※ネタに走った傾向のある内容です。真に受けないようにご注意を。
11の柱神の協議により開かれた、「こちら側」と「そちら側」を繋ぐ、俗称「大
ゲート」。
その中でも、太陽神ラーが受け持つのは、「そちら側」で言うところの「中東」と呼ばれる地域。 「そちら側」の世界で最も人心乱れ戦火の火種に事欠かない地域が、生命流転を司る神に近い場となるとは、なんとも皮肉な話だ。
とはいえ、「大ゲート」に入ってしまえばそこは既に神の領域にして異世界。 「そちら側」に属するものは、その全てが選別の対象となる。 これはもちろん逆も然り、ではあるが。
神域たるラーの「大ゲート」には、基本的に2つの存在が在る。 第一はもちろん、太陽神ラー。 第二は、ラーがゲート管理を補佐させるために生み出しゲート管理代行権を担わせている神霊フレア。 実はもう一つ在るのだが、ソレは現在「御勤め」の最中なのでここには居ない。
昔はそのもうひとつ、現界し主神代行者と行動を共にする神霊コロナの補佐を行うのがフレアの仕事であったが、「大ゲート」開通後は専ら、半ば唯の儀礼的なものではあるが、双方からの「大ゲート」通行者から提出された書類にぺったらぺったらハンコを捺すのがフレアの役割となっている。
提出された書類を処理しながら、フレアは一人呟く。
「とりあえず15年は経過、ね。『試練だ。 次の代行者の下に到着後直ちに、いかな手段でも構わないので生命の危機に晒せ』なんて事を主が仰った時はどうなることかと思ったけれど、コロナも上手くやってるようね」
前の主神代行者は70年ほどで、「寿命」という現象で使い物にならなくなってしまったはず。 その前は60年、あれ、数日で動かなくなったのも居たかな。 フレアはそんなことを呟きながらぽんぽこぽんぽこハンコを捺し続ける。
コロナが担う「主神代行者の随臣」という立場の都合上、先にコロナと会ったときも、次にコロナと会うときも、次の「御勤め」に私情や支障が無いよう主がコロナの記憶を操作してしまうため、主神代行者の個人的な話をフレアが聞くことはない。 せいぜい「何年生き長らえたか」程度しか知ることは出来ない。
こうしてヒトとヒトが行きかう場を預かっていると、時に現世というのはどういう場所なのか見てみたい、役をコロナと代わってみたいと思うものだが、性格上コロナではこの仕事は勤まらないので仕方が無い。
判を捺す手を止め、捺印済みの書類を纏めたフレアは主ラーの下へ書類を持参する。
「主ラー、ヒト共から出された書面、一山精査し終えましたのでご確認を・・・はぁ、また『げぇむ』で御座いますか」
どこから調達してきたのかはたかが被造物に過ぎないフレアには理解し得ないことだが、過去の通行人より「双方の技術的・思想的差異の著しい品目であるため」として一時接収(既に当人には返還済)した「げぇむ」というよく分からない物体に、主ラーはいたく感銘を受けたようだ。時に他所の主神様とお会いになるときに「げぇむ」の事を聞いてくることがあるらしい。
こうなると主ラーは暫く動かないことを良く知っているフレアとしては、とりあえず待つしかない。
「主ラー、ひとつお伺いしても宜しいでしょうか」
応とも否とも答えないのは毎度のことなので気にしても仕方が無い。 フレアは返答を待たずに質問を続ける。
「先ほどから、『げぇむ』が同じような場面の繰り返しのようですが」
主ラーはわざわざ「げぇむ」をするために、何処かより調達してきた機材を操作するのに丁度良い、「向こう側」のヒトに似た姿に化身され操作なさっている。 とは言うものの、フレアには、先ほどから、主の画面内での代行者が宮殿のようなところから出て単独で化生に挑み果てる、の繰り返しをしているようにしか見えない。
漸く声が届いたのか、暫くして、主ラーより御言葉が発せられる。
『試練だ』
「心得ました。試練であれば仕方ありますまい」
フレアは書類の山を主ラーの邪魔にならない位置に残し、再び所定の位置でぺったらぺったら書類にハンコを捺す作業に戻る。
場所は変わり、深夜真っ只中の
スラヴィア。
時はまさに、スラヴィアの民が既に失ったはずの魂を最も熱く滾らせる「饗宴」の最中。 だというのに、その片隅に、数少ない生気を持った存在がどういう訳か紛れていた。
「・・・『小ゲート』に放り込まれて気がついたらスラヴィア、夜ド真ん中、眠ぃが寝たら確実に次起きたら俺ゾンビ、頼れるのは生身と獅子牙だけ。 これは主ラーが俺に
ラ・ムール史上初のゾンビ王になれっつってんのか」
「恐れながら、これも試練に御座いますれば」
「まさかと思うが、試練って言えば何でも許されると思ってないよな」
「滅相も御座いません。 ですが、今ここで憎きスラヴィア貴族共や
モルテを漏らさず討ち果たし、スラヴィア全土よりこの忌々しい腐臭を振り払えば、主ラーもお喜びになるかと」
「コロナちゃん、無茶極まりないな事をさらっとゴリ押そうとするのは止めようね」
主神代行者の前途は今代も多難であった。
- ここら辺から「試練」という言葉が不穏な響きを帯び始める。神は自重しないが試練の神霊もまた自重しない。 -- (名無しさん) 2012-03-26 23:22:51
- なんかこう・・・いまいちな感じが抜けない。けどこの話は好き -- (名無しさん) 2012-03-27 04:00:23
- 二話目はお供の神霊の紹介になっているが、一話目もだけど“キャラの詳細な外観描写が少ない”のがこのシリーズの特徴だろうか。 読み手に想像を委ねた中で皆は、登場キャラ達をどんな姿形で想像したのだろうか -- (名無しさん) 2012-03-27 23:28:02
- 神が頼りないとその下の神霊が頑張る様になるんでしょうか。性格も分担もいい二人組だと思いました。本人達は神霊の増員を希望しているのかが気になりました -- (ROM) 2013-02-20 15:33:10
- コロナとフレアは面白くて個性的なキャラだと思う。本人達は自覚があるか分らないけど神の道具の悲哀を少し感じた -- (名無しさん) 2013-03-09 20:22:43
- 神であるラーはどこまでの権限とどこまでの自由意志を神霊たちに与えているのか気になったけどほぼ丸投げなんでは -- (名無しさん) 2017-03-24 13:03:13
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最終更新:2012年05月03日 14:40