外では太陽が高くまで昇っている頃だろう。
だが、その輝きは、温かさは……“今の”彼には必要ない。
いずれ太陽を克服し、その時に初めて日光浴を楽しめばいいのだから。
失った左腕に止血――と言っても強靭な筋肉を操作して無理矢理に血管を塞いでいるだけなのだが――を施した柱の男は怒りに任せ声を荒げる。
放送は聞き逃していなかった。
柱の男は何も戦闘のみに長けた種族ではない。聴力も、瞬時の記憶能力も人間の比ではない。
だが、男、
カーズにとっては禁止エリア設定以外の内容はどうでも良かった。
主催者の話し方が苛立ちを呼ぶものだろうが……数千年を共に生きた同族がこのゲームを退場しようが。
――と言うよりは、そういう発想だからこそジョセフに対する怒りのみで思考が埋め尽くされていたと言えるだろう。
しばらく周囲に当たり散らしたカーズ。その目には冷たい光が宿っていた。
「だがそうだ……アレに下らん復讐心を燃やすのみで己の身を滅ぼしてしまっては話にならん。
この私が今何をすべきか?それは、それはァ~~~」
冷静でありながらなお高々に上げる声をトンネル内に反響させながらコツコツと足音を鳴らし歩き出す。
その方向はジョセフ達が逃げて言った方向とは真逆。
そして、少々の距離を行ったところでピタリと止まり、壁に手を当てる。
次の瞬間。カーズは壁に吸い込まれていった。
* * * *
暗闇を一人、カーズは行く。
口は固く閉ざし、目標となる一点のみを見据えていた。
先程までのテンションでべらべらと喋り続けていた男とは思えない程である。
――作者から――
柱の男カーズには、人間やスタンド使いの常識は全く通用しない。
……というのは、発想のスケールが桁違いなのだ。
吸血鬼や波紋の存在を知らない多くの人間達は、一体彼がどんな男なのか見当もつかず、すぐにリタイアする事となる。
しかし、この“バトルロワイアル”というゲームにおいては、カーズの行動は間違ってはいない。
目的を見失って命を落としてしまったヤツがマヌケなのである!
ここで、カーズの行動について代弁しよう。
まずはカーズの思考について。彼の思考はこうだ。
彼が“潜り込んだ”のは壁そのものでは無い。聡明な読者諸君ならお分かりだろう。いわゆる、
「空気供給管にーッ!!」
……と言うやつである。
サンタナのような若造に出来て彼に出来ぬ事はないのだ。
では――なぜ彼はわざわざそのような回りくどい行動を起こしたのか?
その答えは実に簡単である。
カーズは……いや柱の男達は、何も線路を歩いて標的を追う必要などないしそんな真似をする理由もないのだ。
全身の骨格をバラバラにして供給管に肉体をねじ込んでしまえば死角から攻撃することも、周囲の探索をすることも造作ない。
さらに言えば、彼がこの地下に潜り込んだ場所は何の変哲もないマンホール。つまり、何も駅から外に出ずとも構わないという事を意味している。
日中にも関わらず行動範囲がぐっと広がるというのは太陽を弱点とする彼らにとっては大きな武器となりうる。
そして、食事も武器も必要としない彼にとっては支給品は不要なもの。
禁止エリア確認のための地図、そして解析に使うための首輪だけをその懐に仕舞ってその他はすべて放置。
支給品の確認は行ったものの、紙から出てきたものはドネル・ケバブにポラロイドカメラ。どちらもカーズにとっては必要のないものであった。
もっとも、狭い空気供給管内にデイパックのような大きなものを持って入る事などそもそも不可能なのだが。
あれほど苛立っていたジョセフに対しても“いずれ”復讐を果たせばいい。“今すぐ”である必要はない。
もっと言えば何も美しく、正々堂々とした攻撃をする理由もない。たとえ無様だろうが卑怯だろうが勝てば良いのである。
さて。次にカーズの今後の方針、目的は何なのか?という疑問である。
ジョセフ・ジョースターに対する復讐はもはや二の次。
カーズの目的とすることは、昔も今もただ一つ『究極の生命体となること』である。
荒木を殺してその力を奪い、更にはエイジャの赤石を回収、その力をもって太陽をも克服する事が第一なのだ。
何千年、何万年と狙い続けていた目的に比べればこの数時間で生まれた怒りなどチリ同然。
するとまず浮かび上がる課題が首輪の解析。
これをどうにかしない事には究極生物もくそもない。
ただし、解析の技術に関しては石仮面を作り上げるようなカーズの右に出る者はそういないだろう。おそらく、未知の機械や技術も天才カーズの手にとっては大した障害ではない。
ではカーズは何を欲しているのか?それは言うまでもなく“サンプル”である。可能なら吸血鬼の首輪が欲しいのだが贅沢は言っていられない。とにかく数がほしい。
かと言って参加者を殺して回るような面倒は起こさない。放送の内容に従うならば自ら手を下さなくともそこらじゅうに死体が転がっている事になる。そして、これからも死者は増えることだろう。
死体があればその腕も欲しい。両腕が使えないというのは不便極まりない。片腕で首輪をバラしていたら手元が狂って爆発、もう片方の腕も失ったなんて冗談は流石のカーズも勘弁である。
自身の腕に死者の腕をくっ付けることは不可能ではない、という事は
エシディシがロギンズの腕を奪った例を考えれば理解してもらえるだろう。
最後に。彼は一体どこに向かうのか?
これはカーズ自身もハッキリ決めていた訳ではない。その理由もいたって単純である。
彼らは日光の下には出られない。行動範囲が広くなったとはいえ限界は存在する。
しかし“日光が当たっている場所を遠目から見ること”は可能。要するに、空気供給管の中から、
「あぁ、あそこから光が射しているから危険だ。避けて通ろう」
といった判断ができるのだ。もっとも……鏡や水面を利用されてハムエッグのようにされてしまうかも、という危険性はゼロではないが。
そんな訳でカーズは今いる管が続く限りの出入口を片っ端から確認し、自分の求めるものがあれば利用する、という行動方針を立てたのだ。
冷静な考えによって導き出された結論、自分の能力と目的を充分に考慮した結果。
そのベクトルはどう転んでもカーズの最終目的に向けられている。
その目的を達成できるか否かは今は誰にも分らない。そう、カーズ自身にさえ。
そんな一抹の不安――もっとも彼に不安という概念があるのかは疑問だが――を振り払うかの様にカーズは闇の底へと体を滑り込ませていった……。
To be continued ...
【?-? 地下・空気供給管内/1日目 午前~昼(10時少し前)】
【カーズ】
[時間軸]:リサリサとJOJOに
ワムウと自分との一騎打ちを望まれた直後
[能力]:柱の男、『輝彩滑刀の流法』
[状態]:全身に裂傷(止血済)、左ヒジから左手にかけて損失(止血済)、ジョセフに対する苛立ち(現在ほぼ無し)
[装備]:なし
[道具]:首輪、地図
[思考・状況]
基本行動方針:荒木を殺して力を奪う、スーパーエイジャを手に入れる。
1.空気供給管内から町内探索。状況に応じて外に出て行動(内容は下記)
2.首輪解析。同時にそのためのサンプル入手。数はあるほど良い。出来れば首の配線があるであろう吸血鬼が一匹欲しい。
3.死体があったら左腕を貰って治療したい。
4.エイジャの赤石を探し出し入手。
5.主催者=荒木に関しての情報収集。目的を突きとめる。(ただし最優先ではない)
6.ジョセフ・ジョースターの姿に関して考察。いずれ復讐を果たす(ただし最優先ではない)
7.エシディシと合流(ただし最優先ではない)
[備考]
※血を吸った際の回復力に制限がかけられています。
※ワムウと情報交換をしました。
※カーズとワムウがマンホールに入った地点はH-7です。
※心臓にもなにか埋め込まれてるのではないかと考えています。
※地下鉄はある程度周りの下水道や空気供給官なとと繋がっているようです。(
イギーVSペットショップのような感じ)。ただしその経路は不明。
※H-5地下鉄線路脇にデイパック(内訳:地図以外の基本支給品、残量のない輸血パック、ドネル・ケバブ@3部、ポラロイドカメラ@4部)を放置しました。
※カーズの移動速度は徒歩以上全速力以下のスピードです。
※仮に死体から左腕を入手した際に輝彩滑刀が出来るかどうかは不明です。
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最終更新:2009年09月22日 13:57