サン・ジョルジョ・マジョーレ教会の地上部分。
巨大なステンドグラスを背に、椅子に座った大男が一人いた。
大男タルカスはその巨大な体を縮め、窮屈そうに横長のベンチに腰掛けていた。
足元にはボストン・テリアの犬、イギーが気だるげな様子で横たわっている。

ジョルノがDIOの元を訪ねてから十数分。
その間戦いが起きるようなこともなく、外から誰かが訪れてくるようなこともなかった。
まったくの平穏な時間。ステンドガラスが少しだけ傾いた日光の灯りを激しく反射させている。
風は無風でほのかに緑の匂いがしていた。混じって漂うのは教会特有の古めかしい匂い。
木と香料とカビが混じった匂いだ。タルカスは目を閉じると大きく息を吐いた。
体は休めつつも、精神は張り詰めたままだ。ほんの一瞬でも気を抜けはしない。
タルカスはジョルノから預かったブローチを握りなおした。特別変わった様子は見受けられなかった。


「長いな」


そう言うと、大きな手で乱暴にイギーの頭を撫でる。イギーは小さく唸ると、不機嫌そうに顔をしかめた。
可愛げのない仕草だったが、どこか人間臭いその仕草に思わず頬がゆるむ。
持て余した時間をそうやってなんでもないことに費やしながら、穏やかな時間を満喫していた……その時だった。

「……?」

かすかに、そしてゆっくりと―――地下へと続く階段から物音が聞こえた。
重たい何かを引きずるような音、小さな呟き、そしてまた引きずる音。


返事はなかった。だがタルカスの呼びかけを合図に物音は止まり、つぶやきも聞こえなくなった。
なにかおかしい。タルカスは脇に立てかけてあった槍を取ると、立ち上がる。
うずくまっていたイギーも顔を上げ、異変を嗅ぎ取ろうと鼻を鳴らしている。

「誰かいるのか? ヴァニラ・アイスか? DIOの手下か?」

地下へと続く階段は暗く、見通しが悪い。
あいかわず返事はなく、誰がそこにいるのかもわからない。
タルカスは階段の脇に吊るされたロウソクを見た。
壁に影は映らない。もしやタルカスに気がついて上がるのを躊躇しているのだろうか。

「お前はここで待っていろ。入口を見張っていてくれ」

低い声でイギーに指示を出す。今やタルカスの心臓はバネにはじかれたみたいに喉元まで飛びあがっていた。
暗闇から一斉目をそらさず、忍び足で階段に近づいていく。
階段に近づくにつれて手のひらが湿り気を帯びる。ぐっと槍を握りなおす動きに合わせて大きな影が壁の上に揺れた。

階段の一番上から暗闇を見下ろすと、螺旋状に下へと向かう階段はまるで底なし沼のように思えた。
一段一段を慎重に、噛み締めるように降りていく。右手に持っていた槍を左手に持ち替える。
息がつまりそうなほどの、緊張感だ。数旬の後、タルカスは意を決して一気に階段を駆け下りた……!


「……気のせいだったか」


しかしタルカスの予想に反し、階段には誰もいなかった。
一番下まで降り、辺りを見渡してみたが人影らしきものも見つからない。
ジョルノたちはどうやら納骨堂の奥の小部屋で話し込んでいるようだった。
ドアの隙間から漏れる光と会話から目をそらすと、タルカスは登ってきたばかりの階段に戻る。

神経質になりすぎていただろうか。確かに聞いたはずだったのだが……。

「……?」

だが踊り場にたどり着いた瞬間、タルカスは角の暗闇に目を奪われた。
子犬が蹲った影。最初はそう思えた。だが近づくにつれ、それが自分の勘違いだと気がついた。
片膝を付き、慎重にそれを拾い上げてみる。それは奇妙な形にねじ上げられた何者かの右腕だった。
死んでそれほど時間が経っていない、何者かの死体。

それを理解した瞬間、タルカスの全身から汗が吹き出した。
頭の中で警報が鳴り響き、今登ってきたばかりの階段を駆け下りる。
力の限り叫びながら、納骨堂の奥を目指す。一秒でも早く、この緊急事態を伝えるために。

「ジョルノッ! 聞こえないか、ジョルノッ! ここはまずい、何かただならぬことが起きて――――」

そこから先は無言だった。
タルカスの言葉をかき消すようにガオン、という音が響いた。
音が削れる音。音が無音になる音。
タルカスの体がひとりでに傾いていく。何がなんだかわからないまま、ただ重力に従い、タルカスの首が下を向く。
彼の目に映ったのは削られた右半身。吹き上がる血の滝。そして健康でたくましく脈打つ、自分の内臓たち。


「うおああああああああああああああああ―――ッ!!」





―――十数分前

「かけたまえ。楽にしていいから」
「失礼します」

古い扉がきしむ。甲高い音が響く。ロウソクが作った影が天井まで伸び、ゆらゆらと揺れている。
納骨堂の奥、長い間人に忘れ去られたような小部屋に二人はいた。
足の高いコーヒーテーブルを挟むように置かれた椅子を指差すと、DIOは片方の椅子に腰を下ろした。
ジョルノもつられて対面に座る。いつもの堂々とした様子はなく、緊張がジョルノの顔には浮かんでいた。

目の前にいるこの男が自分の父親。
手を伸ばせば直に触れることができるこの男性が、血を分けた本当の家族。
ジョルノにはまだ実感がわかなかった。
理屈でなく、本能が目の前の男のことを父親だと叫んでいても、どこか夢心地のような気がしていた。
それほどまでに、ジョルノにとって父親という存在は大きく、遠いものだった。

「……君は今、いくつになった? 何年生まれ?」
「4月で15になりました。生まれは1985年です」
「……そうか、そうだったな」

ぎこちない雰囲気が続いた。
会話は一方的で、したくもない腹の探り合いが机を挟んで行き交っていく。
聞かないでもいいような、会話のための会話。DIOがぼそぼそと問いかけ、ジョルノは短く、簡潔に答える。
時間が奇妙な流れ方をしていた。それほど長い時間は話していないはずなのに、やたらと秒針の回転が速いような気がした。

いくつかのくだらない質問を終えると、DIOがぱたりと口を閉ざした。沈黙が漂う。
どちらも息を殺すように、静かに呼吸をしていた。しばらく黙った後、DIOが言う。
その顔には困惑と、自虐的な笑みが浮かんでいた。

「まいったな、こんな時だっていうのに……。
 情けないな……それに恥ずかしいよ。一人の男としてこんな恥ずかしいことはない。
 ジョルノ……、私を許して欲しい。
 息子とせっかく会えたというのに何を話せばいいかわからないんだ。
 父親としてこういう時に、何を言えばいいかわからないだなんて!」

しゃべりすぎたと思ったのか、そこまで一息で話すとDIOは黙り込んだ。
少ししてから、ジョルノが口を開いた。
ジョルノは一言一言噛み締めるような、話し方をした。

「面を食らうのも無理はありません。それに……戸惑っているのは僕もです。
 僕はあなた以上に今うろたえていますし、戸惑っています。
 六歳の子供が初恋の相手を前に話すときだって、こんなまごつきはしないでしょう」

二人は互いに目を合わせた。
突然のことに困惑する気持ち。肉親との不意の再会に対する不安と喜び。
それを互いの目の中に見つけ、自然と笑みがこぼれる。
柔らかに微笑む父親を見てジョルノも笑った。その笑顔は年相応の、少年が浮かべるような笑みだった。

空気がはっきりと和らいでいく。DIOは膝の上で指を組み直すと、ゆっくりと言った。
先よりよっぽどリラックスした口調で、だが、責任感を感じさせる堂々とした喋り方をした。

「私はひどい父親だった。いや、父親と名乗ることすらおごがましい男だ。
 私は今こうやって君と向かい合っているが、正直言って君の母親の顔すら思い浮かばない。
 誰が君の母親かもわからない生活を、私は送ってきたんだ」
「…………」
「父親面するつもりはない。その資格は私にはないし、きっとそれはお互いを不幸にするだろう。
 だけどもしも君が許してくれるならば、君の幸せを祈らせてくれないだろうか。
 私の出来る範囲で君の人生を前向きなものにしたいんだ」

こんな殺し合いなんていう場で幸せなんて言ってもおかしな話だが。DIOが笑いながら最後にそう付け加えた。
その言葉を聞いた瞬間、ジョルノの胸を刺すような痛みが走った。
ジョルノは目を瞑り、気持ちを落ち着かせた。右手で心臓のあたりを鷲掴みにし、鼓動を整える。
喉もとまで、ほとんど出かかった言葉を飲み込んだ。

これから親子としての関係を作り上げていけばいいじゃないですか、と。
これからお互いのことを理解して、より深い関係になっていけばいいではないでしょうか、と。
ほんとうはそう言いたかった。でも言わなかった。

再び目を開いた頃、その目に迷いはなかった。
落ち着いた、理知的ないつものジョルノ・ジョバァーナがそこにはいた。

「それならばさしあたり一つ、お願いがあります」
「言ってご覧」
「僕のことはジョルノ、と呼ばずジョジョと呼んでください」
「……わかったよ、ジョジョ」

親しみの言葉に返事をするDIO。その顔は間違いようもないほどに、父親の顔をしていた。
その隙だらけのDIOに向かってジョルノは―――ゴールド・エクスペリエンスの拳を叩き込んだ。






暗黒空間はすべてを飲み込む。
モノも人も、なにもかも。核爆弾だって飲み込めるかもしれない。

「がッ、はァ…………ッ!」

冷たい床に顔を打ち付けながらヴァニラはもがき、苦しむ。
そう、すべてを飲み込む暗黒空間。スタンド『クリーム』の内部につながる暗黒空間。
だがしかし……増幅され続けるエネルギーはどうなる?

クリームはタルカスを襲った際、ジョルノが作ったブローチを飲み込んだ。
生命を宿したブローチが破壊されるとき、そのエネルギーは倍増され跳ね返る。
だが跳ね返る先はヴァニラのスタンド内だ。出口を失ったエネルギーは果たしてどこへ行き着くのか。

「つ……、ああッ……!」

すくなくともこの舞台ではエネルギーは暗黒空間内に少しずつ、飲み込まれていったようだ。
時が経つとともに次第に痛みは失せ、ヴァニラは這いつくばりながら呼吸を整える。
呼吸は緩やかに落ち着き、視界もクリアになっていく。
その視界に映ったのは、タルカスを引きずっていった跡。真っ赤な線はヴァニラを無視し、階段を登っていく。


 『―――同行者を、始末しろ―――』


(確実に仕留めなければ……。あのお方の、DIO様の期待を裏切るわけには……ッ!)

ほうっておいても死に行く身だとは分かっている。
半身をもぎ取り、血を滝のように流した後なのだ。もうどうやったって間に合わない。
だがヴァニラは震える足を無理やり動かし、階段を上っていく。
まだそれほどの時間は経っていないはずだ。まだ間に合う。
この手で直接、確実に始末してやる……!
任務を達成しDIOに直々にお褒めの言葉をいただくために、ヴァニラは体にムチをうち、階段を上る。



(くそったれ、手間かけさせやがるぜ……)

そのタルカスを担ぎ、イギーは出口へと走っていた。
階段を上り切ると、一目散に光の射すほうへ駆けていく。
ジョルノを助けようとは一切思わなかった。助けている暇なんぞ一秒もない。
タルカスを助けてやったのはほんの気まぐれだった。腐れ縁というやつだ。
執着はなかったが、今目の前で助けられる奴をほうって置けるほどにイギーは『落ちた犬(人間)』ではなかった。

血を含んだ砂は操るのに力がいる。
人二人分の重さをもつタルカスを運ぶのはいくらザ・フールといえど容易ではない。
ヴァニラ・アイスのスタンド能力は不明。それに加えてDIOもいる。状況は最悪だ。
イギーは人間の争いに興味がない。故にいま目指すべきはこの場を逃れること。
一歩でも遠く、DIOとヴァニラから離れること。


(げエッ! い、いつの間にッ!)


だがイギーの目論見は砂の城のように、もろくも崩れる。
顔に降りかかった影に顔を上げて、イギーは驚いた。
教会の入口の前、待ち構えるようにヴァニラ・アイスが姿を現していた。
回り込まれるなんてありえなかったはずであるのに。階段から入口までは脇道などなく、一本道だったのに。

咄嗟のことにイギーはスタンドを構えてしまった。本能的に戦いの構えを取り、ヴァニラに対して威嚇のポーズをとる。
相手に命を見逃してもらうよう請うことはイギーのプライドが許さないことだった。
だがそれでももう『バカ犬』の振りはできない。イギーは覚悟した。戦いは避けられない……!
出口までの距離を計算し、タルカスをかばいながらどう戦うか考える。
だがどれだけ考えても、このまま無傷で教会から脱出することは不可能に思えた。

(ち、ちくしょう……! )


しかし、息を詰めたような沈黙が流れ―――ヴァニラはイギーの予想だにしない行動をとった。
スタンドを引っ込めると、まるで道を譲るように入口を離れたのだ。
それどころか、もはやイギーたちは目に映らないかのように、そのまま階段へと向かっていく。
突然の行動にイギーは唖然とする。ヴァニラ・アイスとすれ違った瞬間、そっとその表情をのぞき見た。

ヴァニラはイギーたちのことを一瞥もしなかった。
ただまっすぐと階段に向かっていくその表情は何を考えているのか全くわからなかった。

(こ、コイツはありがてェ! 何が起きたかわからねぇが今のうちにずらかるぜ!
 ヴァニラ・アイス、あいつはやばいッ! 真正面からぶち当たったらとてもじゃねぇが無事じゃすまねぇ!)

タルカスを砂で持ち上げ、教会の外へ。背後からの攻撃を警戒したが、無事に外へと出ることができた。
ほんの少ししか経っていないというのに太陽の光を浴びるのがとても心地よかった。
イギーは改めて自分が死線をくくり脱げてきたことを喜び、生き残った安堵のため息を吐いた。

(こうしちゃいられねぇ。もう間に合わねぇかもしれねぇがおっさんの手当をしてやらねぇと)

足裏にレンガを感じながら路地を急ぐ。ここまでくれば一安心だ。
もはやなんの心配もいらない。いや、まったく今度ばかりはさすがにダメかと思った。
もう二度とあんな死線をくぐり抜けることはできないだろう。もう一度やれと言われてもきっと無理なはずだ。
タルカスにとっては不運だったが、こればかりは仕方ない。せめてどこか静かな場所で看取ってやろうか。
そうイギーが考えていた時だ。


本当にそうだろうか。


イギーは足を止め、振り返る。入口に待ち構えていたヴァニラ・アイスは姿を消していた。
どうやら本気でタルカスとイギーを見逃す気らしい。
匂いもなし。忍び足で近づいてくるような音も聞こえない。ためしにあたりに砂を飛ばして探ってみたが、こちらも空振り。

イギーは考える。
なんのつもりだ。一体何を企んで、どんな策にはめようとしているのか。
なぜさっき殺さなかった。これ以上ない絶対のチャンスだったはずなのに。
答えはわかっている。ほんとうはとっくにそれにたどり着いていた。
ザ・フールに一粒の涙がこぼれてくる。担いだタルカスの頬を伝い、乾いたスタンドを濡らしていく。

(あの野郎……ッ!)

半身をえぐり瀕死の大男。恐怖にすっかり縮み上がり、臨戦態勢を取った犬。
ヴァニラにとってイギーたちは始末する価値すらなかったのだ。
もしかしたら、万が一、億が一もないがこれらを始末する隙をつかれDIO様に危険が及ぶかもしれない。
そのほんのわずかなリスクの前に、イギーたちは敗れ去ったのだった。

タルカスは身も心も、文字通り張り裂けてしまいそうだった。
死んでも死にきれない気持ち。無念、その気持ちでいっぱいだった。
戦士としてこんな屈辱はない。戦いの土俵にすら上がれず、なんの結果も残せないまま自分は死んでいく。
惨めで情けなくて、でもどうしようもなくてタルカスは泣いたのだった。
命の最後の最後を振り絞って泣き声を喉の奥で噛み殺し、そうして彼はゆっくりと砂の上で冷たくなっていった。

イギーは何もできなかった。せめて安らかにタルカスが逝けるよう、傷口を砂で覆ってやるのが精一杯。
冷たくなった大男を地面に横たえた時、イギーを焦がすような怒りが湧き上がってきた。

(この俺が喜んだ……。ヴァニラ・アイスという人間に慈悲をかけられた時……。
 俺はあの一瞬、ホッとしちまったんだ。
 馬鹿な犬だと思われてよかった。これで助かる、俺は生き延びたッ!
 そう思っちまったんだ。そのザマがなんだッ、くそったれ!
 見ろよ、コイツの顔をッ! 見ろよ、この悔しそうな顔をッ!)

尻尾を向けていた教会へと向き直る。
ザ・フールを呼び出すと、イギーはフルパワーでスタンドを絞り出した。
街中の砂という砂を……川を越え、街を越え、ありとあらゆる場所から呼び寄せていく。
力を振り絞ったあまり、頭が割れんばかりに痛んだ。目の前がぼやけてみえ、足もとがふらつく。

(だがよォ……!)




「……なんのようだ」

教会の横長のベンチに腰掛けたヴァニラがそう問いかけてきた。
入口から差し込む陽を背に、イギーは無言のままスタンドを出す。
体を膨らまし、唸り声を上げる。
威嚇ではない。怯えでもない。怒りだ。自らへの怒り。戦士の誇りを踏みにじった、ヴァニラへの怒り。

「…………」

ヴァニラはしばらく無言のままだったが、やがて答えるようにスタンドを構えた。
憐れむように見るでもなく、退屈そうに見るのでもない。
仕方ない、と言いたげな様子でクリームを繰り出す。イギーは砂を操ると、いつもの犬の形ではなく人の形でクリームを迎え撃った。

砂の手が床に転がっていた槍を取る。砂の大男はその体を膨らまし、ヴァニラを飲み込まんと叫んだ。
教会全体が震え、ステンドガラスが砕け散る。ヴァニラはまるでそよ風を受け止めるように穏やかな表情だ。

(ちっ、別に恩返しだとかじゃねぇからな。
 大サービスだ。あんな悔しげな様子で逝かれちまったらよォ~、俺だって後味悪いからなッ!
 さぁ、どっからでも来いッ! この槍でけちょんけちょんにしてやるぜッ!)

小手調べとばかりに放った濁流を無尽蔵に飲み込むクリーム。
それが戦いの合図だった。
街中から集まった砂は天から降り注ぎ、教会の屋根をぶち壊しながらヴァニラの頭上に降り注いだ。
イギーの操る大男が槍を振り下ろす。空振りに終わった一撃は床板を砕き、天井を揺らし、建物全体を破壊していく。




【D-2 サン・ジョルジョ・マジョーレ教会 地上/一日目 午後】
【イギー】
[時間軸]:JC23巻 ダービー戦前
[スタンド]:『ザ・フール』
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1~2(未確認)
[思考・状況]
基本行動方針:ここから脱出する。
1.ヴァニラ・アイスをぶっ飛ばす。
2.花京院に違和感。
3.煙突(ジョルノ)が気に喰わない

【ヴァニラ・アイス】
[スタンド]:『クリーム』
[時間軸]:自分の首をはねる直前
[状態]:健康
[装備]:リー・エンフィールド(10/10)、予備弾薬30発
[道具]:基本支給品一式、点滴、ランダム支給品1(確認済み)
   『オール・アロング・ウォッチタワー』 のダイヤのK
[思考・状況]
基本的行動方針:DIO様のために行動する。
1.イギーを始末する。





ゴールド・エクスペリエンスが放った拳は確実にDIOを捉えていた。
不意を付いた一撃目をボディに叩き込み、体制が崩れたところに、すかさず二発目をねじり込む。
そして三発目がDIOの表面に触れたまさにその瞬間。
一秒の隙もなく、コンマ五秒の時差もなく、完全に―――ジョルノの攻撃は空をきった。

ほんの一瞬前までそこにいたはずのDIOの体をすり抜け、ゴールド・エクスペリエンスの拳は虚しく宙をかく。


「どういうつもりかな、ジョジョ」


ジョルノは内心の驚きを隠しながら、すぐさま振り向いた。
視線の先には黄金のスタンドを脇に従え、こちらを見下すDIOがいた。

「僕はあなたたちとは相容れない存在だということです」
「理由を詳しく説明してもらおうか」
「ならば逆に問いましょう。なぜタルカスさんを襲ったのですか」

右胸のポケットに入れたブローチをそっと撫でる。
二つ対で作ったブローチの内一つはジョルノが持ち、片方はタルカスに渡した。
そのタルカスに渡したはずのブローチが『消えた』のをジョルノはスタンド越しに感じた。
反射するのでもなく、激しく揺れるのでもなく消滅。
それが意味すること、そしてそれが可能なもの、それをする理由を持つもの。
全ての元凶と思われるものは、目の前にそびえ立つ存在のみ。

二人の間を沈黙がしばらく流れ……DIOは嘲るように笑いを漏らした。

「君は羽虫を踏み潰すのにいちいち理由を求めるのかね?」

ジョルノは床を強く蹴り、DIOに向かって跳んだ。
怒りが頭の中で火花を散らし、視界が赤い靄で覆われる。
自分の勘違いであるという可能性は潰えた。DIOになんのことだかわからない、と困惑して欲しい希望は消えた。
この瞬間、ジョルノは父を失った。

父を好きになれるか不安な気持ち。
無条件の愛を注いでくれる家族という存在。
孤独感、正義の心、怒り、悲しみ、屈辱、諦め……。
ほんの一瞬のうちにジョルノの中で感情がうずまき、破裂した。

望んだはずの結末は最も残酷な形で終わりを迎えた。
抱いた夢は一瞬で崩れ落ち、こぼれ落ちる砂のように、二度とその手に戻ることはない。


「「無駄無駄無駄無駄無駄無駄ァ!」」


二つ重なった声が納骨堂に響き渡る。二人の間を無数の突きが行き交っていく。
互いの能力が朧げにしかわからない今、共に強く前に踏み込むことはしない。

「フン、蛙の子は蛙か……だが甘い。まさかまだこの私に思慕の念を抱いているのか、ジョルノ?」
「あなたは吐き気を催す、最悪の邪悪だ」
「褒め言葉として受け取ろう」

地面を拳で打つと、あらかじめ仕込んでおいた能力が花開く。
石畳の隙間から蔦が伸び、力強く咲いた木が天向かって伸びていく。
何もかもが崩れていく。ガラガラと豪音を立て、壁が、天井が、床が壊れていく。

そんな中でも二人は拳をぶつけ合う。
降りしきる瓦礫をもろともせず、崩れ落ちる足元を意に介さず。
全身全霊を持って二人は対峙する。

それぞれの信じる『己』を証明するために。




【D-2 サン・ジョルジョ・マジョーレ教会 地下/一日目 午後】
【DIO】
[時間軸]:JC27巻 承太郎の磁石のブラフに引っ掛かり、心臓をぶちぬかれかけた瞬間。
[スタンド]:『世界(ザ・ワールド)』
[状態]:全身ダメージ(大)疲労(大)
[装備]:シュトロハイムの足を断ち切った斧、携帯電話、ミスタの拳銃(0/6)
[道具]:基本支給品、スポーツ・マックスの首輪、麻薬チームの資料、地下地図、石仮面、
    リンプ・ビズキットのDISC、スポーツ・マックスの記憶DISC、予備弾薬18発
   『ジョースター家とそのルーツ』『オール・アロング・ウォッチタワー』 のジョーカー
[思考・状況]
基本行動方針:『天国』に向かう方法について考える。
1.ジョルノ・ジョバァーナの血を吸って、身体を馴染ませたい。
2.承太郎、カーズらをこの手で始末する。
3.蓮見琢馬を会う。こちらは純粋な興味から。
4.セッコ、ヴォルペとも一度合流しておきたい。


【ジョルノ・ジョバァーナ】
[スタンド]:『ゴールド・エクスペリエンス』
[時間軸]:JC63巻ラスト、第五部終了直後
[状態]:体力消耗(小)
[装備]:閃光弾×3
[道具]:基本支給品一式、エイジャの赤石、不明支給品1~2(確認済み/ブラックモア
    地下地図、トランシーバー二つ
[思考・状況]
基本的思考:主催者を打倒し『夢』を叶える。
1.DIOを倒す。
2.ミスタ、ミキタカと合流したい。
3.第3回放送時にサン・ジョルジョ・マジョーレ教会、第4回放送時に悲劇詩人の家を指す
[参考]
※時間軸の違いに気付きましたが、まだ誰にも話していません。
※ミキタカの知り合いについて名前、容姿、スタンド能力を聞きました。








【タルカス 死亡】

【残り 40人】



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前話 登場キャラクター 次話
164:血の絆 タルカス GAME OVER
164:血の絆 イギー 169:トリニティ・ブラッド -カルマ-
164:血の絆 ヴァニラ・アイス 169:トリニティ・ブラッド -カルマ-
164:血の絆 DIO 169:トリニティ・ブラッド -カルマ-
164:血の絆 ジョルノ・ジョバァーナ 169:トリニティ・ブラッド -カルマ-

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最終更新:2014年06月24日 12:12