0414:一人で出来るもん ◆HKNE1iTG9I
【幕間の1/名前もない野生動物の場合】
彼女は、一度死んでいた。
最期の記憶は、迫る巨大な鉄の塊。危険なものであることは、承知しているはずだったのに。
空を飛ぶのは、一羽の烏。ビロードよりもなお黒い翼を広げ、
水面よりも尚青い空に、一羽の烏。
彼女に”分かる”のは、”分からない”ということだけ。
記憶にない場所。自分が今まで住んでいた塒も、今はもう影すら見えず。
餌場だったはずの街――まるで動いているような模様を映す板や、雑多な人間――はもはや無く。
一羽、唯一羽で空を飛ぶ。
変わらぬ空で出会ったのは。
何故か意思疎通を行っているように見える、数羽の同族。
彼らは、彼女が鳥の言葉を解さない(鳥なのに!)と分かると、
まるで別種の生き物のように扱い、邂逅すら存在しなかったように飛び去って行った。
彼女の世界では、鳥類が言語を使って意思疎通を行っているというような記憶はなかったし、
そもそも複雑な言語という概念自体、彼女には存在しなかった。
そもそも、鳥が言葉を話すわけがない。ファンタジーやメルヘンではないのだから。
彼女は、そういう、所謂ごく普通の世界から、殺し合いの世界に招かれた。
(名を書くだけで人を殺せるノートがある世界ではあったが)
三十もの世界から呼び出された参加者と同様に、彼女もまた、
一つの世界から呼び出された贄の一欠け。
だが、彼女は世界の変容にも深い疑問を抱くわけでもなく。抱けるわけでもなく。
世界は常からままならぬものであるし、そして何より。
何より、彼女は単なる一羽の烏なのだから。
だから、彼女は飛び続ける。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
彼女は、既に死んでいるはずだった。
最後に思うは、自分が光を奪った勇者か。解体した、天馬のような雰囲気の少年か。
首を落とした、二人の女性か。愚かな、とてつもなく愚かな希望にすべてを賭け、自分に殺された青年か。
―――陽光のような笑顔を持つ、守れなかった最愛の人か。
彼は、自分にとっての光だった。一番、守りたい人だった。
死ぬ時は一緒だと誓ったはずだった…一緒に生きていくと誓ったはずだった!
地を駆けるのは、一人の女性。血濡れたブレードは翼の如く、
戦場よりも尚昏い大地に、独りの少女。
大切な人は既に亡く、自分は未だに生き恥をさらしている。
記憶に焼きつくのは、一つの誓い。唯そのためだけに、彼女は駆ける。
無力なものを手にかけ、他の参加者の光を奪って。丁度、
武藤カズキという光が、彼女から奪われたように。
大切な人を亡くす悲哀は、身を裂くような喪失は、自分が何より知っているのに。
奇跡と呼ぶことすら憚られる御伽噺に全てを委ね、皆を救うためという大義名分を掲げて奪い続ける。
これこそ、偽善。
太陽の様な彼女の思い人と同様に、彼女――津村斗貴子もまた、偽善を背負い駆けていく。
自らの全てを、曝け出して、投げ出して、引っくり返してただ賭ける。明らかに分の悪い、勝ち目さえも分からない賭けに。
この全ても、狂気の遊戯の慟哭の一欠け。
彼女を見知った人間が見れば、昔に戻ったのかと驚くだろう。
彼女をよく知る人間が見れば、もう戻れないのかと嘆くだろう。
津村斗貴子は駆けていく。覆いようのない血の匂いを幽鬼の様に引き連れて。
目指す先は、
ピッコロという参加者。己が心の羅針盤を、固定するため、それだけに。
宇宙人という荒唐無稽な存在に縛られなければ、彼女の心は崩れ落ちる。
彼女を支えることのできた、唯一無二の人間は今は亡く。誰も、代わりになどなれるはずもない。
だが、世界は彼女の変容にさしたる反応を返すわけでもなく。
世界は常からままならぬものであるし、そして何より。
何より、彼女も単なる駒の一つなのだから。
だから、津村斗貴子は駆け続ける。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
彼は、未だ死ぬわけにはいかなかった。
最後に見たのは、仲間の死に顔(
デスマスク)。穏やかに微笑むその貌と、涙に崩れた自分の顔と。
歩を進めるのは、一人の少年(年齢的には)。
黄金色に輝く装束は、自責の枷にも似て。
全てを優しく覆い隠す雪を越え、命への賛歌を奏でる、新緑の上を越え、
血塗られ汚れた奈落の底に、一人の少年(年齢的には)が。ただ、一人の。
死んだ。
ボンチューは、自分の目の前で。翼は、ブチャラティは、まるで自分の与り知らぬ、遠い、遠い場所で。
自分のしたことは間違ってはいなかったと理解はできるが、納得することは微塵もできず。
あの時、自分が無理やりにでもボンチューを止めていれば。引き摺ってでも連れて帰っていれば。
あの時、戦力を分断させるような愚を犯さなければ――平易に言うならば、ヘタァ打たなければ、
死ななかったかもしれない。翼も、ブチャラティも、ボンチューも。
悲しませずに済んだかもしれない、泣かせずに済んだかもしれない――ルキアを。
黄金の装束、今は鉛の如く。だが、それでも。
――テメェの体引き摺ってでも、這いずってでも、オレァ戻るぜ。
ルキアんとこへ。承太郎んとこへ。雷電のとこへ。
心の内に、黄金を灯して。
――泥水を啜ってでも、地べたでのたうち回ってでも、オレァ届くぜ。
フレイザードのヤロゥの首に。ピッコロのヤロゥの心臓に。主催者のクソッタレ共の喉笛に。
――だから…だからよォ…
「バッキャロオオォォオオォォッ!何で死にやがった!!!
ボンチュゥゥゥゥゥゥゥッ!!!ブチャラティィィィィィッ!!!翼ァァァァァッ!!!」
一人。唯一人。他に誰も聞くことがない怒号は、風に呑まれて記憶の果てへ。
「オレァ死なねェぞ!テメェ等を殺しやがったクソヤロウどもをぶっ殺し返して、主催者のクサレ外道も叩き殺して!
生きて帰って、雪菜さんと幸せな家庭を築いて、散々人生楽しみつくして、
テメエ等がウンザリするほど生きて、生きて、生き抜いてやるからなァッ!!
そっちに行ったら、テメェ等が血尿流して勘弁してくださいって言うまで、
人生自慢し倒してやるから覚悟してやがれバッキャロオオオウゥゥ!!」
一人の少年(年齢的には)の叫び。それは、彼が一人ではあっても、独りではないという力強さを帯びていて。
というか、注釈付けるのも面倒くさいが、その顔は少年ってレベルじゃねーぞ!
ともかく。
執拗に眠りを要求する身体を張り倒し、ともすれば縺れそうになる両足に檄を入れ。
少年は、唯ひたすらに歩き続ける。南へ。
あの場で待っていれば、仇敵に会えたことを知らず。
自分が、今何処を歩いているのかも知らず。
生きて帰ることができるのかも知らず。
だが、彼は世界の現実に絶望を持って返すわけではなく。
世界は常からままならぬものであると諦めていない上に、そして何より。
何より、彼は一人ではないのだから。
だから、桑原和真は歩き続ける。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
【栃木県・街中/日中】
【桑原和真@幽遊白書】
[状態]:全身各所に打撲、戦闘によるダメージ大、重度の疲労、軽度の火傷
次元刀が覚醒(しかしまだ不安定)
[装備]:蟹座の黄金聖衣@聖闘士聖矢
[道具]:荷物一式(水・食料一日分消費)
[思考]1:悲しみと怒り。決意。
2:承太郎達との合流:とりあえず、南へ。
3:ルキアのことが気になる。合わせる顔がないとも考えているが。
4:友情マン達との合流(友情マンに対し多少の罪悪感)
5:さらにフレイザード、ピッコロを倒す仲間を集める(飛影を優先)
6:ゲームの脱出
【大阪府/日中】
【津村斗貴子@武装練金】
[状態]:軽度疲労、右拳が深く削れている,、顔面に新たな傷
核鉄により常時ヒーリング、絶対に迷わない覚悟
[装備]:核鉄C@武装練金、リーダーバッヂ@世紀末リーダー伝たけし!
[道具]:荷物一式(食料と水を四人分、一食分消費)、子供用の下着
[思考]1:さらに東へ。
2:クリリンを信じ、信念を貫く。後を継ぎ、参加者を減らす。
3:ドラゴンボールを使った計画を実行。主催者が対策を打っていた場合、攻略する。
4:ドラゴンボールの情報はもう漏らさない。
5:ダイを倒す策を練る。
6:ピッコロ、友情マン等宇宙人にあった場合、ドラゴンボールの情報を聞き出す(友情マンはその後地獄の苦痛の中でブチ撒ける)
※”武装錬金”勢と”JOJOの奇妙な冒険”勢は同じ世界から来ています(公式設定:カズキが岸辺露伴の大ファンから)
時系列順に読む
投下順に読む
最終更新:2024年08月04日 12:08