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【Before FRONTIER】

タッタン!!タッタン!!タッタン!!…タタタタタタッタン!!!
小太鼓のリズミカルな音が聞こえる。
ジャーーン!
ター!タッタラッタタッタッタッタターララーララー!
シンバルの音の後に勇ましく高らかに金管楽器の音色が響き渡り、それと共に…
ザッザッザッザ…
規則正しい軍靴の音が聞こえる。

「全たーい!前へ!」
伊達衣装を纏った指揮官が号令をかける。
すると、各々手に長槍と鉄でできた筒を掲げて伊達衣装を纏った兵士たちが軍楽隊を中心に前進をする。
精霊たちが面白がってその後をついていくので進む大勢の兵士たちの緊張の面持ちとは裏腹に非常に華やかな風景だ。

30年前、まだ新天地と呼ばれる国が無かった頃、ある日飛べない鳥人の鉱山奴隷達の一部が反乱を起こし、都市の一つを占領した。
すぐに鎮圧されると思われていたソレは、次第に周りの様々な人種、国家、そして……神々を巻き込み大きな力の渦を巻き起こす。
そして、反乱を主導したソロモン・ブラウンがオルニトに突き付けた独立宣言により、各国の目はこの暴動に向けられ、ただの暴動は内乱となったのだ。
これにより、国家の威信の失墜と各国の介入を恐れた当時のオルニトの王(トラトアニ)・ティルルクックはオルニト正規軍を鎮圧に導入し自ら陣頭指揮を取ってこれを早期に殲滅しようとした。
これが後に新天地独立戦争と言われる大戦の始まりである。

独立を掲げる独立軍民兵たちと領土を守るオルニト正規軍兵士たちは幾度かの交戦を重ね、現在は新天地南西部、現在は鳥人撃ち平原と呼ばれる丘に囲まれた木もまばらな広い平原で今回の交戦は始まった。

オルニト側は戦奴である飛べない鳥人たちを壁のようにして前面に押し出し、後方で飛べる鳥人の戦士や神官たちが控えている。
戦奴だけでも独立軍の2倍近い人員がいる大軍だ。
武装は飛べない鳥人たちには重い木の盾と粗末な棍棒や石斧、飛べる鳥人の正規軍兵達は各々で持つ得物が違い、切り裂くことが目的の1メイルほどの穂に黒曜石の鋭く細かい刃をつけた5メイルの長槍や同じく黒曜石の刃を埋め込んだ剣のように切り裂ける棍棒、矢羽の付いた投げ槍を放てる投槍器などを持ち、色とりどりの羽などで飾った分厚いキルティングの鎧をつけている。

対する独立軍は、主力の飛べない鳥人以外にも様々な種族が入り交じって横に長い縦8列の隊列を取り、それぞれが指揮官を擁する3つの隊に分かれている。
そしてこちらの武装は、派手な衣装と楽器を持った軍楽隊以外は、みな一様に鉄の胴丸に色を合わせた派手な帽子をつけて、7メイルはある長槍(と何人かは盾)を持った者と鉄の筒でできた精霊火矢を飛ばす鉄火筒を携えている。

この鉄火筒は中空の鉄の筒に木製の肩付けできるストックが付いており、火精霊が好む木炭や硫黄、燃える石などの粉を紙で包んだ物とクルスベルグから来た職人がルーンを彫りつけた鉛の玉を筒の中に放り込んでストックに付いた引き金を引くと火打石が機関を叩いて火花を散らし、ソレによって火花が好きな火精霊が筒の中に呼び寄せられて薬包に飛びつき爆発させて火矢を飛ばすという地球のマスケットによく似たものだ。
現在は使用が規制されている上にアメリカからの銃の輸入で廃れているが、戦争の途中で参加したオークの相棒を連れたエルフ?傭兵の大女が考案して以来、攻撃用の精霊魔法を上手く使えない者が多い独立軍で戦列歩兵の戦法と一緒に大変重宝されていた。

両軍とも歩を合わせて近づいてくる。少しずつゆっくり確実に…
200メイル、150メイル、125メイル…
「全体!止まれ!!」
総指揮官の号令とともに全軍が停止。
「第一列膝射姿勢、第二列立射姿勢、撃ち方用意!!三列の槍兵は前方へ構え!敵を銃列に近づけるな!!」
総指揮官の檄と共に軍楽隊が勇ましい軍歌を演奏しだす。
「おおおおおおおおおおーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!」
軍歌や兵の士気の高まりで精霊が集まり、全体への加護も十分だ。

「前列盾構え!突撃用意!後軍の剣と盾となり命をかけてオルニトの平和を乱し王に仇なす逆賊共を押し潰せ!!」
オルニトの指揮官が叫ぶ!
同時に神官たちが大きな太鼓や土笛、木管楽器、銅製の打楽器などを打ち鳴らして精霊を集める。
「おおーーーーーーーーーーーーーー!!!」
独立軍に比べると前列の飛べない鳥人達は士気も低く精霊の加護も十分でない。
その代わり、後列の飛べる鳥人の戦士たちの士気と加護は十二分以上である。

「…前列盾押し出せ!!!突撃ぃぃぃぃいいいいーーーーー!!……後列、前列を盾に続けー!」
オルニト側の兵士たちが突撃をかける!
粗末な装備での無謀な突撃…
110メイル、105メイル…
「第一列!撃ち方始め!!!」
指揮官の号令、そして鉄火筒の轟音が辺りに響く。
オルニトの最前列の飛べない鳥人の兵士たちが強力な精霊の加護を受けた火矢で盾ごと体を撃ちぬかれて倒れていく。
「第一列、装填!…第二列、撃ち方始め!奴らが音を上げるまで打ち続けろ!!!」
いかづちのような轟音、そしてバタバタと倒れるオルニトの戦奴たち…

「…後列、上昇突撃!!!地を這う虫ケラどもを叩き潰せーーーーーー!!!」
「うぉぉおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!」
鬨の声と同時にオルニト側の後列である飛べる鳥人の戦士たちが急上昇して空から独立軍に風のような速さで襲いかかる。
「がばぁっ!?」「ブゴッ!」「ぎゃああああああーーーーー!!!!」
空からの投槍器を使った強烈な投げ槍で独立軍の何人かが串刺しになる。

「各楽隊!上方へ精霊を集めて対空防御!4列、6列!バラ玉装填!!、5、7列槍を上へ!近づいた頭の軽い馬鹿共を突き落とせ!!」
すぐさま装填と槍の構えがなされる。
その間にも、独立軍の前列を釘付けにするために使われているオルニトの戦奴や独立軍の運の悪い兵士たちがバタバタと倒れていっている。

「4列6列!撃ち方始め!蚊トンボ共を撃ち落せーーーー!!!」
複数の轟音と共に小さな火矢が複数飛び出し、空から攻撃をかけている飛べる鳥人戦士たちに殺到する。

…グシャッ!…ベショッ!……ドシャッ!
火矢を受けて墜落したオルニト戦士たちが地面へ激突し大輪の花を咲かせる。
しかし、仲間が倒れても戦士たちは鉄火筒を装填する隙を狙い槍や棍棒で果敢に攻撃を繰り返す。
「うぉぉぉぉおおおおおおおおおお!!!」
突撃で何人かは槍衾に突き刺さり息絶える中、若いオルニト戦士が棍棒の刃で上に向けられた槍を切り裂き方陣の中へ突撃する。
「な!?がぁっ!!!!!」
面食らった槍兵の頭を棍棒で叩き割り、返す刀で後ろの筒兵に叩きこむ!

ガン!!
筒兵はとっさにストックと腕で防御し、棍棒に付いた黒曜石の刃がストックと腕に深く食い込む。
「このクソ野郎!!!」
横にいたゴブリンの筒兵が重く硬い鉄火筒のストックを振り下ろし、若い戦士の頭をかち割る。
血と脳漿と目玉をまき散らして倒れる戦士。
他にも切り裂く槍を前面に押し出して低空飛行で突撃した戦士は二・三人の首を切り裂いた後、槍で叩き落とされ鉄火筒のバラ玉でズタズタにされり、火矢に貫かれながらも数人を棍棒で切り飛ばし叩き潰した後槍で突き殺されたり…

同様のことがそこらで起きており、独立軍とオルニト正規軍の位置の差、近接攻撃力の差が大きく出ている。

その時、高らかにラッパの音が響き渡る
「クソ!!イストモスの騎兵だと!?」
後方の丘から突然独立軍の伏兵であるイストモスの混成騎兵が現れたのだ。

「全軍突撃ぃぃぃいいいいいいいいーーーーーーー!!!!!」
騎兵達は疾風のような速度で戦場を駆け、ランスや大剣・ポールウェポンなどを構えた西方の重装騎兵達は大量にいる戦奴たちを追い立て踏みしだいて駆逐し、軽装で大弓や複合弓などを構えた東方の弓兵達は駆けながら空を飛び回るオルニト戦士達に強烈な弓の連射を食らわせる。
「ぎゃぁああああああーーーー!」「うわぁぁあぁあああああーーーーー!」
オルニト側は阿鼻叫喚の地獄絵図と化している。

「グ…ぜ、全軍撤退!!全軍撤退!!」
蹂躙される戦奴たちを見捨てて飛べる鳥人の戦士と神官たちは撤退を始める。
本格的な撤退を始めた空を舞う鳥人達を止める術はない。

しかし…

「な、なんだ!?本陣から煙が…」
撤退する鳥人たちは本陣の方向から盛大に煙が上がっているのに気づいて空中で止まったのだ。
勢い良く立ち上がる煙…それはまるで……
「ま、まさか、本陣が先に落とされたのか!?」
「そんなバカな!!5万の軍勢があそこにいたのだぞ!!」
「し、しかし・・・がっぁ!?」
鉄火筒のバラ玉が空中で止まる的たちに突き刺さる。

「ディアボロ達、リージョンズがやってくれたぞぉおお!!!この戦、俺たちの勝ちだぁああああ!!!!勝ち鬨を上げろおおおおおおーーー!!」
「うぉぉぉぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!」
勢いづく独立軍にオルニト軍は為す術もなく蹂躙される。
惨禍は頑なに降伏を拒むオルニトの指揮官の首が火矢で吹き飛ばされるまで続き、交戦前は独立軍の4倍はあったオルニト軍の数は戦死や逃亡により最終的に捕虜になったのは独立軍の3分の1以下まで減じていた…

夕暮れ時、独立軍の兵たちが夕餉の支度を始めていた。
石を熱してトルティーヤに似たパンを焼く者、鍋で豆や肉を煮る者、茶を沸かす者…
出来たものは順次皿や椀によそわれ、平等に配布される。

静かな夕飯時。
そこらかしこで兵士たちがおしゃべりを始める。
「西の砦の奴らが殺されたってさ…」
「あそこは指揮官がマザーファッカーだったからな…」
「俺、戦争が終わったら幼馴染と…」
「ストップ!止めろ!!験糞悪い」
「リージョンズはもう人間じゃねえな…あいつらが付いてる限りウチは負け無しだぜ」
「あの十人はどいつもありえない強さだからなぁ」

色々な話が飛び交い、たまにジョークで笑い声が起きる。
みなそれぞれバラバラに行動しているが、食事の最初と最後には必ず神に祈るのが特徴的だ。
その長い祈りは、今日の糧への感謝だけでなく独立軍を支持する名も無き数多の神々に明日の無事を祈っているのか、それとも今日の行いを懺悔しているのか…

時は無情に過ぎ去り、全ては変わる。
この地が新天地に変わるまで後少しの時代であった。

「兄貴、どうしたんだい?いきなり考えだして!」
「…ああ、少し昔を思い出してたんだよ。覚えてるか?鳥撃ち平原の戦いの時に潰してやった基地のことを」
くっくっく…と笑い声が聞こえる。
「ああ、覚えてるさ!王族だから乙女のように丁寧に扱えみたいに囀ったバカ司令官の羽根毟ってケツに棒突っ込んで焼き鳥にしてやったな」
がっはっはっはっっ!と豪快な笑い声が部屋に響く。
隣室に控えていた秘書がびっくりして部屋を覗きに来るのを手で追い払いながら
「そうだったな!あの時のヤツの顔は傑作だった…あの時が今までの人生の中で一番楽しかったな……」
そう言って琥珀色の蒸留酒を煽る。
一瞬の沈黙…そして
「……それで兄貴、兄弟の事はどうするね?」
いつもの明るい声ではなく声音を落とした静かな声で弟分は聞いた。
「……」
耳に痛いほどの静寂が場を支配する。
部屋の主はたっぷり一分ほどかけてその静寂を破る。
「……落とし前をつけさせてもらわねばなるまいよ…」
地の底に響くような恐ろしい声。
「俺達の兄弟は医療兵として村長として最後まで筋を通した…
だから、筋を通さない外道共には落とし前をつけさせてもらわないとな」
そう言いニヤリと笑う。
「戦争かい?兄貴!」
いつもの如く少しおどけて楽しそうに言う弟分。
「ああ、戦争さ…俺達、軍団(リージョンズ)の人生最大・最後のお祭だ!!」



全ては移り変わる…
しかし、ただ一つ…ヒトの争いだけは変わらない……



蛇足
イストモスの話を書いていたのですが詰まってしまい手慰みに書いた物です。
作中で大変独自設定やマッチポンプが多くてすみません。
ご意見等頂けると大変嬉しいです。

  • 非情な戦闘!異世界の闘争に人間の思惑が絡まるとどんな凄惨なことになっていくんだろうか -- (名無しさん) 2014-02-04 23:41:45
  • 生きるために戦おうとするのは意思の強さでしょうか。勝たなければ生き残れない!という気迫を独立軍から感じました -- (名無しさん) 2014-06-29 17:45:46
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最終更新:2012年05月08日 20:07