とある魔術の禁書目録 Index SSまとめ

SS 8-933

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匿名ユーザー

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つんつん頭の少年は険しい顔をしていた。
黒髪蒼眼の少女はそれを不思議そうに眺めていた。
それを見ながらサングラスの少年は少し笑った。
「それは……本当か…?」
「ああ、本当だ。俺も気づいてからは驚いたがな」
二人の少年はロンドン郊外の裏通りから少し出た場所にある。噴水がど真ん中に聳え立つ無駄に広い公園の片隅で対峙していた。
一人だけの少女は蚊屋の外感満載なので若干おろおろしていた。

「もう一度言う。そいつを学園都市に引き渡す。どうやら『クソッたれのお偉いさん』から『綾狩優李を連れて来い。抵抗する場
合は説得。応じない場合は抹殺』っていうよく分からん命令がでててな。俺も仕事をする立場としてそれに従わななきゃならん」

上条の言葉が詰まる。学園都市に引き渡せ? それはどうゆう意味だろうか?
「おい、おれらの仕事は『護衛』じゃなかったのか」
「だから、命令が変わったんだ。それに『護衛』っていうのは対象の安全を守ることだ。そいつは今、世界中の組織、団体から追
われる羽目になってる。それなら学園都市に匿ってもらった方が『安全』じゃないのか?」

上条は瞬間的に言い返すことが出来なかった。やはり、その道の玄人の言葉には異様な説得力が含まれている。それに、学園都市
も彼女を蔑ろにするとは言っていない。やはり、それが一番得策なのかと思い始めてしまった所で、

「……私は、嫌です。『あんな場所』には、もう……」

綾狩本人という一番大切な人物の意見が聞こえた。
上条はその言葉で固まった。彼女を学園都市にすんなり渡さないようにしよう、いくら土御門でもいいなりになるのはやめようと
か『そんな事ではなく』、

「……『あんな場所』……?」

その一言が、一番引っ掛かった。
その発言はつまり、『彼女が学園都市に行った事がある』……否『彼女が学園都市に住んでいたという事』になる。しかも、あん
な場所と表現するという事は……、

「そうゆう事だ、カミやん。」

土御門は今までの『説明』を根底から覆す言葉を放った。
「綾狩優李は、もともと学園都市の住人だ。つまり、『原石』ではない」


二年前 二月二十二日

学園都市から、一人の『超能力者《レベル5》』が脱走した。
その能力者の在籍する学校は『長点上機学園』。その中でも貴重な《レベル5》だったのだが、
旅行と称して学園都市のゲート付近まで車で乗着、外出者用のナノデバイスの注入する寸前に、
『彼女』の乗っていた車が半径五〇前後を巻き込み爆発、炎上し行方がわからなくなった。

だが、『彼女』の能力は『肉体再生』であり、恐らく『あの程度の爆発』では生存している確率
が高いとして学園都市総出で捜索活動を続けたが、学園都市周辺及び日本国内にはすでに居ない
との判断がでたために捜索は打ち切り。(海外での無断の捜索は国際問題になりかねないため)


この事実は統括理事会及び学園都市上層部以外には知られていない。



綾狩優李は、地獄から抜け出した。

味方など、情を懸けてくれる人間など一人も居ない地獄から。
表向きはエリート学校。しかし、裏向きは人体実験となんら変わらない『検査』を真顔で行う狂学者達の巣窟だった。
その中でも綾狩がもっとも苦として、その日が来る前日には自らが『死ねない体』なのがなにより憎いと感じたものが、

身体検査《システムスキャン》

綾狩の能力は『肉体再生』。その能力の強度を測る方法など一つしかない。

そう、綾狩の体を傷つけることだ。
それも彼女は超能力者《レベル5》である。多少に傷なら一瞬で回復してしまうため、『どこまで傷つけても大丈夫なのか』を測らなければならない。
いくら『肉体再生』だといっても彼女は人間であり、痛覚は存在する。限界を測るために、腕を切られて治って、足をもがれて治って、両足を引きちぎって治って、
下半身と上半身を二つに切り離して、これは少し時間が掛かったが治った。

窓も無い実験部屋で痛みでもがき苦しむ彼女をみても、

『すごい!! どこまで耐えることができるんだ!?』
『ここまで耐えられた肉体再生は始めてだ』
『しかし、腕を切っても生えてくるとなると、切った腕が残って邪魔だな……』
『体を上半身と下半身に割ったら、上半身の方から下の部分が生えてきたから、残った下半身も邪魔で邪魔で』
『妹達《シスターズ》の実験もこんな感じなんですかね? もうすぐ始まるらしいですけど』
『ここまで残酷じゃないだろ』
『そうですよね』
『そりゃそうだよ、はっはっはっは』

などと、楽しそうな声しか聞こえてこない。


(もう……いや……だ…)

そして、彼女は脱走を決意した。


そして、その彼女の脱走を影から支援し、成功に導いた人物を知る者は彼女以外に存在しない。



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