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【クロック(略)市長の昼下がり】

我が名はクロック・クァット・カーク・アック・クック・ガーク・クルッツ・クロック。
誇り高き皇帝ペンギンの一族であり、嘴をもち、クォック・クァット・カーク・アック・クック・ガーク・クルッエ・クロック市の
市長を務めている。
そしてここは我が市に隣接する湖、クイマック・クァット・カーク・アック・クック・ガーク・クワート・クロック湖である。
素晴らしく大きく、素晴らしく美しく、素晴らしく素晴らしい湖である。
我は海を見たことはないが、きっと海よりも遥かに素晴らしいものであろう。
なんといってもこの湖は、我が支配しているのである。
我の縁があるということことは、この湖の価値を著しく高めている。
俗人どもはこの湖を見た瞬間、感動のあまり三点倒立せずにはいられまい!
ふむ、しかしだ。湖の名前を聞くたびに三点倒立するのは大変だろう。
そうだ。思いついた。「湖で三点倒立しないでも許す条例」を発布しよう。
うーむ、なんと我は慈悲深いのだろうか。
俗人どもは我の慈悲深さに、感動のあまり歌いださずにはいられまい。
我を称える大合唱か、うむ、素晴らしい。
それにしても我に劣らずこの湖は素晴らしい。
素晴らしく大きく、素晴らしく美しく、素晴らしく素晴らしい。
眺めていると、俗世間のつまらんことは忘れ去ってしまえそうだ。
…………………………
………………
………
はて…、そもそも我は何故ここにきたのだろうか……?


「あの、クロック市長」


先ほどからの声に振り向けば、ニッポン族がいた。
ニッポン族というのは最近ゲートから現れた種族のことである。
毛が少なく、肌から水を出し、何でも食べるのが特徴だ。
今までに幾人にも会ってきてはいるが、
妖精顔のものばかりで嘴顔のものをみたことがない。
恐らく差別されているのであろう、やはりペンギン族以外は前時代的であるな。
我が市を見習って欲しいものだ。
……そういえば、エルフのごとく皆全てが妖精顔という可能性もあるか。
うむ。それはそれで顔の多様性がなくてつまらん。
どちらにせよ、我がペンギン族の優位には変わらんか。
差別といえば思い出したぞ。
あの忌々しい飛人どものことを。
すこしくらい空を行けるからといって、我らペンギン族を足蹴にしおって。
真ペンギン大陸を統一した暁にはオルニトに攻め入って、足蹴にしてくれる!
そうだ。あの飛人どもはあのときも(略)
あー…、はらわたが煮えくり返っておさまりつかない。
こんなときは湖を眺めよう。
この素晴らしい湖を眺めていると、俗世間のつまらんことは忘れ去ってしまえそうだ。
…………………………
………………
………
はて…、そもそも我は何故(略)


「急に連れて来られてわけがわからないんですが………」


先ほどからの声に振り向けば、ニッポン族がいた。
ニッポン族というのは(略)
どうやらこのニッポン族は我の客人であるらしい。
我と、我の湖と、我の客人が揃っている。
これは、我が我が湖にて捕らえた我が魚を我が客人に馳走しようとしているのではないだろうか。
うむ、きっとそうに違いない。
ならば早速、魚を捕りに行こう。
我は外套を脱ぎ、華麗に湖に飛び込んだ。


「急に脱いだと思ったら泳ぎはじめたよ!あー!わけわかんねーー!」


我は華麗に湖中を行く。
水切る感覚が心地よい。
水面は美しく輝き、水底は優しく暗い。
なんと素晴らしいことか!俗世間のつまらんことは忘れ去ってしまえそうだ!
我はまもなく華麗に魚を発見し、華麗に魚を追い、華麗に魚を捕らえた。
我が華麗さといったら(略)
残念ながら我が姿を見ることはできないが、素晴らしく華麗に美しいことは自明だ。
そうでなくては、魚を捕らえることなど出来はしない。
店で買えばいいのだから狩りの必要はないのだが、
我が華麗さの再確認したさに止めることはできない。

我が華麗に陸へ飛び出すと、呆然とした風のニッポン族がいた。
何故ここにニッポン族がいるのだろうか。
ニッポン族というのは(略)

我が捕らえた魚を我が喉から取り出すと、我が客人は間抜けに顔を歪ませた。
馳走だと告げると、ますます奇妙に表情を歪ませた。
妖精や鬼の出す嫌悪の表情に似ているがありえない。
ニッポン族特有の歓喜の表現に違いない。
貴人と食事を共にするのは畏れ多いのか何度も遠慮して来たが、
謙虚もすぎれば無礼にあたると諭せば理解してくれた。
さて、もう数匹捕ってこようか。

我が華麗に魚を捕らえ華麗に飛び出すと、あたりから香ばしさが漂ってきた。
我が客人は土の精に机と釜を作らせ、先ほど捕った魚を調理しているようだ。


「我が客人よ、この芳しい香りは何なのだ?」


「醤油です。日本の誇る調味料なんですよ」


「ほう、素晴らしく美味そうだ」


「ええ、他にも調味料は持ってきているんです。
 本物の魚料理ってやつをご馳走してあげますよ」


みなぎる我が客人の自信に期待が高まる。
隣に立つ狐人の少女もダラダラとよだれを垂らしていた。
…………誰だこいつ?



  • すごい名前ですね。種族間での価値観の違いが楽しい方向で表現されて面白かったです。名前が長くて驚きました -- (名無しさん) 2013-04-19 18:28:43
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最終更新:2012年08月12日 09:47