【もふもふサンタ】

「もーふーふーもっふもっふ」
「あら巌窟王、その服はどうなされたのですか?」
スラヴィアにて海運の多くがやってくるレシエ領の港街に巡回へと訪れていたサミュラの目に留まったのは白と赤のもっこりした衣装にくるまれお腹を突き出し陽気に気勢をあげる岩窟王であった。
毛むくじゃらで多腕が多いという以外は謎ばかりのムーク種のスラヴィアンである岩窟王は、今まさにサンタクロースへと変身しているのである。
「あっ!サミュラ様こんばんはです!」
ぴょんこぴょんこと純白の大袋から首だけ出して跳ね飛びながら近づいてくるのは巌窟王の娘、監獄公女ラビス。長く有り余る髪をサンタ帽子に無理矢理詰め込んでの登場である。
ラビス袋を数本の腕が丁寧起用に掴んで担ぐ。そして力強いポージングを決める。
「とても素敵なサンタさんですね!もう地球はクリスマスの時期なのですね」

地球、日本のUSJからの荷物はクリスマスイベントにゲストとして参加する岩窟王・監獄公女のサンタクロース衣装の試作服である。
過去、大ゲート祭でスラヴィア一行が日本USJに訪れた際に大きな反響があってからというもの、異世界スラヴィアにて大迷宮を創造していることも働いてアミューズメント協賛という繋がりを持ったのである。
今年はコロナ渦もあってクリスマス繁忙期を前に色々模索しているUSJが年末応援として巌窟王と監獄公女に白羽の矢が立ったのである。
「世界間交流促進は素晴しいですね。今はそう日をかけずにミズハミシマ行きの船で日本へ渡れるようになっていますし、私も一緒にクリスマスはUSJに行きましょうか」
「サミュラ様が来られるのなら本営に直通便を送って“びっぷぱす”を用意してもらうのです!パパと私の活躍を特等席でご覧になってもらうのです!」
「あらあら、そこまでしてもらうのであれば私も交流に、USJ様に貢献しなければいけませんね。 …そうですね、確かサンタクロースは鹿の牽くソリに乗って世の子供達にプレゼントを贈るのでしたね」
「その通りですサミュラ様」「もふもふー」
「恥ずかしながら私もパレードの端列に加わって会場の盛り上がりに貢献するように努力しましょう。 サンタ、ソリ、鹿…鹿、鹿。そうそう、放浪卿にお声を掛けてみましょう!」

港の木箱の影から楽しそうに歓談するサミュラ達をじぃーっと見つめる邪悪な影一つ。
「聞いたぞ聞いたぞ~。サミュラはクリスマスをにほーんで楽しむつもりなんだな?よぉしボクもこっそりついて行こうそうしよう!」
モルテよ…年の末くらいは神の役目を果たさねば…』
口端を釣り上げてあくどい笑みを浮かべるモルテの後ろから、黒犬の言はその耳に届くことはなかった。


クリスマスはUSJでパレードパレード

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最終更新:2020年12月22日 03:14