『バトル・ロワイヤル』会場地下ーーーそこにはりめぐらされたトンネル内部を、一本の列車が疾走している。
永遠に続くかと思われるようなトンネルの暗闇を引き裂き、軽やかな金属音を立てて電車は駅に到着した。

『---サンタ・ルチア駅、サンタ・ルチア駅です~。お降りの際は足元に注意してお忘れ物のないように……』

無機質な音声が響き渡るなか、三つの人影がホームに降り立った。

「ちょッ……これ暗ッ!?つーか寒ッ!?」

人影の一つが大声をあげた。
そう、このサンタ・ルチア駅(地下鉄)非常灯の一つすら灯っていない真っ暗闇なのである、ついでに震えあがるほど寒い。
この状態は、つい先ほど川尻早人がヴァニラ・アイスと死闘を繰り広げたことが原因なのだが
大声を上げた人影ーーー音石明にそのような事がわかるはずもなかった。

「うるさいぞ、貴様。誰かがこの上に潜んでいたらどうする。」

自分のスタンドで、音石の口を塞ぎながら横に降り立ったディアボロが言う
彼が着ている、ペイズリー柄に編みあげられた網の様な服は、音石以上に露出が高かったが
体を寒さで震え上がらせている様子はない。これが帝王の貫録というものなのだろうか、………ちょっと違う気もする。

「ディアボロくん、ワシのスタンドなら調べられるぞい」

ディアボロに肩をかしてもらっていたジョセフが言う、カーズによって傷つけられた目と鼻はまだ回復していないようだ
ジョセフはその場にしゃがみこむと地面に手を押し付け、炎症を起こしている瞳を閉じた。
その動きに答えるように、ジョセフの腕から紫色の茨が出現する

「『隠者の紫』!この上に生物がいるか調べろ!」

『隠者の紫』はザワリとその体をゆらめかせると、壁をつたって蔦を伸ばしてゆく

「どうだ?ジョセフ」

「ふむ・・・、階段の上で待ち伏せ。とかは、なさそうじゃのう」

ディアボロは「そうか」とうなずくと、いまだ口をふさがれたままジタバタしている音石の方を見る
その視線に気づいた音石は、蛇に睨まれた蛙のようにビクッと動きを止める

(こッ・・・怖えーーーーよ!!とりあえず俺の正体をばらさないでくれるとは約束してくれたけど・・・
 お願いだから俺を危険にさらしたりしないでくれよオオオオオオオ!たのむぜ!!)

音石が期待を込めた目でディアボロの方を見つめなおすと
向こうもその視線の意味を悟ったのか、こちらに向かってうなずく。
音石がそれにほっとしたのもつかの間

「じゃあ、こいつを斥候としてこの上に行かせるか」

(ちょっとオオオオーーーーーッ!?)

全然、察していなかった。現実は非情である。
再びジダバタし始めた音石を見やりながらディアボロは冷静に言う

「なにか言いたいことがありそうだから一つ言っておく、俺は手負いのジョセフを守りながら移動しなければならない
 それと俺はあまり自分の手の内は知られたくないのだが、これだけは言っておく。
 俺のスタンドは近距離タイプだ。
 俺が斥候に向かうより、遠距離まで移動できるお前のスタンドの方が向いている。
 俺達が今一番にすべきことは、ジョセフが回復するまでの時間を確保できる場所を見つけることだ。
 ここでゆっくりしていれば、あのカーズとかいう男も追いかけてくるだろう
 ぼやぼやしている暇なんて俺達にはない。わかったか?」

よどみなく話し終えると、ディアボロはジョセフに向かってこれでいいか、と尋ねる

「ああ、ワシはそれでかまわんよ」

答えるジョセフの声には覇気が無い、笑ってはいるが、無理をしているのがバレバレだ
妻に子供に友人に師の訃報は彼の心に相当なダメージを負わせたようだ。
普通の人間ならばこの様子に同情し、涙の一つでも浮かべるだろうが
あいにくここにいるのはビビリのヘタレと、悪魔の名を持つ帝王だけであった。

「それと後もう一つ」

ディアボロがこちらに振り向く

「なッ・・・なんでしょうカ?」

まだ何かあるのかと、音石の声はおもわず声が裏返ってしまった
その様子に頓着することなく帝王は言う

「逃げようとする素振りを少しでも見せてみろ・・・・・・・・・・・・・・・ちぎるぞ」

(どこをッ!?)

とは怖くて聞けなかった、指とかじゃなくて股間に付いてるアレだったたらひどすぎる。
音石は頭をガクガクと縦に振ることで肯定の意を示した。

*        *


おばけ屋敷もダッシュで逃げ出す大惨状。

非常灯から非常灯へと『レッド・ホット・チリペッパー』を移動させる音石の頭をそのフレーズがよぎる。
もっとも本当のおばけ屋敷と違うのは、目に飛び込んでくる血の手形は血糊ではなく本物だし
転がってるのは人形ではなく、死体である。ついでに構内に漂う死臭もおばけ屋敷では体験出来ないものである

(怖ぇーーよ!メチャ怖ぇーーーーーーーーーーよッ!!)

思わず涙目になる音石の傍に『キング・クリムゾン』が出現する

「何かわかったか」

「うおッ!?いきなり背後に立つなよ!
 心臓に悪ッ・・・いや何でもないですその手を降ろして下さい千切らないデ」

荒れた息をととのえ、音石は報告する

「と・・・とりあえず、構内に人はいないぜ。廊下に一つ、北側出口の方の花の中に子供の死体が二つある
 停電してたのは、ここのブレーカーが誰かさんに電圧掛けまくられたせいで、落ちてたみたいだ・・・です」

「花の中、だと?」

問い返してきたディアボロに音石はうなずくと続ける

「ああ、誰かは知らねえが子供の死体の周りに花を置いてったみてぇなんだ。手も組まされてたし。
 後、その子供の死体の傍にデイパックが三つ置いてあった」

「デイパックが三つ・・・?どういうことだ、二つの死体ならバックも二つのはずだが。
 よし、ジョセフが回復しだいそれを回収する。お前は引き続き構内の探索を行え、外には出るなよ。
 ちょっとでも怪しいと思ったら、すぐ俺のいるトイレまで戻って来い。わかったな?」

音石が頷くのを確認すると、ディアボロは元来た道を引き返していった
ジョセフが目を洗う場所を見つけたとはいえ、手負いの人間を一人残しているのは不安なのだろう
もっとも、その不安はジョセフの体を気遣ったものではなく、自身の保身のためなのだが。

音石はディアボロが自分の目が届かない距離まで去ったのを確認すると、大きく息を吐いた。
きびきびと仕切ってくれるのは良いのだが、あの魚の死んだような眼は怖い。
人なんてダース単位で殺してそうな目だ。音石はぶるっと体を震わせた

(あいつに付いてゆくのも怖い、かといって逃げれるとも思えない。だったら、いっそのこと殺すか?)

一端はステルスマーダーになろうと決めた身でもある
音石はちらりと『レッド・ホット・チリペッパー』を見る、体色はそろそろ黄色になろうかという所だった。
黄色になるまで回復できればディアボロとも対等に渡り合えるだろうか
天井の非常灯の電力だけでは足りないだろう、ディアボロからはやめろと言われたが
やはり外に出るしか電力を供給するしかない。

(グダグダ悩んでてもしょうがねぇ、俺の『レッド・ホット・チリペッパー』は最強なんだ!やってやるぜ!!)

『レッド・ホット・チリペッパー』もその意思をくみ取ったのかこちらに向かって来る。
よしッ、と気合を入れると音石は出口に向かって歩き始めた

(でも、やっぱ怖いからスタンドだけ外に出そう……)

音石明19歳。ビビリの彼のマーダー歴はまだ始まったばかりである。

*      *


えらくない、ぜぇ~んぜんえらくない。

俺はバイク(ハーレーだかベスパだかは知らねぇぜ?俺はバイクにくわしくないんだ)を走らせながら一人ごこちる
いくら進んでも見えてくるのは木ばかりで、追いかけていたはずの女の姿は見あたらない。


どう考えても見失っています、本当にありがとうございました。


数時間前に、あの女を探すのに役に立つものはないかとバックをあさったら
地面に落ちた紙の中からいきなりバイクが飛び出してきやがったんだ、携帯電話もこんな風に入ってたのかねぇ~?
あんとき、俺はまだ運に見放されていないと思ったんだがねぇ~現実は非情ってやつか。ちくしょう。

俺は木の影にバイクを止め、当たりを見回した。どうやら森を抜けきったらしい。
目線の先には駅らしき建造物と線路が見える、俺は鉄塔からずっと南下してきたはずだから
ここは、H-3「サンタ・ルチア駅」か?ずいぶんと遠くまできちまったもんだぜぇ~

ん?なんか今電灯のあたりに何かいなかったか~?あれは……スタンド?
動きからして電灯から電気をねこばばしようって根胆かぁ~?わざわざえらいねぇ~
どうやら入口に立ってる髪がウザイ男が本体らしいな、俺の姿には気がついていないらしい

こっちは女見失ってイライラしてんだ、お前には悪いが俺のストレス発散につきあってもらうぜぇ~
ミスタとエリナの時のようなヘマはしねぇからよぅ~、覚悟しろよ~?


アレッシーの影はぐにゃりと歪むとその姿を音石に向かって伸ばしはじめた

*       *


「よし、こいこいこいこいこいこいこい・・・キターーーーーーーーーー!!」

音石は思わずガッツポーズをしてしまった、この「バトルロワイヤル」に放り込まれてからはや7時間。
ようやく『レッド・ホット・チリペッパー』は本来の姿を取り戻したのであった
ひさしぶりに黄色に輝く自分のスタンドを見ると感慨深いものがある
あ、涙出てきた。

「お喜びの所わざわざ悪いねぇ~」

「誰だ!?」

いきなり話しかけられて音石は飛び上がった、視線の先にはニヤニヤ笑いを浮かべた小男が立っていた
音石は警戒して『レッド・ホット・チリペッパー』を小男の近くの電灯に潜むように指示を飛ばす。
この距離ならば確実に電線の中に引きずり込めるだろう
だが、その事を知ってか知らずか小男は話をやめない

「私……自分よりも弱い奴をを見ると…………
 なんとういか……その…………フフ、いじめてストレスを発散させたくなるんですよねぇ~
 んでもって、ある女を追いかけてたんですけど見失っちまいましてねぇ~今すっごくイライラしてるんですよぉ
 これ以上イライラを我慢すると俺の精神衛生上とても悪いんで、あなたに付き合っていただきたいんですよぉ~」

「はぁ!?ふざけんな、なんで俺がお前のそんなアホな趣味に付き合わなきゃいけないんだ
 ってゆーか、お前は俺が弱いとでも言いたいのかよ、えぇ!?オイ!
 『レッド・ホット・チリペッパー』めんどくせぇからコイツを電線に引きずり込め!!」

そう叫びながら人差し指を小男に突きつける
いつもなら、指示を飛ばした時点で勝負はついているのだが。

「……なんで出てこない!?もう一度!『レッド・ホット・チリペッパー』!」

もう一度スタンドを召喚しようとして、音石明は自身の異変に気づいた。

体型が、子供になっている。
相手を指したままの己の手は、いつもの半分くらいのサイズになってしまっていた

(こんな手じゃギターの弦を抑えることができねーじゃねぇか!大変なのはそっちじゃないだろ俺!!
 なんか知らない内に、こいつのスタンド攻撃をくらっちまってたのか
 ちくしょう、スタンドさえ使えりゃこんな男ボッコボコに出来んのによー!
 この状況じゃ戦況は不利だっ!
 38計逃げるにしかずってやつで、いったんあいつらのいるトイレまで引き返す!)

音石はきびすを返すと、ディアボロ達の方へと走り出す
小さな子供の体格では自分の服がブカブカしすぎていて、走りにくいことこの上ない

「うわっ!?」

自分の喉から、まだ変声期を迎えていない声が飛び出したことにも驚いたが
それよりも何も無いところから、足に殴られたような衝撃が走ったことのほうが重要だった
足に走る激痛に、子供の体格の音石はあっけなく転んでしまう。

足元を見れば自分の影の他に、棒を持った土偶のような影が目に映る。

「ミスタとエリナの時失敗したのはよぉ~近づき過ぎたからなんだよなぁ~
 こうやって離れた所からいじめれば大丈夫ってわけだぁ、ん~俺ってえらいねぇ~~~」

アレッシーの持つ木の棒が何もない空間に振り下ろされた
その動きと同じように土偶のような影が音石の影に向かって棒を振り下ろす
どうやらアレッシーの影が自分の影に攻撃した箇所がダメージを受けるようだ

「ギャッ!?」

音石は痛みに体を歪めた、もう体は5歳児ほどの姿になってしまっている
子供の姿では、体を縮めて与えられる痛みに耐えるしか方法がなかった

(もうだめだ……俺ここで死んじゃうんだ……!
 死ぬ前に……もう一度ギターを……引きたかった……な……)

前にも一度同じことを思った気がしたが、思考も体の変化に引きずられているのか、上手く考えがまとまらない
再度振り上げられた棒に音石が観念して、ぎゅっと目をつぶったその時

「『隠者の紫』!」

┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨

紫色の茨が傷ついた音石の体を包み込むと、ジョセフ達の方へと引き寄せ、ディアボロが両手でキャッチする
小さな体を受け止めたディアボロは、あることに気づき目を見開いた

「この服……信じられんが、この少年は俺達と共に行動していた男のようだぞ。ジョセフ」

「フム、するとこの男のスタンドは『影で触れた相手を子供化する程度の能力』といったところかのぉ
 そういえば、どこかでそんな話を聞いた気が……」

傷ついた音石を挟み冷静に推理をくりひろげる男達に対し、音石を攻撃していた男はジョセフの顔を見ると驚愕する

「ゲェッ!?貴様はジョセフ・ジョースターッ!?」

音石の怪我の具合を見ていたディアボロはひょいとジョセフの方に顔を向けて尋ねる

「知り合いか?」

「いや……、でもワシの顔を知っとるスタンド使い……相手を子供にする能力…………
 もしかして君は、承太郎とポルナレフが戦ったという『アレッシー』かね?」

「わかってんなら話は早ぇ、手前ぇの孫にブッ飛ばされたこの恨みをここではらしてやるぜぇ~~~~ッ!!」

その宣言と共にアレッシーの影が大きく歪んだかと思うと、こちらに向かってその形を伸ばしてくる

「ディアボロくん、君はその子を連れて奥まで戻ってくれ。ここはワシが引き受ける」

「無茶だジョセフ、あんたはまだ目が治りきっていないんだぞ。
 それに今のお前は、身内の死で冷静な判断がしづらくなっている。
 今のあんたじゃ死に向かって突き進むようなものだ、俺がこいつの相手をする。」

「…………すまない、ディアボロ君」

「礼はいい、さっさと行ってくれ」

ジョセフはアレッシーに向かって拳をかまえるディアボロに背を向けると、
ぐったりとした音石を担ぎあげ駅の奥に向かって走り出す。

「させるかよォ~~~ッ!『セト神』こいつら全員子供に変えろッ!!」

アレッシーは『セト神』を操ると、ディアボロの方へと路線を変更する
この距離なら確実に取れる、目の前の男から一つずつつぶしてゆける、はずだった。

「!?」

目の前からディアボロの姿が消えている。
どこに行ったと辺りを見回そうとするアレッシーの首を何者かが押さえつける

(『キング・クリムゾン』、俺以外の時間を5秒だけすっとばした
 俺がお前の背後に回り込んだという経過は無くなり、俺がお前の背後に立ったという結果だけが残る)

ディアボロはアレッシーの首をしめあげながら話しかける、

「少しでも妙な動きをしてみろ、命はないと思え」

「ッ!?な何ッ!?お前、瞬間移動するスタンドか!?」

「答える必要はない、それに質問するのは俺の方だ」

だが、自分のペースで話を進めようとするディアボロを遮るようにアレッシーはニヤッと笑う

「いひひぃ~~~?そんな事言ってていいのかなぁ~~~~~ッ!?」

その声と共にぐぉっという、ジョセフの悲鳴が奥から聞こえてくる。
下を見れば自分の方に向かっていたはずの影から枝分かれするように、ジョセフの方へと影が伸びている
ディアボロに向かって出した影はダミーで、ジョセフの方にさし向けたのが本命だったのだ

アレッシーも、ディアボロがジョセフの声に気を取られた隙に『キング・クリムゾン』の腕から脱出している
ディアボロも再び『キング・クリムゾン』を発動させ、時を飛ばそうとするが
一度「時飛ばし」を行ってから、まだ時間がたってないため発動できない。
『キング・クリムゾン』の腕は空を切ったのみに終わった。

ディアボロはチッと舌うちをする、『キング・クリムゾン』の能力を知られないためにジョセフを引き離したのに、これでは逆効果だ
『ブラックサバス』のような影に潜んで移動するスタンドを、なまじ知っていたがために、
このスタンドも似たようなものだろう、と知らず知らずの内に高をくくって油断していた、自分の完全なミスである。
ディアボロは額に意識を集中する、『キング・クリムゾン』が再発動できる時間が始まったのだ

(だが、あせることは無い。いつも通り『エピタフ』で未来を見て
 俺に都合の悪い未来だけを『キング・クリムゾン』で消し飛ばせ……ッ!?)

ディアボロは目を見開いた。
『エピタフ』に映る映像にディアボロは愕然とする
かつて栄光の座を欲しいままにしていた頃は、何千回いや何万回と見ていた姿だった。
自分が唯一心を許した参謀、可愛いい我が半身

(……ドッピオッ!?いや違う、あれはこいつのスタンドで子供化した俺の未来の姿だ
 この映像が実際に起こってしまう前に『キング・クリムゾン』を発動しないと!)

さてここで一つ疑問を皆さんに投げかけてみよう、「スタンドは原則、一人一つまで」
だがここにいるディアボロは『エピタフ』と『キング・クリムゾン』二つの能力を扱うことができる、
それは一体どうしてなのか?

答えは簡単である。
『エピタフ』と『キング・クリムゾン』が同一のスタンドだからだ

『エピタフ』が拳を構える動作、『キング・クリムゾン』が拳をくりだす動作と書けば伝わりやすいだろうか
だが、この状況においてディアボロの拳は止まったままである、
ひさしぶりに見たドッピオの姿は、
『キング・クリムゾン』を発動するのにタイムラグを生じさせるほどの衝撃を帝王に与えたのだった

そう拳はそのままでは何も出来ない、振り下ろさねば意味を持たないのだからーーー

「ぐあッ!?」

次の瞬間、エピタフで見た姿と寸分たがわぬ形で横たわるディアボロがいた。
『キング・クリムゾン』に呼びかけても、内から消えてしまったように反応が無い
子供化は完全に自分の身におこっていしまったようだ

「ん~~~~、やっぱりというかその格好はそっちの姿の方が可愛いねぇ~~~」

大人のディアボロが着ていると、ただの痛いおっさんで終わるこの網のような服も
少年の姿の彼が着ると何だか、いかがわしい物に見えてくるのは何故だろう、露出度のせいか。
下卑た笑みを浮かべ舌舐めづりをするアレッシーに、先ほどとは別の意味で身の危険を感じてディアボロは後ずさる
いくら帝王とて人間である、この体中を舐めまわされるような視線に、生理的な嫌悪感で涙目になるのは仕方のないことであろう

(また俺は死ぬ・・・のか?)

今回は死ぬまでの時間がいつもより長かった、それだけのことだったのだ。
この地獄から抜け出せると思わせておいて、ドン底まで落とし込む。今回はそういう趣向だったのだろう
そう考えると体中から力が抜けてゆく

何回も殺されいれば、これから一体どんな死に方をするのか大体想像がついてくる。
どうせ何をやっても死ぬのだ、諦めという水たまりはディアボロの心を毒のようにじんわりと蝕んでゆく

(嬲られて、殺される。か・・・『今回』は長い死に方ってわけか。『次』はもっと楽な死に方だといいーー)

その時だった。

「波紋疾走!!」

    メ メ タ ァ!

独特の効果音と共に、結構分厚いはずの駅の壁がクッキーでも砕くように吹き飛ぶ
もうもうと立ち込める土煙の中、男の人影が浮かびあがった。
子供サイズの人影ではない、まぎれもなく大人の影だ。


「何ィ~~!?ジョセフ・ジョースター!?手前ぇ俺の攻撃をくらったはずだぞ~~!?」

一体どうしてなのか
あの時確実に『セト神』をくらっていたはずなのにジョセフの姿が変わらないのは何故か?
アレッシーはあることに、はっと気づき大声を上げた。

「しまった……ジジィだから一回影に触ったくらいじゃ餓鬼になんなかったのかァ~~~~~!?」

つまり、そういうことであった
今のジョセフの外見は白髪ではなく黒々とした髪をたくわえた筋骨逞しい波紋戦士の姿である。
限界まで鍛え抜かれたギリシャ彫刻を思わせる体からは、ディアボロでさえたじろぐほどのビリビリとした殺気をはなっている
たびかさなる身内の死に、先ほどの攻撃にこの状況。温和な彼でもさすがにプッツンしたという所か

20代ほどに若返ったジョセフと10代まで若返ったディアボロ、3歳児くらいの音石
そしてこの事態の元凶であるアレッシーが対峙する
ジョセフには二つの選択肢がある、スタンドが使えない今、波紋のみでアレッシーに挑むのか
それともディアボロの保護を優先し、体制を立て直すのか
一方のアレッシーは距離を取って様子をうかがうのか、それとも勢いにまかせて攻撃をしかけるのか
彼らの選択とは?

「逃げるんだよォ~~~~~~ッ!!」

アレッシーは、あっけにとられるジョセフとディアボロを尻目に森に向かって全力疾走する
えりまきトカゲも「まいりました」と頭をさげるような見事な逃げっぷりであった
一呼吸おいてドルンドルンとエンジンを噴かすような音が聞こえてくる、どうやら逃走用にバイクを隠していたらしい

「HolyShit!(なんてこった)あいつ足を持っていやがったのか、早く追いかけないと……ッ!」

森に向かって足を踏み出したジョセフだったが、3歩も歩かない内に地面に崩れ落ちる
劇薬とアレッシーによる怪我は三半規管にまでダメージを与えているようだ
地面に体がつかないようにジョセフの体を支えたディアボロは
体が若返った事により精神まで影響を受けているのか、若者のようにいきりたつジョセフをなだめる

「待てジョセフこっちは丸腰だ、今から走ってもあいつに追いつけるとは限らない
 お前と同行者の男の怪我もある、しばらくはこの駅にとどまって籠城したほうがいい」

「だが…………ウッ!糞ったれ、また目が痛みだしてきやがった……」

ジョセフの肩を支え直すとディアボロは構内へと歩き始める、10代まで縮んでしまった自分の身長では
2メートル近いジョセフの体を支えるには少しキツイものがある。

(今のスタンドが使えない状況で無理に追いかけるよりも
 あの男が自滅するこで俺達のスタンド効果が解けるのを待ったほうがいい、
 あの様子なら誰彼かまわず襲いかかりそうだしな
 ジョセフも手負いとは言え妙な技は使えるようだし
 無理に危険な場所に身を投じるより、ここに籠城したほうが危機は少ない)

確かに、ディアボロの読みどおり
今のアレッシーには、体になんらかの異常があると「セト神」の効果が消える制限がかかっている
ここにとどまるという彼の判断は適切(ベター)だと言えるだろう、しかし

「………………。」

いまだこの『バトル・ロワイヤル』には60人ちかい参加者が残っているのだ
今後のことを考えると最良(ベスト)の選択であるとはいえないかもしれない

ディアボロは駅のガラスに映る自分の顔を見つめる。
そばかすのういた顔、柔らかな瞳、柔和と呼ぶよりは臆病そうな顔立ち

「ドッピオ……。」

「うー?」

いつの間にかトコトコと傍にやってきた音石が、自分が呼ばれたのかとこちらの顔を見上げてきた
お前のことじゃないよ、と頭をなでてやると安心したのか音石は甘えるようにジーンズにしがみついてきた
そうやってると、まぎれもなく3歳児である。
音石の場合、子供に戻されすぎてスタンドどころか記憶まで失っているのかもしれない

(ドッピオ、今お前が俺の中にいてくれたら、この選択に自信が持てるのか?
 俺が絶頂に君臨していた頃は、何があっても二人で乗り越えてきた
 「『光と影』『表と裏』『二重の人格』その秘密があるかぎり俺の栄華は廃れる事は無い」
 サルディニアで会った占い師が言ったとうりになった
 「私」はお前がいない限り絶頂に返り咲くことは出来ないという事なのか、ドッピオ?、
 今の俺はこの選択で栄光をつかむよりも、お前が傍にいてくれることのほうがよっぽど嬉しいのだがな……)

朝の光に照らし出される構内に3人の男達が佇むーーーーーー実際には、気絶中の川尻早人を入れて4人なのだが。
おのおのの思惑をふくんだ彼らの顔を見つめるように、ガラスに映ったドッピオの顔が少しだけ微笑んだような気がした

【H-3サンタ・ルチア南側駅前広場/1日目 朝7時】

【チキン三羽~たまごクラブ、ひよこクラブ、こっこクラブ~】
【ディアボロ】
[時間軸]:レクイエムジョルノに殺された後
[状態]:外見が15歳(ドッピオ似)。目が死んでる。強い恐怖 。
    セト神の効果によりスタンドが使えなくなってます
[装備]:なし
[道具]:支給品一式
[思考・状況]
基本行動方針:とにかく生き残り平穏な生活を送る。
0. とりあえず、サンタルチア駅で籠城する、ひきこもり乙とか言わないように
1.ジョルノには絶対殺されたくない。普通に死ねるならそれでもいいや。苦しまないように殺して欲しい。
2.自分の顔と過去の二つを知っている人物は始末する。ボロは絶対に出さない。
3.とりあえずはジョセフに協力。でもジョセフのへたれ具合によって対応を変える。捨て駒も視野に。
4.チョコラータ、電車内の謎の攻撃、謎の男(カーズ)怖いよ、キモイよ……
5.ジョルノや暗殺チーム、チョコラータとジョセフ達を上手く敵対させたい。ぼろが出そうだから怖いけど……
6. 早人の傍にあるデイパックを回収したい

[備考]
※音石明の本名とスタンドを知りましたが、ジョセフに話すつもりはありません。それを取引に協力させたようです。

※セト神のせいで『キング・クリムゾン』と『エピタフ』が使えなくなっています

【ジョセフ・ジョースター】
[時間軸]:DIO討伐後、日本に帰る飛行機の中。
[状態]:外見が2部終了時。胸に浅い傷(止血済) 目と鼻につらい炎症(失明はしない程度)。深い悲しみ
[装備]:なし
[道具]:支給品一式
[思考・状況] 深い悲しみ。立ち直れそうで立ち直れない
基本行動方針:必ず生きて脱出する。打倒アラキ!
0.怪我がなおるまで駅に籠城する
1.承太郎、花京院辺りと合流して自分の推測について話し合いたい。
2.ジョージ、ジョナサン、ツェペリ、エリナ、スピードワゴン、徐倫は見つけ次第保護する。
3.殺し合いに乗っていない参加者達も護る。或いは協力。機械に詳しい人間がいたら首輪の内部構造を依頼。
4.ディオや柱の男達は見逃せない。偽者の東方仗助を警戒?(攻撃したのは彼?ディアボロ君に任せるか)。
5.ディアボロに若干の信頼。でも自殺をしそうで怖い。



[備考]
※参加者達は時代を超えて集められたのでは?と推測しています(ディアボロにはまだ話していません)
※首輪を『隠者の紫』で調べましたが機械には疎く詳しい事がわかりません。分かった事といえば隙間がまったく無い事くらい。
※1で挙げた面子はジョセフが聡明と判断した面子なだけで別にポルナレフが信用できないというわけではありません。
※波紋の呼吸を絶えず行っています。その影響である程度の運動なら息ひとつ乱れません。
 ディ・ス・コの薬品の負傷はいずれ治るようです。いつごろかはわかりません。

※セト神のせいで『隠者の紫』が使えなくなっています、波紋は問題なく使えます


【音石明】
[時間軸]:チリ・ペッパーが海に落ちた直後
[スタンド]:レッド・ホット・チリペッパー(黄色です)
[状態]:幼児化(3歳程度)、体中に打撲の跡(中)
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、不明支給品 ×1
[思考・状況]基本行動方針:優勝狙い

0.うー?
↑現在幼児化しているため、このくらいのことしか考えられません
幼児化が解除された場合の思考は下になります

1.とりあえずスタンドが黄色になって良かった……!
2. とりあえず仲間(ディアボロ)ができたのは良かった。でも状況変わってない……。
3.もしできたら様子を見てディアボロ達をを殺……せるのかな……この俺に……。
4.サンタナ怖いよサンタナ
5.電線が所々繋がっていないのに電気が流れているこの町は何なんだッ!? あやしすぎて怖えー!
[備考]
※バトルロワイアルの会場には電気は通っているようです。
しかし様々な時代の土地が無理やり合体しているために、電線がつながっていなかったりと不思議な状態になっているようです。
スタンドが電線に潜ったら、どうなるかわかりません。(音石は電線から放電された電気を吸収しただけです)
※ミセス・ロビンスンをスタンド使いだと思っています

※セト神のせいで『レッド・ホット・チリペッパー』が使えなくなってます

【アレッシー】
[スタンド]:『セト神』
[時間軸]:はるかかなたにフッ飛ばされて再起不能した後
[状態]:顔面に殴られた痕(ミスタからとエリナからの分)、背中に刺された傷(浅い)、地面を転がり蹴られたのでドロドロ、
片腕に少女エリナの歯型、足のつま先に痛み、顔中鼻血の跡、貧血気味、
[装備]:メローネのバイク
[道具]:カップラーメン(アレッシーは毒入りだと勘違いしています)、携帯電話、メローネのバイク、支給品一式。
[思考・状況] 基本行動方針:ゲームに乗るつもりは今のところないが、明らかに自分よりも弱い奴がいたら虐めてスカッとしたい              
1. とりあえずなんかヤバそうだから逃げる!
2.ダービーを抱えた女と合流……できたらいいなぁ、信頼を得て保護を受ける。 鉄塔近くの奴らとヘリは無視だ!
3.その後、携帯電話を使わせる。
4.でも本当はいじめまくりたくて仕方が無い。
5.上手く不意を突ける機会があればミスタとエリナとジョセフとディアボロと音石に報復する
[備考]
※セト神の持続力が弱体化しているようです。アレッシーが気絶しなくても、アレッシーに何らかの異常があれば子供化は解除されるようです。
※その制限に薄々気がつきはじめています、そのためやや警戒気味
 ちょっとでもヤバイと感じたら逃走するようです
※『名に棲む鬼』における鉄塔の戦いの一部を目撃しました。会話は聞き取れていません。
  ダービーが投下された瞬間を見逃し、最初に目にしたのはF・Fに抱えられた治療後の姿だったため彼がカビに感染していたことを知りません。
  また上空の戦いは見ておらず、プッチ神父とサーレーの姿もよく見えていませんでした。
※ジョルノのスタンド能力を『触れたものを一定時間固定する』能力、F・Fのスタンド能力を『治療が可能な』能力
 ディアボロのスタンド能力を『瞬間移動』する能力と認識しました。
  エシディシに関してはスタンド能力がどういったものであるかイマイチ確信を持てていません。
※ンドゥール、オインゴ、マライア、ダニエル・J・ダービー、ヴァニラ・アイスとはお互い面識がありますが、スタンド能力は把握していません。

※アレッシーが何処に逃げていったかは次の作者様におまかせします



※川尻早人は北側出口入口にて気絶したままです
※サンタルチア駅は引き続き停電しています、あと寒い。

支給品説明*


【メローネのバイク】(燃料十分)(5部出典)
読んで字の如く、暗殺チーム所属のメローネ私物のバイク、アレッシーへの初期支給品
原作ではベイビィ・フェイスに乗り逃げされたり、ジョルノに燃やされたりと色々とついていない
おい、メローネ。お前のバイク燃えてんぞ?


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104:イエスタディを聴きながら ジョセフ・ジョースター 131:今ここに生きる意味を(前編)
104:イエスタディを聴きながら ディアボロ 131:今ここに生きる意味を(前編)
104:イエスタディを聴きながら 音石明 131:今ここに生きる意味を(前編)
96:『ベスト』より『ベター』を アレッシー 131:今ここに生きる意味を(前編)

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最終更新:2009年09月23日 21:51