―――走って、走って、走り続ける。
聞こえてきた放送も碌に頭に入れず、途中にあった遺跡も素通りし、ただひたすらに地下を逃げ続ける。
長時間の運動に慣れていない足が鈍痛を訴えるも、半ば引きずるように前へと進む。
これ以上は走れないという自身の限界に到達した辺りでようやく、宮本輝之輔は足を止めた―――

(ガ………ハァァ………グッ………)

『紙』の中から水を取り出し一気に呷ろうとするが、思うように飲み込めず半分ほど零してしまう。
同時に限界を向かえた脚も体を支えていられなくなり、ガクリと地面に両膝をついた。

(フゥー………フゥ………)

数分ほど経ってようやく落ち着きを取り戻すと、周りを見回し耳を澄ます―――誰もいないし、何も聞こえない。
追っ手が迫っていないことを信じながら息を潜めつつ、乱れた呼吸を整える。
だが、安堵できるほど状況が好転していないことも理解していた。

(……いない、よな………?)

もう一度後ろを振り返り、注意深く観察する。
地下が薄暗いとはいえ誰かを見逃すほどでは無いが、それはあくまで相手が『目に見える』場合だ。
先ほどまで彼を捕まえていた男―――ワムウは透明になることが出来る以上、油断はできない。

(………………万が一ヤツがぼくを殺しに追って来たとしても、一言ぐらいはかける………と思うが)

彼は黙ってその腕を振り下ろすような相手ではない―――そういう意味で宮本はワムウを『信用』していた。
それでも、会いたくないのに変わりはないが。

(放送はほとんど聞き流してしまったけど……ワムウも、噴上や仗助達の名前も確か呼ばれていなかった………
 なら、あいつらがぼくを追ってくる可能性は十二分に存在する……さしあたっては)

時計を取り出し、現在時刻が昼頃であるのを確認する。
柱の男は太陽の下には出られない―――ワムウも陽のあたる場所に出ようとはしなかったし、自分さえ地上に出れば彼との遭遇は避けられるだろう。

(出口は、どこだ………?)

だが、辺りを見回しても上がれそうな場所―――階段や梯子といったものは全く見つからない。
しかも無我夢中に逃げたため自分が今どこにいるのかすらわからないというおまけ付きだ。
宮本は自分の記憶を思い返し、逃げる途中に通過した地上と繋がる遺跡を思い浮かべるが………

(ダメだ、後戻りは『賢い行い』ではない……あいつらがぼくを追ってきていて、鉢合わせるかも………)

論理的に、というよりは恐怖に駆られてその案を却下し、前方を眺める。
目の前にあるのは満足な明かりすら存在せず、どこまで続いているかもわからない道が一本だけ。

(落ち着け、出口は必ずある………慎重に、慎重に行こう………)

一刻も早く地上に出たいという気持ちはあるが、遭遇に備えて体力は回復させておかなければならない。
決断した宮本は自分に言い聞かせつつ再び歩き出した………未だに痛む足を引きずりつつ、ゆっくりと。

数歩ごとに後ろを振り返り、時折立ち止まって前方のその先に誰もいないことを確認し………
確実に歩を進めてはいたものの、その速度はまさに牛歩といってよかった。


#


………悪いことは重なるもので。
歩き始めてから一時間近く経っても宮本は地下から脱出できていなかった。

(………くそっ)

進む先は一本道だが歩けど歩けど出口は見当たらず、宮本は軽く舌打ちする。
ひょっとしたらこの先は行き止まりであり、結局出られずに引き返す羽目になるのではないか。
あるいは既に何者かのスタンド攻撃を受けており、進んだと思ったらいつのまにか戻っていて、同じ道を何度も歩いているのではないか。

(そんなはずが無い……ッ! よく思い出せ……確か…)

ネガティブ思考を必死に振り払い、理由を考えなおす。
方位磁石で確認するに、自分がいるのは東西にほぼ真っ直ぐ続く一本道。
ホテルで見せてもらった地下地図のメモと照らし合わせると―――

(A-5からA-7のどこか、だろうな……さっきワムウと通った道を逆戻りってワケか)

地図の中に納得できる場所を見つけ、僅かに落ち着きを取り戻す。
だが、不安が全て取り除かれたわけでもなかった。

(逆に考えろ、これはラッキーなんだ……噴上は『におい』で追跡が可能な能力者………
 あいつが来ないということは、ぼくは『逃げ切った』ってことじゃあないか………)

無理やりそう思いつつ、さらにしばらくして。
なおも歩き続ける宮本の耳に微かな物音が飛び込んできた。

―――ぺらり

(………?)

注意深く耳を澄ませる。
しばらくして、再び音は聞こえてきた。

―――ぺらり

(紙………いや、本のページをめくる音、か?)

―――ぺらり

音と音の間隔はやや不規則ながら短すぎず、長すぎず。
それはまさに『誰かが本を読んでいる程の』間隔であった。

(誰かが………いる!?)

音の発生源を注意深く探ると自分の前方、ゆるく曲がるカーブの先からその音は聞こえてきていた。
だが、それと同時に宮本は違和感を覚えて思考する。

(注意深く考えろ、選択を誤ったら………)

宮本は音を立てないように辺りを観察する………先にいる誰かと接触するべきか、立ち去るべきか判断するために。
すぐに、彼は違和感の正体に気付いた。
多少目が慣れたとはいえ、ここは地下―――当然、常に薄暗い。
だが音が聞こえてくる先は………少なくとも、宮本自身が本を読めるほど明るいようには見えなかった。

(そうだ………曲がり角の先から『明かりが漏れてきていない』………!!
 それならこの先にいる誰かは、明かりも無しにどうやって『本を読むことが出来る』っていうんだ!?)

理由が全く思いつかないわけではない。

例えば、点字の本を読んでいるとか。
または、暗視ゴーグルか何かを装着しているとか。
あるいは、ページをめくっているだけで、内容など見ていないとか。

………だが、今の状況でそんな希望的観測など出来るわけがなかった。

(この暗さでも、本を読めるだけの視力を持つ奴………まさか、ワムウッ!?)

導き出された結論は最悪のもの。
よしんば違ったとしても、この先にいる誰かが『人外』の可能性は非常に高い。
いち早く判断した宮本は今来た道を戻るべく音を立てないように体の向きを変え―――


                  「どこへ行く、人間」


―――一歩も踏み出さないうちに呼び止められた。
宮本の背中に冷や汗が伝い、痛みが引いたはずの足は震え始める。
彼は今、自分が『人間』と呼ばれたことで理解していた―――声の主はまたしても『怪物』であると。

「………………」

逃げても無駄だと悟った宮本は再び振り返り、声がした方へと進む。
諦めたわけでもなく、覚悟を決めたわけでもなく………ただ、行かねば殺されるという『恐怖』に駆られて。
ゆるやかな角の先、宮本の目に飛び込んできたのは悪い意味で誰かに似た格好の大男だった。

(まさか、こいつがワムウの言っていた………)

相手はまさにワムウに『似ている』男。
そのとき宮本は思い出した―――残る柱の一族は、たった二人というワムウの言葉を。

(………やるしかない)

どうにかせねば殺される―――瞬時に理解し、自分が優位に立てるチャンスは今しかないと判断する。
精一杯の虚勢で平静を装いつつ、相手に向かい口を開き………

「………カーズ
「ほう………きさまもまた、このカーズを知っているか」

………会話で先手を取ろうとするも、失敗。
相手の正体は予想通りだったものの、おそらく彼は自分を一方的に知る人物と既に遭遇した後。
結局、最初の一手ではアドバンテージを得られなかった。
だがその程度の事態は想定済み………宮本は静かに言葉を続ける。

「………忠告しておくが、ぼくと戦う気ならやめておいたほうがいい」
「ふむ?」

宮本の次なる一手は、ハッタリ。
ワムウがそうであったように、彼らはおそらく『スタンド』に関する知識は持っていない。
どこかで聞く機会があったとしても、まさか自分の能力が詳細に知らされている可能性などまず存在しない。
それらを踏まえ、宮本は自分でも驚くぐらいに大胆な発言を開始した。

「あえて説明するなら、お前たちが持っている支給品を紙に閉じたのはぼくの能力………ぼくは主催者側の人間だ」
「………………」

心臓が破裂寸前なほど激しく鳴っているのがよくわかる。
だがひたすらそれを押し隠し、近くに転がる一抱え以上もある岩を『エニグマ』でファイルし、紙にしてみせる。
続いて、折りたたまれた紙におもむろに指をかけ………

「そしてこのようにやぶいてしまえば、岩も簡単にバラバラにできる。
 ………岩だけじゃなく、生物も例外ではない」

ビリビリにやぶかれた紙から岩の欠片が零れ落ちてくる。
相手に驚いた様子は見られなかったが、その口からほう、という呟きが漏れ出たのを宮本は確かに聞いた。
………まだ相手の『恐怖のサイン』を見つけたわけではなく、完全にブラフである。
だが、支給品の紙に何故か自分の能力が使われているのはまぎれもない事実。
この『賭け』に勝算は十分あると宮本は睨んでいた。

―――果たして、相手は再び手の中の本に視線を戻し、言った。

「フン……まあよい。先へ進みたいなら勝手に行けばよかろう」
「………………」
(成功……した……?)

まさかの『通行許可』が出されたことに顔には出さずとも驚く。
とはいえ、喜び勇んで素通りしようなどとはさすがに思わない。
宮本が黙ったまま動かず、用心深く思考しているとカーズは再び声をかけてきた。

「どうした、行かぬのか? それともきさまのほうこそ、このカーズとの戦闘を望むか?」
「いや………」
(間違っても怖気づくような相手じゃあないはずだけど、何らかのリスクを避けたのかもしれない……
 それに相手はワムウと同じ怪物………身体能力も同等ならそれこそ一瞬でぼくを殺してしまえる……
 なのに襲ってこないのは、本当に通ってもいいっていうこと………だよな?)

自分なりに結論を出すと、あくまで無表情を貫き通しながら宮本はカーズの前を横切って奥へと進む。
内心は今にも後ろから奇襲を受けるのではないかとビクつきながら、ありったけの精神力で体に震えが出ないように歩く。
十歩ほど進み、彼が勝利を確信しかけた………その時。


             『おめ~ すでにはいってたな……禁止エリア…だ…』


―――宮本の『首輪』から『声』が発せられた。


「………!!!!?」

反射的に体を引き、勢い余って尻餅をつく。
その体制のまま後ずさりし、数秒たった時点でようやく『声』が止まっていたことに気付いた。
冷や汗を流しつつ首輪を確かめる宮本に後ろから声がかけられる―――とても愉快そうに。

「ほう、足を踏み入れても即座に命を奪われるというわけではないのか………なるほどなァ~~」
「あ、お、お前ッ………! 知ってて………」

禁止エリア―――『声』の内容的にそれで確定だろう。
そして今の言葉からすると、よりにもよって自分は『実験台』にされたのだ………!
慌てて顔を相手の方に向けると、カーズはニヤニヤ笑いながら口を開いた。

「ンン~? このカーズは『先に進みたければ勝手に行け』と言ったまでよ。
 そもそも、禁止エリアがわからんのはきさま自身の責任ではないのか?
 放送を聞き逃したのか、それとも自分の位置すらわかっておらぬのかは知らんがなァ~~?」
「グッ………」

宮本は何も言い返せなかった。
この場において非があるのは、放送をしっかり聞いていなかった自分なのだから。
立場は一瞬にして逆転………いや、元から自分の方が圧倒的に下だったのだろう。

「どれ、こちらも試してみるとするか………」

一方カーズはこともなげにそう呟くと本をしまい、自分も禁止エリアへ足を踏み出してゆく。
その脚にあわや蹴られそうになった宮本が身をかわすのに目もくれず、エリアの境界と思われる場所をカーズが越えた途端………


     『カーズ様が! おおおおおカーズ様がアアアーッ!! 禁止エリアにはいった―――ッ!!』


彼の首輪から宮本のとは違うメッセージがやけに大きな声で響く。
カーズは首輪の音声による禁止エリアへの侵入を聞いて方向転換、同じように音がやむのを確認する。
………そして宮本へと近づき、声をかけてきた。

「さて……きさまが本当に主催者の手下か単なるハッタリか、そんなことはどっちでもよい………
 ここへ来たからには、少々このカーズに付き合ってもらおうではないか」
「誰が―――」
「ンン~? それとも、このカーズの手で地獄に落ちるのが望みとあらば、すぐにでも叶えてやろうかアア~~?」
「………………」

ワムウの方がまだマシだった―――心底そう思える。
目の前の男、カーズは間違いなくワムウと同等以上の力を持っているようだが、二人には決定的な違いがあった。
それは人を傷つけることに『何も感じない』ワムウに対し、カーズは『愉悦を覚える』という点。
いざとなれば一息で命を奪ってしまえるだろうに、どうすれば相手が困るか、苦痛を感じるか……そのようなところを陰湿に攻めてくる。

(まちがいない………これでまちがいない、『柱の男カーズ』…『この男』は………)


                    (『性格が悪い』)


趣味は人間観察、特に『恐怖』を観察するのが好きな自分と『同じタイプ』だからこそわかる。
このような者が『恐怖』するとすれば『自分より上に立たれる』か『未知のものに遭遇する』ぐらいだということが。
だが口先で上に立つのは失敗し、スタンドを見せても精々驚く程度。
他の方法における勝ち目などありえそうにない………ではどうするのかというと。

(つまり、ぼくが生き残るために今すぐやるべきことはッ………! 表面上だけでも『恭順』する……それしかないんだ……)

相手は何やら自分に用がありそうな点を利用………付け入る隙を狙うと言えば聞こえはいいが、実際はおとなしく従うという情けない方法。
それでも、命には代えられないと宮本は先ほどの発言に対して渋々返答する。
すると………

「………ぼくに何をしろっていうんだ?」
「フフフ…きさまにやってもらうこととは……これよ」
「……? まさか………首輪ッ!?」

宮本は仰天する―――自分達に付けられているのとまぎれもなく同じ首輪がその手に乗せられているのを見て。
ただし、本来首輪を装着している参加者の姿は無く首輪「だけ」。
元の持ち主がどうなったのか………想像して再び宮本の背中に冷たいものが走る。
だが、その程度の驚きなどほんの序章に過ぎなかった。

「………よく見ていろ」

ゴクリと唾を飲み込んだ宮本の前でカーズは首輪を軽く上へと放り投げる。
続いてその腕からバリバリと音を立てて『刃』を出し―――


―――首輪目掛け、ためらいなく振り下ろしたッ!


(えっ…………?)

その瞬間、宮本の頭は真っ白になった。
参加者の首を吹っ飛ばした首輪……それが今、目の前の男によって無理やり破壊されようとしている。

(そんなこと………すれば………)

やけにスローに感じられる世界の中で、宮本は何も出来ず呆然と立ち尽くす。
彼の目の前で、首輪は闇の中で光り輝く刃により真っ二つに切断され―――





                反射的に、宮本は両目をつぶり―――





               ―――パン、と乾いた音があたりに響いた。



「あ………」

生きている。
目を開けると自分も、カーズも傷ひとつない。
首輪の爆発は想像していたような規模ではなく、ずっと小さなもの。
真っ二つになって地面へ落下した首輪はそれきり、何の反応も示さなかった。

カーズは落ち着いた手つきで首輪を拾い上げると、切り裂かれた断面を下にして軽く振る。
すると、切断面の中に見える空洞より細かい金属片がぱらぱらと零れ落ちてきた。

(………爆発は、首輪の中身が弾けとんだ………だけ?)

先ほど何が起きたのかを再確認していると、カーズが宮本に壊れた首輪を差し出してくる。

「多少頑丈ではあるようだが、このカーズにとっては子供騙しよ。
 だが主催者もそこまでマヌケではないらしい………この通り、破壊すると中身が弾けとぶというわけだ………
 さて、人間………残った破片ですらこのカーズには未知のものが混じっているため理解し切れんのだが………どう見る?」
「ど……どう見るって………」

そこでようやく、宮本は自分の意見が求められていることに気付いた。
未知のもの………すなわちカーズは中身の『機械』がよくわからないから、人間である宮本の意見を聞きたいのだと。
不運続きの宮本だが、この場においてはまだ運があったというべきだろう。
もしカーズがもう少し後の時代―――人間の文化をよく知った後から連れて来られたならば、彼は禁止エリアの実験だけで『用済み』だったのだから。

(首輪を調べる? ぼくが? ………でも、断ったらたぶん―――)

―――殺される。エンジン音だけ聞いてブルドーザーだと認識できるようにわかる。
仕方なく宮本が首輪を受け取るとカーズは再びデイパックに手を突っ込み、今度は既に壊れている首輪を取り出す………それも二つ。
首輪自体の大きさは宮本の持つそれと微妙に異なるものの、振って出てきた破片から見てどうやら中身は同じようだった。

「大きさは参加者によってまちまちだが、仕組みはどれも変わらぬらしい………
 それ以上のことはきさま次第だが………何やら、思うところがあるようだな?」
「ああ………」

カーズ本人は信用できないが、首輪の解除に協力するのは宮本としてもやぶさかではない。
安全面に関しても首輪に直接手を出したカーズが無事である以上、観察して考える程度ならばと開き直る。
むしろ首輪を何個も持っているカーズの方が危険度は上であるため、彼に逆らいたくなかった。

(外側の金属は……よくわからない。破片は結構量があるけど……爆薬の残りカスらしきものを除けば、ほとんど金属片か………
 よく考えろ、どこかに『謎』を残しておかないとぼくは『用済み』になる……かといって、嘘はリスクが大きい………)

懐中電灯で照らしながらこねくりまわし、中を覗き込み、欠片に目を近づける。
その一方で、自分を生かしてもらえるように情報をどう制限するか考えるのも忘れない。
ひとしきりの調査と思考が済んだ後、宮本は慎重に意見を述べ始めた。

「位置確認のセンサーや声を出すスピーカー、それに爆薬と点火用の装置。最低限これだけは入っていそうだけど………
 誰かのスタンドで代用している部分もあるかもしれない………このスペースならよっぽど小型化しないと入りきらないからな………
 少なくとも、ぼくの時代の科学技術だけでこれと同じ物は作れない………と思う」
「……それで終わりか?」
「いや……機械の種類よりもっと重要な問題がある………この首輪の中身には『爆薬が少なすぎる』ッ!」

カーズの手で壊された首輪を一目見たときから、宮本はおかしな点に気付いていた。
それは自分達が傷ひとつないことと、切断部分を除き首輪自体の形状が変化していないこと。
すなわち首輪を壊した際の爆発は『殺傷力がなく』『首輪そのものは吹っ飛ばなかった』という点。

「首輪の仕組みを調べられると困るから、無理に壊すと中身が自動的に爆発する………それはわかる。
 だけど、外側すら壊れない程度の爆発しか起きないのはどう考えても妙だ………
 これっぽっちしか爆薬が無いなら………最初に実演した、あの三人の首をふっ飛ばしたのはどうやったんだ?」
「………………」
「残った中身は単なる機械の破片みたいだし、切断面を見てもこれ以上の空洞は無さそうだ……
 ……断言できる。この首輪だけじゃあ『参加者を始末できない』ッ!!」

結局、情報の制限はしなかった―――首輪は想像以上に謎が多すぎたのだから。
話を聞き終えると、カーズは静かに目を閉じる。
宮本は知らない………目の前にいる存在が単に性格が悪いだけの男ではなく『天才』であることを。
彼の頭の中でどのような思考がめぐらされているのか、また自分の意見がどのように使われているのか宮本には想像すらつかなかった。
時間にしてわずか数秒後、カーズはゆっくりと目を開き喋り始める。

「………よく聞け。このカーズはたったいま、きさまの疑問を説明できる『仮説』を三つほど思いついた………
 一つ目は首輪そのものが爆発するようになっており、爆破は別の場所………おそらくは主催者側が任意で行うというもの。
 二つ目はこの首輪の持ち主が命を落とした時点で、首輪の何らかの………スタンドが関わる爆発機能が失われたというもの。
 そして三つ目は………そもそも最初に首が吹っ飛んだ人間達の首輪は、われらに付いているのとは全くの別物というものだ」

宮本自身では数十分考えて、やっと出せるかどうかという考えをすらすらと述べるカーズに内心舌を巻く。
彼の言う『仮説』が正しいかどうかはともかく、その頭の回転速度は相当なものだと認めざるを得なかった。

(こいつ、本当に何なんだ………? けど今は『首輪』のほうが重要か……)

一見ワムウと同じ肉体派の怪物と思いきや、脳筋どころかむしろ頭脳派といっても過言ではないことに驚きを隠せない。
だがひとまずは置いておき、気になった点―――最後の説について聞き返す。

「別物って…………まさか、首輪が爆発して死ぬなんてのは主催者のハッタリだっていうのか!?」
「あくまで可能性のひとつよ。だが―――」

やや結論を焦る宮本をたしなめつつ、一呼吸おくとカーズは言った。
聞きようによっては『希望』になり得る言葉を。

「―――今言ったどれかが正しければ、首輪をはずすことができるやもしれん………それにはもう一手間が必要だが」
「ほ、本当なのかッ!? ………一手間っていうのは?」
「無論、首輪破壊時における参加者の生死の違いを確かめることよ………」

その言葉の意味を宮本は一瞬では理解しきれなかった。
順に考えていくとカーズの言葉からして、彼は既に死体と化した参加者の首輪を外してきたということ。
ならば、生きている人間から首輪だけを外そうとするとどうなるのかを確かめる必要があるのだと。

となれば、その『生きている人間』として一番手っ取り早いのは『自分』―――

「――――――ッ!!!?」

気付いた宮本は反射的に距離をとり……カーズはそれを見てつまらなさそうに言葉を続けた。

「フン、そう警戒せずともきさまを実験台にしたりなどせぬ。
 きさまには別に『伝言』をやってもらうのだからな………」
「実験台にしない……? どの口がそれを言う………ッ!」

先ほど受けた仕打ちは勿論、相手の口ぶりからしてまだ何か自分に強要するつもりらしい。
となれば文句の一つも出てくるのは当然であったが、言われたカーズはどこ吹く風で呟いた。

「フムウ………では、生きたまま首輪を壊される役目のほうを選ぶか?
 我が輝彩滑刀ならば痛みすら感じさせず一瞬で切り裂くなど容易なことよ」
「え、遠慮しておく……そもそも首輪がハッタリだと決まったわけじゃあない………」

言外に『反抗するなら殺す』と脅されれば宮本にはどうしようもない。
現在の自分は相手の気まぐれか何かで生かされているに過ぎないのだから。
尻すぼみになった言葉を了承と勝手に捉えたのか、カーズは話を元に戻した。

「では、参加者どもに伝えるがよい………『第四放送時、会場の中央に来た者は首輪をはずしてやる』とな………
 相手の素性や人数は一切問わん、きさまが連れて来たくない者には声をかけんでも構わんぞ」
「………………!?」
(なッ……その『伝言』! いくらなんでもシンプルすぎるッ………! 信用できるほどの中身がないだろうがッ!)

先ほど見せた頭脳はどこに行ったのかと疑うくらいの簡素な内容に宮本は愕然とする。
特に不安を感じるのは他の参加者に信じてもらえるのかという点―――なにせ『どうやって首輪をはずすか』に一切触れていないのだから。
心の中で密かに憤るが……怒りを露にするわけにもいかず、ひとまず聞き返した。

「………伝言はわかったが、誰も来なかったらどうする気なんだ?
 はっきり言って、こんな怪しい誘いに乗るのはどう考えても『賢い行い』じゃあない」
「そのような奴らは勝手に殺し合いを続け、命を落としていくだけのこと………
 リスクを恐れ、脱出の可能性を自ら捨てる者にはどの道未来など無かろう」

ワムウはどうなんだ、と宮本は言い返そうとしてやめた。
彼らの正確な関係がわかっていない以上、下手に首を突っ込むべきではない。
それよりも、彼はカーズの言葉に『希望』を見出していた。
誰も来なくて構わないのなら自分も指定の場所に行く必要はない、すなわち自分は解放されるということなのだから。

(そうだ……首輪にしたってわざわざこんな怪物に頼る必要なんて、これっぽっちも存在しない………
 一旦従う振りをして、二度と会わないようにするのが『賢い行い』だ)


―――だが、宮本の目にそんな微かな希望の光が宿ったのをカーズは見逃さなかった。

「ふむ……きさまは今こう考えているな…『このまま逃げてしまおう』と………
 こちらとしても黙っていなくなられると、ちょっぴり困ったことになる………
 そうならぬよう、きさまに『儀式』をほどこしておくとしようか」
「………『儀式』? これ以上何を――ッ!!?」

カーズはいきなりその腕を宮本の胸にズボォと突っ込み、引き抜いたッ!
何が起こったのかわからない宮本が慌てて手をやるも、そこには傷ひとつない……
だが、一見何も無いというのが逆に不安ッ!!

「お、お前ッ! いま何をしたッ!!」
「なに、チョイときさまの心臓の動脈にリングを埋め込ませてもらっただけよ………『毒薬入り』のな」
「………ッ!!!?」

宮本は再び胸元に手をやるが、体の内部までは手を伸ばせぬため何の意味もなさない。
そんな彼を眺めつつカーズは言葉を続けた。

「そのリングは名づけて『死の結婚指輪』………元々我らの使っていた物だが、どうやら主催者がこの殺し合い用に作り変えた支給品らしい………
 およそ半日後にリングの外殻は溶け出して毒が体内にまわり、命を落とす………助かる方法はただひとつ、リングに対応した解毒剤を飲むことのみよ」

にわかには信じ難いことを平然と言ってのける。
勿論当事者の宮本にとってはシビれもあこがれもせず、ただ相手に問いただすのみ。

「げっ、解毒剤は………」
「欲しければ先ほどの伝言を参加者どもに伝え、きさま自身も指定した時間に会場の中心へと来るがよい………
 言っておくが、手術などで無理に取り出そうとすればあっという間に毒が流れ出す仕組みになっておる」
「……そ………んな!」
「なにをそんなに慌てておる? 毒といってもリングが溶け出すまではきさまの体に影響など一切及ぼさぬ………
 きさまが俺の言伝てを果たしさえすれば、何も問題など無い上に首輪も外せるかもしれん………悪いことなど何一つ無かろう?」

カーズの表情はどう見ても本気のそれではない。
相手はこちらが逆らえないことも、言いたいことも全て理解した上で自分を小馬鹿にしているのは明白だった。

「………………くそッ!」
(まただ………またしても、ぼくは誰かの手の上だ………これ以上の『最悪』なんて無いと思っていたのに………)

心の中で悲しみと怒りが爆発寸前までにもなるが結局どうしようもなく、宮本は悪態をつきつつ頷くしかなかった。
まずは現在時刻とタイムリミットを確認するべく、時計を取り出す。

「第四放送は確か、今夜12時………」
「時間が足りんということは無かろう? 暇ならば、きさまのやりたいことでもやっているがよい」
「………………えっ?」

それはカーズにしてみれば何気ない一言だったかもしれない。
しかし、その言葉は妙に深く宮本の胸へと突き刺さった。

(やりたいこと………ぼくが………?)

この殺し合いが始まってから、そのようなことは考えすらしなかった。
そんな余裕が無かったというのもあるが、ただ『死にたくない』という一心で行動し………いや、それすら違う。
思えば最初から自分で行動を決定し、進んだ場面など無い。


       ―――ただ他人の意志と行動に流され、そうでなければ逃げ隠れしていただけだ。


「ほう……その顔は知っているぞ………
 両手両足を失い、胸に穴が開いて死を待つばかりの人間と同じような表情だ………
 進退窮まりどうしていいかわからない、だが死にたくも無い……そんな人間のな………
 五体満足、しかもスタンド能力まで健在の者がそのような顔をするとはなァ~~~?」
「………………」

カーズの皮肉も宮本の頭には入っていかず、沈黙が訪れる。
ただ虚ろな灰色を示すその目からは、先ほど宿った光は既に消え失せていた。
数分が経過したころだろうか………宮本は遂に了承の言葉を返し、立ち上がる。
―――ただし、ひどくやる気の感じられない声で。

「第四放送時に、会場の中央だったな………いいよ、やってやる」

信用したわけではない、というか今でもカーズを信じるなど狂気の沙汰だと思っているほどである。
しかし、彼には縋るものが全く無く………目の前に一本しかない『道』を歩かざるを得ないのだ。
カーズも彼の投げやりに近い口調を妙に思ったようだが、同時に深く気にするほどではないと考えているようだった。

「物分りが良いのか、ただのやけくそかは知らんがまあよい………
 ……そうそう、きさまがワムウという男に出会ったならば、このカーズの名と指輪のことを伝えるがよい。
 我らの間で指輪は再戦を望む儀式ゆえ、少なくともあやつに黙って殺されることはなくなるはずだ……
 きさまの場合再"戦"にはならんだろうが、指輪も本来の物と異なる以上細かいことはよかろう」
「ああ、それはどうも………」

相手の言葉にかなりいいかげんな返事をしつつ、ふらふらと歩き出す宮本。
……カーズの言うとおり、理由はどうあれ自分はカーズと別れた後、再度会わなければ命に関わる。
そうなるようにした張本人に一片たりとも良い感情など湧くはずも無かった。

そして宮本が歩き出した直後、彼の後ろでカーズもまた立ち上がり同じ方向へと進み出す。
同行するつもりかと思いきや、カーズはあっさり彼を追い抜いていった。
その背中に向かい、宮本は声をかける。

「………おまえは、どこへ行くんだ?」
「知れたこと………先ほどの仮説を確かめるため、参加者を生かしたまま首輪を破壊してみるのよ………
 さしあたっては、太陽が落ちる前に地下に残る吸血鬼や人間どもを探すといった所か………」

―――生きた参加者の首輪を無理やりはずそうとすると、どうなるか。
宮本は今までそのような事態に遭遇したことは無かったが、例え知っていたとしてもカーズには話さなかっただろう。
カーズが試行する過程で他の参加者………例えば仗助達を殺害しようが、逆に返り討ちに遭おうが自分に損は無い。
それに極端な話、結果がどちらでも―――解除に成功しようが、爆発して誰かが命を落とそうが構わなかった。


       何故ならば、この会場内に宮本の『味方』など一人も存在しないのだから。


先を行くカーズは振り返りも立ち止まりもしなかったが、一度だけ言った。

「きさまが何を考えているかなど知ったことではないが、死にたくないのならば進むしかあるまい?
 このカーズの言葉、ゆめゆめ忘れぬことだな………『エニグマの少年』」
「………ああ」
(『だが断る』とでも言えれば、少しはスカッとしたかもな………『あいつら』だったら、言えるんだろうか)

宮本は今、軽く絶望していた。
前方から顔を背け、まとまらぬ思考のままゆっくりと歩く。
その手の中にはカーズから渡されたままの壊れた首輪がひとつ―――自分達が首輪の解除に一歩踏み出した唯一の証。

(………………どうすればいいんだ)

話す最中に『恐怖のサイン』を見つけられないかと相手を観察してはみたのだが、やはり無駄だった。
カーズは自分の力と頭脳に絶対的な自信があるのか『恐怖』は勿論『不安』すら見せようとしないのだから。

―――結局何故自分はすぐ殺されずに済んだのか。

―――さっきまで奴が読んでいたのは何の本だったのか。

―――何故奴が自分のスタンド名まで知っていたのか。

頭の中はどうでもいいことで溢れ、これから何処に向かいどうすべきなのか………先のことは、何一つ思い浮かばない。
宮本はほとんど『考えるのをやめていた』。

「やりたいこと………ぼくは―――」

第三者が見れば無防備極まりない姿であったが彼の前にはカーズ、後ろは禁止エリアにより実質行き止まりの一本道。
遭遇する誰かなど存在するわけも無く、ただただ歩き続けるだけでも危険は無かった。
そのうちカーズの後ろ姿も見えなくなり、さらに時間が経過してほとんど無意識のうちに遺跡から地上へと出たとき。


                 「―――『自由』になりたい」


宮本の口からはそんな言葉が出ていた。
その言葉を聞いた者は誰もおらず………それが意味の無い呟きなのか、確固たる意志の元で発せられた決意の言葉なのかは、彼自身にしかわからなかった。

ただ、これだけは言える。
彼がカーズの指示通りに動くのか、それとも他の方法を探してカーズを出し抜こうとするのか。
どちらを選ぶのかは少なくとも宮本の『自由』だろう。


【A-5 ピッツベルリナ山 神殿遺跡(地上) / 1日目 午後】

【宮本輝之輔】
[能力]:『エニグマ』
[時間軸]:仗助に本にされる直前
[状態]:恐怖、やや放心ぎみ、左耳たぶ欠損、心臓動脈に死の結婚指輪
[装備]:コルト・パイソン
[道具]:重ちーのウイスキー、壊れた首輪(SPW)
[思考・状況]
基本行動方針:???
0.???
1.カーズの指示に従う? カーズを出し抜く方法を考える?
2.体内にある『死の結婚指輪』をどうにかしたい

※この後どこに向かうかは次の書き手さんにお任せします。
※第二放送をしっかり聞いていません。覚えているのは152話『新・戦闘潮流』で見た知り合い(ワムウ、仗助、噴上ら)が呼ばれなかったことぐらいです。
※カーズから『第四放送時、会場の中央に来た者は首輪をはずしてやる』という伝言を受けました。
※死の結婚指輪を埋め込まれました。タイムリミットは2日目 黎明頃です。


#


「………………フン、あんな虫けらごときがどこまでやれるやら」

平然と呟く。
聞こえるはずが無いし、聞こえたとしても何も問題など無い。
先ほど出会った少年はカーズの中でそれほどちっぽけな存在でしかなかった。

主催者側の人間という戯言など最初から信じていなかった。
あの少年は『何も知らない』―――首輪を破壊して見せたときの反応からしても間違いないだろう。
いまや生かさず殺さず、使い捨ての『駒』というのがカーズにとっての少年―――名前すら知らない少年。
カーズは自分の知りたいことを聞いただけで、情報交換すらしていないのだから。

では何故カーズは少年のスタンドを『エニグマ』と言い当てられたのか?
その答えは先ほど彼が読んでいた一冊の本にあった。

(それにしても、このカーズともあろうものが迂闊であった………これほど有用なものを見逃していたとは………)

誰が想像できようか。
本の名は『スタンド大辞典』―――参加者全員のスタンド能力が記されているものであったことを。
天才といわれたカーズが乱戦による傷を癒すため、動かずにいた間にその内容を全て覚えきってしまったことを。

数千年以上『自信』を積み重ね『恐怖』など存在しないカーズにとって『エニグマ』は『謎』でもなんでもなく、単なる無力なスタンド。
だからこそ少年を脅しつけ、『駒』にするほうが自分にとって有用になると考えたのだった。
もし少年のスタンドが万が一にでも自分を倒しうる可能性を持っていたならば、カーズはためらい無く首輪を切り裂いていただろう。

そう、宮本の『殺されないためにあえてスタンドを明かす』という策は成功していたのである。
………彼が意図したのとは真逆の理由であったが。

(ヤツは地上を行くか………追うことはできんが指輪ははずせぬ、指定場所には必ずやってくるだろう………
 それまで生きていられれば、だがな)

後ろにあった少年の気配は先ほど離れていった……遺跡から地上に出たのだろうと判断する。
先程暗闇の中で見た少年の目はほとんど死んでいる、だがちょっぴり生きている程度の生気しか感じられないものだった。
だが少年と話すうちにカーズは確かに見た………自由を手にしたいという意志の片鱗が、目の奥に宿っているのを。
しかしだからといって、少年に期待しているわけでは全くなかった―――彼には『あらゆる恐怖を克服する』といったような先に進む意志が欠如していたのだから。

(最初見たときはそこらのドブねずみのほうが、よっぽどいい目をするのではないかと思ったが……場合によっては化けるやもしれん。
 とはいえ、くれてやれる命は精々半日………それで変われなければ文字通り虫けらのように殺されるのが関の山であろう………
 大して頭が回るとも思えんし、果たして首輪の解除などという甘い言葉で寄ってくるマヌケが何人見つかることやら………)

そもそも首輪の解除という話自体、参加者を釣る餌に過ぎない。
先ほどの乱戦後、誰かの攻撃か落石が命中でもしたのか………理由は不明だが、持っていた首輪が壊れているのを見て思いついた策略。
勿論、自分に限れば首輪の解除がどうでもいいというわけではないが。

カーズが簡単な『伝言』だけを命じ、助言すら碌に行わなかったのはそのためである。
戦闘に入る前だろうが殺される直前だろうが、少年が参加者に話せばいいだけならしくじる可能性は皆無。
その後少年がどうなろうと知ったことではない―――自分は伝言の結果、ノコノコとやってきた参加者を奇襲するだけだ。

「しかし、その前にやらねばならんことがある………」

このまま隠れていれば参加者は再び出会い、争い、勝手にその数を減らしてゆくだろう。
だがやはり、自分に屈辱を与えた者たちを許しておくわけには行かなかった。
頂点に立つものはひとり、自分以外に存在してはいけないのだから。

「待っておれ、吸血鬼に人間どもよ……このカーズが受けた屈辱、必ず味わわせてやる………
 スタンドとかいう妙な力にはもう、遅れはとらぬぞ………」

傷はほぼ完璧に癒えたし、相手の手の内も読めた。
太陽こそ沈んでいないものの、自分が敗北するなど万に一つも考えられない。

一見無表情に見える顔、その目の奥に静かな怒りを潜ませつつ、カーズは進んでいった―――


【A-4 南東(地下) / 1日目 午後】

【カーズ】
[能力]:『光の流法』
[時間軸]:二千年の眠りから目覚めた直後
[状態]:身体ダメージ(ほぼ完治)
[装備]:なし
[道具]:基本支給品×5、サヴェジガーデン一匹、首輪(由花子)
    ランダム支給品1~5(アクセル・RO:1~2/カーズ+由花子+億泰:0~1)
    工具用品一式、コンビニ強盗のアーミーナイフ、地下地図、壊れた首輪×2(J・ガイル、億泰)
    スタンド大辞典
[思考・状況]
基本行動方針:柱の男と合流し、殺し合いの舞台から帰還。究極の生命となる。
0.参加者(特に承太郎、DIO、吉良)を探す。場合によっては首輪の破壊を試みる。
1.柱の男と合流。
2.エイジャの赤石の行方について調べる。
3.自分に屈辱を味わせたものたちを許しはしない。
4.第四放送時に会場の中央に赴き、集まった参加者を皆殺しにする。


※スタンド大辞典を読破しました。
 参加者が参戦時点で使用できるスタンドは名前、能力、外見(ビジョン)全てが頭の中に入っています。
 現時点の生き残りでスタンドと本体が一致しているのはティム、承太郎、DIO、吉良、宮本です。
※死の結婚指輪の解毒剤を持っているかどうかは不明です。
 (そもそも『解毒剤は自分が持っている』、『指示に従えば渡す』などとは一言も言っていません)


首輪の解析結果について
1.首輪は破壊『可』能。ただし壊すと内部で爆発が起こり、内部構造は『隠滅』される。
2.1の爆発で首輪そのもの(外殻)は壊れない(周囲への殺傷能力はほぼ皆無)→禁止エリア違反などによる参加者の始末は別の方法?
3.1、2は死者から外した首輪の場合であり、生存者の首輪についてはこの限りではない可能性がある。


【備考】
  • 生きている参加者の首輪を攻撃した場合は、攻撃された参加者の首が吹き飛びます(165話『BLOOD PROUD』参照)
  • 死の結婚指輪がカーズ、エシディシ、ワムウのうち誰の物かは次回以降の書き手さんにお任せします。
 ちなみにカーズは誰の指輪か知っています。


【支給品】

死の結婚指輪(第二部)
元は山岸由花子の支給品。

柱の男が誰かと再試合を望むとき、相手が逃げたままでいられないように埋め込む「儀式」のリング。
リングの中には毒薬が入っており、外殻が溶け出す33日以内に埋め込んだ張本人を倒して解毒剤を入手しなければ助からない。
手術などで取り出すのは(人間の外科医学では)不可能。
毒の種類はひとりひとり違うので複数埋め込まれたら全員の解毒剤を飲む必要がある。

ロワでは33日だと長すぎるため、外殻が溶け出すのは12時間後になっている。


スタンド大辞典(オリジナル?)
元は虹村億泰の支給品。

ジョジョロワ3rd参加者が参戦時点で持つスタンドの名前、能力、外見(ビジョン)が書かれている本。
ただし本体名は一切記されていないため、誰がどのスタンドを持っているかはわからない。
イメージとしてはコミックスの合間にあるスタンド紹介のページから本体名だけ消した感じ。


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最終更新:2015年12月31日 15:02