ヒガシカタプロジェクト?

「『東方心綺楼』……ヒガシカタ、いや、これはトウホウって読むのか?」

広瀬康一の見つめる液晶画面には、確かにそう表示されていた。
まだゲーム開始から間もない頃、D-2エリア・猫の迷い里の一角の廃屋の中でのことだ。
彼の支給品のうちの一つは、ノートパソコンだったのだ。

「おおっ、何だコレスゲーッ!!」

と、康一が驚くのも無理もない。
1999年、プレステ2すら世に出ていない時代から呼び出されてきた彼にとって、
2013年発売のゲーム『東方心綺楼』と、それを動かすパソコンはまさに未来のアイテムだった。
見たこともない高精細の液晶画面、スピーカーからは流れる音楽はCDのように高音質だ。

「殺し合いの場に呼びつけておいてこんなものを持たせるなんて……
 あの男たちは一体何を考えてるんだ? まさか、このパソコンにスタンドが宿っていたりとか……
 でも説明書きを見てもやっぱりコレ、ただのパソコンみたいだし……
 ……ちょっと、調べてみないと判らないよなぁ……」

と、言い訳めいた事を口走る康一。
その手には、ご丁寧にも同梱されていたゲームパッドが握られている。
TVゲームが好きだという仗助ではないが、見たこともない高性能のゲーム機で
ちょっとぐらい遊んでみたいと彼が思うのは、きっと、自然で、仕方のないことである。

「キャラクターセレクト……格闘ゲームかな?」

『Practice』……『練習』モードを選択すると表示されたのは、
向かい合う様に大写しに配置された二人の人物のイラストと、それを遮る様に縦に並んだ10名の小さなイラスト……
よくある対戦格闘ゲームのキャラクター選択画面であった。
そこでまず、康一の目を引いたのが……


「女の子ばっかりだな……」

巫女装束、黒い三角帽子、大きなリュック、タヌキの尻尾と、
画面のキャラクターは様々な特徴を持っていたが、共通していたのは『若い女性』であるということだった。
大体中学生から20歳程度の外見で描かれているように見える。

「うーん、こういうのは仗助くんにはウケないかもなー。
 ……あんなにモテるのに『恋愛?キョーミ沸かねぇなぁ~』って顔してるし」

と、そんな呑気な事をつぶやく康一。
カーソルを動かすたびに次々に表示されるキャラクターの絵を眺めているうち、あることに気付く。

「この『黒い三角帽子』の女の子……最初の部屋でボクの前に立ってなかったか……?」

康一がカーソルを合わせたのは、『人間代表の魔法使い 霧雨魔理沙』なる少女だ。
黒い大きな三角帽子に、同じく黒い上着とスカート、腰まで届く金髪のロングヘア、
歳は康一と同じくらいか、あるいは少し年下に見える。
この、いかにも『私は魔女だぜ。うふふ』と言わんばかりの姿をした少女と同じ格好の後ろ姿を、
つい先程……最初に呼び出された広間で見かけていたことを思い出したのだった。

もしや。康一が参加者名簿を探すと、『霧雨魔理沙』という名前が見つかった。
彼女だけではない。『博麗霊夢』『河城にとり』『古明地こいし』『聖白蓮』『豊聡耳神子
『二ツ岩マミゾウ』『秦こころ』。
……この『東方心綺楼』のキャラクター選択画面と参加者名簿で、『8人』の共通する名前が見つかったのだ。
今液晶に映るキャラクターたちとよく似た姿の人物が、魔理沙なる少女の他に7人とも
この会場に呼び出されている可能性は、非常に高い。


「だけどまさか本物の『魔法使い』や『化け狸』だったり、しないよね……。
 この人たちが『スタンド使い』なら、こんな風に呼ばれるような能力を持っててもおかしくはないだろうけど……。
 『スタンド使い』って存在が格闘ゲームの題材になる程、世間に知られてる訳じゃないし……。
 このキャラクターの『モデルとなった女の子』が、この殺し合いに参加させられているってことなのか?」

と、康一はそう推察した。
きっと彼女たちはどこかの芸能プロダクションのアイドル候補生か何かなのだろう。
『魔法使い』や『河童』だったりするのはこのゲームの中だけの話で、
実際はスタンド能力を持たない、普通の女の子たちなのだろう……。
そんな人たちが――見ず知らずの他人とはいえ――こんな殺し合いに巻き込まれて死んでゆくのは、許せることじゃない。
ボクの『エコーズ』でどこまでできるかは分からないが……早く探しだして、守ってあげよう。
……よく見るとみんな結構美人だし。
……ヒッ!やめて、ボクの脳内の由花子さん、そんな怖い目で見ないで。
そんなつもりはこれっぽっちも無いんです。ごめんなさい。ゴメンナサイ!

「ごっ、ごめんッ!ゴメンナサイ!!」

康一はこの場にいる訳でもない恋人に、思わず謝罪の言葉を口にしていた。
卓上に置いた名簿もそっちのけで、嫉妬の緑炎をその眼に燃やす幻覚に向かって、
繰り返し頭を振り下ろしていた。

「許して!浮気なんてするつもりじゃないんです……って、これはッ!」

その時視界に入り込んだ文字列が、康一を現実に引き戻した。
そこには、『広瀬康一』の他に、杜王町に住む友人たち
東方仗助』、『虹村億泰』、『岸辺露伴』、『空条承太郎』、『ジョセフ・ジョースター』の名と
……顔を変えて行方をくらましたスタンド使いの殺人常習者『吉良吉影』の名が記されていたのだ。


……そうだ。こんな所で油を売っている場合じゃあない。
ボクの友達が、見知らぬ女の子たちが、そして『吉良吉影』が、みんな一緒くたになって集められているんだ。
どんな事が起こるか、分かったもんじゃない。
吉良吉影が、あの女の子たちのうちの誰かの『手』を狙って既に動き出しているかもしれない。
すぐに出発しよう。仗助くん達と合流しなければ。彼女達を吉良吉影の魔の手から守らなければ。

こうして広瀬康一は荷物をたたみ、数刻の後に修羅界へと変貌する『猫の隠れ里』を後にしたのだった。


【D-2エリア・猫の隠れ里/深夜】
【広瀬康一@第4部 ダイヤモンドは砕けない】
[状態]:健康
[装備]:なし(服装は学生服)
[道具]:基本支給品、不明支給品×1(ジョジョ・東方の物品・確認済み)、ゲーム用ノートパソコン@現実
[思考・状況]
基本行動方針:殺し合いを止める。
1:仲間(仗助、億泰、露伴、承太郎、ジョセフ)と合流する。
2:吉良吉影を止める。
3:東方心綺楼の登場人物のモデルの少女たちを守る。

[備考]
※参戦時期は吉良吉影を一度取り逃がした後(第4部『シアーハートアタック(11)終了後』)です。
※スタンド能力『エコーズ』に課せられた制限は今のところ不明です。
※最初のホールで、霧雨魔理沙の後ろ姿を見かけています。
※『東方心綺楼』参戦者の外見と名前を覚えました。(秦こころも含む)
 ただし、彼女たちの事を特殊な能力を持たない一般人だと思っています。


  • 支給品紹介
<ゲーム用ノートパソコン@現実>
2010年代に発売された、ノートパソコン。21型ワイド液晶のゲーム用モデル。
ノートパソコンとしてはかなりの高機能で、要求スペックの高いゲームソフトも快適に動く。
マウスと大量のバッテリーパックの他、ゲームパッドが2個付属されている。
PCゲーム『東方心綺楼』がインストール済み。
バージョンは不明だが、少なくとも秦こころがプレイアブルとなって以降のものである。
その他のソフト、機能については不明。

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遊戯開始 広瀬康一 063:少女が見た空想風景

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最終更新:2014年06月03日 03:32