「暑ぃ・・・。真刺の奴遅ぇな。教師連中にとっ捕まってんのか?クラス委員長ってのも、楽な仕事じゃ無ぇな」
今日は
成瀬台高校一学期の終業式。それも終わり、界刺は校門前で己が親友を待っていた。
「こんなことなら、下駄箱前とかを待ち合わせ場所にしとくんだった。暑ぃ・・・」
界刺は、炎天下の中1人立ち続けている。もちろん、こんな暑さの中には居たくないのか周囲には人っ子1人居ない。
通学鞄から下敷きを取り出し、団扇代わりにして自分の顔に風を送る。熱風だが、何も無いよりはマシだ。
「はぁ・・・。暑ぃ・・・しんどい・・・体力が・・・」
「あああああああぁぁぁぁぁっっっ!!!!!見付けたああああああぁぁぁっっっ!!!!」
「!!?」
そんな時に聞こえて来た大声。耳に突き刺さる程の大音量のソレを放ったのは、
常盤台中学の制服を着た1人の少女。
「界刺様あああああああぁぁぁぁぁっっっ!!!!!」
「うおっ!?あの娘は・・・確かこの前成瀬台に来た常盤台の・・・グハッ!?」
その少女が、界刺へ向かって突進する。その衝撃をモロに喰らい、地面に倒れる界刺。
「痛っ・・・」
「お久し振りです、界刺様!!私のことを覚えておられますか!!?常盤台中学2年生の
月ノ宮向日葵ですよ!!?」
「・・・お、覚えてるよ。重度の光マニアってことで」
界刺を押し倒し、その腹の上に座っている茶髪の少女―月ノ宮向日葵―は爛々と輝く瞳を界刺へ向けていた。
「はぁ・・・よかったです。もしかしたら、忘れられてるんじゃないかって不安で不安で」
「・・・あれは忘れられねぇ。・・・つーか、君1人?お付きの保護者と一緒じゃ無いの?」
「・・・苧環様のことですか?でしたら、ここにはいません。苧環様は、本日午後から『恵みの大地』にて派閥の皆さんと一緒にお茶会されることになっているので。
ちなみに、私は用事があると苧環様にお伝えして今日のお茶会には参加していません」
苧環華憐。常盤台に存在する派閥の1つを形成しているお嬢様。月ノ宮は、彼女の派閥に属する1人だった。
「用事・・・?用事って、俺に会いに来たことか?」
「はい!!・・・いえ、厳密に言えば違っているんでしょうけど・・・」
「?・・・どういうこと?」
界刺は訝しむ。自分に会いに来たという、目の前の少女の用事というものがイマイチ理解できない。そんな界刺の疑問を察したのか、月ノ宮は真剣な顔付きになる。
「ス~~、ハァ~~、ス~~、ハァ~~・・・」
(界刺の体の上に乗って)深呼吸を繰り返す。そして・・・月ノ宮は一世一代の告白をする。
「界刺様!!!私、月ノ宮向日葵を『
シンボル』へ加入させて頂けないでしょか!!!??」
「・・・・・・へっ?」
それは、余りにも予想外な告白。目の前の少女は、こう言ったのだ。界刺も所属し、リーダーを務める『シンボル』へ自分も加わりたいと。
「・・・・・・」
「・・・ど、どど、どうでしょうか・・・!!??」
不安一杯という月ノ宮の眼差しを受けながら、界刺は身を起こす。体の上に乗っている月ノ宮をどかし、立ち上がる。釣られて、月ノ宮も立ち上がる。
炎天下の空気を、静寂と緊張が支配する。界刺の顔が険しくなる。それを見て、月ノ宮の顔が歪む。そして・・・
「ギャアアアアアアアアアァァァァァァッッッ!!!!!」
「界刺様!!!??ま、待って下さい!!!」
界刺は、脱兎の如くその場から逃げ出した。当然、何の返答も貰っていない月ノ宮は、界刺を追って走る。
「く、くく、来るなあああああぁぁぁぁっっ!!!!追って来るなああああああぁぁぁぁっっっ!!!!この光マニアめえええぇぇぇっっ!!!!」
「ええええええぇぇぇぇぇっっっ!!!???」
界刺は、自分に降り掛かって来た脅威から逃げる。この前の一件で、界刺は月ノ宮の光マニアっぷりに酷い目を見た。
そんな現実が、再び己が身に降り掛かる?冗談じゃ無い。そんな現実俺は認めねぇ。そんな現実から必ず逃げ切ってやる。これらの思いを胸に、少年は疾走する。
しかし、月ノ宮も引き下がるわけにはいかない。あの時から、ずっと考えて来たこと。苧環にも相談せずに、1人で考え続けたこと。
その思いを、覚悟を、決意を界刺に伝えるまでは絶対に終われない。だから、少女も疾走する。
「うおおおおおおおおぉぉぉぉぉっっっ!!!!!」
「あああああああああぁぁぁぁぁ!!!!!」
昼下がりの中、1組の男女が街中を駆け抜けて行く。それぞれの思いを胸に抱いて。その時!!
「・・・得世の奴。まだ来ていないのか・・・。全くあの男は・・・」
成瀬台高校校門前で、教師達から解放された不動がその場にさっきまで居た界刺を待っていた。
「苧環様。今日は・・・姉さんは居ないんですね。姉さんが苧環様のお茶会を欠席するなんて・・・初めてのことじゃないですか?」
「・・・えぇ。初めてね」
ここは、『恵みの大地』。冷房が効いている中、店内では苧環華憐主催のお茶会が開かれていた。
彼女の派閥に属する常盤台の少女達が、『恵みの大地』自慢の品々に舌鼓を打っている中に、1人だけ
柵川中学の制服を着ている少女が居た。
彼女の名は
月ノ宮百合。月ノ宮向日葵の妹である。彼女は、姉が苧環の派閥に属している縁もあって、苧環から時々お茶会等に誘われていた。
「何か・・・外せない用事があったみたいね。“私のお茶会を欠席してでも優先したい”用事が」
「・・・もしかして怒ってます、苧環様?」
「いえ・・・。月ノ宮も色々考えているんだ・・・と思ってね。百合、あなたの考えているようなことなんて思っていないから。安心しなさい」
「そ、そうですか!よ、よかったです。姉さんのことだから、また苧環様を困らせているんじゃないかと思っちゃいまして・・・」
「心配性ね、百合は」
「す、すみません///」
苧環の言葉を受けて安心した百合は、目の前のケーキにフォークを持って行く。その様を見ながら、苧環は1人思案に耽る。脳裏に浮かぶのは・・・あの碧髪の男。
『あなたは・・・どうして自分の力を誇示しようとしないの?どうして他人の力を簡単に認めることができるの?どうして平然と他人に任せられるの!?』
『んなもん決まってるじゃん。人間だからだよ』
「(私は、まだあの男の・・・
界刺得世の言葉の意味を理解できていない。あの言葉を受けての・・・自らの回答(こたえ)を見出せていない)」
苧環は気付いていた。あの成瀬台のグラウンドで界刺の言葉を一緒に聞いていた月ノ宮が、あの日以来ずっと考えごとをしていたことを。
何時もは明るくハキハキしている彼女が、まるで思い詰めるかのように、そして真剣に何かを考え続けていたことを。
そして・・・今日。自分が開催するお茶会を、月ノ宮は欠席した。今まで一度たりとも欠席したことが無い少女が。
『・・・外せない用事があるんです』。そう彼女は言った。それは・・・“私のお茶会を欠席してでも優先したい”用事。
苧環は目を瞑る。・・・ある予感がする。それは、その可能性に気付いてからずっと頭から離れない予感、否、確信。
それは、苧環華憐という少女を否定しかねない・・・予感、否、確信。
「(界刺・・・得世・・・!!!)」
苧環は、今ここには居ない碧髪の男を強く、強く意識する。自分の存在価値を揺らがす大きな“壁(そんざい)”。少女の覚悟を試される刻(とき)は・・・すぐそこまで迫っていた。
『なぁに、簡単なことだ。風紀委員会に参加する176支部のメンバーの1人、
焔火緋花を当委員会から外せ。
“風紀委員もどき”と同じ戦場に立つ等、考えただけで虫唾が走る!!』
「・・・・・・」
今日は、小川原高校付属中学校の終業式であった。それも終わり、少女―焔火緋花―は1人寮にも帰らず道を歩いていた。今日は、風紀委員活動は休みになっていた。
『結果を出せなかった落ちこぼれが何をほざいても意味は無い。耳に入れるだけ無駄だ。フッ。よかったな、真面。この“風紀委員もどき”は、お前と同じ中学2年生だそうだ。
同学年というのは、互いに影響し合うようだからな。 もし、今年になって176支部から178支部に異動願を出していなければ、
今頃はお前もこの落ちこぼれの影響を受けていたかもしれんぞ? お前は本当に運がいい。ハーハハハッ!!』
「・・・・・・」
親友である
葉原ゆかりの誘いも断り、焔火は何処へ行くわけでもなく唯歩いている。行き先を、目的地を見失ったかのように当ても無く。
『「己の信念に従い正しいと感じた行動をとるべし」?笑わせるな。お前達の方こそ「正しさ」というものを勘違いしてはいないか?
お前達が風紀委員の信念として与えられるこれこそが・・・お偉方からの押し付けでしか無いことに何故気付かない!?
所詮は駒を言いように扱うための見栄えのいい飾りでしか無いあの言葉に・・・どうすれば誇りが持てるのだ!?』
『女。いい加減に認めたらどうだ?「己の信念に従い正しいと感じた行動をとるべし」というお前の信念は、お前自ら見出した信念では無い。
堕落極まりない『偽善者』共に刷り込まれた“偽物”でしか無いと!!』
「・・・・・・ック」
何時ものポジティブシンキングで活発な彼女の本来の姿は、今や見る影も無い。俯き、項垂れ、少しでも気を抜くと涙声になってしまう。
それだけ、先日開かれた風起委員会で178支部の頂点に君臨する男―
固地債鬼―や、
対峙した救済委員―
麻鬼天牙―に浴びせられた言葉の数々が、焔火の心の奥深くまで突き刺さっていた。
『風紀委員の信念を勘違いし、自分勝手な美意識に囚われた挙句、負け犬となった何処ぞの“風紀委員もどき”に比べれば、結果をきちっと出したアンタ等の判断は称賛に値する』
『俺の言葉に迷い、移ろい、ブレてしまったお前の信念に・・・貫き通す価値は無い。よくよく考えることだ。後悔する前に。
それまでは・・・生かしておいてやろう。では、さらばだ。俺の“後輩”』
「・・・ック。・・・ヒック。・・・ッッ・・・!!」
自分は、何を間違えてしまったのか。ほんの少し前までは、こんなんじゃ無かった。
風紀委員であることに誇りを抱き、治安活動に勤しむ中で様々な人間と触れ合う。
そして、自分と触れ合った人間が少しでも自分と出会ったことを喜んでくれるような未来を描いていた。だが、現実はどうだ。
敵対した救済委員に手も足も出ず、生かされ、それが自分の所属する支部の“元先輩”で、何一つ結果を出せず、同じ風紀委員に幾つもの辛辣な言葉を浴びせられた。
果ては、自分の信念を『勘違い』と断じられ、“落ちこぼれ”・“風紀委員もどき”と揶揄され、同じ現場に立ちたくないとまで断言された。
「ウッ・・・!!・・・ゥゥッッ!!ゥゥッッッ!!!」
加賀美や荒我の言葉を受けて一度は立ち直った焔火の心は、再び底無し沼に沈もうとしていた。
浴びせられた自分を否定する言葉の数々を、どうしても思い浮かべてしまうのだ。
自身気付かないまま入っていた寂れた公園で、抑えることができない激情を涙と共に吐き出す焔火。
近くのベンチに腰掛け、顔を両手で覆い、泣き続ける・・・その様子を離れた場所から監視している者達が居た。
「あちゃあ・・・。泣き崩れちゃったよ、緋花・・・」
「焔火ちゃん・・・。可愛そうに。あの『悪鬼』に苛められて・・・。俺の手で慰めてあげたい」
「前から思ってたけど、今回のことで確信したわ。あの鬼畜逝けメン死すべし!!」
「何で・・・何で緋花さんがあんな目に合わないといけないんすか・・・!!こんなの、絶対におかしいっすよ!!」
「・・・・・・耳が痛い」
「だが、固地先輩の言ってることはもっともだ。今回は、焔火の悪手だったことは誰が見ても明らかだ。・・・さすが、エリートであるこの私が尊敬する方だけのことはある」
葉原ゆかりが、自分達のエースに言葉を向ける。
「神谷先輩・・・」
「ん?あぁ、斑の奴は、あの『悪鬼』をリスペクトしてるからな。何言っても無駄だと思うぜ?」
そう、彼等は焔火が所属する176支部のメンバー達。彼等は、まるで覇気の無い支部員の様子を気にし、こうやって尾行していたのだ。
ちなみに、同支部員の網枷は体調不良を理由に、尾行には参加していない。
「ふっ、あの人は確かに好悪両極端に評価が分かれる人種だ。だが、あの人は結果を出す。それは、何よりも重要なことだ。
レベルの差など関係無いと言わんばかりに、次々に成果を挙げる。世の中にはああいう人も存在するのだな。固地先輩は・・・エリートの中のエリートだ!!」
「・・・という感じだな」
「まぁ、斑みたいな残念なイケメンの言葉に、私は何の説得力も感じられないけどねぇ」
「ほう、このエリートな私よりレベルの低いお前の言葉に、私は何の感慨も湧かないんだがな、鏡星?」
「へぇ・・・。やるか?」
「・・・このエリートの相手が務まるとも思えんがな」
「ちょ・・・ちょっと、鏡星先輩!斑先輩!お、落ち着いて!!」
「そ、そうっすよ!!こんな所でドンパチ始めたら、緋花さんに俺達の尾行がバレちゃいますって!!」
「チッ・・・」
「ふん・・・」
「・・・・・・馬鹿ばっか」
「・・・・・・同意するぜ、姫空。・・・かったりぃ」
一触即発の鏡星と斑を葉原と鳥羽が抑え、姫空と神谷がうんざりしたかのように呟く。176支部内では、鏡星と斑は犬猿の仲として知られている。
「ふぅ。何とか収まったみたい。・・・加賀美先輩。焔火ちゃん・・・大丈夫ですかね?俺、焔火ちゃんのことで頭一杯になって、今日の夜眠れなさそうです!!(女性限定)」
「う~ん。これは、緋花にとっての踏ん張り所なんだよなぁ。あの娘は、今大きな“壁”にぶち当たっている。
それを、自分の力でぶち抜かなきゃいけない。そこに、私達が無闇に手を貸すわけにはいかない。でも・・・あぁん!見ていられないのよねぇ、あの娘!!」
「(加賀美先輩の、その悩む顔も眼福モノです。ありがとうございます!!)」
一色と会話する加賀美の視線の先には、未だ泣き止まない焔火の姿があった。はっきり言って、見ていられない。すぐにでもここを飛び出して労わってあげたい。
その誘惑を、しかし加賀美は理性で抑え付ける。今は、まだ駄目だ。
「(債鬼君の言っていることは・・・悔しいけど正しい。今私達が緋花に駆け寄ったら、今度こそ債鬼君は緋花を見限る。それは・・・絶対に駄目!!)」
明日、つまり夏休み初日に[対『
ブラックウィザード』風紀委員会]は設置されることになっている。
もし今自分達が焔火を労わり、アドバイス等をして少しでも元気を取り戻したら、固地は見抜く。焔火の言葉、視線、態度、挙動で必ず。身内(わたしたち)が手を貸したことを。
「(もしそうなったら、債鬼君は今度こそ緋花を風紀委員会から除外させるために徹底的に糾弾する。自分の力で道を切り開けない人間は無用だと言わんばかりに。
それは・・・風紀委員として再起不能に陥るくらいに苛烈に。だから・・・今は駄目!!)」
加賀美は、自分の体を抑え付けるかのように自らの腕を自らの手で握る。何でもいい。焔火が立ち直る切欠があれば。
そこで彼女が、自分の前に聳え立つ大きな“壁”をぶち抜くくらいの何かを見出せれば。何もできない自分に苛立ちながらも、加賀美はそんな切欠を天に願う。
そして・・・それは唐突に来た。文字通り静寂という“壁”をぶち抜いて。
「ギャアアアアアアアァァァァァァ!!!!!」
「待ってえええぇぇっっ!!!!待って下さああああぁぁぁいいいいいぃぃ!!!!!界刺様あああああぁぁぁっっ!!!!!」
「「「「「「「「!!!??」」」」」」」」
離れた場所から焔火を観察していた176支部メンバー全員が、突如発生した奇声が聞こえた方角に顔を振り向ける。
同時に、今まで泣き崩れていた焔火もさすがに無反応ではいられないのか、腫らした目をそちらに向ける。
「く、くく、来るなあああああああぁぁぁぁっっっ!!!!こ、この光マニアめ!!!『対界刺得世女難集団』の1人め!!!!しっしっ!!!」
「ひ、酷いです!!!わ、私は唯界刺様と一緒に居たくて『シンボル』に入りたいだけなんですー!!!」
「お、俺っつーか俺のキラキラピカピカが唯一且つ最大目的だろうがあああぁぁぁっっ!!!!」
「た、確かにそれも大きな切欠でしたけど!!!でも、それ以外にもちゃんと理由が!!!」
「や、やっぱり!!くっ、くそっ!!!このっ、このっ!!」
「ブッ!?や、やりましたねぇ!!!こうなったら・・・えいっ!!!」
「ブハッ!!?」
「「「「「「「「「・・・・・・」」」」」」」」」
焔火を含めた176支部メンバーは、その光景を見て呆然としていた。
意味不明な奇声を挙げながら、成瀬台高校の制服を着た無駄にキラキラした碧髪の男と常盤台中学の制服を着た茶髪の少女が、
公園の砂場にて砂の掛け合いっこをし始めたのだ。
「と、鳥羽君・・・。何だと思う、あれ?」
「さ、さぁ・・・?ふ、普通は逆なんじゃない?何であんなちっさい女の子に、大の男が慌てふためいてんの?」
「あ、あの髪の色!!もしやあの殿方・・・。ち、違うわ。あの殿方は、もっと青々しかった。なぁんだ・・・」
「!!な、何だ、あのエリートの欠片も無い少女の雰囲気は!?仮にも、あの常盤台の学生だぞ!?何故・・・何故だ・・・?」
「あ、あの少女もキュートで可愛らしいな・・・。そんな少女と楽しく戯れているあの逝けメン死すべし!!(男性限定)」
「・・・失礼なこと言ってないで帰って来―い、斑。それと一色・・・鏡星の口癖が移ってるぜ、お前?」
「・・・・・・光・・・・・・ピカピカ・・・・・・キラキラ・・・・・・いいなぁ(ボソッ)」
「・・・界刺得世?・・・『シンボル』?・・・も、もしかして!!」
176支部メンバーが各々色んな反応を示す中、ベンチに座っていた焔火が立ち上がった。彼女は、無言で碧髪の男と茶髪の少女が騒いでいる砂場へ歩いて行く。
「ガハッ!!ハァ・・・ハァ・・・。ん?何だ、あの女の子?」
「ブヘッ!!ハァ・・・ハァ・・・。あれ?こっちに来る・・・?」
砂場の2人も近付く少女に気が付き、そちらへ視線を向ける。それでも、焔火は足を止めない。そんな彼女を、176支部メンバーは固唾を呑んで見守る。
風紀委員として、奇声を発しながら騒いでいる男女を注意するのか。言い争っている理由を事情聴取するのか。それとも・・・。
焔火は、遂に閉ざしていた口を開く。・・・助走付きで。
「・・・人が悩んで悩んで悩みまくっている最中に!!!何楽しそうにはしゃいでんのよ、この光バカ!!!」
「何で!!?」
「界刺様!!?」
「「「「「「「「(そっちかよ!!??)」」」」」」」」
哀れ、碧髪の男―界刺得世―は焔火が放った最大威力の跳び蹴りを顔面に食らう。
吹っ飛ぶ界刺。驚きの声を挙げる茶髪の少女―月ノ宮向日葵―。心の中で全員同じツッコミを入れる176支部メンバー達。
「ハァ・・・ハァ・・・・・・ハッ!!な、何やってるの、私!?だ、だだ、大丈夫ですか!!?」
そして、跳び蹴りを放った焔火は我に返り、自分の行動を振り返り・・・顔を真紅に染めて己が吹っ飛ばした男の介抱に走ったのである。
continue…?
最終更新:2012年06月02日 19:20