閃光が彼の目を迸った。
思わず目をつぶってしまうミスタ。
ブチャラティはどうなったのだろうか?
霞む視界で確認できた彼は大地に日本の足をつけて立っていた。
しかし男の方は……ミスタの心を黒い物が覆う。
別に殺し自体に抵抗があるわけではない。
事実、この殺し合いの場において“乗って”いるヤツを殺すのに躊躇いはない。
しかし、今回は違う。
ただの錯乱した男、恐らく放送で知り合いが死んでしまったのだろう。
自分もトリッシュが死んだ時、冷静さを失ったから気持ちは分かる。
そう、もしかしたら仲間となりえたかもしれない人物を爆殺してしまったのだ。
(そういえば、コイツが出会った四人目の参加者だったな……)
改めて呪われ数字が自分の身を取り巻いているのを感じる。
そして、その呪いが他人に感染する物であったことも。
視力が戻り、男の死体を確認しようと視線を向けた。
手榴弾の破片が彼の体を引き裂き、火薬が彼の体を焼く無残な姿が見えたと思った。
が、ミスタが見たのは―――――――――
何もない焼け焦げた大地だった。
「いない……?」
小さなミスタの呟き。
手榴弾には人を欠片も残さずに吹き飛ばす火力はないはずだ。
彼の疑問に答えたのはブチャラティであった。
「誰かが飛び込み……突き飛ばしたようだな。
向こうにヤツは飛ばされていった。そして突き飛ばしたほうは……」
残念そうに首を振るブチャラティ。
そして爆心地から離れたところにいるジョナサンへと近寄っていた。
「申し訳ないが……手足は頂いていこう。
正気に戻るまでは危険すぎるからな」
スティッキィ・フィンガーズの能力でジョナサンの肩と腿にジッパーを取り付け、足を取り外す。
芋虫の様になった彼の姿を見てブチャラティは一息つく。
安全を確保した事を悟り、ミスタもブチャラティの元へと駆けつけた。
「大丈夫かブチャラティ? 腕は完全に使い物にならねぇだろ!?」
「何とかする、最悪死体やゲームに乗ったヤツから奪う事になるかもしれんがな。
それよりもミスタ。お前には頼みたいことがある」
顔色と吐息の様子がブチャラティが重傷であるということを告げる。
しかし、命に別状があるという訳でも無さそうだ。
安堵したミスタはブチャラティの要求に答える。
「何だ? なんだってやってやるぜ?」
「簡単な人探しだ。コイツを突き飛ばしたやつを探して欲しい。
わざわざ身を挺して助けるぐらいだ。殺し合いに乗っているわけじゃなかろう」
OKと軽い返事を残し、ミスタは去っていく。
木々に囲まれた場所や、茂みの中。
人が隠れうるサイズのスペースは全て洗い出す覚悟で彼は探索を続ける。
「うげっ!」
背の低い木の枝と葉で完全に覆われている場所、そこで目的の人物を見つけた。
ミスタから最初に漏れたのは嫌な物を見てしまったという声。
見つけたのは下半身が完全になく、残った上半身も手榴弾で無残に傷ついた死体。
あまりの惨劇に死体を見慣れたミスタもついつい声をあげてしまった。
「すまなかった……」
が、あくまでも目の前に居る死体がこんなことになってしまった原因は自分。
謝罪の辞を述べ、胸の前で十字を切り、ブチャラティの元へ報告しに行く。
「待ってろよ。もっといいところに埋葬してやるからな」
「おい……待ってくれ。俺はまだ死んでいない」
呼び止める声にギョッとしつつ、ミスタは後ろを振り返る。
確かに生きていた。髪の毛で体を支えつつ、上半身だけのを起こし男はミスタを見据える。
「生憎死ににくい体でな、下半身が吹き飛んだぐらいじゃ死にやしない」
まぁ、太陽光には弱いんだがな。と自嘲的に言い、男、ブラフォードはミスタに話しかける。
「こんな所で話すのもあれだ。申し訳ないが君の仲間と、さっき俺が庇った男と話がしたい。できれば日光が当たらないような場所でな」
★ ☆ ★
ブラフォードに頼まれたとおり、ミスタはブチャラティを呼びに行き、ブチャラティもそれに応じた。
そして、現在ブチャラティの能力により三人と一人は決して日光の届かない場所、地下に潜っている。
「まぁ、現在に至るまでの経緯はこんなものか」
一通りの事情を話し終えたブラフォード。
自分とジョナサンの関係、この殺し合いに巻き込まれてからの自分の経緯、そして妄執に囚われた友を追って走ってきた事。
ちなみにミスタがジョナサンに警告を送ったことから彼らは敵ではないと咄嗟に判断することができたらしい。
「なるほど……屍生人に吸血鬼。そして波紋使いだったな。
奇妙な事だけどよう、俺たちのようなスタンド使いがいることだし疑えねーよ」
「理解していただき感謝する」
半身を吹き飛ばされたにも関わらず平然としている人間が居る以上は疑うことはできない。
ミスタが質問をし、ブラフォードはそれに答え、ブチャラティは黙ってそれを聞いている。
ブチャラティには一つだけ気になっていた疑問があった。
不死さ、生身ではありえないスピードとパワー。
一つだけ彼には覚えがあった。
ブラフォードの体から漂う腐り水のような臭いを彼の鼻は確かに記憶していた。
「一つだけ聞かせてもらおう。その屍生人とやらに長く伸ばした口髭を二本に纏め、
逆立った銀髪をしている黄色人種……チャイニーズのような男はいなかったか?」
ブチャラティが思い出すのはスージーの敵である男。
下卑た笑いを浮かべながら殺しの成果を嬉々として話したアイツ。
そして自分がこの手で解体してやったゲス野郎。
ブチャラティの期待にブラフォードは沿うことができた。
「あぁ知っている。確か……
ワンチェンという名だったかな?」
「そうか……つまりスージーの敵はまだ残ってるって訳だ」
ブチャラティの全身から溢れ出る怒気に二人は怯む。
「ディオ……
ディオ・ブランドーといったな? 吸血鬼か。そして、性格的には間違いなく殺し合いに乗っている。ならば俺はヤツを――」
そこまで言いかけたブチャラティの口をミスタの掌が覆う。
何だ? 今にも掴みかかりそうなブチャラティを制しながらミスタは言った。
「ぶっ殺すじゃねぇ。ヤツを倒して初めてぶっ殺したって言うんだ」
落ち着かせるために言ったのだろう。
ついつい我を忘れそうになった自分に溜息を吐く。
不穏になった雰囲気を変えるためにブラフォードが二人に質問を振った。
「ところでお前達はこれからどうするつもりだ? 俺はジョナサンの説得が完了次第ジョースター邸に戻るつもりだが」
「そうだな、ジョースター家に行こうと思ったのはジョースター姓を持ったものと接触を持つためだったが、
ジョージ・ジョースター氏が荒木と関係がなく、ジョナサンも恐らく関係がないのなら行くメリットも薄い。
それに波紋さえあれば重傷の患者だって何とかする事ができるんだと聞いたしな」
「それにジョージ氏を助けるために急ぐのだろう?
ならば、さっきジョージ氏と、もう一人の貴婦人に俺達の存在を教えておくだけでいい。
俺達はジョースター邸は通らず
まっすぐにC-1に行くとしようか」
★ ☆ ★
うぅ……ここはどこだ?
さっき変な爆発に巻き込まれてしまったのは覚えている。
まさかあんな小さな手投げ爆弾があるなんて思わなかったけれども……。
でも、何故僕は生きてるんだ?
いや、それとも死んでしまって死後の世界にいるのか?
それも悪くない。父さん、ダニー、ツェペリさん、ブラフォードに合えるなら死後の世界も……ブラフォード?
何故だろうか。彼の名が頭に染み付いてはなれない。
「ハッ!」
目が覚めたジョナサンが最初に確認したのは三対の目。
三者がそれぞれ違った感情で自分を見つめていることがジョナサンには理解できた。
少しの間とはいえ、眠っていた事で精神的な落ち着きを多少ではあるが取り戻すことができている。
「な、なんなんだこれは?」
死んだと思いきや、四肢の自由を奪われて薄暗い場所に放置されている。
ジョナサンが驚くのは当然だっただろう。
薄暗い景色、ブラフォード、先刻の屍生人を操った吸血鬼、そしてその仲間。
この状況からジョナサンが導き出した答えはひとつであった。
「そうか……僕は殺されるのか……。だが、僕の誇り高い魂は屍生人程度には負けない!
殺すならば殺せ! 例え手足が動かなくとも僕は最期まで――――――」
狂気を瞳に宿したまま唾を飛ばすジョナサンの演説は終わりを告げた。
グイード・ミスタ。彼がジョナサンの腹部へと叩き込んだ蹴りのおかげで。
込み上げてくる吐き気をこらえながら気丈な瞳でミスタを見据えるジョナサン。
その態度にますます怒りが増したのか、両腕でシャツの襟を掴み、持ち上げつつ怒鳴りつけた。
「あぁ!? テメェは一体何いってやがんだゴルァ! ブラフォードの体を見て見やがれ!」
あまりの剣幕に気圧され、ジョナサンはブラフォードへと視線を向ける。
下半身がない。誰がやったのか? 僕がやったのか? いや、記憶はない。
それに残った上半身も所々にジッパーが付いている。
再度、ミスタの瞳を見据えた。
怒りに燃えながらも、その瞳はどこまでもまっすぐで澄み渡っていた。
「まずこの下半身はな、太陽にやられて消失したんだ。それに、この体のジッパーは傷だらけだったコイツの体をブチャラティが治療したあとだよ。
痛そうに見えるだろ? まさか屍生人は痛みを感じませんだなんて言う訳ねぇだろ? 言う訳ねぇよなぁ!?
テメェとの戦いでブラフォードは痛みと心を取り戻したって言ってんだ。そして、命懸けでテメェのことを守ったんだよ!」
ここで一息つくミスタ。
熱くなり過ぎて所々がおかしくなっているが伝えたいことは分かる。
ジョナサンの瞳が僅かに揺れた。
「なのにテメェは一体なんなんだ? 屍生人に屈しないだぁ!? 馬鹿いってんじゃねぇよこのクソ野郎!」
「ミスタ、そろそろやめとけ」
ブチャラティの静止の言葉も今の彼には届かない。
所謂プッツン状態というヤツだ。
ブラフォードはただ三人の事を見ているだけ。
止めたり、便乗したりして責めたりすることをしない。
ただ、嬉しさと悲しさの入り混じったような目で彼らを見るだけだ。
「ブチャラティ! あんたの命令であってもこればっかりは譲れねぇ!
最後に一つだけ、これだけは言わせて貰うぜ!
アンタはコイツや父親を紛いもんって言ったなぁ! 言ったんだよなぁ!
テメェの親は戦いを止めるために無理矢理割り込んだんだ……自分の命を賭けてな。
そしてブラフォードはテメェの事を守るためにこんな姿になっちまった。
それでもテメェはコイツラを紛いもん呼ばわりすんのか? そいつらを侮辱してるのは荒木じゃねぇ!
ジョナサン・ジョースター! テメェがそいつらの命を……覚悟を侮辱しちまってるんだ!!」
長々とした話を一つも噛むことなく一気に言い切ったミスタ。
ジョナサンは震えていた。
ブチャラティはただ立ったまま俯ている。
ブラフォードの瞳が懐中電灯の光を反射した。
「うぇっ、うっ、ひぐっ」
子供のように嗚咽を上げるジョナサン。
ミスタは乱暴にジョナサンを地面へと落とし、彼に背を向けた。
離れていく彼の肩をブチャラティが叩く。
「すまねぇ。熱くなり過ぎちまってた」
ブチャラティは無言であった。
静寂の洞窟の中、ブラフォードがミスタに頭を下げた際に鳴った鎧の音がやけに印象的に聞こえる。
そしてしばらく続く、ジョナサンのしゃくり上げる声と鼻水を啜る音。
「申し訳ない……皆には本当に迷惑をかけてしまった。
特にブラフォード。君には心の底から謝罪を申し上げたい……」
消え入りそうなジョナサンの声。
しかし、音量に似合わず、込められた意思の硬さは相当なものだと思わせるものがあった。
「そして父さんにも……エリナにも謝らなくっちゃ。
特に父さんは……父さんはっ! そして、ダニーもっ!」
拳を握り締めようにも肝心の拳が存在しない今、彼は自分の唇を噛み締める事となる。
自分の犯したことに悔いばかりが残った。
父を殺し、愛犬を殺し、そして友までも殺してしまいそうになった。
襲い来る現実の重みに耐え切れず何処かへ逃げ出してしまいそうになる精神。
それを、父の最期の言葉と、ブラフォードが見せてくれた覚悟で必死に押し留める。
全身が震えていた。
涙の河は途切れることがない。
前に進まなくてはいけないのだ。
殺してしまった二人の為に、庇ったせいで下半身を失った友の為に。
だけれども彼の体は言う事を聞いてくれない。
当然、手足がないので動けないのだが、もしもあったとしても動けるのだろうか?
正直に言ってしまうならば自身がない。
絶望なのか諦観なのかよく分からない気持ちが彼の心を覆っている。
悲しそうな表情でブラフォードはジョナサンの表情を窺う。
果たしてこの男は再起可能なのだろうか?
一つだけ秘められた鍵。
それをブチャラティが解き放つ。
「『スティッキィ・フィンガーズ』、ジッパーで俺のディバッグとミスタのディバッグを合わせて巨大な袋にした。
ブラフォードをここに入れてジョースター邸まで運んでいくがいい。早く行けばまだ間に合うかもしれんからな」
唐突の発言と共に差し出された巨大な一つの袋。
真意を測りかねたジョナサンが不思議そうな顔でブチャラティを見つめる。
「結論から言わせて貰おう。君の父君は放送で呼ばれなかった。これが意味するのが何か分かるだろう?
が、ブラフォードを置いていくわけには行かないし、俺たちが運んでいくわけにもいかない」
ここまで言われてジョナサンはやっと真意を理解した。
父が生きているという可能性に別の涙が溢れ出す。
「エリナは……医者なんだ。最低限の応急処置はしてあるだろうからもしかしたら僕の波紋で……」
目の前に現れた希望にそわそわと落ち着きをなくしたジョナサン。
視線で必死に訴える。早く行かせて欲しいと。
軽く溜息を吐きながら冷静にブチャラティが返す。
「ちょっと待っててくれ。じゃあ、今から貴方を解体することになる。
首輪に触れるのは危険だからまだ試したくないから鎖骨の辺りで頭部を切り取るが、肉体のほうはバラバラにさせてもらう。構わないか?」
「あぁ。なんなら首輪の部位をやってくれても構わん」
「いや……よしておくよ。もう少し資料が欲しい、本格的な決断を決めるのは禁止エリアを見てからにしたいんだ」
これはブチャラティの本音である。
しかし、これにはもう一つの真意が含まれていた。
万が一失敗したとしよう。
そうすればジョナサンの精神は一体どうなるのか?
せっかく正気を取り戻しつつあるのに元の木阿弥に戻すほど馬鹿らしいことはない。
ブラフォードの体にジッパーを取り付け解体しつつブチャラティは考える。
徐々に細切れとなっていくブラフォードの体。
不安げに眺めるジョナサンに『大丈夫だ』とだけ告げてブラフォードはブチャラティに身を委ねる。
そしてそれから十秒経たないうちに、ブラフォードはブチャラティの用意した袋にギリギリ収まる大きさとなった。
「じゃあ……少し狭いかもしれんが我慢していてくれないか」
「構わんさ、むしろ感謝の言葉を贈らせていただこう」
そしてジッパーが閉じ……ブラフォードは完全に袋詰めにされた
「さぁ、あんたの手足も繋ぎ合わせるから大人しくしていてくれ」
「あぁ……」
外された体のパーツが再度繋ぎ合わせられるという奇妙な感覚を味わいながらジョナサンは父のことを考えていた。
救える、僕は父さんを救えるんだ。
妄信的なまでにこの言葉を頭の中で繰り返し、一刻も早い出発を願う。
彼は本当に正気を取り戻したのだろうか?
もしかしたら思い込みが消えただけで妄信的な何かは変化していないのではないのだろうか?
ブチャラティたちは急いでいた。
それ故にジョナサンのアフターケアまでには手が回しきれない。
信用できるのは彼の精神とブラフォード。
本当に良かったのだろうか?
手足を繋がれ終えたジョナサンが立ち上がり、軽い運動で感覚を確かめる。
「うん、大丈夫そうだ」
そういうや否や、ブラフォードの入った袋を背負ってブチャラティとミスタに頭を下げる。
「本当に迷惑をかけてしまった、申し訳ない。だけど……次に会ったときは共に協力しよう」
返事はなかったが、二人の笑みを肯定と受け取りジョナサンはブチャラティの開けた穴から外界へと走り去っていった――――。
★ ☆ ★
ジョナサン・ジョースターは超一流の波紋使いである。
宝くじの一等が当たるよりも低い確率で存在する波紋の呼吸を覚える資質を持った人間、
その中でも類まれなる才能と、短いながらも厳しい鍛錬に努力を惜しまなかった天才。
彼は既に無意識の内でありながらも波紋を練れるほどに成長していた。
そう、屋敷へ向かう現在も意図せぬうちに波紋を発生させることができるほどに。
ジョナサンは急いでいた。
屋敷に残して来た父の命は今にも尽きそうな風前の灯。
しかし、自分の波紋さえあれば、骨折すら治す波紋さえあれば何とかなるかもしれない。
走る、走る、走る
急ぐから体があらん限りの波紋力を無意識の内に体に込め、行きよりも更に早く。
ジョナサンの視野は致命的なまでに狭まっていた、ディバッグ内に収まる友の弱点が完全に頭から抜け落ちるほどに。
父を救うために急げば急ぐほど、友の命が消え去っていくことに気付かぬほどに。
さらり、さらり、さらり
ジョナサンの視界には決して入ってくることはない。
ディバッグより聞こえてくる押し殺したような小さな呻き声。
ちょっとした隙間より零れ落ちる砂のような粒子。
朝日に照らされて光るそれは生命の欠片。
黒騎士ブラフォードの末期は誰にも見取られることなく訪れた。
(そうか……)
鎖骨辺りにある断面や髪の毛の末端。バラバラに入れられた体のパーツが泡を出しながら蒸発していった。
ブラフォードは静かにやってきた死を穏やかに受け入れる。
もしも大声で助けを呼べば、ジョナサンは気がついて助けてくれただろう。
しかし、彼はそれをよしとはしなかった。
確かに波紋の呼吸さえやめればブラフォードの生命は助かっただろう。
けれども波紋の助けがない走りでは間違いなくジョージが手遅れとなる。
カバンを置いていかせるにしても、ジョナサンは間違いなく首を振るはずだ。
もしも置いていき、自分に何かがあればこの心優しき英国紳士は自分を責めるはずだ
負い目のせいで波紋に集中できない可能性だって十分ある。
一分のミスすら許せない状況で集中力を欠くことがあってはならない。
そう、これはどちらかの命を拾い、どちらかの命を捨てるという選択であった。
ブラフォードはジョナサンに後悔が残るような選択をさせたくなかった。
(そう……俺が死ねばいいんだ。ジョージさんは今後対荒木に必要な人物になるだろう。
だが、夜中しか動けない自分は足手纏いだ。
それに、俺は既に二度生きた人間だ。譲るべきならば間違いなく俺のほうだろう?)
波紋傷が首まで侵食し、首輪がカバンの底へと抜け落ちる。
(気にするな、ジョナサン……。そうなるべきだったところに、戻るだけなんだ。元に戻るだけ……ただ元に…)
ジョージが言った言葉を一字一句違わずに思い返す。
奇妙な満足感に抱かれながら、失いつつある唇と舌で呟いた。
『 GOOD LUCK 』
誰にも聞かれることも無い言葉と共に彼の肉体は完全に灰となり消え去る。
ジョナサンはまだ彼の死に気が付いていない――――――――――。
「なぁ、ブチャラティ。あいつらと再会できればいいな」
「できるさ……必ずな」
穴倉から出てきた二人はC-1へと足を向ける。
ブチャラティは気が付かなかった。
波紋が全身のどこからも伝わりうる能力であるという事に。
彼は能力は拳から伝わるというスタンドの一般論に囚われていた。
それが致命的なミスになったことに彼は気が付かない。
ミスタは気が付いていなかった。
『四人目の参加者』のジョナサンに完全に気を取られていた事により。
ブラフォードが彼にとってどのような人物であるのか。
……
アレッシー、ブチャラティ、ジョナサン、そしてブラフォード。
そう、彼はミスタにとって『会場で出会った四人目の男』だった―――――――
【黒騎士ブラフォード死亡 残り60名】
【B-2 ???/1日目 朝】
【ジョナサン・ジョースター】
[時間軸]:エリナとのハネムーンでアメリカに向かう途中の船上でワンチェンと遭遇する直前
[状態]:唇と右手から少量の出血(生活、戦闘に支障無。未治療)、精神疲労(大)、身体疲労(小)、顔と胸が血塗れ、鼻の骨折、判断力の低下
[装備]:なし
[道具]:なし
[思考・状況]
基本行動方針:ゲームを止める。
1.父さんを助けるために一刻も早くジョースター邸へと帰る
2.荒木を倒すために仲間を探す
3.偽者なんて……いなかったんだ
4.ダニー、父さん、そしてブラフォード。ゴメン、本当にゴメン
5.ブチャラティとミスタ。彼らは信頼できるみたいだな
※ブラフォードの死に気が付いていません
※ブチャラティ達が得た情報は後にブラフォードから詳しく聞くつもりでした
【チーム・ブチャラティ】
【
ブローノ・ブチャラティ】
[時間軸]:護衛指令と共にトリッシュを受け取った直後
[状態]:肩に切傷(血は止まっている)、左頬の腫れは引いたがアザあり、右腕の骨折、トリッシュの死に後悔と自責
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、荒縄、シャーロットちゃん、スージーの指輪、スージーの首輪
[思考・状況]
基本行動方針:打倒主催、ゲーム脱出
1.禁止エリアC-1に向かう。 その道中にミスタに後述の仮説を聞いてもらおうと思っている。また、可能ならワンチェンの支給品および首輪の回収を行いたい。
2.C-1確認後北・西の地図の端を見に行く。その後は北端に沿って東を見に行く。
3.絶対にジョセフと会い、指輪を渡す。彼にはどう詫びればいいのか…
4.チームの仲間に合流する。極力多くの人物と接触して、情報を集めたい。
5.“ジョースター”“ツェペリ”“空条”の一族に出会ったら荒木について聞く。特にジョセフ・ジョースター、
シーザー・アントニオ・ツェペリ(死亡したがエリザベス・ジョースター)には信頼を置いている。
6.ジョナサンとブラフォードを信頼。できれば他のジョースターにも出会いたい
7.スージーの敵であるディオ・ブランドーを倒す
[備考]
※パッショーネのボスに対して、複雑な心境を抱いています。
※ブチャラティの投げた手榴弾の音は、B-2の周囲一マスに響きわたりました。
※波紋と吸血鬼、屍生人についての知識を得ました
※ブチャラティが持っている紙には以下のことが書いてあります。
①荒木飛呂彦について
ナランチャのエアロスミスの射程距離内いる可能性あり
②首輪について
繋ぎ目がない→分解を恐れている?=分解できる技術をもった人物がこの参加者の中にいる?
首輪に生死を区別するなんらかのものがある→荒木のスタンド能力?
スティッキィ・フィンガーズの発動は保留 だか時期を見計らって必ず行う。
③参加者について
知り合いが固められている→ある程度関係のある人間を集めている。なぜなら敵対・裏切りなどが発生しやすいから
荒木は“ジョースター”“空条”“ツェペリ”家に恨みを持った人物?→要確認
なんらかの法則で並べられた名前→国別?“なんらか”の法則があるのは間違いない
未知の能力がある→スタンド能力を過信してはならない
参加者はスタンド使いまたは、未知の能力者たち?
空間自体にスタンド能力?→一般人もスタンドが見えることから
【グイード・ミスタ】
[時間軸]:54巻、トラックの運転手を殴った直後(ベイビィフェイス戦直前)
[状態]:健康、左頬が腫れている、トリッシュの死に深い動揺とゲームに対する怒り
[装備]:ナランチャのナイフ、手榴弾2個
[道具]:不明支給品残り0~1(あるとしたら武器ではないようです)
[思考・状況]
基本行動方針:ブチャラティと共に行動する。ブチャラティの命令なら何だってきく。
1.スッキリしたぜ、できればあの二人と再会してぇな
2.エリナの誤解を解きたい
3.アレッシーうざい
4.あれこれ考えずシンプルに行動するつもり。ゲームには乗らない
[備考]
二人がした情報交換について
※ブチャラティのこれまでの経緯(スージーとの出会い~ワンチェン撃破まで)
※ミスタのこれまでの経緯(アレッシー、エリナとの出会い~ブチャラティと合流まで)
※波紋と吸血鬼、屍生人についての知識を得ました
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最終更新:2009年11月03日 21:48