序章(8)

 ソレが何処から生まれたのか、誰も知らない。
 誰かが望んだから、其処にあるのだと言う。
 ソレは、全てを知っている。
 ソレは、全てを見ている。
「ああ、つまらない―――」
 ソレが、静かに呟いた。
 何故ソレが呼び出されたのか。
 復讐者(アヴェンジャー)のクラスが、召喚されてしまったから。
 裁定者(ルーラー)のクラスが、欠けてしまったから。
 聖杯と呼ばれるものが、泥に塗れていたから。
 理由はいくつもあって、しかしそのどれも、ソレが呼び出された理由には足りていない。
 ソレは、少女の姿をしていた。
 けれど、ソレの本当の姿を誰も知らない。
 否。本当の姿なんて、ソレにはない。
 ソレの名は、ラプラスの魔
 欠けてしまったルーラーのクラスの代用品。
 代用品には収まらない、イレギュラー。
 ソレは全てを知っている。誰かがそうあれと望んだから。
 街にひっそりと、ソレが溶け込んだ。
 裁定者にあって、裁定者に非ず。
 ソレはただ、眺めるモノ。観測者。
 まだ誰も、ソレに気付いていない―――。

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最終更新:2016年09月22日 03:56