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【神の薬はアヤシイ薬】

「我が神よりの品で御座います。 それにしても面白そうな薬で御座いますね?出来るのならば後で私にもほんの少し御慈悲下さいませんでしょうか?モルテ様」
『確か世界樹の神霊だっけ?お使いはご苦労様だけどそれはちょっと無理カナー。 これは“とっておき”だからネー』
「うふふ。それは残念で御座います。 それでは…大会、楽しみにしていますわ」
妖艶なるエルフの美女から碧たゆたう小瓶を受け取ったモルテが口端を釣り上げると神霊イルミンスールはすぅっと体を透過させていく。
『君も相方の、えぇと名前は何だっけ?一緒の神霊と観に来てよネ』
イルミンスールは無言で一礼し消え去った。

 石神ディルカカの演算から導き出した方程式を
 星神テミランの予測修正で整え
 世界樹が揃えた数多の素材を
 獣神金羅の生み出した炎にくべた
 鍛冶神ヌダん家の釜に放り込み
 戦神ウルサが三日三晩光速撹拌したものを
 僕モルテが神力を混ぜ混ぜして完成! テーレッテレー!


「それで…私めに何の御用で御座いましょうか?モルテ様」
黒だけが存在する夜の森の中で一人の樹人スラヴィアンが傅いている。
『くるしゅーない。 えぇと確か“腐った葦のウキエヒシト”だっけ?口先三寸だけで貴族まで後一歩のとこまで上り詰めたって噂の』
「いやはやこれは耳が痛いですな。全くもって仰る通りで御座います。口の達者な腐れ葦で御座います」
スラヴィアの神を闇の向こうに据えて一切の動揺を見せないのは、流石大物と口だけで渡り合いヨイショで美味い汁にありついてきた者だけはある。
「で、私めに如何な用で御座いましょうか?」
『なーに簡単だヨー。この薬を強そうなスラヴィアンに飲ませて欲しいんだよネ。
なるべく将来に夢を抱く一生懸命なスラヴィアンを選んで欲しいのサ。できるネ?』
「お任せ下さい。見事成し遂げて見せましょう」
『ホイ。ではこの薬ネ。 貴重だからほんの数滴分しかないから一発勝負だヨー。失敗したら消滅させちゃうかもウェヒヒ』

「モルテ様も中々無理難題を仰ることで… そもそもスラヴィアンに夢や将来など縁遠い概念でしょうに」
てくてくてく
「そんな都合の良いスラヴィアンなど…」
てくてくてく
「あ!ひもひもな樹ラヴィアンさん、こんばんは!」
「これはこれは、こんばんは。 ところで顔の皮、はげてますよ」
あわわっ あわわっ
華奢にぽんぽんスカートの端を摘まんでお辞儀して上げた顔は頭蓋骨がモロ。
あわてて垂れ下がった顔皮を貼り付けたのは、スラヴィア最古の貴族“髑髏王”の肝煎りであるヴィルヘルミナであった。
「一人で散歩ですか?髑髏王の娘さん」
「立派な淑女になるためにけんぶんを広めているのです」
 何とも立派な夢を持っていらっしゃる… ふむ。ならば…
「ヴィルヘルミナ様。このウキエヒシト、ささやかながら助力させていただきましょう。
この薬を飲めばたちどころに聡明に、乾いた脳すらも潤わせるという秘薬で御座います。どうぞお飲み下さい」
「わーいありがとうございます」
 ぐびっ


 ── スラヴィア日報
 今朝、ヴェルルギュリウス領付近の森でスラヴィアンがバラバラに引き裂かれているのが森で木の実を採りにきていた領民によって発見されました。
 散乱した部位は樹人であり、程なくサミュラ様に届けられ選定を受けウキエヒシト氏であると判明しました。
 尚、対戦相手は分かっておらず野饗宴だとされております。

 その日の夜 ──
「整列!」
レシエの号令一つで鋼の軍勢が姿勢を正す。一糸乱れぬ動き。
士気の高まりと、大会のために選び購入した“魔獣降し”と呼ばれる頑強巨大で肉厚のある白銀の大剣もあってか大層御満悦なスラヴィア最古の貴族が一角レシエ卿。
「これで今度の大バトル大会の準備は完璧ね! サミュラ様の御前で華々しく優勝してみせるわ!」
 ズンッ
突如レシエ邸修練場に張り詰める異様な“戦気”
 ズンッ ズンッ
何者かが夜闇の向こうからやってくる
 ズンッ ズンッ ズンッッ
それはゆっくりと大きく白煙を吐き出した
 ズンズンズンズンズンズンズンッッ
突如駆け出したその巨体が鋼の軍勢の前で飛び上がる!
「何者っ!?」
「パァァアアァァ~ンダァッ!」

 ── 審議侯キエムの屋敷
「??レシエ卿、言葉の意味が理解できませんでしたので再度よろしいでしょうか?」
「もう何度も言わせないでよ! いい?パンダが来たら伝えなさい“大会出場権はあなたのものよ”と!」
「パンダ…で御座いますね?」
「そうよマリアージ。紛れもないパンダよ。 私の軍勢を縦横無尽に砕き回って挙句の果てに折角用意していた剣まで折っていった…
認めたくはないけどあのパンダの勝利でいいわ。最古の貴族が譲渡できる大バトル大会の出場権はあのパンダのものよ」
「しかしパンダと言われましても…私、南蛮の大黒白など見たことがありません」
「あれは大黒白というよりも地球のパンダに近かったわ。ほらこのウエノドウブツエンの写真のがそうよ」
「あら可愛らしいですね」
「私には分かるわ… あのパンダはきっと大会にやってくると」

「客かね?」
「イエス、マイロード。先ほどまでレシエ卿がいらし…どうなされたのですか?その“穴”は」
玄関ホールへと螺旋階段を降りてきたのは屋敷の主キエム。
しかしその体の真中には大穴が開いており所々包帯でぐるぐる巻きになっていた。
「我々最古の貴族が持つ出場権は譲渡は可能だが自身で使用することはできない」
「仰っている意味が理解しかねますが、マイロード」
「昨晩、ヴェルルギュリウス伯爵がやってきてね「侯の出場権を譲り受けたい」と申し出てきたので一戦交えたのだよ。
私としてはそのまま不戦敗でもよかったのだがね、少し伯爵の様子が気になったので戦ってみたのだよ」
「それでその傷を受けたと?」
「その通り。私は少し昔の熱を思い出せればよいくらいに思っていたのだが…伯爵は本気も本気であった。
まさかスラフ戦役にて稜線を埋め尽くす連合軍を一晩で屍にし従えた“禿山の一夜(ナイトメア)”ヴェルルギュリウスを体感することになるとはね。
いやはや髑髏王は未だ健在であったよ」
「そのように伯爵は大会で優勝を願っているのでしょうか?」
「いや、今の伯爵があそこまで自身を露に荒ぶるのは大切なもののためであろう。 彼の想いの熱、羨ましくもある。
まぁ、恐らくはモルテ様のいつものアレのせいであろうがね」
「…困ったもので御座います。 マイロード、せめて穴は塞いでおきましょう、こちらへ」

 ── 大会会場前
「迷路を突破したら何か出場権ってのがもらえたもんでほいほいやってきたものの…どうすっかなぁ」
一人の猫人の少年が大バトル大会の看板を前に思案している。見た目も小柄な猫人の少年である。
「フフ、大会はきっと猛者が集う…怖いか?」
「うわっ!何だよ急に!ってそっちも小さいじゃないか(俺よりは大きいけど)。 ま~アレだ親父より強い奴が出てきたら俺負けっかも」
「ぱんぱかぱ~ん♪そんなキミに朗報だよ! この“薬”を飲めばアラ不思議!キミの未来にあるであろう絶頂期に体がGO!たちどころに成長しちまうんだ!」
「うわ!胡散臭ぇ!」
「へへっなんとその薬が今だとタダで手に入っちまうんだ! なァに心配はいらないヨ、ちゃぁんと実験済みで効果は保障する」
「あ、タダなのか…どーすっかなぁ、タダかぁ」
「まぁとりあえず持っときなヨ。もし大会に出場する面々を見てそれでも挑戦しようと思ったのならゴクっとイッチマイナー。
今は唯の猫少年のキミだけどきっといい勝負ができるようになると思うヨ!」
ギザギザの白衣を纏った少女は半ば押し付けるように少年へ薬を渡すと奇怪な笑い声と共に消えてしまう。
「俺の絶頂期…」

そして大バトル大会は開催される。 誰の一人の参戦辞退者を出さずに。
しかしそこにはスラヴィア大迷宮を突破し出場権を得た猫人少年の姿はなかった。


大バトル大会のディエルとパンダーが不思議な薬で成長した二人の姿であった!という説を元に想像して一本

  • イレヴンズゲートにおける神という免罪符は大きい…体だけが成長しても大変だ? -- (名無しさん) 2015-07-23 23:17:39
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最終更新:2015年07月23日 21:23