう星座に興味のある男子高校生がいてたまるか!!」
よく見えるのよね」
「へぇ────!御坂ってなんでも良く知ってるなあ」
「なに言ってんのよ。こんなの常識でしょ!高校生にもなってなんで知らないのよ」
「あのな────ッ!そうそう星座に興味のある男子高校生がいてたまるか!!」
「それじゃ、良いこと教えてあげる!
アンタの星座の水瓶座って今の時期だと南の空の低い所にあるのよ。
えーっと、ほらあの背の高い木の少し上の方にあるのがそうよ。」
「はあ?水瓶座って言われても俺にはサッパリ判んねえぞ!?
一体どの星を繋げりゃ水瓶になるってんだ?」
「馬鹿ねッ!水瓶座って言ったって別に星が水瓶の形に繋がってんじゃないわよ。
ほらあそこから星を繋げると2本の流れになるでしょ!あれが水瓶から流れ出る水なのよ。
その右にある星々が水瓶を持つ人の身体になっていてそれが全部集まって水瓶座なのよ」
「そういわれてもなあ?どの星のこと言ってんだぁ?」
「もう!ほら私が指差している星よ!わかるでしょ?」
アンタの星座の水瓶座って今の時期だと南の空の低い所にあるのよ。
えーっと、ほらあの背の高い木の少し上の方にあるのがそうよ。」
「はあ?水瓶座って言われても俺にはサッパリ判んねえぞ!?
一体どの星を繋げりゃ水瓶になるってんだ?」
「馬鹿ねッ!水瓶座って言ったって別に星が水瓶の形に繋がってんじゃないわよ。
ほらあそこから星を繋げると2本の流れになるでしょ!あれが水瓶から流れ出る水なのよ。
その右にある星々が水瓶を持つ人の身体になっていてそれが全部集まって水瓶座なのよ」
「そういわれてもなあ?どの星のこと言ってんだぁ?」
「もう!ほら私が指差している星よ!わかるでしょ?」
そう言って御坂美琴は星座を指差す右手を上条の顔の横に近づける。
そこまでされると適当に相槌だけ打って話を切り上げる訳にもいかなくなり、上条も真剣に水瓶座を
探さざるをえなくなってしまった。上条はまるでライフルの照準器の覗くように右目を閉じ御坂美琴
の肩越しに御坂美琴の右手が指す星々を探し始める。ただし、そのシチュエーションが星空の下
寄り添いながら甘い恋物語を語り合う恋人同士のようであることにまだ二人とも気付いていない。
そこまでされると適当に相槌だけ打って話を切り上げる訳にもいかなくなり、上条も真剣に水瓶座を
探さざるをえなくなってしまった。上条はまるでライフルの照準器の覗くように右目を閉じ御坂美琴
の肩越しに御坂美琴の右手が指す星々を探し始める。ただし、そのシチュエーションが星空の下
寄り添いながら甘い恋物語を語り合う恋人同士のようであることにまだ二人とも気付いていない。
しかし星を探す上条の髪が御坂美琴の耳をくすぐった瞬間、御坂美琴の体内を電流が駆け抜け、
肩がビクン!と跳ね上がる。上条の体温を頬に感じるほど自分達が寄り添っていることに気付いた
途端その小さな胸がキュン!と締め付けられ、ドックンドックンと心臓から送り出される血潮が瞬く
間に全身を火照らしていく。
肩がビクン!と跳ね上がる。上条の体温を頬に感じるほど自分達が寄り添っていることに気付いた
途端その小さな胸がキュン!と締め付けられ、ドックンドックンと心臓から送り出される血潮が瞬く
間に全身を火照らしていく。
「おい!今指を動かさないでくれよ。俺だって一生懸命探してんだからさ!」
「お…………ッ、おう!」
「お…………ッ、おう!」
思考回路がオーバーヒート寸前の御坂美琴はなんだか訳の判らない返事をしてしまう。
(ダメ!心臓がバクバクする。身体が熱くて汗が止まんない!
汗くさい女って思われたらどうしよう?)
すると御坂美琴の横で星を探す上条の動きがふと何かに気付いたかのように不意に止まった。
(ダメ!心臓がバクバクする。身体が熱くて汗が止まんない!
汗くさい女って思われたらどうしよう?)
すると御坂美琴の横で星を探す上条の動きがふと何かに気付いたかのように不意に止まった。
「あれ?…………変だな?」
「えっ、な何?変な事なんてなぁ──んにもないじゃない!!」
「そう言えばなんで御坂が俺の星座を知ってんだ?」
「え?だって、ほら。…………そう!以前アンタと雑談してる時にそんな話になったことがあるのよ」
「えっ!?そうだっけ?」
「そうよ!だから深く考えない!…………………………ちなみに」
「えっ、な何?変な事なんてなぁ──んにもないじゃない!!」
「そう言えばなんで御坂が俺の星座を知ってんだ?」
「え?だって、ほら。…………そう!以前アンタと雑談してる時にそんな話になったことがあるのよ」
「えっ!?そうだっけ?」
「そうよ!だから深く考えない!…………………………ちなみに」
御坂美琴はここで言葉を区切ってフゥ──ッ!と一息入れる。そして覚悟を決めると、
「…………私の星座は 「ちょっと!」座よ」
「??…………ちょっと座?」
「へっ!?ちっ、違うわよ!今のは私じゃなくて」
「ちょっと!…………上条君。御坂さん!」
「??…………ちょっと座?」
「へっ!?ちっ、違うわよ!今のは私じゃなくて」
「ちょっと!…………上条君。御坂さん!」
その声はベンチに座る二人の真後ろから掛けられたものだった。
「なんだ。姫神か!?」
「なんだとはまたずいぶんなご挨拶。ひょっとしてお邪魔だった?」
「ば、馬鹿言え!」
「冗談はさておき。もうすぐ予定の時間。そろそろ配置につかないと」
「えっ?もうそんな時間なのか?」
「でも秋沙。今回はラストオーダーが時間と場所をやけに細かく指定してきたけどの本当に相手は
ラストオーダーの言った通りにやって来るのかしら?」
「なんだとはまたずいぶんなご挨拶。ひょっとしてお邪魔だった?」
「ば、馬鹿言え!」
「冗談はさておき。もうすぐ予定の時間。そろそろ配置につかないと」
「えっ?もうそんな時間なのか?」
「でも秋沙。今回はラストオーダーが時間と場所をやけに細かく指定してきたけどの本当に相手は
ラストオーダーの言った通りにやって来るのかしら?」
「今回。キシサクマアを迎撃するのは私達じゃない。
私達は天文台に被害が及ばないように対処するのが役目。つまりはサポート役。
天文台から道路を50m下った所で不測の事態に備えて待機しておけば良い」
「まあ、どこの誰が相手するのかは知らないけど、考えられる不測の事態って何なのかしらね?」
「さあ?例えば。その誰かさんがあっさり返り討ちに遭っちゃうとか?」
「まあ、その辺りの情報は御坂妹から逐一連絡が来るはずだからさ!」
私達は天文台に被害が及ばないように対処するのが役目。つまりはサポート役。
天文台から道路を50m下った所で不測の事態に備えて待機しておけば良い」
「まあ、どこの誰が相手するのかは知らないけど、考えられる不測の事態って何なのかしらね?」
「さあ?例えば。その誰かさんがあっさり返り討ちに遭っちゃうとか?」
「まあ、その辺りの情報は御坂妹から逐一連絡が来るはずだからさ!」
「聞こえますか?ミサカは指示された観測ポイントに到着しました。
とミサカはインカムを使ってお姉様達に現状を報告します。
NVゴーグルも正常に稼働中。敵戦力出現予定時間まで後30秒。カウントダウンを開始します」
とミサカはインカムを使ってお姉様達に現状を報告します。
NVゴーグルも正常に稼働中。敵戦力出現予定時間まで後30秒。カウントダウンを開始します」
土曜日19:55 第21学区天文台へ続く道路
天文台へと続く片側1車線の道路には山側に歩道があり街灯が30mごとに設置されている。
道路以外に人工物など何もないその山腹の路肩に一台のオープンカーが駐車していた。
点在する街灯の下だけは明るいものの辺りはすっかり暗闇に包まれている。
そのオープンカーに小さな電子音が鳴り響くと運転席の影がゴソリ!と動く。
リクライニングさせた運転席に寝そべっていた一方通行が視線を向けたバックミラーには暗闇の中
道路を照らす街灯のみが映っている。しかしその一つの街灯の明かりの下に暗闇から1つの人影
が吐き出された。
道路以外に人工物など何もないその山腹の路肩に一台のオープンカーが駐車していた。
点在する街灯の下だけは明るいものの辺りはすっかり暗闇に包まれている。
そのオープンカーに小さな電子音が鳴り響くと運転席の影がゴソリ!と動く。
リクライニングさせた運転席に寝そべっていた一方通行が視線を向けたバックミラーには暗闇の中
道路を照らす街灯のみが映っている。しかしその一つの街灯の明かりの下に暗闇から1つの人影
が吐き出された。
「ちッ、場所も時間も予定通りか。まあいい。誰が黒幕だか知らねェが今回は掌の上で遊ンでやる」
オープンカーから飛び降りた一方通行の紅い瞳は15m先の街灯の下に佇む人影を捉える。
それは長い髪をポニーテールに括り、Tシャツに片方の裾を根元までぶった切ったジーンズそして
腰のウエスタンベルトには七天七刀という格好をしたウエスタンルックサムライガールだった。
それは長い髪をポニーテールに括り、Tシャツに片方の裾を根元までぶった切ったジーンズそして
腰のウエスタンベルトには七天七刀という格好をしたウエスタンルックサムライガールだった。
そこから少し離れた林の中ではその様子を覗き見る香焼と建宮が小声で会話を交わしていた。
(教皇代理。プリエステスはホワイトバニーで出撃していただけるって話じゃなかったんすか?」
(そうなのよ。それが相手が上条当麻殿ではないと判った途端、ならばホワイトバニーになる必要
などありません!とか言って嬉々としてあのまま突撃されたのよ。くそッ!詰めを誤ったのよな!)
(そうなのよ。それが相手が上条当麻殿ではないと判った途端、ならばホワイトバニーになる必要
などありません!とか言って嬉々としてあのまま突撃されたのよ。くそッ!詰めを誤ったのよな!)
「天草式十字凄教の神裂火織と申します。故あって貴方とお手合わせさせて頂きます」
「ふン!テメェが誰でもいいけどよォ。本気で俺と殺す(やり)合う覚悟があるなら掛かってきな!」
「参ります!!」
「ふン!テメェが誰でもいいけどよォ。本気で俺と殺す(やり)合う覚悟があるなら掛かってきな!」
「参ります!!」
神裂火織が流れるような動作で右掌を前方に差し出すと爆炎が一方通行目指して噴き出した。
噴き出した激しい爆炎は一方通行から見ればあたかも神裂火織が爆発したように見えたはずだ。
しかし一方通行は動じない。
噴き出した激しい爆炎は一方通行から見ればあたかも神裂火織が爆発したように見えたはずだ。
しかし一方通行は動じない。
(ふン!そっちが能力を使ってくれるならこっちの手間も省けるってもンだぜ。
これ程の業火ならテメェは骨も残せねェだろうが、恨むならテメエの強すぎる能力を恨むンだな)
これ程の業火ならテメェは骨も残せねェだろうが、恨むならテメエの強すぎる能力を恨むンだな)
しかし爆炎が神裂火織の身体を焼くことはなかった。
一方通行に触れた爆炎は相手に反射することなく七色の光の粒に分解されてしまったからだ。
光の粒に分解された爆炎は一方通行の身体にまとわりつく感触を残して左右に流れ、路肩に留め
ていた車を歩道へ押し流し激しく横転させた。
一方通行に触れた爆炎は相手に反射することなく七色の光の粒に分解されてしまったからだ。
光の粒に分解された爆炎は一方通行の身体にまとわりつく感触を残して左右に流れ、路肩に留め
ていた車を歩道へ押し流し激しく横転させた。
(…………何だ?今のは…………)
不可解な現象に一方通行は眉をひそめる。
(さっきの炎は学園都市の能力者の炎とも、今まで闘ってきた雑魚魔術師どもの炎とも違う!)
一方通行が思考をめぐらせようとした時、大気が震えだし突如轟音が鳴り響いたかと思うと上空
300mの何もないハズの場所から真横へと直径50mはある巨大な火柱が噴き出した。
一方通行はその火柱を一瞥するとこの不可解な現象を引き起こした目の前の敵を睨み付ける。
ところがその相手も一方通行同様に今の状況に戸惑っているようだった。
300mの何もないハズの場所から真横へと直径50mはある巨大な火柱が噴き出した。
一方通行はその火柱を一瞥するとこの不可解な現象を引き起こした目の前の敵を睨み付ける。
ところがその相手も一方通行同様に今の状況に戸惑っているようだった。
(なンだァ?こいつまでキョトンとしやがって。どういうことだ?
クソッ!初めてテレポーターと殺し(やり)合った時のことを思い出しちまった。あン時はまだ3次元
空間限定の演算式しか組んでなかったから5次元空間を通って3次元空間に跳躍してくる攻撃を
上手く反射できなかったからな。5次元空間に拡張した演算式の組み直しにもう少し手間取って
いたらヤバかった!だが今度のはテレポーターの攻撃とも何かが違う)
クソッ!初めてテレポーターと殺し(やり)合った時のことを思い出しちまった。あン時はまだ3次元
空間限定の演算式しか組んでなかったから5次元空間を通って3次元空間に跳躍してくる攻撃を
上手く反射できなかったからな。5次元空間に拡張した演算式の組み直しにもう少し手間取って
いたらヤバかった!だが今度のはテレポーターの攻撃とも何かが違う)
一方、神裂火織も今の現象に戸惑っていた。ただ相手の怪訝そうな顔つきから相手もこの現象が
何であるか良く判っていないことだけは理解できた。
何であるか良く判っていないことだけは理解できた。
(このままではラチがあきません!もう一度行きます)
今度は冷気の固まりが一方通行を襲う。冷気とは言え神裂火織の放つ冷気はいわば-196℃の
液体窒素の奔流であり生身の人間が喰らえば数秒で氷柱と化すほどの威力だった。
液体窒素の奔流であり生身の人間が喰らえば数秒で氷柱と化すほどの威力だった。
一方通行は右手をかざして迫り来る冷気のベクトルを反転させた。しかし今回も冷気は反射されず
にまるで指の間から水がすり抜けていくように一方通行の右後方に七色の光となって流れ、木々を
なぎ倒していった。
にまるで指の間から水がすり抜けていくように一方通行の右後方に七色の光となって流れ、木々を
なぎ倒していった。
そして不意に地鳴りが起こりドゴッ!と大きく揺れたかと思うと500m程離れた山腹が突然爆発し、
大量の木々や岩や土砂を空中へ撒き散らした。これが通常の爆発と違うのは明らかであった。
なにせ爆発した山肌の下から何千本もの氷の槍が剣山のようにせり出していたのだから。
大量の木々や岩や土砂を空中へ撒き散らした。これが通常の爆発と違うのは明らかであった。
なにせ爆発した山肌の下から何千本もの氷の槍が剣山のようにせり出していたのだから。
(この攻撃もやっぱり今までの能力者とも魔術師とも違う!なんだ一体?)
神裂火織自身も気付いてはいないが神裂火織が繰りだす炎や冷気は7次元世界の炎や冷気であ
る。人間が認識できるのはたかだか3次元世界に顔を出したその一部であるが、魔術の真の威力
は高次元世界に隠れたその本体の大きさによって決まる。上位の魔術師ほどより高次元の炎や
冷気を扱うため見た目は下位の魔術師のものと同じでもその威力は桁違いになるのだった。
る。人間が認識できるのはたかだか3次元世界に顔を出したその一部であるが、魔術の真の威力
は高次元世界に隠れたその本体の大きさによって決まる。上位の魔術師ほどより高次元の炎や
冷気を扱うため見た目は下位の魔術師のものと同じでもその威力は桁違いになるのだった。
一方通行は7次元世界の炎を5次元世界で反射したため5次元世界で引きちぎられた7次元世界
の炎がその原型を失い七色の光へと分解されたのだ。しかも一方通行は巨大な氷山を水上部分
だけベクトル変換により押し戻したようなものであるから、その衝撃で水面下にある氷山の本体が
砕け水上に顔を出したのが先ほど空中に生じた火柱や山腹に現れた数千本もの氷の槍であった。
の炎がその原型を失い七色の光へと分解されたのだ。しかも一方通行は巨大な氷山を水上部分
だけベクトル変換により押し戻したようなものであるから、その衝撃で水面下にある氷山の本体が
砕け水上に顔を出したのが先ほど空中に生じた火柱や山腹に現れた数千本もの氷の槍であった。
結局、神裂火織も何故このような現象が起こるのか理解できなかったが、このまま一方通行に魔術
攻撃を繰り返せば周りに及ぼす被害が甚大になることだけは容易に理解できた。だから一方通行
に向けていた右手を降ろすと七天七刀の柄を強く握りしめたのだった。
攻撃を繰り返せば周りに及ぼす被害が甚大になることだけは容易に理解できた。だから一方通行
に向けていた右手を降ろすと七天七刀の柄を強く握りしめたのだった。
「どうした?もう手品はお終いか?」
「いいえ!まだまだッ!七閃ッッ!!」
「いいえ!まだまだッ!七閃ッッ!!」
神裂火織が操る七本の鋼糸(ワイヤー)がアスファルトを削りながら四方八方から一方通行に迫る。
しかし目標を切り裂くはずの鋼糸は一方通行に触れた途端ギン!と金切り音を立てて弾かれ、
一方通行から四方のアスファルトに亀裂が入ったかと思うと、進行方向ににある街灯や横転した
オープンカーをズタズタに切り裂きスクラップに変えていく。
反射してきた2本の鋼糸の先端を神裂火織は両手を振るい鋼糸の根本を操って迎撃する。
僅か0.1秒の間に神裂火織と一方通行の間にいくつもの火花が盛大に散った。そして一瞬遅れて
一方通行の背後の木がなぎ倒された。
しかし目標を切り裂くはずの鋼糸は一方通行に触れた途端ギン!と金切り音を立てて弾かれ、
一方通行から四方のアスファルトに亀裂が入ったかと思うと、進行方向ににある街灯や横転した
オープンカーをズタズタに切り裂きスクラップに変えていく。
反射してきた2本の鋼糸の先端を神裂火織は両手を振るい鋼糸の根本を操って迎撃する。
僅か0.1秒の間に神裂火織と一方通行の間にいくつもの火花が盛大に散った。そして一瞬遅れて
一方通行の背後の木がなぎ倒された。
「オイ!一体今のは何のお遊戯なンだァ?いい加減、本気を出さねェと速攻でブッ殺すぞ!!」
「時間差をつけた最後の一本が本命だったのですが…………
やはり貴方の反射に死角は無いようですね。ではこれではどうです?」
「グダグダ言ってねェで、さっさと掛かってくりゃいいンだよ。三下!」
「時間差をつけた最後の一本が本命だったのですが…………
やはり貴方の反射に死角は無いようですね。ではこれではどうです?」
「グダグダ言ってねェで、さっさと掛かってくりゃいいンだよ。三下!」
相手が聖人だろうが何だろうが関係ない。一方通行はあくまで面倒くさそうに言い放つ。
事実、ここで一方通行がすることなど何もなかった。
能力を反射に設定している以上、相手がどんな能力を繰り出そうが一方通行には関係ない。
相手は反射した自身の能力に傷つき倒れていくだけなのだから。
事実、ここで一方通行がすることなど何もなかった。
能力を反射に設定している以上、相手がどんな能力を繰り出そうが一方通行には関係ない。
相手は反射した自身の能力に傷つき倒れていくだけなのだから。
しかし次の瞬間一方通行が予期せぬ事が起こる。
眉間に皺を寄せる一方通行の瞳はスパッと縦に裂けた自身のシャツの右袖を捉えている。身体に
傷が付いた訳ではない。しかし敵の攻撃が反射をすり抜けたという事実は一方通行を驚愕させた。
眉間に皺を寄せる一方通行の瞳はスパッと縦に裂けた自身のシャツの右袖を捉えている。身体に
傷が付いた訳ではない。しかし敵の攻撃が反射をすり抜けたという事実は一方通行を驚愕させた。
(なンで俺のシャツが裂けてンだ!?一体何が起こりやがった?
妙なもンは何も通過しなかったハズだ)
妙なもンは何も通過しなかったハズだ)
一方通行の動揺する表情を見て神裂火織は薄く笑みを漏らす。
同時に自嘲気味にまるで独り言のように言葉を吐き出した。
同時に自嘲気味にまるで独り言のように言葉を吐き出した。
「ふっ!やはり『西新宿のせんべい屋』のようにはいきませんね。まだまだ未熟です。
でも、この方法ならあなたを傷付けることぐらいはできそうですね」
(何しやがったンだ、コイツは!?未知の能力でも使いやがるのか?)
「種明かしをさせていただくと先ほど貴方のシャツを切り裂いたのは直径1000分の1ミクロン
のチタン合金製の糸なんです」
(ざけンな!たとえ目に見えねェぐらい細い糸だろうが俺の反射をくぐり抜けられるハズはねェ!
欺瞞情報で俺を混乱させる気か?こいつァ!?)
「今のをハッタリだと思っているようですね?ではもう一度行きます!」
でも、この方法ならあなたを傷付けることぐらいはできそうですね」
(何しやがったンだ、コイツは!?未知の能力でも使いやがるのか?)
「種明かしをさせていただくと先ほど貴方のシャツを切り裂いたのは直径1000分の1ミクロン
のチタン合金製の糸なんです」
(ざけンな!たとえ目に見えねェぐらい細い糸だろうが俺の反射をくぐり抜けられるハズはねェ!
欺瞞情報で俺を混乱させる気か?こいつァ!?)
「今のをハッタリだと思っているようですね?ではもう一度行きます!」
今度はシャツだけでなく一方通行の左肩までもが音もなく裂けた。
傷は浅いものの鮮やかな切り口から滲む血が一方通行のシャツを赤く染め始める。
傷は浅いものの鮮やかな切り口から滲む血が一方通行のシャツを赤く染め始める。