電車はゆくよどこまでも。線路はF-8で土に潜りガタンゴトン。
大きく曲がって西にガタン。穴の中を進んでゴトン。
「つ、つ、つ、次の駅で降りるですってー!?」
オーバーなアクションに
ディアボロは身体を浮かせる。
ジョセフは一瞬気を取られるも、すぐに車内にある路線図に視線を戻した。
2人はこの地下鉄が、
音石明にとって命の次に大事な電気のたまり場であることを知らない。
「いいか仗助君。この列車はF-8で地下に入り、I-4で地上に出るタイプ。この案内表からもわかる。
では……さっき通ったあのホームはなんじゃ。アナウンスは『G-6・食屍鬼街(オウガーストリート)駅』だったかのう?」
ジョセフは窓際にある路線図をバシィィーッと叩いた。
「次に降りるのは『H-5・ポンペイ遺跡駅』と書かれている。ワシらはここを調べる。
ワシは昔イタリアに行ったこともあるからの。ポンペイ遺跡のほうが親しみやすい」
「――前の駅を無視したのはそのためか? 最初にあったサンジョルジョ教会……その存在に」
言葉を遮るかのように手を挙げながら、ディアボロが広げた地図を出す。
ジョセフは地図に記されたサンジョルジョ・マジョーレ教会を指差した。
「ワシらが最初に会ったサンジョルジョは、確かイタリアの名所じゃあないかのう。
ツギハギに名所が書かれている地図の意味を知る上では、同じくイタリア名所のポンペイ遺跡がいい」
「そ、それくらいの調査だったら承太郎……さんも実行してるんじゃないッスか?」
「君は列車に乗らない限り、H-5に地下の駅があるとは考えんなかったじゃろう?
ワシらは最初の駅のホームでこの事実を知った。この列車に乗ったのはワシらが最初ではないか?」
落ち着いて答える大人の対応に、音石の足がすくむ。
せっかく手に入った電車を手放すわけにはいかなかった。
しかし一人になる恐怖もあった。
ジョセフ・ジョースターの探知をかいくぐった謎の攻撃。
直接攻撃を受けたジョセフが電車を降りようと考えるのは至極あたりまえのこと。
そして
東方仗助と偽っている身ならば、同伴して降りるのが筋。
「H-3のサンタ・ルチア駅から先にも地下の駅はある。どうかな。地下の駅は……地上に繋がっているとは考えられんか」
「わざわざ調査してどうする?駅に誰かが待ち伏せしている危険性が大きいだろう」
「ポンペイ遺跡に地下鉄の入り口を探そうとする奴はいまいて。仮に見つけたとしても普通ならば!
疑うじゃろう? スタンド攻撃の可能性を。有り得ない場所に有り得ない物があるゆえに。
それに危険に晒されるのは駅で待つ側も一緒じゃろう。真っ暗闇の線路以外に逃げ場がない。
自分に相当の自信をタップリ持つ奴か、身のほど知らずの阿呆でなければ近づかん。
『食屍鬼街(オウガーストリート)駅』か『ポンペイ遺跡駅』の入り口を見つけても、用心深いやつは入ってこないじゃろう」
「……それを地下鉄の入り口と考えていたならな」
「ディアボロ君、ビビッてもしょうがない。電車にこのまま乗っていても、トラブルは起こるぞ。ワシの傷のように」
流れるように作戦会議を立てる2人に、音石の頭がパーンとはじけそうになる。
ジョセフのスタンドは想像していたほど脅威ではなかったが、探知能力はやはり魅力的だ(一抹の不安はあるが)。
生存を最優先するのであれば、彼らと別行動をとるのも気が乗らなかった。
『――まもなく~ポンペイ遺跡~ポンペイ遺跡~。お降りの際は足元に注意してください……』
時計の針がいよいよ朝の6時を指そうとした時、列車が駅に到着する。
列車内から見える駅のホームはやや明るいが、電気が充分に通っているのかどうか判断しづらい。
「そういえばもうすぐ第一回目の放送じゃな。放送か?流れるのか? こんな地下にも、という意味じゃが」
ジョセフの何気ない一言は、列車の騒音に溶け込んでいた。
いや――……溶け込んでいなかったとしても、耳に入っていただろうか。
自分の事で頭が一杯になっていた音石明と、『彼』を見ていたディアボロには。
* *
『スゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~』
ジョセフ・ジョースター達が乗っている電車はATC、いわゆる自動運転になっている。
数分間の停車、出発は完璧にコントロールされており、停車位置のブレも制御されている。
遮蔽物に衝突しても、本体が破壊されない限り進み続けるだろう。
『ウウゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~』
そんな列車の側面に刃を走らせる。レコードの上を滑らかに走る蓄音機の針のように。
例えば、街で沢山の女を囲う、ジゴロが乗っているピカピカのスポーツカーの扉に、十円玉を走らせるように。
着かない。傷が。一本のなだらかな直線が走ることはない。普通は。丈夫だから。
『ウウゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~』
傷がつくとしたら、刃を変えてみてはどうだろうか。持ち手を強靭にしてみてはどうか。
チェーンソーのように一秒間で何千回と回転し、その速さゆえに光輝いてみえるような刃。
ロードローラーくらいなら片手で軽く持ち上げてしまう化け物。
この組み合わせならおそらく可能だろう。事実、可能だったのだ。
『~~……ッッパァァァァァ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~』
柱の男・
カーズは、己の腕に生える巨大な刃で電車を横一文字にかっサバいたのだ。
輝彩滑刀(きさいかっとう)――光り輝くカーズの刀。
駅のホームの端に立っていたカーズは、ひょこっと刃を出して待っていた。
列車が勝手に彼の刃に構わず猛進するので、カーズはそこから一歩も動いていない。
「線路を歩いていたらこの休憩所にたどり着いた。そこへ大型トロッコが来ただけのこと。
強度はいただけないが、形は崩れずこのまま状態を保っている。耐久力はあるようだな」
トロッコよりは遥かに進化した地下鉄に、カーズの好奇心はくすぐられたようだ。
車両の壁に耳を当てて、ゆっくり物音を拾う。彼の耳は家の中にいる人の数もわかるほど精妙なのだ。
「『隠者の紫』AND 『波紋』ッ!! 」
ゆえにカーズは列車から素早く離れようとした。聞こえる波長は、彼が最も憎むものだったからだ。
だがカーズの左腕は、車内から伸びる紫色のイバラに絡め取られ、そのまま車内に引っ張られてしまった。
そしてイバラから流される電流のような痺れ。忘れもしない太陽のエネルギー。
「MU……MUOOOOOOOOO!! なんのこれしきィ! これしきィ!! 」
迷わず左腕を右手で切り落とし、カーズは受身をとって横転する。
ちぎれた左腕はブクブクと沸騰しながら骨を残して蒸発してしまった。
「助かったよディアボロ君。君がいなかったら、ワシらはうめき声を立てる間もなく死んでおったわ。
壁と一緒に首をスッパリ切られておった。反対の座席にいた大人2人をどうやって助けたのかは、あえて聞くまい」
「俺はお前達を助けた。お前は俺にカリが1つできた。それだけだ。……そしてもう1つ。お前はカリを作る」
「ワシは今のままでも充分感謝しておるがッ! ……そこで腰を抜かしておるワシのドラ息子を頼む」
カーズは3人組の男たちの顔を知らなかった。
しかし彼らは――少なくとも1人はこちらに喧嘩を吹っかけてきた。
電車の恨み……ではない。カーズの左腕を溶かせる術はこの世でただ1つ。忌まわしきライバルの技術。
カーズ一派と古代から戦い続ける戦闘民族の必殺技、波紋。筋骨隆々な老人は波紋使いである。それは敵である。
「ジョセフ、コイツはお前の言う『自分に相当の自信タップリな奴』なのか? 」
「ああ。そして『用心深い』……最悪のケースじゃ」
* *
電車が停車して何分たったのか、ディアボロは時間を計るのを忘れていたことに気がついた。
(襲ってくるのならば容赦はしない……と気張り過ぎたな。このディアボロとしたことが)
電車の先頭付近の床に気絶している音石明を寝せ、ディアボロは運転席を覗く。
電車から駅へと逃げようとはしなかった。
大の男を担いで駅の構内を走り回るのは馬鹿馬鹿しいと思っていた。
どこにあるかわからない出口を探すよりは、ルートのわかっている地下鉄にいたほうがよいと考えていた。
(俺はあくまで列車内にいる謎を優先する。ジョセフに怪我を負わせた謎の解明)
しかしディアボロ、本音は恐怖していた。
恐怖。いつどこから死がやってくるのかわからない恐怖。
その恐怖が襲ってくる可能性を、彼は列車内という最小限の範囲に留めたのだ。
どうせ襲ってくるのならば、全貌のわからぬ食屍鬼街(オウガーストリート)駅よりは、狭い車両。
野原にいるネズミよりも袋のネズミのほうが、猫を噛み易いと理解していた。
(あのネアポリス駅とこの駅の停車時間は……同じ15分前後なのか? この駅の時刻表が知りたいな。
まあ規則正しく運行する電車など世界でもJAPANぐらいだが、いきなり動き出されるのも面倒だ)
チラリと駅の構内で戦っているジョセフを見やる。
抜き差しならない状況――まるで西部のガンマンの決闘のように。
少し小競り合いをしたかと思うと、しっかりと距離を取って互いを探り合っている。
ディアボロにわかるのは、彼らがお互いの手の内をわかっているということ。
少なくともジョセフはあの男を知っており、あの男も迷うことなく最初の標的をジョセフにした。
(……『聞』こえなかったのか。 ジョセフ・ジョースターは、放送を。それとも『聴』こうとしなかったのか)
ディアボロは支給されていた名簿にペンを走らせる。
キュ、と擦れた音を立てながらインクは名前を塗りつぶす。
現在時刻、朝の6時過ぎ。
第一回放送は既に終了していた。
ディアボロは、黙々と戦うジョセフ・ジョースターに少し同情した。
「東方仗助、なぜ貴様が生きている。始末されたはずだ……この世界の誰かに」
音石明は、首根っこをキング・クリムゾンに掴まれている。
血のめぐりが悪くなったせいで、顔面は蒼白になっていた。
「我がキング・クリムゾンに抵抗は無駄だ。逆らえばあの包帯男にお前を差し出す」
「ジョセフを、攻撃したのは、俺じゃ、な、い」
「それはさっき聞いた。俺が聞きたいのは――」
* *
「波紋使いッ! 俺のことを知っているなッ! 」
ジョセフ・ジョースターは妻を愛していた。
朝は傘でたたき起こされ、昼はキスの代わりにビンタを受け、夜はTボーンステーキを焦がされる。
お抱えのSP、運転手、娘に笑われながら過ごす平凡な日常を彼は30年以上続けた。
年を取らない波紋の呼吸も、妻のために止めた。妻は波紋を使えなかったから。
娘がトラブルに巻き込まれたら、海外だろうと飛んでいった。大事な一人娘だったから。
「そして時間稼ぎをしているな……フフ、図星だろう。あの乗り物が走り出すまでの時間をな。
仲間を逃がすために、このカーズの足止め役を貴様は引き受けたのだ」
ジョセフ・ジョースターは家族を愛していた。
厳しい祖母、毅然とした母親に尊敬の念を払うことを忘れていなかった。
彼女たちの血を受け継いでいることをジョセフは本気で誇りに思っていたし、喜んでいた。
だから若い頃にやっていた悪事、いわゆる黒歴史は今でもするべきじゃなかったと後悔していた。
彼女たちのような気高さをあのときの自分は履き違えていたからだ。
「……と、私が思っているとでも、思っているのか? ハハハ老いぼれめ。このカーズも舐められたものだ」
ジョセフ・ジョースターは仲間を愛していた。
年も国も境遇もまるで違う相手と、信頼という絆で共闘した。
付き合う時間の長短を越えて繋がった仲間たちのことを考えると、奮えが止まらない。
「貴様の後ろにある乗り物……金属で出来ている。その箱のようなフォルムに波紋を流したら……。
油溜まりに広がる火のように、一瞬で全体に行き渡るだろう。そんな物にッ!
このカーズがうっかり触れてしまったらッ! ど・う・な・る・か・なあ~~!? 」
大きく声を張り上げて列車に接近するカーズ。
「老いぼれジジイ……貴様は待っているのだよ。このカーズがムキになって、乗り物に乗ろうとするのをな。
あの乗り物に閉じ込められてしまったら、私は波紋が流れる袋に入れられたネズミだ」
カーズの懐から支給品のエニグマの紙が宙を舞って開く。
「そこで1つ思いついたぞッ! 私はこの容器をこの場で破壊してみようッ!
老いぼれ、お前はどこまで持ちこたえる事が出来るかなッ!? 」
カーズの両手にずらりと並んだ小瓶がドクロのマークを見せ付ける。
遠投選手のように身を捻らせて、放り投げられたそれ――『ディ・ス・コの劇薬×5』がジョセフの足下で爆ぜる。
「……隠者の紫ッ!」
強烈な突沸と異臭を放つ気体の化学反応。
ジョセフはその煽りを受けまいと、隠者の紫をロープ代わりにし、列車の上に登る。
カーズは知っていた。自分は波紋に弱いが、人間にも弱いものはあると。
柱の男にはなんでもないような薬品が、人間には中毒を起こすことがあるということを。
換気の悪い地下ならばひとたまりもない。
「フフフ……乗ったな。さぁ尻尾を巻いて逃げるがいい。私はあ・え・て・貴様らを逃がすのだ。
今殺す必要はないッ! 夜になれば堂々と殺せるのだからなああああああああああああッ!!」
しかしこのとき、カーズに電流が流れる。
「HAHAHAHAHAHA……はっ!? 」
そして――身体を大きく痙攣させた。
「UKAKAAKAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!」
数ある送電線の一本が切断され、カーズがぶちまけた薬品の溜まりに飛び込んで電流を流していた。
カーズは地下鉄の仕組みを知らなかった。
地下鉄は電力を地下道の天井にある送電線から受け取っていることを。地下鉄の車輪はゴムタイヤであることを。
ジョセフは地下鉄を知っていた。自分の経験と音石明を加味した知識を利用したのだ。
(そうじゃ。追いつかれようが追いつかれまいが、ワシらはここから脱出すればいいだけじゃよ。
どうせこの列車はいずれ地上に出る。カーズ、貴様は地上に出れん……最初からこちらが優位だったのじゃ)
ひょこっと列車の上から顔を出したジョセフが悠々とホームに飛び移る。
そして列車の中から車両全体に波紋を流し、外にいるカーズの悪あがきを予防する。
盛大な漏電とともにカーズの叫び声が構内に響き渡る。直接死には至らないとしても、足止めにはなっただろう。
事実カーズはホームの上で転げ回り、ジョセフの座席から見える場所で地面を舐めた。
「……だが薬品は少しキツい。目と鼻が痺れてたまらんわい。洗うための水が欲しいのお」
「お、の、れぇ……何故、私が負傷せねばならんのだァ……この程度の電気で……」
ジョセフの勝利を祝福するかのように、発車のベルが鳴り響く。
「お前は“貴様のような老いぼれに、このカーズが ”という」
「貴様のような老いぼれにこのカーズが……ハッ!」
「そしてこのやり取りから、“まさか貴様はジョセフ・ジョースターなのかッ!?”と思いつく」
「まさか貴様はジョセフ・ジョースターなのかッ!?……GUOOOOOOOOOOOOOOOO!」
ジョセフたちを乗せた車両は、ポンペイ遺跡の駅を後にした。
取り残された柱の男は、信じられない邂逅に、衝撃を受けていた。
【H-5 地下鉄・ポンペイ遺跡駅構内/1日目 午前】
【カーズ】
[時間軸]:リサリサとJOJOに
ワムウと自分との一騎打ちを望まれた直後
[能力]:柱の男、『輝彩滑刀の流法』
[状態]:全身に裂傷、左ヒジから左手にかけて損失、全身にダメージ(中)、疲労と頭痛と吐き気(中)、痺れ
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、輸血パック(残量0ml)、首輪、 不明支給品0~2(未確認)、
[思考・状況]基本行動方針:荒木を殺して力を奪う、スーパーエイジャを手に入れる
1.ジョセフ・ジョースターの姿に疑問。いずれ復讐をする。
2.首輪解析のためにたくさんのサンプルを集める。特に首の配線があるであろう、吸血鬼が一匹欲しい。
3.地下通路や首輪について考察し、荒木の目的を突き止める。
4.エイジャの赤石を手に入れる。
5.月が真上に上がった時(真夜中・
第四回放送時)にジョースター邸に赴く
6.荒木について情報を集める。
7.
エシディシ、
サンタナと合流する。
[備考]
※血を吸った際の回復力に制限がかけられています。
※ワムウと情報交換しました。
※カーズとワムウがマンホールに入った地点はH-7です。
※心臓にもなにか埋め込まれてるのではないかと考えています。
※地下鉄はある程度周りの下水道や空気供給官なとと繋がっているようです。(
イギーVSペットショップのような感じ)
『ディ・ス・コの劇薬×5』
SBRのディ・ス・コがジャイロ戦で使った薬品。危険物。
全て消費されました。J・ガイルのラス1の支給品でした。
* *
ガタンゴトンと列車は進む。大きくうねった地下線路。
列車はもうすぐサンタ・ルチアに到着する。
「ムッ!?」
「俺だ。ディアボロだ」
カーズを振り払ったジョセフをディアボロを尋ねたのは、大分たってからだった。
ジョセフは列車内で受けた謎の攻撃を警戒し、隠者の紫で周囲を警戒していた。
しかし目と鼻が薬品の炎症で正常に働かないので、彼はディアボロにも警戒してしまったのだ。
「すまんのうディアボロ君。目と鼻が利かないものでな。もうすぐ地上じゃ。
次のサンタ・ルチア駅についたら、顔を洗う時間をくれんかのう」
「……放送は、聞いたのか」
ディアボロは躊躇なく、ジョセフが放送をちゃんと聞いているかどうか事実確認をする。
ジョセフは返事をしなかった。つまり、放送を彼はしっかりと聞いていたのだ。
「ハッハッハ! すまんな。ワシとしたことが、してやられたわい!! 」
「まんまとな」
「ちょいとばかし、あの東方仗助にお灸を据えてやらんとな! あの若者は何者なんじゃ?」
「お前に話すことは何もない」
ディアボロの予想だにしない返答に、ジョセフの顔が曇る。
「言っただろう? お前は借りを作ったと。これがその“返し”だ。あの男は最低のゲスだが使い道はある。
……お前はあの男を追い払ったことで随分とご満悦のようだがな、ボケているぞ。
送電線をショートさせて地下鉄が走るとでも思っているのか? 安全装置が働くだろ常識的に考えて。
なんとか復旧したから良かったものの、正気じゃないぞ。それとも列車を捨てても勝算があったのか? 」
ディアボロは珍しく饒舌になっていたが、彼は彼なりに行動していた。
ジョセフに『最悪のケース』と言わしめる敵が現れたのだから、逃げるに越したことはないのだ。
だから彼は音石明がおそらく日本人(東方仗助と名乗るくらいなのだから)と推測し、地下鉄の操作を聞いたのだ。
首根っこを掴まれた音石は、恐怖に縛られながらも、列車のATCを解除しようと必死だった。
そんな時起きた、一時的な停電。ジョセフがカーズを電線に衝突させてショートさせたからだ。
「勝算があったのなら、今すぐ列車を降りてしまえ……お前がやっているのはそういうことだ」
音石はパニックになりレッド・ホット・チリ・ペッパーを発動。
強制的に列車の電気回路やコントロールシステムに無理やり電気を流し、列車を発車させたのだ。
切断された電線はチリ・ペッパーが再び結びなおしたことで、機能を正常に戻していた。
もちろんディアボロはこの事実をジョセフに話すつもりはない。
ディアボロは危険を嫌う。
いくら頼りになるとしても無茶をするジョセフより、恐怖に縛られれば忠実に動く音石のほうがマシであった。
「列車は……無事なのかのう? 」
「強がりはやめろと言ってるんだ。年寄りの冷や水だぞ。身内の生死がお前を弱くしている」
いつものワシじゃない――ジョセフの心は、やはり疲弊していた。
スージー、リサリサ、
ストレイツォ、アヴドゥル、東方仗助。
さぁ泣けと言われて泣くやつはいない。放送で伝えられる無機質な知らせに、実感は少ない。
ひょっとしたら嘘ではないか、と思いたくなるのが普通だ。直接見ていないのだから。
「ワシは強いままじゃよ」
ジョセフは力なく項垂れた。
「ただ……後悔はやってくる。この世界で敵と戦ったり、誰かと会話したり」
そこには歴戦の戦士の姿はなく、ただの老いぼれ爺だけが座り込んでいた。
「荒木を倒して元の世界に帰った後も同じじゃ。妻のコップを洗ったり、古い写真を見たり。
日記を見直したり……そんな時にふと、ワシは泣いてると思う。ワシは死ぬまでそれを続けるんじゃ」
ディアボロには、ジョセフが急に何歳も年を取ったようにみえた。
あっという間に色々な物を失った人間。ギャングの世界では飽きるほど見てきた姿。
ディアボロには身内を思う感情が理解できなかった。
恋はすれど、最終的に大事なのは自分自身だ。彼の失望感は人というよりは“栄光”や“利益”の損失からくる。
「娘がいると言っていたな。お前はどうしていた? この世界に娘も来ていたら……もし死んでいたら」
だからディアボロは実の娘、
トリッシュ・ウナがこの世界で死んだことに、何の憂いもなかった。
直接この手で始末したかったという悔いはあるものの、それ以上の思いはなかった。
同じ娘を持つ身として、ディアボロはジョセフに質問していた。彼を試すために。
(親しい者の死に直面して、今後どうするのか。それによっては……ジョセフ、お前を――)
ジョセフが返事をしないまま、列車はサンタ・ルチア駅に向かう。
【H-4 電車内/1日目 朝~午前】
【チキン三羽~子持ちのおっさんコンビと音楽家~】
【ディアボロ】
[時間軸]:レクイエムジョルノに殺された後
[状態]:健康。だけど目が死んでる。強い恐怖
[装備]:なし
[道具]:支給品一式
[思考・状況]
基本行動方針:とにかく生き残り平穏な生活を送る。
1.ジョルノには絶対殺されたくない。普通に死ねるならそれでもいいや。苦しまないように殺して欲しい。
2.自分の顔と過去の二つを知っている人物は始末する。ボロは絶対に出さない。
3.とりあえずはジョセフに協力。でもジョセフのへたれ具合によって対応を変える。捨て駒も視野に。
4.
チョコラータ、電車内の謎の攻撃、謎の男(カーズ)怖いよ、キモイよ……
5.ジョルノや暗殺チーム、チョコラータとジョセフ達を上手く敵対させたい。ぼろが出そうだから怖いけど……
[備考]
※音石明の本名とスタンドを知りましたが、ジョセフに話すつもりはありません。それを取引に協力させたようです。
【ジョセフ・ジョースター】
[時間軸]:DIO討伐後、日本に帰る飛行機の中。
[状態]:健康。胸に浅い傷(止血済) 目と鼻につらい炎症(失明はしない程度)。深い悲しみ
[装備]:なし
[道具]:支給品一式
[思考・状況]
基本行動方針:必ず生きて脱出する。打倒アラキ!
0.深い悲しみ。立ち直れそうで立ち直れない。
1.承太郎、花京院辺りと合流して自分の推測について話し合いたい。
2.ジョージ、ジョナサン、ツェペリ、エリナ、スピードワゴン、徐倫は見つけ次第保護する。
3.殺し合いに乗っていない参加者達も護る。或いは協力。機械に詳しい人間がいたら首輪の内部構造を依頼。
4.ディオや柱の男達は見逃せない。偽者の東方仗助を警戒?(攻撃したのは彼?ディアボロ君に任せるか)。
5.ディアボロにちょっと戸惑い。自殺をしそうで怖い。
[備考]
※参加者達は時代を超えて集められたのでは?と推測しています(ディアボロにはまだ話していません)
※首輪を『隠者の紫』で調べましたが機械には疎く詳しい事がわかりません。分かった事といえば隙間がまったく無い事くらい。
※1で挙げた面子はジョセフが聡明と判断した面子なだけで別にポルナレフが信用できないというわけではありません。
※波紋の呼吸を絶えず行っています。その影響である程度の運動なら息ひとつ乱れません。
ディ・ス・コの薬品の負傷はいずれ治るようです。いつごろかはわかりません。
* *
ディアボロたちから少し離れて。運転席に座る男が一人。
この男、幸運なのか不運なのか。
「た、たのむよ……そろそろ首根っこを外してくれ。馬鹿な真似しないからさ……。
これじゃ……最初と全く変わらないじゃねーか……うううう……」
【音石明】
[時間軸]:チリ・ペッパーが海に落ちた直後
[スタンド]:レッド・ホット・チリペッパー(充電中。徐々に回復して色は緑色に。そろそろ黄色になる?)
[状態]:健康 キング・クリムゾンに首をつかまれている
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、不明支給品 ×1
[思考・状況]基本行動方針:優勝狙い
1.ひぎぃっ! 弱みを握られちゃった……悔しい
2. とりあえず仲間(ディアボロ)ができたのは良かった。でも状況変わってない……。
3.充電ができてほっとしているが、電車から降りたらどうするかは未定
4.サンタナ怖いよサンタナ
5.電線が所々繋がっていないのに電気が流れているこの町は何なんだッ!? あやしすぎて怖えー!
[備考]
※バトルロワイアルの会場には電気は通っているようです。
しかし様々な時代の土地が無理やり合体しているために、電線がつながっていなかったりと不思議な状態になっているようです。
スタンドが電線に潜ったら、どうなるかわかりません。(音石は電線から放電された電気を吸収しただけです)
※
ミセス・ロビンスンをスタンド使いだと思っています
※電車は一両編成で、運転手はおらずに自動で走っています。
一度、音石の無茶な操作で発車しましたが、現在、運行状況に支障はないようです。
しかしカーズとの騒動のせいで、サンタ・ルチア駅に時刻どおり着くかどうかはわかりません。
※電車はカーズの輝彩滑刀によりダメージを受けました。
電車の右側の壁が横の真一文字に傷がついています。傷は電車を貫通しています。
※正面からみると↓な感じです。(傷の開き具合は誇張気味です)。
┌─┐
│
└─┘
※横からみると↓な感じです。(傷の開き具合は誇張気味です)。
┌──┐
└──┘
『地下鉄の駅』
地下に駅があるようです。駅は地上と繋がっているのかもしれません。
他にも駅があるのかどうかはわかりません。
※確定しているのルート(ジョセフ達は早朝にネアポリスに乗って朝~日中にサンタ・ルチアに着きます)
『E-7・ネアポリス駅』→『G-6・食屍鬼街(オウガーストリート)駅』→『H-5・ポンペイ遺跡駅』→『H-3・サンタ・ルチア駅』
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最終更新:2009年07月11日 22:28