「うーん……寝落ちしてもうたかな。僕の場合は気絶やけど。」
アミィ・キリヲはよろよろと立ち上がりながら言う。この痺れ方は数分の気絶だな、この頭の重さは寝入りばなだったなと身体で分析。タフさには悪い意味で自信があるので具合の悪さで経過時間を計る。
しかし彼の特異なところはそんなことではない。青白い顔で背伸びしながら小屋から出る姿はイヤに人間臭いものだが、出た先に転がっている死体に一瞥もくれずに辺りを伺っているのを見れば、彼がただの人間とは思えないだろう。
それもそのはず、人間ではない。他ならぬその死体を作ったのは彼自身、破滅主義者にして同族からも理解不能の精神性を持つ悪魔なのだ。
しかし彼の特異なところはそんなことではない。青白い顔で背伸びしながら小屋から出る姿はイヤに人間臭いものだが、出た先に転がっている死体に一瞥もくれずに辺りを伺っているのを見れば、彼がただの人間とは思えないだろう。
それもそのはず、人間ではない。他ならぬその死体を作ったのは彼自身、破滅主義者にして同族からも理解不能の精神性を持つ悪魔なのだ。
(けっこう大きい音したからだれか来るかなって思ったけどハズレやったなあ。さっきみたいに参加者でつるんでるのは、もしかしたら珍しいんかなぁ? ま、そのうちどんどん固まっていくやろ。)
「それよりも、と。」
「それよりも、と。」
殺した刀剣男子・日本号の死体に近づくと、その血に触れる。感触を確かめたり匂いを確かめると、「こっちもハズレかなぁ」と立ち上がった。
先の襲撃でわずかに感じた、風変わりな良い匂い。もしやなにかの素材になるかもと考えたが、そう簡単にはいかないかと思い直す。実咲の人間としての体臭に悪魔の本能的な部分が反応したのだが、いかに彼といえどもまさか人間が実在するとは思い至らず。ただ日本号の悪魔とは一味違った雰囲気が気になったものの、一度小屋に戻って腰を落ち着けて考えることにした。
思考すべきことは多い。このブラッドパーティーの主催者や目的、規模に仕掛けといったことはもちろん、首輪の解除方法に他の参加者とのあて。
思考すべきことは多い。このブラッドパーティーの主催者や目的、規模に仕掛けといったことはもちろん、首輪の解除方法に他の参加者とのあて。
「さっきのお兄さん、変わった言葉喋っとったなあ。どこの方言やろ。全く聞き取れんかった。」
しかし、彼が気にしたのはそんなことではなく日本号の話していた言葉だった。
元より殺戮にさしたる抵抗がないどころかどう殺るかに凝るタイプの彼、このデスゲームのもろもろも当然一通り考察したが、それについてはある意味興味が薄い。元々魔界には似たようなイベントがあるし、彼自身こういう企みや妄想も好きなので、他の参加者ほど困惑から考え込むことはない。むしろ自分が主催者ならこうするだろうから、参加者としてはこういう行動をしたほうが良いというような、メタ的な観点からの考察を楽しんでいた。
その興味が移ったのが、先の戦闘。自分の知らない武器が転がっているのもそこそこ興味深いが、刀剣男子という悪魔とは違う存在に知的好奇心を抑えられない。
元より殺戮にさしたる抵抗がないどころかどう殺るかに凝るタイプの彼、このデスゲームのもろもろも当然一通り考察したが、それについてはある意味興味が薄い。元々魔界には似たようなイベントがあるし、彼自身こういう企みや妄想も好きなので、他の参加者ほど困惑から考え込むことはない。むしろ自分が主催者ならこうするだろうから、参加者としてはこういう行動をしたほうが良いというような、メタ的な観点からの考察を楽しんでいた。
その興味が移ったのが、先の戦闘。自分の知らない武器が転がっているのもそこそこ興味深いが、刀剣男子という悪魔とは違う存在に知的好奇心を抑えられない。
「女の子の方ほどやないけれど、悪魔っぽくない。でも魔物って感じとも違うし、気になるわぁ、半殺しにしといた方が良かったかもなぁ。でもそれやとカウンターされそうなのが僕やし……」
「しゃーない、切り替えていこう。他にも参加者おるやろ。ここで待ってたら誰かまた来る……いやアカンかも、死体あったら寄り付かんか?」
「僕やったら気になって小屋入るけど、警戒する子も多いかもなぁ。そもそも、山小屋にそんな人来るか? 参加者に地図とか配られてたら別やけど。せやけどここから離れるのも無理やしな。山歩きとかほんとに死んでまう。」
「しゃーない、切り替えていこう。他にも参加者おるやろ。ここで待ってたら誰かまた来る……いやアカンかも、死体あったら寄り付かんか?」
「僕やったら気になって小屋入るけど、警戒する子も多いかもなぁ。そもそも、山小屋にそんな人来るか? 参加者に地図とか配られてたら別やけど。せやけどここから離れるのも無理やしな。山歩きとかほんとに死んでまう。」
まるで殺し合いなどどこ吹く風と言わんばかりに、のどかな口調で独り言を言いながら眼鏡を拭く。するとそのグロスからペラリと1枚の紙が落ちた。見覚えのないものに「おや」と手を止めて拾い上げる。
それは地図だった。さきほど彼が使ったガトリングの所在が書かれている。
それは地図だった。さきほど彼が使ったガトリングの所在が書かれている。
「なんや、こういうのあるんか! こんなん気づくかいな! うん? あの子は気づいてたのかな? 2人が合流したのも、同じ地図があるからとか? 1回ちゃんと死体調べな──」
思わぬアイテムに呆れながらも興奮して小屋の外に出る。さっそく日本号の死体を漁ろうとして。
「──ついてるわぁ、またお客さんや。」
自分につけられているのと同じ首輪をした参加者を見つけて、薄く笑った。
「ちぃ……水の気配が無い……!」
紫苑メグに催涙スプレーで撃退された乙和瓢湖。
あの後盲目状態で森の中をさまようも、結局川も池も見つからず。ようやく涙で流れてある程度視力が回復してきてもなお水辺を見つけられずにいた。
幕府の暗部にいた彼であっても、さすがにどこともしれぬ森の中で目が見えずに水を探すのは困難なものだ。そもそもこの森に川のようなものがあるのかすら彼は知らないのだ。なんとか知識と経験で水がありそうな場所を探すが、目と鼻をやられているせいで歩行すら至難の業である。元々暗い森の中なのもあって、疲労だけ溜まってろくに移動もできない。
そんな状況だったので、フラフラと歩くうちに小道に出られたことは僥倖だった。枝に頭をうち、草に足をとられることのない道の有難味を今ほど感じたときはない。しかも歩くうちに山小屋を見つけた。ようやく水が手に入るかと喜ばずにはいられない。
しかしその足がはたと止まる。小屋から人が出てくるのが見えた。視界がまだ歪んでいるのでハッキリとはわからないが、それなりの背丈の人間だろう。
思わず歯噛みする。いくら瓢湖でもこの状態では遅れを取りかねない。しかも相手の手にはなにかが持たれている。刀ならまだましたが、銃が相手では分が悪いどころの騒ぎではない。
あの後盲目状態で森の中をさまようも、結局川も池も見つからず。ようやく涙で流れてある程度視力が回復してきてもなお水辺を見つけられずにいた。
幕府の暗部にいた彼であっても、さすがにどこともしれぬ森の中で目が見えずに水を探すのは困難なものだ。そもそもこの森に川のようなものがあるのかすら彼は知らないのだ。なんとか知識と経験で水がありそうな場所を探すが、目と鼻をやられているせいで歩行すら至難の業である。元々暗い森の中なのもあって、疲労だけ溜まってろくに移動もできない。
そんな状況だったので、フラフラと歩くうちに小道に出られたことは僥倖だった。枝に頭をうち、草に足をとられることのない道の有難味を今ほど感じたときはない。しかも歩くうちに山小屋を見つけた。ようやく水が手に入るかと喜ばずにはいられない。
しかしその足がはたと止まる。小屋から人が出てくるのが見えた。視界がまだ歪んでいるのでハッキリとはわからないが、それなりの背丈の人間だろう。
思わず歯噛みする。いくら瓢湖でもこの状態では遅れを取りかねない。しかも相手の手にはなにかが持たれている。刀ならまだましたが、銃が相手では分が悪いどころの騒ぎではない。
「お兄さん、大丈夫かぁ?」
(何語だ?)
(何語だ?)
京言葉っぽいイントネーションで話しかけられて、相手が若い男だとわかった。日本語でも中国語でもないようだが、威嚇するような声色では無い。
ニヤリと心の中で瓢湖は笑う。どうやら運はまだ自分にあると。どこの国の外国人かは知らないしそんなことはどうだっていい。重要なのは今の自分が利用できそうな相手だということだ。
ニヤリと心の中で瓢湖は笑う。どうやら運はまだ自分にあると。どこの国の外国人かは知らないしそんなことはどうだっていい。重要なのは今の自分が利用できそうな相手だということだ。
(返り血みたいなんがついてるけど、怪我してるみたいやしなぁ、これは僕みたいなタイプか、それとも……)
瓢湖から利用しようと考えられているとはつゆ知らず、アミィ・キリヲもまた彼をどう利用するかを考えていた。
血のついた服を着て武器を装備している、怪我人らしき男。怪しさは言うまでもないが、だからこそ信用できる。この感じであれば、さっき逃げられてしまった女の子から情報は行っていないだろうと。
血のついた服を着て武器を装備している、怪我人らしき男。怪しさは言うまでもないが、だからこそ信用できる。この感じであれば、さっき逃げられてしまった女の子から情報は行っていないだろうと。
(それに、このお兄さん、さっきの子と同じ匂いがする。もしかしたら、殺ってたりしてな。)
「あとこれなに、スパイスかなんか? なんかめっちゃ辛い匂いするんやけど。うわ辛っ! おっべぇ! ごっほっ!」
「なんなんだお前は……」
「あとこれなに、スパイスかなんか? なんかめっちゃ辛い匂いするんやけど。うわ辛っ! おっべぇ! ごっほっ!」
「なんなんだお前は……」
どうやらまた言葉が通じないようだ、しかしさっきと同じ言語を話しているみたいだなと、咳き込みながら考える。いや考えてられない。発作的に咳きが止まらなくなる。
(あ。これアカンやつや。)
「なにっ、倒れたっ。」
「なにっ、倒れたっ。」
催涙スプレーを直接かけられた瓢湖は経験上耐えられたが、元から虚弱体質の彼には、服に染みついた匂いだけでもダメだった。
瓢湖の前でしばらく咳き込むと、ついには涙を流しながらまた気絶した。
瓢湖の前でしばらく咳き込むと、ついには涙を流しながらまた気絶した。
「……なんなんだ、お前。」
目の前でなんか勝手にぶっ倒れられて、瓢湖は困惑しかない。そんなに臭くはないだろう。泣きたいのはこっちの方なのだ。というか未だに涙が止まっていない。
「……まずは水だ、水!」
瓢湖は彼の気絶を確認すると、直ぐに無視して山小屋へと入った。
【0300 『北部』 山の麓の森の山小屋】
【アミィ・キリヲ@小説 魔入りました!入間くん(3) 師団披露(魔入りました!入間くんシリーズ)@ポプラキミノベル】
●大目標
大量の武器を持ち帰る。
●中目標
絶望した表情を見るために、他の参加者を襲う。まずは男(乙和瓢湖)に友好的なフリをして近づく。
●小目標
アカン、発作が……
●大目標
大量の武器を持ち帰る。
●中目標
絶望した表情を見るために、他の参加者を襲う。まずは男(乙和瓢湖)に友好的なフリをして近づく。
●小目標
アカン、発作が……
【乙和瓢湖@るろうに剣心 最終章 The Final映画ノベライズ みらい文庫版@集英社みらい文庫】
●大目標
殺しを楽しむ。
●中目標
赤鼻の男(バギー)を殺せる手段を考える。
●小目標
1.顔を洗う。
2.この男(アミィ・キリヲ)は……?
●大目標
殺しを楽しむ。
●中目標
赤鼻の男(バギー)を殺せる手段を考える。
●小目標
1.顔を洗う。
2.この男(アミィ・キリヲ)は……?