ベ~ジタァ~ブルゥ~ハァ~ンタァ~ エッスエモケーアーンドゼ~ガァ~
そう広くない会議室に提げられたスクリーンに仰々しく映し出されたタイトル画面。 文字のみ。
神戸三宮の賑わいから離れた商社ビル群の片隅、エスエモケー㈱は
かつてゲームセンター全盛期に大きな流れを作ったゲームメーカー“であった”。
「年度末なんでてっきり人事の話かと思ったんですけど… 何ですかそれ」
「私達は施設運営の会議と思っていたのですが… 上が何も言わずだったので」
エスエモケー十名とゼガアミューズメントパーク三名が怪訝そうに上座に構える支店長に視線を集める。
「うむ。ゲーム好きで入った人ー喜び給えよ。 パチスロ試遊機の説明や会場案内から離れれるチャンスだ。
また上層からの思いつき指示なんだがね、“異世界でゲーム製作”というものなのだが ───
各員に配られた資料には…
・異世界にて実際に取材などを行いリアルな造型を表現する
・あらゆる種族の動きを取り込んで多彩なキャラを実現する
・異世界の道具や建物の現物を使用して生の感触を出す
「まぁ要するにだ、流行りの狩りゲーに二社共同製作で一石を投じるために異世界に出張せよということだ」
「で、ゲームの後は毎度のパチスロ化ですか?」
「パークで体感コンテンツとして派生させるつもりでしょうか…」
湯尾乾 玄武(ゆびぬき くろむ)
二十七歳、健康優良男性。 よく飲み屋のママからは「きゅっと締まったイイ体」と言われる身長180cm。
部活帰りのゲーセンが何よりも楽しみだった。
互いの魂を投入しての戦いに魂を奮わせた。
誰もが熱くなれるゲームを作りたいと専門学校の後にSMKに入社した。
だが、2000年も十年を過ぎたあたりにはもうゲームメーカーとして形骸化し、業務内容は各地のホールなどへの運搬や取材になっていた。
しかし、割り切った人、思い入れのある人が残る中で燻っていた俺にはただのプリントが格闘大会の招待状に見えたのだ。
「この企画はもう人選は済んでいるんでしょうか? もしまだでしたら自分が立候補 ───
「あ、湯尾乾君は入っているから大丈夫ですよ。 SASUKEでいいとこまで行くくらいの体育会系だからね、私が推しておいたよ」
「ZEGAさんの方も人選は済んでいる様なので現地で合流してくれ給え」
「はへ?」
「こ、ここがエリスタリア…」
支店長の“必要なものは現地で揃えれるから”という一言で会議の翌日に出発。
ミズハミシマから旅行社からの案内人に色々と異世界のレクチャーを受けつつ
エリスタリアへと向かう。
船上だけの付き合いだったが、異世界では高価とされる煙草をことあるごとに吸っていたので
別れの際に現地員に渡すつもりで持っていた煙草を幾つかチップ代わりに渡した。
「良い国なんですけどね、うっかりすると帰れなくなりますので御注意を」
最後の一言が印象に残る。
エリスタリア春の国、東の交易港。
船舶の往来も盛んで人の出入りも賑やか。
一際目に付くのが大小様々な植物で体を構成する人や動物。
「樹人や樹獣を見るのは初めてですか?」
通りの良い青年声が背後から。見ればSMKの腕章を付けている。
「ようこそエリスタリアへ。SMK異世界出向員のユーキ=ユウゲです。よろしく」
地球へやってきた異種族の御土産として密かに人気のあるゲーム関連商品。
それらの拡販のために異世界の支店や異種族の社員が増えたとは聞いてはいたが ───
「よろしく。 …
エルフの方です?」
細身の体に蒼翠の瞳にやや逆立った短い金髪。
整った顔は如何にも二枚目で、キングオブバトラーズの日本チームにいるハンサムナルシストを思い出す。
「そうですエルフです。 ところで湯尾乾さんは学園のヒロインと男装の麗人はどちらが好きですか?」
何と言う…初見で投げかける質問なのかそれは。
企画資料には ───
ユーキ=ユウゲ
外見年齢二十五歳、軽快爽やか男性。 エリスタリアから地球への外交団に随伴し日本へやってきた際にギャルゲーに注目。
二次元に運命を握られた彼は本国から任を解かれフリーターになっていた所を、ハローワークの異種族雇用推進制度によりSMKに入社。
「あえて言うのなら、親友の妹です」
握手の途中でドヤ顔で応えると、口をすぼめて風を鳴らしたユーキが目を丸くした。
「樹人樹獣はエリスタアが用意した、まー公共のお手伝いさんみたいなものですね。
故郷から捨てら…いや、離れてから帰ってきたのは久し振りですが増えたなぁ」
故郷の空気を大きく吸い込んだユーキの眺める先には、雲を突き抜けてまだ空を突き立つ巨大な巨大な樹がうっすらと見える。
そう立っていると、上着の端を誰かが引っ張る。
「オニモツヲ オモチシマス」
小学生くらいの背丈。 枝がより集まった四肢に葉の髪が覆う顔。
「いや、大丈夫です。 ありがとう」
「ハイ エリスタリアヘヨウコソ オコシクダサイマシタ」
ぺこりとお辞儀をした樹子は、船より降りてくる人波へと走っていく。
「異種族ギャルゲーも最近増えましたよねー。 私的には女子高の教師になって教え子を育成し付き合うとか和の文化をもっとプッシュして欲しいんですが」
「もう一人、港の駅で待ってるらしいんですけど…」
港から各地へと向かう駅には、車を牽く樹獣が多く待機している。
無料で乗れると聞いて、エリスタリアの観光戦略の本気を垣間見た気がした。
駅に並ぶ人の中で軽く頭を突き出す長身の…虎人がやたら目立っている。
「あっ!」
こちらを視認して声をあげるとどすどすどすと駆け寄ってくる。
屈強な体にはち切れんばかりに伸びたダライマスTシャツはもう忘れないだろう。
「いやぁてっきり遅れて先に行ってしまったのかと思ってたんス。
出発前徹夜でスコアタしてたのが祟って、さっきまで寝てたんスよ」
五指に鋭い爪を持った獣手がぬっと差し出される。
「マズア=タックです。 よろしくっス」
現地合流の最後の三人目。 四人目は先に取材場所で待っているとのこと。
マズア=タック
二十二歳、人懐っこい獣人男性。 門自への異種族入隊で伊丹駐屯地に勤務する。
勤務中に同僚がプレイしていたシューティングゲームに興味を持ち自らプレイしたところ、
目に見えて増えていくスコアに快感を覚えハマっていく。
二年の後、門自を辞めてZEGAアミューズメントパークのアトラクション員として再就職する。
「本当は携帯機の一つでも持ってきたかったんスけど、仕事に集中するためとか言われて許してもらえなくて…
ところで二人はボム派ですか?緊急回避派ですか?」
「波動砲派です」
「あえて言うなら魔法陣反射派かな」
三者三様、揃い荷車に乗る。
これより向かう地へ思い馳せつつも、互いの好きなゲームの話などで盛り上がる。
思ったよりも速度を出す樹獣。 主に森と林に挟まれた河べりの景色を堪能しつつ一日目が終わり、簡易テントで静かな森の夜を明かす。
二日目の昼からは森林道に入り、ガタゴトと夕方まで揺られながら運ばれた先で森が開けた。
一見するとキャンプ場にも見えるその入り口には、SMKとZEGAのロゴが入った大きな看板が立っていた。
ようこそ“ハンターの村”へ。
ゲームも異世界で製作する時代に入っているであろうイレヴンズゲート。
四人目は?取材って一体どんなことをするの? 次回へ続く。
- 異種族でも働けるようになっているのは交流の賜物なのか。エリスは旅行は安上がりだが他が高くつきそうだわ -- (とっしー) 2014-04-13 16:48:13
最終更新:2014年05月24日 01:08