423:その声は・・・!?関東戦線異状アリ!! ◆PN..QihBhI




 ★あらすじ(CV.八奈見乗児 ※BGM付き)★


『ルフィと別れてから・・・
 禁止エリアとも知らずに、千葉方面に向かった一行は・・・』

「・・・(悟空を背負ってヤムチャが歩いてゆく)」
「ぜぇっ、ぜぇっ・・・も"う"い"や"だぁぁ(その後ろに疲労困憊の洋一)」

『・・・そのまま境界線を踏み越え、三名揃って爆死する寸前に、
 首輪の警告音に気付いて、間一髪で東京エリア内に逃れた』

(悲鳴。警告音に慌てふためくヤムチャと洋一)

『・・・その後、悟空が目覚めるまで待機、と方針を決定。
 千葉エリアとの境界付近にあった廃屋で、休息を取っていた』

「ふう・・・(ベッドに悟空を寝かせ、ヤムチャは額の汗を腕で拭う)」

『だが・・・放送で、ピッコロの死亡が明らかになり、
 ヤムチャはDB計画(※)の破綻を知った・・・』
※ドラゴンボール計画の略。ドラゴンボールでロワそのものを無かった事にする作戦。

『―――どうする、ヤムチャ!?』
「な、なにー!(両手を挙げて驚くヤムチャ。ショックに顔が引き攣っている)」

『―――そして、悟空は一体、いつ目覚めるのか・・・!?(ジャジャ~~ン!)』
「zzz・・・(悟空の寝顔がアップになる)」


パカポン! チャッチャラッ!

 ★ 其之四百二十三 その声は・・・!?関東戦線異状アリ!! ★

                  チャ~ラチャチャチャラ~ラ チャラララ~ッ♪ ※うろ覚え。



 ピッコロが、死んだ。
 ヤムチャは椅子の上で頭を抱え込んでいた。
 暗くて狭い部屋の中で、悟空と洋一の鼾が地鳴りの様に響き渡っている。

(な、なんて事だ~!
 まさか、肝心のピッコロが死んじまうとは・・・
 悟空と再会出来たのに、これじゃあ意味ねえじゃねえか!
 ブルマクリリン。オ、オレはどうしたらいいんだ?)

 信じられなかった。
 あの凶悪なまでに強かったピッコロが、命を落としたという事実が。
 信じたくなかった。
 皆を救う計画が、水泡に帰したという現実を。

 ピッコロの死は、ドラゴンボールを生み出した『神』の死と同義だった。
 つまり、これでドラゴンボールは使用不可となってしまった。
 即ち、死んだ者はもう二度と、生き返らない。

(せっかく世直しマンというヤツを倒して、
 やった!久々の活躍だ~とか思ってたのに・・・い、いやそんな事はどうでもいい。
 これじゃあオレは、ただの人殺しになってしまう!
 それに死んだ皆も、犬死にっつー事に!?)

(そもそもこの作戦、最初から無理があったんじゃねえか?
 仮にピッコロが優勝しても、おめおめとあの主催者達が、
 ドラゴンボールを使わせてくれると思うか?
 ヤツらの中にはフリーザも居るんだぞ・・・)

(かと言ってどうする?
 この状況で、皆が助かる道があるのか?)

 縋る様に、助けを求める様にヤムチャは顔を上げた。
 目の前のベッドでは、悟空が豪快な鼾を掻いて爆睡していた。
 因みにもう一人の鼾の主、洋一は部屋の隅で縮こまる様にして眠っている。

(無理だ。もう、いくら悟空でも)

 歯の根が噛み合わない。
 かつてない恐怖と、絶望にヤムチャは震えていた。

(死にたくない。オレは死にたくない。なら・・・)

 そこまで考えて、ごくり、と生唾を飲み込む。
 何かに吸い寄せられる様に、ヤムチャは席を立っていた。
 無邪気な寝顔、無防備な姿で眠る悟空を見下ろす。

(あんなに強かったピッコロは死んで、悟空もこの有様だ。
 残りは30人足らず。これなら、オレでもひょっとして?)

 優勝。一瞬、その二文字が脳裏を過ぎった。
 そうだ、自分は地球人最強の男になった。後はこの宇宙最強の男さえいなければ。



(なんてな・・・)

 力が抜けた様に、ヤムチャは椅子に腰を下ろす。
 確かに命は惜しい。それは誰だってそうだろう。
 だが、それで全てを割り切れる程、ヤムチャは非情にはなれなかった。

 そのままヤムチャは、眠る悟空を眺めていた。
 少年の頃から変わらない、無垢な寝顔。
 殺戮の舞台にそぐわない、能天気な鼾。
 知らず、頬が緩んでいた。
 孫悟空。この男に自分は、いや地球は一体何度救われたのだろう。
 全ての命を背負い、どんな巨悪にも果敢に立ち向かってゆくその勇姿は、
 例え悟空自身が、誰にも知られる事なく、何一つ報われてなくとも、
 しっかりと、ヤムチャの目に焼きついていた。



 悟空。
 いつからだろう。
 気が付けば、オレはお前の背中ばかり見ていた。

 出会った頃は、殆ど互角の強さだったのに。
 オレだって、オレなりに一生懸命修行したつもりだったのに。
 お前はどんどん強くなって、何時の間にか遠くに行ってしまった。

 オレは、お前が羨ましかった。
 皆に頼られて、戦いの度に大活躍するお前がな。
 オレはいつも何の役にも立てずに、お前に助けて貰ってばかりで、
 でも、何時の間にかそれが、悔しいとも思わなくなっていたよ。

 だから、またお前に頼って良いかな。
 確かに今は、暗い未来しか見えないけれど、
 思えばそんな事は、今まで何度もあったもんな。

 そう。

 どんな強敵にも、お前は勝ってきた。
 どんな逆境にも、お前は負けなかった。
 だからオレは、今の絶望なんかよりも、お前の力を信じたいと思う。

 悟空。
 今は、ゆっくり眠ってくれ。
 せめて今は、オレがお前を守ろう。
 お前が目覚めるまでは、命を懸けてもな。


 拳で、パンッともう片方の掌を打つ。
 決意を新たにして、心が軽くなった様な気分だ。
 かわりに瞼が重くなってくる。あ、おおいそれはダメだろ、ああ・・・


「そうさ、悟空。お前なら・・・きっと・・・zzz」


 ★   ★


「以上で、ヤムチャ他2名の報告を終わります(あれ?こいつ寝てね?)」

「では兵士Aに変わり、この兵士Bが報告させて頂きます。
 ルフィ、ルキア、空条承太郎、雷電のグループについてであります。
 こちらも今後の方針を巡り、議論が紛糾しました」

「(省略)」

「さて、兵士の皆さん。ご報告ご苦労様でした。
 中々有益な情報でしたよ。引き続き任務に励んで下さいね」

「「「はっ」」」

「おっと、お待ちなさい。
 そうそう、折角の機会なので、他愛の無い余興を考えていた所だったのです。
 ああ、楽にして下さいね。何も取って食べたりはしませんから。ふふふ」

「?」「?」「?」

「さて、ゲームもいよいよ終盤です。
 そこでですね。ずっと私達と共に成り行きを見守ってこられた皆さんに、
 ズバリ、優勝者を予想して頂きたかったのですよ」

「はあ」

「なあに、詰まらない理由です。
 バーンさんやハーデスさんとお話しする際に、
 少し知ったかぶりをしたいという、私のささやかな虚栄心です。
 では早速、兵士Aさんから、お願いしますかね」

「はっ。はい、う~む。
 ほ、本官も現在の情勢を全て把握している訳ではありませぬが、
 やはりエントリーナンバー○○」

「ほう。『悪の帝王』、ディオ・ブランドーですね」
「はっ」
「では、根拠を述べてみなさい」

「は、はい。ここに至り、殆どの参加者が無傷ではいられぬ中で、
 ヤツは未だに万全に近い状態をキープしております。
 そして、いざ戦いとなれば、『世界(時を止める能力)』がとにかく強力無比。
 嵌ってしまえば、どんな猛者もイチコロでしょう。
 その上『気化冷凍法』を習得し、やや不安のあった肉弾戦も磐石になりました。
 更に回復能力も兼ね備え、『吸血姫AYA』というパートナーも健在。
 以上の観点から、現状では死角を探す方が難しいとさえ」

「ふうむ、まあ大本命でしょうねえ。
 ここまでの戦運びは、流石に帝王の面目躍如といったところでしょうか。
 衆愚共を虜にするあの悪のカリスマっぷりなど、私も肖りたい位ですよ」

「とは言え、そもそも天が地を跪かせるのに、
 上っ面の虚飾や、廻りくどいだけの美辞麗句など要らざる代物なのですがねえ。
 真の王たる者は、ただシンプルに、絶対的にして普遍的な“力”が在れば良いのです。
 それが日の下から逃げ出したあの井の中の蛙に、果たして何処まで分かっている事やら。
 フフ、あんな眩しいだけの天体の一つや二つ、私の手にかかれば。
 おっと失礼。この様な事を言っては、またバーンさんに叱られてしまいますね。
 ふむ、予想としては上出来でしたよ。誉めて差し上げます、兵士Aさん」
「恐れ入ります」


 ★


「では続いて兵士Bさん。
 優勝候補NO1はDIOとして、対抗馬は?」
「はっ。それでは本官は、エントリーナンバー○○」

「成る程、友情マンですね。してその心は?」

「ヤツを一言で称するなら、知勇兼備という表現が最も相応しいでしょう。
 人心掌握術に長ける一方で、内面では明確に優勝を目指す意志を秘めており、
 いざとなれば自らの手を汚す事も厭いません。高い戦闘力を持ちながらそれを隠し、
 周到に切り札を集めてきた点も、何れまた生きてくる筈です」

「ふむ、『偽りの友情』か。
 先述のカリスマの様なものとは、正に対極の恐ろしさですねえ。
 しかし一方で勘の良い方達は、彼の欺瞞に気付きつつあるようです。
 往々にして策士、策に溺れるもの。野心があるのは結構ですが、
 それを逆手に取られない事が、今後の課題とでも言っておきましょう」
「はっ」


 ★


「では続いて兵士Cさん。どうでしょう」
「はっ、エントリーナンバー○○。やはり『宇宙最強の男』を」

「ふん、ソンゴクウか」

「ルフィに敗れたとは言え、戦闘力ではやはり随一の存在でしょう。
 サイヤ人が持つという優れた戦闘センスも侮れません。
 そして、サイヤ人と言えばかの伝説の」

「『伝説のスーパーサイヤ人』、ですね」

「はっ。今後、大きくパワーアップを果たす者が居るとすれば、
 やはり、あの男を置いて他なりませぬと」
「兵士C」
「はっ」
「二度と言うな。私は下らない御伽噺は嫌いなのです」
「はっ」


 ★


「さて、気を取り直して、兵士Dさん。
 そうですね、女性では如何でしょうか?」

「はっ、然らばエントリーナンバー○○。津村斗貴子を」
「ほう、『錬金の戦乙女』ですか。これは少々意外ですね」

「はっ。確かに過程を顧みれば、ここぞという時の決断力に欠け、
 迷走に迷走を重ねてきた感は否めないでしょう。
 しかし、前クールにて、『DB計画』という名の旗の下に、
 遂に参加者の殺害を成し遂げたと聞き及んでおります。
 大義名分を得て、信念を確固たるものに昇華させた今ならば、
 遺憾無く戦士としての本領を発揮出来るのではと」

「そうですね。確かにその筈でした。先程まではね」

「は?」
「(ひそひそ)おい兵士D。
『DB計画』の前提であったピッコロは、もう死んでいるぞ」
「はっ?ま、まさかあのピッコロが?
 となれば、津村はまたしても旗印を失ったのか」
「(ひそひそ)うむ。その後の情報はまだ本官にも届いていないが」

「まあ、良いでしょう。
 そんな経緯も含めて、注目したい人物の一人には違いありませんからね。
 それにしてもホホホ、まったくあれだけの大言を吐いておいて、
 彼女は一体、どう始末をつけるつもりなのでしょうねえ。
 泣き叫ぶのか、堕ちるのか、開き直るか、或いは発狂か。
 果たしてどの様な醜態を晒して貰えるのか、精々楽しみにしてやりましょう」
「はっ」


 ★


「では次で最後にしましょうか。兵士Eさん、良い予想を期待していますよ」
「はっ、それでは、エントリーナンバー○○」
「ん?ドナタでしたでしょうかね」

「はっ。『微かな希望』、仙道彰であります」

「仙道?」
「はっ」

「フッ、ウフフフ、あまり笑えない冗談ですねえ。
 まあ、豪く彼を買っていた方が居たのは何となく覚えてはいますが、
 資料によれば、戦闘能力たったの“5”のゴミではありませんか。
 生き長らえているのは単に、パートナーや配置などの僥倖に恵まれただけです。
 バスケットマンだか何だか知りませんが、血に飢えた魔獣らの徘徊するこの大地では、
 彼の命など、殺害ランキングの肥やし程度の価値にしかなりませんよ」

「(`ε')お言葉ですがフリーザ様」

「む?」
「それでも本官は思うのです。それでも仙道なら」
「ほうほう、仙道なら?」

「―――仙道ならきっと何とかしてくれるのでは、と」

「つまみ出せ」
「はっ」


 ★


「フッ、フリーザ様」

「今度はどうしたのですか?兵士A」
「あの男が、つ、遂に」


 ★   ★


 誰かが、呼んでいる。

「ごぉぉくぅぅうウウウウウウーーーーッッッッ!!!」

 その声は、
 友の声に似ていた。クリリン、そしてルフィ。
 うっすらと甦る記憶に、ほんのりと胸が熱くなった。

「楽しかったよ。お前と一緒にやってきた人生。
 もし叶うなら、生まれ変わっても……また、会おうな。
 だってお前は、オレの、一番の………」

 その声は、
 自分の声に似ていた。だが自分であって、自分ではない何か。
 分からないまま、ただ心が痛んだ。

「いいですね、それ。『死んだり死なせたり』…ほほほほ……
 貴方達虫けらにぴったりの言葉ですよ」

 その声は、
 流れる血潮をささくれさせる。
 初めて聞くはずの声に、言い知れぬ宿命を感じていた。

「そうさ、悟空。お前なら・・・きっと・・・」

 その声は、
 仲間の声に似ていた。
 懐かしさが溢れ、何かが引き戻されてゆく気がした。


 ★   ★


 目が覚めた。
 いや。何かが、ヤムチャを眠りから覚まさせた。
 暗闇に気配を感じた。誰かが、目の前に立っている。

 開いた窓から風が吹き込んで、カーテンが僅かに揺れた。
 月光が差し込み、佇む者の姿が照らし出される。
 一度目を擦り、ヤムチャはその名を呼んだ。

「ご、悟空、なのか?」

 轟音。不意に、部屋を突風が突き抜けていった。
 カーテンが捲き上げられ、家が軋み、揺れた。
 ヤムチャは動転して顔を腕で庇う。

 再び、廃屋が静寂に包まれた。
 恐る恐る腕を退けると、男は何事も無かった様にただ佇んでいた。
 やがて男の手が挙がり、あっけらかんとした声が響いた。


「よっ、ヤムチャ


 その声は、
 他でもない孫悟空の声。
 いつもの屈託の無い笑顔が、顔に浮かんでいた。

 それが引き金だった。ヤムチャの中で、感情が爆発する。
 叫び、歓喜に打ち震えながら、その男、悟空のもとに駆け寄った。




 その後、悟空は「ルフィと合流して、フリーザ達を倒すぞ」と言った。

 勝てる、勝てるぞ。
 湧き上がる確信を、ヤムチャは疑わなかった。


 ★   ★


『―――遂に、悟空が目覚めた・・・』

「悟空だヒャッホウ!」
『―――歓びに沸くヤムチャ

「はいはい空気空気・・・むにゃ」
『―――尚も眠り続ける洋一』

『―――そして・・・』

「スーパーサイヤ人、か」
「フリーザ様?」

「・・・・・」


『―――果たして悟空達は、主催者を倒す事が出来るのか・・・。
     そして、伝説のスーパーサイヤ人とは、一体・・・!?』

                           ★つづく★



【東京都/千葉県との境界線付近の廃屋/二日目・夜中】

【孫悟空@DRAGON BALL】
[状態]:顎骨を負傷、出血多量、各部位裂傷、疲労・ダメージ大。空腹でまともに動けない
    ルフィと戦った事は覚えているが、他は不明
[装備]:サイヤ人用硬質ラバー製戦闘ジャケット@DRAGON BALL
[道具]:荷物一式(食料無し、水残り半分)、ボールペン数本、禁鞭@封神演義
[思考]1:ルフィと合流し、主催者を倒す(ご飯を食べてから?)

【追手内洋一@とっても!ラッキーマン】
[状態]:睡眠、右腕骨折、全身数箇所に火傷、左ふくらはぎに銃創、背中打撲、重度の疲労
    鼻が折れた、左腕に擦り傷、額が削れた、口の中が痛い、空腹、軽度の鬱状態  
[装備]:脇差
[道具]:荷物一式×2(食料3食分消費)
[思考]:1.ヤムチャと、孫悟空を警戒(こいつら怖いよー!)
    2.ヤムチャの手伝いをする(戦いたくねー!疲れた!もう何もかも嫌だー!)
    3.ラッキーマンに変身して参加者を殺す(だから らっきょ欲しくねー!)
    4.死にたくない。そのためなら人殺しも厭わない。
      (でも、結局おれが殺される側になるんだろうな・・・)

【ヤムチャ@DRAGON BALL】
[状態]:右小指喪失、左耳喪失、左脇腹に創傷(全て治療済み)
    超神水克服(力が限界まで引き出される)、パンツ姿
[道具]:荷物一式×2(伊達と桃白白のもの)、一日分の食料(2食消費)バスケットボール@SLAM DUNK
    濡れた服(洗濯済み)
[思考]:1.悟空を信じる。
    2.ドラゴンボール計画は諦めた。


【フリーザ&兵士達@主催者】
[状態]時間や管理体制、場所等「全て不明」。
   演出上そう見せてはいますが、兵士達はその場で監視しながら、
   リアルタイムで報告しているとは「限りません」。
   予想で名前が出たキャラも、既に死亡している可能性があります。


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417:「放送前のちょっとした出来事(前編)」 孫悟空 434:[[]]
417:「放送前のちょっとした出来事(前編)」 追手内洋一 434:[[]]
417:「放送前のちょっとした出来事(前編)」 ヤムチャ 434:[[]]

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最終更新:2024年08月02日 21:59