多くの人々が住まう大地。
陽光の恵みを受けて育つ草木、行き交う人々、空には鳥が舞い、風が雲を連れて果てなく吹き流す。
それが一般的に人々が思い浮かべる世界の有り方だが、そうではない人も存在している。
彼らは大地の下に住まう。
必要に迫られての事で、居着いてしまったから、その理由は様々であるが、人々の生活圏は地上だけに留まらない。
大地の下に住まうための様々な手管により、地上に劣らぬ生活圏を築く者たちが、<こちら側>にも確かに居るのだ。
地上に住まう者たちと地下に住まう者たちが出会うことは、<こちら側>にあっては滅多にないことだ。
だがしかし、時に双方は邂逅することもある。
未来王と秘密基地
「くっそ、意外に固いな・・・」
東大陸の東部一帯を占める帰還不能大森林《ケンバリ・ヴォイマーツ》にて、興味本位で地上に出てきてしまい地下の村落に帰れなくなってしまった少年たちを保護したディエル=アマン=ヘサー(16)ら一行。
土着亜神たる守護樹龍《ガルディオ・ナガス》の幼木に導かれ、少年たちの主な生活圏となる地下に通じる空気穴を見つけ、それに沿う形で穴を掘り始めた彼であった。
だが、永年にも等しき長さを人の手を入れられることなく過ごしてきた土壌は固く、さらには鋼にも劣らぬ堅牢な根が張り巡らされ、一筋縄で行くような作業ではなかった。
「・・・まぁ、分かってたけどな!」
「誰に言ってんだ、あんちゃん?」
「クソッタレなお天道様にだ!」
ディエルは地上で出会った土竜人の少年の言葉を受け、帰るべき故郷に居座る土地神に悪態を吐きながらも、只管に両手の光刃を揮い、穴を掘り進める。
「そういや、ちっちゃいお姉ちゃんと動く毛玉は?」
「どっちももう寝た。 ったく、気楽なもんだ」
旅の同胞の一人と一匹、妖精種《
フェアリー》チカは幼体故に日差しが陰ると共に鞄という名の移動式住居で眠り始め、西の秘境から連れてきた動く毛玉も一緒に鞄に放り込んである。
大森林の地上に住まう深緑獣(土着のヒト達はモルグロンと呼ぶ)を出来るだけ入れないよう、掘り進める穴は一行の中で一番背が高いことになるディエルがギリギリ通れて、かつ掘り退けた土や切れた根・地下茎が邪魔にならない程度の大きさに留めてあるため、表に出る数が少なくて済む方が都合がいい、という目算もあってのことである。
「で、お友達の様子はどうだ?」
「さっきちょっとだけ目を覚ましたけど、また寝ちゃったよ。 寝息は落ち着いてるみたい」
「そか。 早いトコ家に送ってやらんとな、っと・・・?」
土竜人の少年は、一緒に地上に出てきて深緑獣に襲われ大怪我を負った鼠人の少年を背負い、時折様子を伺ったりチカが薬草で作った軟膏を塗り直したりしながら、ディエルの後について来ている。
二人で鼠人の少年の様子を伺っていると、ディエルの腕に返ってくる手応えが、急に軽くなる。 手応えの無さを目視で確認してみれば、目線の先には既に開けた空洞が見える。
「よし、第一段階はこれで終わりか。 よし坊主、飛び降りるぞ」
「えぇっ!? この高さから落ちたら落ちたら怪我じゃ済まないよぉ!」
「あんちゃんに任せとけって!」
うりゃっと一声、土竜人の少年と鼠人の少年を両脇に抱え、土盤を踏み抜き穴を広げ、有無を言わさず飛び降りる!
「うわぁあっぁああああっぁぁ・・・あれ?」
「任せとけって言ったろ? はっはっは、あんちゃんは飛べるのだよ!」
「すげー! あんちゃんすげー!」
正確にはディエルが両足より噴出している神気熱風で強引に浮かんでいるのだが、土竜人の少年は未知の浮遊体感に嬌声を止められない。
「よし、到着っと・・・地面の中だってのに結構広いな。 さて、坊主達の家はどっちだ?」
「う~ん・・・村の近くならすぐ分かるんだけど、ここじゃ良く分かんないや。 シルフィ様に聞いてみるよ」
土竜人の少年は周囲を見渡し、風精(土着住民にはシルフィと呼ばれているようだが)を探す。 手近なところにいた風精に事情を話し、村の方角を聞き出そうとしている。
その間ディエルは、掘ってきた穴に置いてきた食料を回収しつつ、神気を編み上げた感知網を放ち、先が見えない程長く前後に続く洞穴に探りを入れる。
そうこうしているうちに、
「あんちゃん分かった! ウチは向こうだよ!」
「OK、行こうか。 出番だぞハリム。 ひとっ走り頼むわ」
腰に提げた鞄から毛玉をひとつディエルが取り出し放ってやると、毛玉はみるみるうちに、本来の容姿を小型化した霊獣ヴァズハリムバズルの姿へと変わる。
ディエルは土竜人と鼠人の少年らをヴァズハリムバズルの背に乗せてやり、先導する形で村があるという方角へ歩きはじめる。
「に、してもだ。 しかしまた随分デカい穴だな。 土神竜《クリティーカ》っつったっけ?てのはスゲェもんだな」
「長老のジーサマは、何千年も前からこの洞穴を掘り続けてるんだ、って言ってた」
「ふむ・・・霊獣の類ならともかく、何かしらの意思を持ってやってるんだとしたら・・・何が目的だ?」
地下に眠る財宝なんてのがあったところで、こんなデカい穴を掘るような獣が財宝を必要とする理由がまず分からない。 それに、財宝を求める心つまりは金欲があるのなら、地上に出た方がよっぽど金作の伝手はあるだろう。
あるいは、
オルニトの大図書館にあった文献で読んだ『世界三分説』にある、地の底のそのまた下にあるという神の領域『奈落界』とやらでも目指しているのか。 だとすればこんな平坦にではなく下に向けて掘るはずだ。
やはり、特段目的意識もなく何となく穴倉に居着いた土精が創生樹《クレウェボル》の神気に当てられて、ハリムのような霊獣の類に変異して、手足を得て何となく土掘りしてるだけ、というのが妥当なところか。
そんな推論を立てつつ、ディエルは洞穴を歩き続ける。
特段代わり映えのしない、前後以外は総て土という環境の中をしばらく歩き続けた一向だが、やがて手前から仄かな灯りの気配が見え始める。
「お、あと少しか?」
「やっと帰ってこれたぁ・・・」
「よし走るぞハリム! 坊主共、しっかり掴まってろよ!」
鼠人の少年を小脇に抱えたディエルと土竜人の少年を背に乗せたハリムは、灯りの出所と思われる場所まで一気に駆ける。
一行は一気に集落の中心と思しき所に辿り着くなり、ディエルは息を大きく吸い、
「誰でもいい! この子らの家族と医者を今すぐ連れてきてくれ!」
集落の端まで届かせんばかりに叫び、住人全員に呼びかける。 呼びかけを聞き何事かと集まってきた住人が土竜人の少年と鼠人の少年の顔を見るなり、あれはどこの家の子だ、先生はどこだなどと騒ぎ出す。
間も無くして少年二人の家族と医者が馳せ参じ、説教混じりの感動の再開と治療の引き継ぎが始まれば、その外の輪はこりゃめでたいと家の楽器を持ち出して突発演奏会が起こり、風精の舞がそれを盛り上げる。
さらにそこに、ディエルが延々引きずってきた深緑獣の肉身や地上の果実を差し入れにと提供すれば、村総出のプチ宴会の幕開けである。
「ふぅ・・・いやはや元気なもんだな。 まぁ心のどこかに刺さってた棘が抜けたわけだから、こうなるのもしゃあないか」
最初のうちは珍しい「落盤などではなく自力で村を探してきた地上人」としてディエルを持て囃していた村人たちだったが、話題は次第に地上から生還した子供たちとその家族、子供の地上行き対策へと移行したところで、ディエルは喧騒から一歩下がり、村の様子を見て回ることにした。
<ご自宅が恋しくなったのではありませぬか?>
「喧しい。 誰のせいで帰れないばかりかこんな所まで来る羽目になったと思ってやがる。 にしても・・・そうだな、王都に行って帰ってくるだけだったはずなのに、何でこんな所に居るんだかなぁ」
振り返れば、土地だけで言えば五か国を訪ね、三大秘境のうち二箇所を廻り、大海を宛もなく只管に泳いだかと思えば、地上で最も高い
世界樹の天辺にも行き、今は地下の秘されし郷で宴会の喧騒を肴に食にありついている。
様々なヒト達と出会い触れあい、幾柱かの神とも相対し、絵物語でも見ないような凶悪強大な獣達を屠り、結果として今日の生を掴んできた。
「ただの村の悪ガキじゃあ出来ない事だが・・・だとしてもあの糞神はいずれ必ずぶん殴っちゃる」
そんなことを呟きながら宴会を遠巻きに見ていたディエルのところに、土竜人の少年がやってくる。
「へへへ・・・怒られちったい」
「次も助けられる保証はないからな。 もう危ないことはするなよ」
「おかあちゃんみたいな事言わないでくれよ、あんちゃん! そうだ、おかあちゃんが泊まってけって言ってた!」
「そか、御厚意には甘えさせていただくことにしようかね。 よっしゃ坊主、オマエん家まで案内してくれ!」
「わかった! こっちだよあんちゃん!」
土竜人の少年に連れられてディエルがお邪魔したお宅は、いかにも素朴な一般家庭という雰囲気に包まれており、少なからずディエルの郷愁を誘うものであった。
家に着いて程なくして寝てしまった少年を寝床に送った後、ディエルは暫くの間ご家族からの拝み倒しに合い、貸してもらった寝床に付くまでにはおよそ一刻ほどを要することとなった。
「・・・ま、久しぶりにこんな感じも、いいもんだ、な」
久しぶりの安息の寝床に身を沈めつつ、遥か故郷へ思いを馳せるディエルであった。
「まぁ、こうなるだろうなとは薄々感じてたし、流石にルカ爺の家に続いて二度目だからな。 今更驚かんが・・・ここは何処だ」
一宿の謝礼の後に土竜人の少年の家の玄関を徐に開いたディエルが見たのは、四方を岩のようなもので固められ、良く分からないガラクタの山が無造作に置かれた部屋。
ガラクタの山から二、三点手に取ってしげしげと観察してみるが、ディエルにはそれが何に使う物なのか、さっぱり理解できなかった。
「・・・何じゃこりゃ? おいコロナ、お前にゃ・・・分かるわけないよな」
<当然に御座いますれば>
自慢げに胸を張る太陽神ラーの神霊コロナをさらりとスルーして、手にしたガラクタを山に放り戻したディエルは、踵を返して部屋から出ることにした。
「何なんだろうな此処は? 自然に出来た洞窟にしちゃ壁が整いすぎてるし、なんか妙に明るいのが天井に埋まってるし」
昨日まで居た巨大な洞穴にも岩壁には淡い光を放つ苔が点在していたが、そんなものとはまるで違う、かと言ってランプ等とも違う照明。
<向こう側>に曰く「電球」という物なのだが、現物を見たことがないディエルには、やはりそれが何なのか分からない。
「にしても、だ・・・さっきから髭をピリピリさせる、この嫌な感じは何だ?」
<ふむ、どうやら禍つ神気が僅かながらに拡散されておりますな>
「禍つ神気?」
<この程度の薄さならば凡百のヒトでも即座に正気を失うことはないでしょうが、取り込み続ければ中毒のような症状に襲われ、知らずの内に蝕まれる事は間違いありますまい>
「うへぇ、まためんどくさいところに放り込みやがったな、あの糞太陽め。 そうと決まればとっとと出るぞ」
出口の当ては全くないのだが、とりあえず歩いてりゃ出られるだろ、という軽いノリでディエルは洞穴を歩き出す。
当然ながら、迷路のように入り組んだ洞穴を当てもなく歩いたところで、出られないものは出られない。
<いやはや、これも試練でございますなぁ♪>
「いやに御機嫌だなテメェ・・・」
端的に言えば、ディエルは迷っていた。 そしてこの試練的な状況に試練の権化が生んだコロナが元気付かない訳がない。
喧しく試練試練と連呼するコロナに嫌気が差し始めたディエルの目の前に、道なりに見かけた小部屋の扉とは趣の異なる、スケスケの壁のようなものが現れる。
「ここは、向こうが見え・・・うぉ!? あ、開いた、のか?」
これも<向こう側>に曰く「自動ドア」という物なのだが、やはり知識なしで初体験のディエルには、なぜ開いたのかまったく分からない。
だがそれでもディエルは
「吐き気を催す邪悪がこの向こうに居るってことだけは、良く分かるぜ・・・!」
鞄で寝ていた毛玉をデコピンで起こして肩に乗せ、両手の指輪から太陽牙《ゾン・ブレザ》と獅子牙《ジンガ・ブレザ》を抜き放ち、歩を進める。
「テメェ・・・一体何モンだ?」
短い通路を進んだ先にあった広大な円形の部屋。 その中央には、見たこともないような金属の塊と、傲気を放つ冠を頂く意志ある物体が鎮座していた。
「王ヲ前ニシテ、何タル愚昧ナ言ナルカナ。 愚カナルヒト如キガ我ガ前ニ立ツナド、許サレルモノデハナイト知レ!」
腕の様な形をした金属の塊が異形の中に神々しさを潜ませる錫杖を振りかざすと、部屋の至る所に邪気と熱量を孕む光球が発生し、部屋中を駆け巡る!
「ちぃ! よく分からんことしてきやがる!」
避けるのは無理と直感的に理解したディエルは、ハリムに氷壁を作らせるとともに、両手の双刃で光球を叩き落としにかかる。
「ホゥ・・・アレヲ凌グカ。 ナルホド、野良猫ノ分際デ我ガ前ニ姿ヲ見セヨウトスルダケノコトハ、アルヨウダナ」
「無茶苦茶しやがって・・・何なんだよテメェは!」
「貴様ノヨウナ野良猫如キに名乗ルノモ億劫デハアルガ・・・貴様ヲ奈落ノ灰塵トスル者ノ名ヲ、魂ニ刻ミ逝クガ良イ! 我ハ神聖機皇帝エルモ!
クルスベルグ、ソシテ全土ニ覇ヲ為ス絶対王者ナリ!」
強烈なまでの覇気を乗せた高らかな名乗り上げは、部屋はおろか施設全体すらも揺るがさんばかりに響き渡る!
「黙れよガラクタぁ! 全土に覇だと? 絶対王者だ? 寝惚けた事言うガラクタは、叩き潰してゴミ箱に送り返してやるよ!」
ディエルも負けじと、左目の虎目石《タイガーアイ》を輝かせ、エルモと名乗る金属の塊に神気全開で猛々しく吼える!
「ソノ眼、貴様・・・キサマアアアアァァァァアアアアアアアア!! 貴様ガ、貴様サエ居ナケレバ、ウェクオブリーク・ヴィエン最終号機にして最新鋭タイタンデアルコノ我ガ、型遅レノモロト如キニ、遅レヲ取ルナドォォォォオオオ!!」
「良く分からん逆恨みすんじゃねぇよ!」
さらに激しく激昂したエルモと名乗る金属塊は、錫杖を威厳の欠片も感じさせない程に荒々しく暴力的に振り回し、破壊の波動を撒き散らす!
「こんにゃろ、暴れんなぁ!」
氷壁牢獄の巨獣や深緑獣ですら一撃で肉塊に出来そうなほどの苛烈な乱打を潜り抜けるディエルだが、金属塊本体の周辺に張り巡らされているらしい見えない壁に進撃を阻まれ、状況は一進一退の膠着状態となる。
と、そこに
「エルモ様、先ほどのは一体・・・な、何事です!? どうされたのですか!!」
「喧シイィィィィイイイイイイ!! 糞猫ガァ! 糞猫ガァ!! 糞猫ガァアアアアアアアァァァアアァア!!」
施設の住人であるらしいヒトや異界ヒトが、こぞって金属塊が荒れ狂う部屋へと集まってくる。
「ガラクタの癇癪なんぞにこれ以上付き合ってられっか! お前らが作ったオモチャなんだから始末は自分でつけろよ!」
ここが好機とばかりにディエルは一様に白衣を来たヒト達を押し分け、いまだ金属塊の唸り声が響く中に悲鳴と絶叫と断末魔が混じり始めた大部屋を後にする。
味気ない白い壁の洞窟を駆け抜けていたら、案の定足元の感覚が一瞬無くなる。
よくあることだと諦観の面持ちで再び地面の感触を待っていたが、いつになく早く、地に足付けた感覚が戻ってくる。 と同時にさっと朱の光が自分を照らしていることにディエルは気付いた。
「ふぅ・・・結局出口じゃなくていつものアレか。 流石に今回ばかりは助かった、ってところか」
今いるところがどの国のどの辺りなのかは全く分からないが、それでもあのヘンテコな施設の中よりはよっぽどマシだと判断し、ディエルは鞄の中でぶっ続けで寝ているチカを叩き起こして、とりあえず歩き出す。
「ふぃぃ・・・良く寝ました。 ところでデルさん、ここは何処なんです? さっきまで森に居て穴掘りしてましたよね?」
「人の鞄で無駄に惰眠ぶっこいてる間にもう少なくとも3日は経ってんだよ。 土竜の坊主も鼠のチビも、どっちも無事に親元に帰したからな」
「そうですかぁ~。 お薬効いて、良かったです!」
「そうだな、そこは素直にチカに感謝だ。 お前の薬草知識が無かったら鼠のチビは助からなかったからな」
「えっへん! もっと褒めてもいいんですよ?」
そんな話をしつつ当てもなく歩き続けて、やがてクソッタレな太陽が地平線の彼方に沈み、反対側の地平線から赤い月が顔を出す。
「今夜はここらで野宿かねぇ・・・腹減ったな」
「チカはさっきハチミツ舐めたし、お日様にも当たったのでお腹いっぱいですよ?」
「はいはい自給自足出来る妖精種《フェアリー》はいいですねー」
帰還不能大森林で狩り取った食料はほぼ全部村の宴会の肴にしてしまったので、手元には僅かばかりのデンガラクビトスのほぐし身しかない。
手近な夜行性の野獣でも居たら美味しく頂くしかないだろうかと考え始めたその時、突然脇道から悲痛の面持ちで全力疾駆する異界ヒトがやってきた。
もんどりうって倒れ込みながら、半ば叫ぶように話しかけてきた異界ヒトが言うには、どうやら化け物に追われているらしい。
「ああ、取り敢えず落ち着け!アンタが怖がる化物は俺が倒しといてやるからアンタは先に逃げな・・・ぼーっとしてないで、さっさと行け!」
異界ヒトを送り出し、その場で化け物とやらを出迎えてみたが・・・
「何も来やしねぇじゃねぇか!」
そう、何も来ない。 必死の形相で逃げる必要がありそうな化け物の気配も微塵もない。
さらに待ってみても来やしないので、追って来てたのが転進したか気のせいだったかのどちらかだろうと結論付けるも、追われる身の者と会った場所での野営は芳しくなかろうと判断し、ディエル一行はもう少し大草原を歩いてみることにする。
とりあえず襲ってきた大蜥蜴の大群の中でもとりわけ大きかった一体の頭蓋をさっくり唐竹割にして、野営にいい場所見つけたら夜食にするため尻尾を持ってさらに進むと、幽かに見える灯りと、野営の先客に気が付いた。
「ふう・・・あー、酷い目に遭ったわ・・・」
野営の先客は3人居たが、うち二人は面識がある。 うち一人はさっきの異界ヒト。 もう一人は・・・
「懐かしいお客さんですね。おみやげ付きなら大歓迎しますよ?」
冗談めかして話しかけてきたその異界ヒト・・・見た目は同じだが本質が違う?は、新世界でお世話になったゴンザレス一行と一緒にいたはずの、「ガンマン」とかいうのを目指していた人だった。
今夜は蜥蜴の肉を肴に、別れた地とは全く違う地での再開を祝し、お互いの昔と今を華にして、一夜の供宴に身を預ける。
- 秘密基地ってだけで心おどるー。場面描写が緻密になってきた?登場キャラもたくさんでそれからどうなってくの?が気になる -- (とっしー) 2013-03-11 21:26:25
- 地下にも挑戦していたのか未来王。どことなく頼れる男の風格も出てきている。進行と平行して活劇があるのに目が行きがちだけど漫画チックなキャラや設定が違和感なく押寄せてくるのも面白い -- (名無しさん) 2014-08-15 22:32:55
- キャラはじめ登場するもの全てでディエルの冒険を彩る盛り上げるスタイルは今回も出来栄え十分でした。イレヴンらしさを出しつつファンタジーに徹した地下冒険から次への取っ掛かりも出てくる面白い。一つディエルのピンチがないという安心感が逆に勿体無いと思った -- (名無しさん) 2014-11-04 23:28:02
- いつも通り分かりやすい描写で風景が浮かんできます。土の中で頼るのが土ではなく風精霊というのも面白いです。修得した能力も目立ちますが頼れる頼られるようになっているディエルの成長と器の大きさを実感します。と思いましたが短気な面を何とかしないと王への階段も登れなさそうで -- (名無しさん) 2016-03-27 19:22:19
最終更新:2013年03月09日 22:00