どれくらい歩いていたのだろう。
数秒だろうか、数分だろうか、数時間だろうか、あるいは一瞬だったのだろうか。
空条承太郎の思考は現実に引き戻された。

悲しみを乗り越えたではない。

雨が止んだわけではない。

空条承太郎の長年の戦闘経験と、本能が、思考を呼び戻させたのだ。
『誰かが近づいてくる』と。
瞬時にスタープラチナを出し、距離をはかる。
大体20m位だろうか。
それぐらいの距離にある左前方の家の影から人の気配がする。
息を殺し接近者を待つ。スタープラチナはいつ何が起きてもいいように、臨戦態勢で構える。
近づいてきた者の全容が、承太郎の瞳に映った。

それは死んだ筈の、杜王町の殺人鬼、吉良吉影。



 ◆ ◇ ◆ ◇ ◆


何と言うことだ。
この吉良吉影ともあろう者が。
ドデカイ音がしたもんだから、何事かと思ってきてみれば。
目の前にいるのはあの忌々しい東方仗助と双璧をなす、空条承太郎。
クソ、本当に、何と言う失態だ。音など放っておけば良かったのだ。
いや、そうじゃなくとももう少し慎重に進んでおけば……。
思えば迂闊すぎた。無用心に近づき過ぎてしまった。その結果がこれだ。
エエイ、ともかくだ。まずこの状況を……

「……ほう、何でテメエが生きてんのかは知らねぇが…」

!!
まずい!承太郎は"知っている"!私を、私の正体を!いやしかしまて生きてるのかとはどういうことだ。
私が一度死んだとでも言うのか。いや、それはともかく後回しだ。たとえ誰であろうと負ける気はしない。
そのための準備もしていた。
だが、今はまずい。
さっきの馬鹿デカイ音。あれを聞きつけて誰かが来たら。
そいつが広瀬康一達の様なただのお人よしなら問題はない。
しかし、このゲームに乗っていたら。あるいは私の正体を知っているやつなら。
いくら私のキラークイーンは無敵とは言え、連戦は避けたい。
しかも相手は空条承太郎のスタープラチナ。
無傷ではすまんだろう。良くて軽傷、悪くて相打ちといったところか。
あの靴のムカデ屋のような事は絶対にごめんだ。
今この状況で気絶でもしたら……。
だがコイツは私の正体を知っているわけで……

「…今の俺は最高にプッツンしてる……テメエに対しては慈悲なんてのはねぇしな。ここで…」

ヤバイ!
このままでは戦闘は避けられん!
とっさに私は叫んでいた

「待て承太郎!私はこのゲームに乗っていない。手を組まないか?」



 ◆ ◇ ◆ ◇ ◆



今、この男はなんと言った?
手を組むだと?コイツは今までテメーだけの都合のために、無関係の、ましてや女を何十人も殺してきた男だ。
それが発覚するからと言う身勝手な理由で、また何人も罪もない人を殺してきた男だ。
俺にとってはDIOと同じか、それ以上に吐き気を催す邪悪さだ。正に殺したいほどに。
それはコイツ自身、自分が俺にそう思われているのを知っているはず。
なのに手を組む?
イカレてるのか?……この状況で。
いや、そもそも何故コイツは生きている?

「……私は本来戦いを望まない。闘争は例え勝利しても次の闘争を生む。無益な行為だからだ。
それゆえに私は今まで、私の正体を知ったものとしか戦わなかった。
だがこの状況は、私の望む平穏な生活とはまったくかけ離れたものだ。
こんな状況に私をおいやったあの荒木とやらは、断じて許せん。どうだ、共闘して荒木を倒さないか?」


!荒木!
荒木の名が吉良の口から出てきた時点で、吉良が言っていたことや疑問が軽く俺の脳から吹っ飛んだ。
『荒木を倒す』
甘美な、一種の麻薬のように錯覚させられる言葉。そうだ、荒木を倒す。
徐倫は必ず守る。命に代えても。しかし、荒木も確実にぶちのめす。
俺が、この手で。

「…どうだ、承太郎?貴様とて荒木を倒すつもりだろう?
……貴様が私をどう思っているかは知っている。だが、その感情を優先させ、今私と戦えばどうなるか、
解からぬほど馬鹿でもあるまい?どちらが勝つにせよ、勝った方もただではすまんだろう。
その状態で、先程の音を聞きつけた奴とでも遭遇し、あまつさえソイツがこのゲームに乗る気だったら。
そんなことになれば、貴様の荒木打倒も困難を極めるのではないか?」

…そうだ。先程感情に任せスペースシャトルをぶっ壊してしまった。
おそらくコイツはその音を聞いてきたのだろう。このゲームにはおそらく乗っている奴もいる。
……クソッ何てことだ。ジジイも言っていた。
『決して逆上はするな』と。一時の感情に従い行動すれば、必ず後悔をする。
DIOとの最後の戦いで、それが解かったはずだった。
やれやれだ。
しかし、と。
俺はわいた疑問を口にした。


「……それで?仮に荒木を倒して、その後テメーはどうするんだ?」

「…当面は『荒木を倒すための同盟』だ。奴を倒したその時は、改めて正々堂々戦おうではないか?
もちろん私は負けんがね」

……成る程。しばらくはコイツと一緒に行動してもいいかもしれない。
何故生きているのかも知れたいし、荒木をぶちのめすとしても、コイツは戦力になる。
だがしかし……

「いいだろう。荒木をぶちのめすまでの同盟だ。しかし、俺はテメーを信用しない」

吉良は肩をすくめ、嘲笑うかのように言った。

「それはこちらも同じこと」



 ◆ ◇ ◆ ◇ ◆



危なかった。
なんとか乗り切った。
しかし、やはり私は"運命"に、"強運"に守られている。
荒木の名を出したとき、承太郎の目つきが変わったような気がし、軽くカマをかけて言ってみたら、ビンゴだったようだ。


理由は知らんが(まあ大方、下らん正義感なんだろうが)、承太郎は打倒荒木の考えがかなり強いようだ。
その部分を刺激しながら誘ってみたら、乗ったくれた。
正直戦闘は避けられんと思っていたから、ラッキーとしか言いようがない。
まあ、あながち私が言ったことも嘘ではない。このゲームはあまり乗りたくはないし、荒木も出来れば殺したい。
とりあえず、当面は様子を見よう。
おそらく、私が何かをしない限りは、承太郎からは攻撃してこないだろう。
承太郎とて警戒しているはず。今、下手に動けばこちらが危うい。

しかし、私の正体を知っている承太郎は、いずれ必ずブチ殺す。

勿論、正々堂々なんざクソ喰らえだ。

いや、承太郎だけではない。私の正体を知り、私の平穏を脅かすものは全てだ。
そのために、今はおとなしくしていよう。承太郎と組んで戦えば、大概の敵は倒せる。
場合によっては荒木打倒に本気になったって良い。
しかし最後は、この私が。この、吉良吉影が。

「承太郎、とりあえずすぐに場所を移動しないか?先程の音もあるし、情報を交換したいから、おちついた所に行きたい」
「…ああ、かまわねえ」

…今は、まだ…………


【D-4 スペースシャトルから少し南部/1日目 深夜】
【空条承太郎】
[時間軸]:4部終了後
[状態]:荒木に対する怒り、抑えきれないほどの悲しみ(若干回復)、“彼女”に対する罪悪感
[装備]: なし
[道具]:支給品一式不明支給品1~3(本人未確認)
[思考・状況]
基本行動方針:荒木をぶっ飛ばす
1.荒木をぶっ飛ばす
2.徐倫を自分の命にかけても守る。
3.吉良は信用しない(妙な真似をしたらぶっ飛ばす)
4.情報を集める
5.何故コイツが生きている……?
[備考]
※名簿はチェックしてません。
※スタンドが悲しみで一時弱体化してます。先程よりかは回復しましたが、まだ本調子ではありません。一時的なも
ので心の整理がついたらもとに戻ると思われます。
※D-4にあるスペースシャトルの破壊音は、少なくともとなりのD-5にいた吉良までは届きました。それ以上響くかは
ほかの書き手さんにお任せします。
※徐倫の姿は見てませんが、声を聞きました。またその声のちがいに違和感を感じてます。また妻の容姿の変化にも
気づいていますが今はそのことを意識していません。

【吉良吉影】
[時間軸]:限界だから押そうとした所
[状態]:若干のストレス、掌に軽度の負傷
[装備]:爆弾にした角砂糖、ティッシュケースに入れた角砂糖(爆弾に変える用・残り5個)
[道具]:ハンカチに包んだ角砂糖(食用・残り6個)、ティッシュに包んだ角砂糖(爆弾に変える用・残り8個)、

未確認支給品×0~2個、支給品一式
[思考・状況]:
1.当面はおとなしくしていて様子を見る(まず情報の入手、場合によっては対主催に移っても良い)
2.自分の正体を知る承太郎は遅かれ早かれ必ず抹殺する
3.他に自分の正体を知る者がいたら抹殺する
4.危険からは極力遠ざかる(2と3を果たすためなら多少危険な橋でも渡るつもりではある)
5.私が「何故生きているのか」とは……?
[備考]
※バイツァ・ダストは制限されていますが、制限が解除されたら使えるようになるかもしれません。
※これから二人がどこに向かうかは、他の書き手さんにお任せします。



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23:Never Gone 空条承太郎 67:The Call
18:ダイアーさんは砕けない 吉良吉影 67:The Call

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最終更新:2008年12月28日 21:25