柱の男カーズエルメェス・コステロを無惨にも殺した彼が今考えているのは"拠点の確保"、柱の男、これは吸血鬼や屍生人にも言えることなのだが、彼らは日光に弱い。
自然、夜しか行動できない彼らにとって太陽光に当たる事は即ち死を意味する。
その為柱の男、吸血鬼、屍生人等はこのような状況ではまず拠点を確保しなければならないのだ。荒木飛呂彦がわざわざ深夜からこの殺し合いを始めたのも彼らへの配慮だろう。
殺し合いに放り込まれたという事に関しては配慮と言える筈もないが。
カーズは考える、どこへ向かうかと。中心部へ行くのは無謀だ。人間共が多く集まる可能性が高く、拠点を破られでもしたたらそれは即ち死を意味する。それではあまりにも無策だ。
ならば自分の位置から近い食屍鬼街か果樹園へ行くのはどうか?これも駄目だろう。
主要施設もまた拠点として集まる可能性が高いからだ、特に後者は果物があるかもしれないと食糧確保に向かう者達が来るだろう、
人間の体内に入ってやり過ごす事も考えたが先程のやつらのようにくだらん友情ごっこで自らの体を爆破するような輩がいるかもしれない、これもまずい。幾重にも思考を張り巡らせ、カーズが出した結論は……
『南へ向かうか……かつ主要な施設は避けなければならん……このカーズは必ず勝たねばならん……赤石を手に入れ、仲間と合流し、アラキの力を奪う……その為ならば……結果や過程なぞ……どうでもいい……どんな手を使おうが……最終的に……』
次に何を言うかはもはやわかりきっている事なので割愛させて頂く事にする。
そしてしばらく歩いている内にI-6へと辿り着いたカーズ、その彼を、不気味に見据える影がいた……


ボードで周辺を移動しながらJ・ガイルは想像していた。先程の美しい女性、それを自分がもしも自由にしていたなら、あのまま服を全て引き千切り、彼女を裸にし……
(ひひひひ! あの女はよさそうだったなあ~っ! あはははははははは! 
いいだろうなあ……あの女が裸で泣き叫ぶんだ……助けてくださいってなあ~、それでその口を塞いでよ……あの女の体をたっぷり味わう……
それで飽きたら殺すっ! あの女は泣きわめく……絶望に顔を引きつらせてなあ~っ、あの顔がたまらねえ! 
自分が殺されるとわかった時のあの顔っ! 絶望に身をよじらせるあの顔っ! ひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃ、あははははははははは、いひゃひゃひゃひゃひゃひゃ! )
この時、彼の下腹部の一部が異様に盛り上がっていたのだが敢えて触れないことにする。
(女と言えば、ポルナレフの妹、シェリーって言ったかな……ひひひひ! あいつも良かったなあ……泣きわめくのがうまかったぜ……
そういやポルナレフもいるんだったか……あいつを嬲って殺す前に妹の事を言ってやってよお……ポルナレフの奴を絶望の淵にブチ込んでやるのも悪くねえ!哀れなポルナレフは青春を犠牲にして俺を追い続けたのにあ~あ情けない、無惨にも返り討ちにあって死んでしまいました、そしてこの俺J・ガイルはカワイイ女の子をたくさんはべさせて楽しくくらしましたとさ……メデタシメデタシ……うひゃひゃひゃひゃひゃひゃ! )
下劣な笑みを浮かべ悦に浸るJ・ガイル、しかしその表情は一変する。
(それにしてもワムウの野郎! あとちょっとって所で邪魔しやがって糞っ! 『吊られた男』で刺しても死なねえしよお! 吸血鬼を越えた存在だぁ? つまるところ不死身じゃねえか! あんなの殺せるか畜生! )
そんな事を考えていると、J・ガイルは獲物を見つける。長髪で至る所に傷跡、そして何故か大胆に露出している服、と呼べるかどうかも怪しい物を着ている男だった。
(変態野郎じゃねえか……頭大丈夫かあいつ? まあいい、それよりもついさっきまで戦ったばかりのようだな……血だらけだぜ~っ)
J・ガイルの顔が邪悪な笑みに染まる、そして自らのスタンド、『吊られた男』を出現させる。
(『吊られた男』は光さえあればどこへでも入れる……鏡の中でも、水面の中でも、血の中でもな……死にやがれ!)
男の背中に付いている血に『吊られた男』が出現する、そして男の頭部を後ろから刺し貫く! 男は悲鳴もあげずに倒れた。
『ははははははははは! あっけなく死にやがった! さてと、支給品を頂くとするかなあ~』
J・ガイルは川から上陸し支給品を奪おうとする、しかしその場には男もデイバックもなかった。
『ど、どこ行きやがったんだ? し、死体が動くわけねえ! きっと死体のある場所を間違えただけに違い』
その時、J・ガイルは気づく、自らの首筋に剣が突き立てられている事に。
『馬鹿め、気づかないとでも思ったか? 』
ついさっき殺したはずの男が、背後で剣を突き立て、笑みを浮かべていた……


カーズは気づいていた、J・ガイルの姿に気づいていた。J・ガイル本人は全くわかっていないが、ボートのエンジン音、一人で危なげにニヤついているJ・ガイル……
まさに見つけてくださいと言っているような物。更に相手が悪かった。
相手は柱の男の一人であるカーズ、人間のソレを遥かに上回る身体能力、視覚や聴覚とてその例外ではない。そのカーズが、J・ガイルの姿に気づかない訳はない。
もちろん背後から自らを刺した『吊られた男』には多少驚きはしただろう、だが驚くだけだ、後頭部を刺された程度では彼には何のダメージにもならない。
せいぜい頭に穴が一つ開くだけだろう、もっともその穴もすぐに塞がってしまうのだが。
後は死んだふりをし、男の背後を取る。カーズはここで殺してしまおうと最初は考えた。
しかし、ここで彼に一つの考えが浮かぶ。
(私を後ろから刺した異形の何かは……この人間から浮かび上がるように出て高速で移動し、私を刺した。
やはりこれも先程の人間共が持っていた力……『スタンド』と言う物なのだろうか……波紋とは異なる"力"……あの人間のスタンドを攻撃しようとしたらまるでそこに何もなかったかのようにすり抜けた……どういう仕組みなのか……どの様な力なのか……少し興味が沸いた……)
『人間、貴様はスタンドという存在を知っているか? 』
『ひ、ひいいっ! 』
J・ガイルは地べたにへばりつき、この怪物から離れようとするが……
何故か左耳が熱い、どうなったものかと左耳に触れようとするが……無い、左耳がどこを触っても見当たらない。何事かと思って海で自分の顔を見てみると……
『ぎゃあああああああああああああああああ! 』
左耳が、頭と泣き別れになっていた。しかしカーズは手を休めはしない、再びJ・ガイルに『質問』する。
『知っているのかと聞いたのだ、人間、これ以上このカーズの手を煩わせるな……もう一度聞く、お前はスタンドという存在を知っているか? 二度目は耳だけでは済まんぞ』
『知ってる! 知ってるよ! スタンドについてて俺が知ってる事を全部話すから命だけは……ぎゃああああああああああああああああ! 』
カーズはJ・ガイルの左手、いや、左側の右手の小指を何事もないように切り落とす。
「ん? 間違ったかな? 」
「話します! 話しますから……もうやめてくれよお……凄く……痛むんだよお……」
「んん~実にナイスな返事だ、では喋って貰おうか、スタンドとやらについて、貴様の知っていること全てだ。もし嘘をついたり隠し事をしたら……わかっているな? 」
「はい……話させていただきます……」
そしてJ・ガイルは話し出す、スタンドには様々な種類があるという事、原則として1人に1体という事、弓と矢についての事、その他諸々、包み隠さずカーズに話した……
「それで全てか? 」
「はい、これで全てです……これで……助けてくれるんですよね!? 殺さないでくれるんすよね!? 」
縋る様に騒ぎ出すJ・ガイル、しかし……
「んん~? そんな約束をした覚えはないが? 誰が素直に話せば助けてやると言ったんだぁ~? 」
「そ、そんな……ひいいいっ! 」
「せめてもの礼だ……苦しまずに一瞬で殺してやろう」
カーズが腕から出した剣をJ・ガイルに向けたまま近づく、一歩一歩とJ・ガイルの首を両断しようと近づいてくる。さながら死神の鎌のようだった。
J・ガイルは死にたくなかった。その本能が、叫んだ。
――貴様はこれから川でこのワムウの決闘を邪魔したものを探し出し、見つけ次第私に報告しろ。
  面倒ならば始末しても一向に構わん。いいか、包帯を巻いた男だ。
  ……なに、心配はいらん。困った時はこのワムウを呼べ。力を貸してやろう。
――――困った時はこのワムウを呼べ。力を貸してやろう。――――
――――力を貸してやろう――――
「ワムウ様ァ!!!! 助けてくださいワムウ様ァ!!!! 包帯を巻いた男に襲われています!!!! 助けてくださいワムウ様ァ!!!! 」
「ワムウ……だと……フフフ……」
カーズの顔に邪悪な笑みが広がった。


 ワムウはエル・コンドル・パサに乗り、小道を進んでいた。
強者に巡り会うため、戦いを愉しむため、エイジャの赤石を手に入れる為。
声が聞こえてくる。拠点の確保のため、強者を見つけるため、ゆっくり馬で歩を進め、尚かつ柱の男の身体能力の2つの条件が重なり、通常では聞こえないであろうその声がワムウには聞こえた。
「ワムウ様ァ!!!! 助けてくださいワムウ様ァ!!!! 」
「ヌウ!? あの男の声……まさか! 」
ワムウの予感は的中することになる。
「包帯を巻いた男に襲われています!!!! 助けてくださいワムウ様ァ!!!! 」
「見つけたかっ! 包帯の男! よくも決闘を邪魔してくれたなっ! 貴様はこのワムウが始末する! 」
ワムウは馬から降りると、声が聞こえた方向へ常人では視認できないスピードで走るっ!
ワムウは戦士としての誇りを重んじる、そのワムウの決闘を邪魔した者、それをワムウが許す筈がない。怒りっ!その感情がワムウを行動させたっ!
「死体は欠片も残さん! 完全に消して償わせるっ! 」


現場へと辿り着いたワムウ。その彼が見た物とは……
「カーズ様!? 」
「ワムウか……まさか本当に会えるとはな……」
「そいつは!? 何故カーズ様がその人間と? 」
ワムウは怯えるJ・ガイルを一瞥するとそうカーズに言う。
「この人間か? なに、襲ってきたので返り討ちにしただけだ」
「我が僕が失礼を……申し訳ございませんカーズ様」
「謝る必要などない、この殺し合いの場で利用するコマを作っておくなど当然の事だ……それよりワムウ、この人間が包帯の男がどうの言っていたが……何のことだ? 」
「私と波紋戦士リサリサの決闘を邪魔し、殺した男です、あの男だけは許すわけにはいきません、我々の戦いを見ていたこの人間に捜索を命じたのですが……まさかこんなに早く見つかるとは……包帯の男はどこに? 既にカーズ様が始末を? 」
ワムウの言葉を受け、カーズは笑う、最強の波紋戦士が早くも死んだ事と、発覚した一つの事実に。
「実はなワムウ、この人間が包帯の男の正体だ」
カーズは出せと言わんばかりにJ・ガイルを睨み付ける、J・ガイルは怯えながらも「吊られた男」を出現させる。
「こいつは!? 」
「詳しい説明は後でするが……この包帯の男はこの人間の分身のようなものだ」
「お前だったのか! 決闘を邪魔した者は! 人間! 只で済むと思うな! 」
ワムウが両腕を素早く回転させる、闘技、神砂嵐の体勢だ。
「待てワムウ! 」
「!? カーズ様! 」
J・ガイルはワムウにとって最低の男、ワムウは必ず始末するだろう。しかし主であるカーズの命には逆らえない、昂ぶる気持ちを必死で抑え、ワムウは腕の回転を止める。
「人間、貴様の名はなんという」
「J・ガイル……で……です……」
カーズの問いにJ・ガイルは素直に答える。答えざるをえない、逆らったが最後、自分の運命が決まってしまうからだ。カーズが再び口を開く。
「ではJ・ガイルよ、私をワムウと引き合わせたこと、スタンドの詳細を教えてくれた事、この2つに免じ、貴様をこの場限りだけ生かそうと思う」
「ほ、本当ですか! 」
己の命が助かる事がわかるとJ・ガイルは歓喜する。しかしカーズの話は尚も続く。
「しかしだ、貴様はこのワムウの決闘を邪魔した、ワムウは戦士としての誇りを重んじる男でな、貴様を生かしておく気などない筈だ、
このカーズの命がなければワムウは貴様を殺していることだろう。そこでだ……このカーズに提案がある、貴様を見逃し尚かつワムウを納得させる方法をだ……」
そう言うとカーズはいきなりJ・ガイルを捕まえ、真上に放り投げる。
「やれワムウ、最もお前はこれだけでは収まらんだろうがな、次に会ったら殺しても構わん」
「MUUUUUUUUUUUUUUUUU…………」
ワムウが落ちてくるJ・ガイルに向けて、大きく足を上げる。
「OHHHHHHHHHHHHHHHHH!!! 」
そしてその足をJ・ガイルの胴体目掛け振り抜く。
「ぎゃあああああああああああ……」
J・ガイルは何度目かもわからない悲鳴をあげ、夜空の彼方へと消えていった……


【現在地不明/1日目 黎明】
【J・ガイル】
[時間軸]:ジョースター一行をホル・ホースと一緒に襲撃する直前
[能力]:『吊られた男』※射程距離などの制限の度合いは不明。
[状態]:滑空中、左耳欠損、左側の右手の小指欠損、ワムウの蹴りによるダメージ、カーズに絶対的な恐怖。
[装備]:なし
[道具]:なし
[思考・状況]
1. ぎゃあああああああ!!
2. 痛えよおおおおおお!!
3. 適当に人を殺す(痛みと恐怖で忘れかけています)
[備考]
※デイパックと支給品一式をカーズに奪われました。
※ワムウの蹴りによるダメージがどの程度なのかは次の書き手さんにお任せします。
※J・ガイルがどの方向へ飛んでいったかは次の書き手さんにお任せします。


J・ガイルが見えなくなった後、カーズがワムウに話しかける。
「さてワムウよ、行くか」
「は……しかしカーズ様、何故死んだ筈のエシディシ様やシーザーの名が? 」
「話は後だ、もうすぐ夜が明ける……」
こうして早くも合流を果たした柱の男、カーズとワムウ、それは果たして幸運なのか、それとも……


【I-6 北部/1日目 黎明】

【柱の男達】

【カーズ】
[時間軸]:リサリサとJOJOにワムウと自分との一騎打ちを望まれた直後
[能力]:柱の男、『輝彩滑刀の流法』
[状態]:全身に裂傷、中ダメージ、中疲労
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、輸血パック(残量0ml)、不明支給品0~2(未確認)、首輪(エルメェスの物)、不明支給品0~2(J・ガイルの物)
[思考・状況]基本行動方針:荒木を殺して力を奪う、スーパーエイジャを手に入れる
1.エシディシ、サンタナと合流する。
2.エイジャの赤石を手に入れる。
3.とりあえず参加者の数を減らす。
4.首輪を解析する。
[備考]
※血を吸った際の回復力に制限がかけられています。


【ワムウ】
[時間軸]:ジョセフとの戦車戦のちょっと前
[流法]:風
[状態]:健康
[装備]:ストレイツォのマフラー
[道具]:基本支給品×2、不明支給品0~3個(リサリサの分)
[思考・状況]基本行動方針:人類殲滅、特に波紋戦士とその一族
1.わからないことだらけなので、調査してみる。
2.逆らうもの、波紋戦士は問答無用で殺す。
3.再び会ったならJ・ガイルを殺す。
4.カーズの命に従う。
[備考]
※ ボートが川沿いに放置されています、燃料はもう殆どありません。
※ I-5にエル・コンドル・パサが放置されています。



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時系列順で読む


キャラを追って読む

38:嵐の夜がやってくる ワムウ 83:Safest place to hide
44:ママっ子☆マンモーニ! カーズ 83:Safest place to hide
38:嵐の夜がやってくる J・ガイル 69:Panic

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最終更新:2009年11月03日 20:54