「うぃ~~~…………助けてくれ……」
頭がぐゎんぐゎん言う。まるでお寺の鐘の中に私が入って、
それを誰かが勢いよく突きまくるような感覚だ。
実際に視界に入るのはヒル石の天井。
団地の老朽化で出来た一本の「ひび」が、回るハズも無いのに私の目の前でくるくる回っている。
まるで風車のように。
それを誰かが勢いよく突きまくるような感覚だ。
実際に視界に入るのはヒル石の天井。
団地の老朽化で出来た一本の「ひび」が、回るハズも無いのに私の目の前でくるくる回っている。
まるで風車のように。
「もう、みさちゃんったら」
「ほんと、あんな格好で走り回っていたからよ。ばか」
「うみゅ~~~……ごみんなさい」
両耳からは聞き慣れた声が13倍くらい増幅されたエコーとなって私の耳に届く。
この際13倍でも3倍でも10倍でもいい。
2人の友人の話し声すらお寺の鐘のように響く。
あやのと柊は、おそらく電気オーブンのニクロム線の様に真っ赤になった私の顔を見ては呆れかえっている。
勝手知ったる他人の家。あやのは、以前兄貴の看病した時に見付けた水枕を戸棚から取り出し、
水と氷を入れて私がいつも使ってる枕と入れ替える。
「ほんと、あんな格好で走り回っていたからよ。ばか」
「うみゅ~~~……ごみんなさい」
両耳からは聞き慣れた声が13倍くらい増幅されたエコーとなって私の耳に届く。
この際13倍でも3倍でも10倍でもいい。
2人の友人の話し声すらお寺の鐘のように響く。
あやのと柊は、おそらく電気オーブンのニクロム線の様に真っ赤になった私の顔を見ては呆れかえっている。
勝手知ったる他人の家。あやのは、以前兄貴の看病した時に見付けた水枕を戸棚から取り出し、
水と氷を入れて私がいつも使ってる枕と入れ替える。
「全く。ホントいっつも世話ばかり掛けて。少しは反省しなさいよ」
「ほ、ホントに昨日はごめん。げほっげほっ、」
「き、昨日の事、赦した訳じゃないんだからね。
あんたが倒れたって言うから心配して………しししししてる訳じゃないけど、
と、とにかくアンタの間抜け面を見に来ただけなんだからねっ」
柊が何を言いたいのか理解出来無いのは、私の思考回路が完全に停止しているからか?
「柊ちゃん、声が大きいわ。
みさちゃん、お家の人が帰ってくるまで私達で看病するから、安心して寝てて」
「けほっ、けほっ………すまねぇ、あやの…柊ぃ……」
「ほ、ホントに昨日はごめん。げほっげほっ、」
「き、昨日の事、赦した訳じゃないんだからね。
あんたが倒れたって言うから心配して………しししししてる訳じゃないけど、
と、とにかくアンタの間抜け面を見に来ただけなんだからねっ」
柊が何を言いたいのか理解出来無いのは、私の思考回路が完全に停止しているからか?
「柊ちゃん、声が大きいわ。
みさちゃん、お家の人が帰ってくるまで私達で看病するから、安心して寝てて」
「けほっ、けほっ………すまねぇ、あやの…柊ぃ……」
二人が来るまで、家に居たのは私だけだった。
父親と兄貴は会社、母親は東武ストアのパートに出ている。
私も本来は学業に励んで(?)いるところで、つまり、普段の平日昼間は家が空っぽなのである。
小学生の時は「鍵っ子」だったので、1人で家の中に居ても平気なのだが、
いざ風邪をひくとなると、何だか心細い。
心細いあまりに、私はあやのにメールを送り、家に呼んだ。
意識がもうろうとした中で、慣れない手つきでメールを打ったもんだから、
もしかしたら暗号文状態のまま送ってしまっているのかも知れない。
父親と兄貴は会社、母親は東武ストアのパートに出ている。
私も本来は学業に励んで(?)いるところで、つまり、普段の平日昼間は家が空っぽなのである。
小学生の時は「鍵っ子」だったので、1人で家の中に居ても平気なのだが、
いざ風邪をひくとなると、何だか心細い。
心細いあまりに、私はあやのにメールを送り、家に呼んだ。
意識がもうろうとした中で、慣れない手つきでメールを打ったもんだから、
もしかしたら暗号文状態のまま送ってしまっているのかも知れない。
滅多に風邪をひかない私が風邪をひいた理由。
そして、柊がいつもより恐ぇ理由。
それは、昨日の体育の授業にある。
そして、柊がいつもより恐ぇ理由。
それは、昨日の体育の授業にある。
私達の住む町は、それまでぽかぽかだった陽気が一転して真冬のような寒さとなり、
栃木方面から吹き付ける冷たい風で町内は冷凍庫の様な寒さとなった。
空気も乾いている。こういう時にもっとも拗らせやすいのが「風邪」だ。
たかが風邪だがされど風邪。ちゃんと治しておかないととんでもない病気に発展するってコトは
この前やってたテレビ番組で知った知識だ。
栃木方面から吹き付ける冷たい風で町内は冷凍庫の様な寒さとなった。
空気も乾いている。こういう時にもっとも拗らせやすいのが「風邪」だ。
たかが風邪だがされど風邪。ちゃんと治しておかないととんでもない病気に発展するってコトは
この前やってたテレビ番組で知った知識だ。
「うぅー、寒い!!何でこういう日も外で体育なのよ!!」
「こ、こういう日は体育館でやりたいわよね」
「こ、こういう日は体育館でやりたいわよね」
昨日の事だった。昨日は一面鉛色の曇り空で、気温は一気に低下、北国では大雪が降って交通機関が麻痺したらしい。
2時間目。私立で冷暖房完備でありながら「12月まで暖房は付けないという」アホ校長のせいで、
私ら生徒と先生は2月並みの寒さに凍えながら1時間目の授業を受けた。
この学校、冷暖房のスイッチは各教室にあるが、職員室で集中管理されているため、生徒が勝手に操作出来ないようになっている。
こういう時は理系物理の男子クラスの方が快適かもね。こっちより気温高そうだし。
2時間目。私立で冷暖房完備でありながら「12月まで暖房は付けないという」アホ校長のせいで、
私ら生徒と先生は2月並みの寒さに凍えながら1時間目の授業を受けた。
この学校、冷暖房のスイッチは各教室にあるが、職員室で集中管理されているため、生徒が勝手に操作出来ないようになっている。
こういう時は理系物理の男子クラスの方が快適かもね。こっちより気温高そうだし。
そして2時間目。体育。私の一番好きな授業だ。学校は昼飯と体育の授業と部活のためにあると言っても良い。
1時間目の終わりのチャイムと共に、真っ先に更衣室へ直行する。あやのと柊も連れて。
今にも雪が降りそうな空だが、今日の女子体育は何故か外。
埼玉の北部は比較的寒く、東京や大宮よりは2~3℃気温が低い。
昼はまだ暖かいが、朝と夜は霜が降りるほど冷え込み、この時に半袖で走り回るなど、流石の私も厳しい。
1時間目の終わりのチャイムと共に、真っ先に更衣室へ直行する。あやのと柊も連れて。
今にも雪が降りそうな空だが、今日の女子体育は何故か外。
埼玉の北部は比較的寒く、東京や大宮よりは2~3℃気温が低い。
昼はまだ暖かいが、朝と夜は霜が降りるほど冷え込み、この時に半袖で走り回るなど、流石の私も厳しい。
「おーっす、さっみぃーなー!!」
「み、みさちゃん………!! 寒くないの?」
「うーん、寒い。でも、運動すれば身体はあったまるんだぜ!!」ぶるぶるぶるぶる
「お前、流石にその格好は場違いだぞ」
「へ?」
「『へ?』じゃないわよ!!その格好、見てるこっちが寒いわ」
「だったら見るなよ」
「あんたが目の前に居るから、嫌でも視界に入るのよ」
しょーがねーだろ。私も好きでこんな格好をしている訳じゃない。
私は半袖の体操服にハーフパンツという、明らかに今日の様な日にそぐわない姿でグラウンドに立っている。
体操服の下は胸に当てる下着だけなので、実質1枚だけ。
せめてジャージがあれば救われたものの、うっかり忘れて今は家のハンガにぶら下がっている。
ハッキリ言おう。マジ寒い。
陸上で着ていたハーフトップのユニフォームよりかはマシだが、寒い。
乾いた北風が容赦なく私に吹き付ける。マジ寒い。
「ぶるぶるぶるぶる、寒ぃ」
「アンタさぁ、他の人から借りてくれば良かったじゃない。
陸上の友達、他のクラスにも居るでしょ?」
「あー、居るけど、何か恥ずかしくってさ」
「それなら、こなた辺りから借りれば良かったじゃない」
「チビっ子のじゃ着られる訳ねーだろ?」
「なら、みゆきの…」
「高良に借り作るのは何だか申し訳ない」
「あぁ!!いちいち五月蠅いわねっ」
何だよ~柊ぃ~、そうやっていちいち怒るから彼氏出来ねーんだぞ。
「喧しいわ!!もう、風邪引いたって知らないんだからねっ!!
その辺で勝手に倒れていればいいわ!!」
「とか何とか言って、私が風邪引いたら家に来るんだろ?前みたいに」
「お前、喧嘩売ってるだろ?」
「あ?売ってなんかねーよ。普段は私の事ぞんざいに扱っておいて、
『風邪引いても知らないわよ?』ってか?全くめでてーな。
あーあ、折角友達続けてやってる私の努力は一生報われねーんだろーな」
「な、何よその言い方!!
いいわ、一生言ってなさい。本当に知らないわ、ふん!!」
「まぁまぁ、柊ちゃん。みさちゃんも落ち着いて」
「うーん、寒い。でも、運動すれば身体はあったまるんだぜ!!」ぶるぶるぶるぶる
「お前、流石にその格好は場違いだぞ」
「へ?」
「『へ?』じゃないわよ!!その格好、見てるこっちが寒いわ」
「だったら見るなよ」
「あんたが目の前に居るから、嫌でも視界に入るのよ」
しょーがねーだろ。私も好きでこんな格好をしている訳じゃない。
私は半袖の体操服にハーフパンツという、明らかに今日の様な日にそぐわない姿でグラウンドに立っている。
体操服の下は胸に当てる下着だけなので、実質1枚だけ。
せめてジャージがあれば救われたものの、うっかり忘れて今は家のハンガにぶら下がっている。
ハッキリ言おう。マジ寒い。
陸上で着ていたハーフトップのユニフォームよりかはマシだが、寒い。
乾いた北風が容赦なく私に吹き付ける。マジ寒い。
「ぶるぶるぶるぶる、寒ぃ」
「アンタさぁ、他の人から借りてくれば良かったじゃない。
陸上の友達、他のクラスにも居るでしょ?」
「あー、居るけど、何か恥ずかしくってさ」
「それなら、こなた辺りから借りれば良かったじゃない」
「チビっ子のじゃ着られる訳ねーだろ?」
「なら、みゆきの…」
「高良に借り作るのは何だか申し訳ない」
「あぁ!!いちいち五月蠅いわねっ」
何だよ~柊ぃ~、そうやっていちいち怒るから彼氏出来ねーんだぞ。
「喧しいわ!!もう、風邪引いたって知らないんだからねっ!!
その辺で勝手に倒れていればいいわ!!」
「とか何とか言って、私が風邪引いたら家に来るんだろ?前みたいに」
「お前、喧嘩売ってるだろ?」
「あ?売ってなんかねーよ。普段は私の事ぞんざいに扱っておいて、
『風邪引いても知らないわよ?』ってか?全くめでてーな。
あーあ、折角友達続けてやってる私の努力は一生報われねーんだろーな」
「な、何よその言い方!!
いいわ、一生言ってなさい。本当に知らないわ、ふん!!」
「まぁまぁ、柊ちゃん。みさちゃんも落ち着いて」
「おい、お前ら。そんなにグラウンド走りたいんだったらそのまま会話を続けてもいいぞ。
もう授業中は始まっている」
「「「す、すみませんっ」」」
もう授業中は始まっている」
「「「す、すみませんっ」」」
「みゅ~、柊に嫌われたぁ~」
「みさちゃんが調子に乗りすぎるからよ」
「だってだってだって~」
確かに調子に乗りすぎた。私が悪いんだから、文句は言えない。
しかし、水道水よりも冷たいあやのである。
「違うわよ。みさちゃんは厳しく言っておかないとまた調子にのるからよ。
ほら、みさちゃんの出番だよ、ほら」
「うん…行ってくる」
訂正。相変わらず怒る時は厳しいあやのである。
「みさちゃんが調子に乗りすぎるからよ」
「だってだってだって~」
確かに調子に乗りすぎた。私が悪いんだから、文句は言えない。
しかし、水道水よりも冷たいあやのである。
「違うわよ。みさちゃんは厳しく言っておかないとまた調子にのるからよ。
ほら、みさちゃんの出番だよ、ほら」
「うん…行ってくる」
訂正。相変わらず怒る時は厳しいあやのである。
今日の体育ほど乗り気がしなかった事は無い。
鉛色の空の下、今日の体育の授業は地味~なソフトボール。
小学生の頃、地元の少年野球に入っていた私は野球やソフトボールをすること自体は好きだ。
だが、今日の様な寒い日は常に体を動かしていないと流石に寒い。
それよりも、私が怒らせてしまった柊がさっきから一言も口をきいてくれなくて、
それに凹んでいるから、乗り気がしないのだ。
鉛色の空の下、今日の体育の授業は地味~なソフトボール。
小学生の頃、地元の少年野球に入っていた私は野球やソフトボールをすること自体は好きだ。
だが、今日の様な寒い日は常に体を動かしていないと流石に寒い。
それよりも、私が怒らせてしまった柊がさっきから一言も口をきいてくれなくて、
それに凹んでいるから、乗り気がしないのだ。
「あー、マジで寒い。外も寒いけど、私の心の中も寒い」
ボコボコに凹んだ金属バットを手に握り、ピッチャーをじーっと見る。
ピッチャーは柊だ。こういう時は違うチームので良かったと思う。
でも、今顔を合わせたくない奴が目の前に居る。何だか怖ぇーよ。
先生の笛の音と共に3回オモテが始まる。柊がものすっげー勢いで球を投げてくる。
怖ぇー、と頭の中で連発しながらバットを振ろうとする。しかし、直後にボスっと後で音がした。
「ストライーク!」
あれ?私がハズした?
自慢じゃないが、私は柊レベルの球ならほぼ確実に打つことが出来る。
それなのに、見事に外した。
ボコボコに凹んだ金属バットを手に握り、ピッチャーをじーっと見る。
ピッチャーは柊だ。こういう時は違うチームので良かったと思う。
でも、今顔を合わせたくない奴が目の前に居る。何だか怖ぇーよ。
先生の笛の音と共に3回オモテが始まる。柊がものすっげー勢いで球を投げてくる。
怖ぇー、と頭の中で連発しながらバットを振ろうとする。しかし、直後にボスっと後で音がした。
「ストライーク!」
あれ?私がハズした?
自慢じゃないが、私は柊レベルの球ならほぼ確実に打つことが出来る。
それなのに、見事に外した。
「ストライーク!」
「ストライーク!バッターアウト!」
三振を喰らった。どうも今日は調子が出ねぇ。
柊の球は某赤い人よろしく通常の三倍…とまでは行かないが、いつもの3割り増しくらいの勢いで球を投げてきた。
私に対する怒りを球に込め、私に直接投げつけるかのように。
幸いデッドボールは避けられたが、ぶんぶん振ったバットは見事に3つの球をスルーしてしまった。
柊の球は某赤い人よろしく通常の三倍…とまでは行かないが、いつもの3割り増しくらいの勢いで球を投げてきた。
私に対する怒りを球に込め、私に直接投げつけるかのように。
幸いデッドボールは避けられたが、ぶんぶん振ったバットは見事に3つの球をスルーしてしまった。
「どうした日下部?今日はヤケに調子悪いな」
クラスメイトに心配され、先生にまで心配されちまった私。
やべぇ、どうかしてるみてぇだ。
クラスメイトに心配され、先生にまで心配されちまった私。
やべぇ、どうかしてるみてぇだ。
「へ、へっくしゅんっ!!!!」
マジ寒い。今日は史上最悪の体育の日だった。
マジ寒い。今日は史上最悪の体育の日だった。
その後、私は柊と一言も口をきかぬまま一日を過ごした。
残りの授業は殆ど頭に入っておらず、5時間目の世界史では黒井先生からの愛のムチを頂戴し、
6時間目の生物でひかる先生に指名地獄を喰らったのは言うまでもない。
まぁ、ぼーっとしてた私の方が悪ぃんだから、ひっぱたかれても文句は言えない。
残りの授業は殆ど頭に入っておらず、5時間目の世界史では黒井先生からの愛のムチを頂戴し、
6時間目の生物でひかる先生に指名地獄を喰らったのは言うまでもない。
まぁ、ぼーっとしてた私の方が悪ぃんだから、ひっぱたかれても文句は言えない。
放課後、柊はあやのにだけ「さよなら」と挨拶し、妹やチビっ子達とさっさと帰ってしまった。
私は鞄に教科書を詰め、体操服の入った巾着袋を持ってグラウンドへ向かう。
陸上部は引退したが、可愛い後輩達のために毎日部活へは行くことにしている。
空は相変わらず鉛色だが、雨の降る気配は無い。
私は鞄に教科書を詰め、体操服の入った巾着袋を持ってグラウンドへ向かう。
陸上部は引退したが、可愛い後輩達のために毎日部活へは行くことにしている。
空は相変わらず鉛色だが、雨の降る気配は無い。
あー、なんだか気が向かない。今日は帰ろうっかなぁ。
「みさちゃん、大丈夫?」
「うーん、今日は気が向かねぇから、陸上部行くのやめよっかなぁ」
「いや、そうじゃなくて」
「あ、柊のことか?うん、帰りに柊ん家寄って謝る」
「違うわよ。みさちゃん、何だかすごく具合悪そうなんだけど」
「な、何言ってんだよ、体は平気なんだぜっ!!ほれ……うわっ」
「みさちゃん、大丈夫?」
「うーん、今日は気が向かねぇから、陸上部行くのやめよっかなぁ」
「いや、そうじゃなくて」
「あ、柊のことか?うん、帰りに柊ん家寄って謝る」
「違うわよ。みさちゃん、何だかすごく具合悪そうなんだけど」
「な、何言ってんだよ、体は平気なんだぜっ!!ほれ……うわっ」
がたん。
椅子から落ちた。そういや5時間目から頭がフラフラすんだよな~。
机に突っ伏していた私は、あやのに体だけは元気な事を示そうと立ち上がったのだが、
いきなり頭がふらっと来て、視界がぐるりと回った。
「今日は帰った方がいいわ。私、家まで送ってあげるから。柊ちゃんには明日謝ろう」
「うん…、そうする」
あやのが「具合が悪そう」と言うのだから、どうやら私は具合が悪いようだ。
あやのが言うことはだいたい正しいから、素直に受け止めてしまう。柊なら反発するけど。
机に突っ伏していた私は、あやのに体だけは元気な事を示そうと立ち上がったのだが、
いきなり頭がふらっと来て、視界がぐるりと回った。
「今日は帰った方がいいわ。私、家まで送ってあげるから。柊ちゃんには明日謝ろう」
「うん…、そうする」
あやのが「具合が悪そう」と言うのだから、どうやら私は具合が悪いようだ。
あやのが言うことはだいたい正しいから、素直に受け止めてしまう。柊なら反発するけど。
帰りはあやのと一緒に帰った。いつものことだけど。
カラダが急にだるくなり、電車に乗っている時はあやのによりそっていたような気がする。
最寄り駅に着き、オレンジとクリーム色の路線バスに乗り、終点の団地中央で降りる。
そこはもう私の住むボロ団地の敷地内だが、私は一番南側の住棟なので、バス停から更に歩く。
と言っても2~3分の距離だが、今日はやけに長く感ぜられる。
化学実験のおもりの様に重たい足を運びながら、なんとか5階まで上がる。
あやのは私が家に着いて玄関を開けるまで、ずっと側に付き添ってくれた。
いつも悪いな、あやの。
「私はいいわ。今日はゆっくり休んだ方がいいわ。明日、柊ちゃんに謝りましょ?」
「う、うん。ありがと」
カラダが急にだるくなり、電車に乗っている時はあやのによりそっていたような気がする。
最寄り駅に着き、オレンジとクリーム色の路線バスに乗り、終点の団地中央で降りる。
そこはもう私の住むボロ団地の敷地内だが、私は一番南側の住棟なので、バス停から更に歩く。
と言っても2~3分の距離だが、今日はやけに長く感ぜられる。
化学実験のおもりの様に重たい足を運びながら、なんとか5階まで上がる。
あやのは私が家に着いて玄関を開けるまで、ずっと側に付き添ってくれた。
いつも悪いな、あやの。
「私はいいわ。今日はゆっくり休んだ方がいいわ。明日、柊ちゃんに謝りましょ?」
「う、うん。ありがと」
夜、私は夕飯も食べずに布団に潜り込んだ。
スチールサッシから吹き込む隙間風が五月蠅くて、結局寝ついたのは兄貴が仕事から帰ってからのことだ。
スチールサッシから吹き込む隙間風が五月蠅くて、結局寝ついたのは兄貴が仕事から帰ってからのことだ。
そして、翌朝。
予定ならば今日はいつもより早く起きて家を出て、駅で柊に謝って一緒に行くつもりだった。
しかし、身体はそれを許してはくれず、40度の高熱と激しい腹痛と喉の痛みが全身を襲った。
平熱が35.2度の私にとって40度の熱は文字通りの「高熱」であり、はっきり言って地獄である。
蛇足だが、私にとっての「微熱」は36度台後半で、たいていの人の平熱に相当する。
私は母親に「何としてでも学校に行く」と言ってみたものの、結局却下され、
兄貴に運ばれて私は布団の中で大人しくすることにした。
北側の四畳半は特に寒い。
ガスストーブを付けて、私は横になる。
スチールサッシから吹き込む隙間風がびゅうびゅう五月蠅く、やっぱり寝付けない。
あやのの家からアルミサッシを持って来たいくらいだ。
予定ならば今日はいつもより早く起きて家を出て、駅で柊に謝って一緒に行くつもりだった。
しかし、身体はそれを許してはくれず、40度の高熱と激しい腹痛と喉の痛みが全身を襲った。
平熱が35.2度の私にとって40度の熱は文字通りの「高熱」であり、はっきり言って地獄である。
蛇足だが、私にとっての「微熱」は36度台後半で、たいていの人の平熱に相当する。
私は母親に「何としてでも学校に行く」と言ってみたものの、結局却下され、
兄貴に運ばれて私は布団の中で大人しくすることにした。
北側の四畳半は特に寒い。
ガスストーブを付けて、私は横になる。
スチールサッシから吹き込む隙間風がびゅうびゅう五月蠅く、やっぱり寝付けない。
あやのの家からアルミサッシを持って来たいくらいだ。
そして今に至る。
やがて、母親がパートから帰ってきて、あやのと柊に「いつもごめんね」と挨拶する。
あやのは台所に残り、何やら話している。
柊は、私の部屋で、さっきからずっと側にいる。
手元には一冊の文庫本が。きっと暇潰しに読むつもりだったのだろう。
しかし、柊は本を閉じたまま、ずっと黙ってこちらを見ている。
時折、ちらりと曇りガラスの向こうの鉛色の世界を見て、はぁ、と小さなため息をつく。
昨日、調子に乗りすぎて怒らせてしまったのが、本当に申し訳ない。
あやのは台所に残り、何やら話している。
柊は、私の部屋で、さっきからずっと側にいる。
手元には一冊の文庫本が。きっと暇潰しに読むつもりだったのだろう。
しかし、柊は本を閉じたまま、ずっと黙ってこちらを見ている。
時折、ちらりと曇りガラスの向こうの鉛色の世界を見て、はぁ、と小さなため息をつく。
昨日、調子に乗りすぎて怒らせてしまったのが、本当に申し訳ない。
「ひいら…ぎ……」
「ん、何?」
声がすっかりしゃがれている。柊は本を閉じ、こちらを見る。
「ん、何?」
声がすっかりしゃがれている。柊は本を閉じ、こちらを見る。
「ご、ごめ…………けほっ、ご、ごめん……な……」
精一杯、気持ちを込めて、柊に謝る。でも、声がかすれて上手く喋れない。
精一杯、気持ちを込めて、柊に謝る。でも、声がかすれて上手く喋れない。
「それはもういいわよ。私も言い過ぎたし。私の方こそごめん」
そう言われるとますます申し訳なくなっちまう。
そう言われるとますます申し訳なくなっちまう。
「あの…さ……」
「ん?」
もう一度問いかける。今度は優しい笑顔で答えてくれる。
「なんで……うちに…来ることにしたの?そりゃ、呼んだのは………私だけ…ど………」
けほっ、けほっ。
「うん、正直に言うと、アンタの事が心配だった。それだけよ」
「それだけ…?」
「それだけ。」
「…………そっか…。なんか…嬉し…いな……」
「そう言われると、照れるわね。昨日、ごめんね。
昨日の帰り、アンタが本当に倒れていたらどうしようかと、心配だったわ」
相変わらずドライな口調で話す柊。でも、何だろう。この感じ。何か暖かい。
「ん?」
もう一度問いかける。今度は優しい笑顔で答えてくれる。
「なんで……うちに…来ることにしたの?そりゃ、呼んだのは………私だけ…ど………」
けほっ、けほっ。
「うん、正直に言うと、アンタの事が心配だった。それだけよ」
「それだけ…?」
「それだけ。」
「…………そっか…。なんか…嬉し…いな……」
「そう言われると、照れるわね。昨日、ごめんね。
昨日の帰り、アンタが本当に倒れていたらどうしようかと、心配だったわ」
相変わらずドライな口調で話す柊。でも、何だろう。この感じ。何か暖かい。
「柊ぃ」
「ん?」
「柊って…優しいんだな」
すんげー恥ずかしいけど、本当に思ったことを言ってみる。
「へっ?!ちょ、アンタ、また熱上がってるんじゃないの?
ど、どうしたのよ、と、突然………」
柊が動揺している。なんつーか、可愛い。
突然顔を真っ赤にした柊。耳まで赤い。あれ、風邪までうつしちまったかな?
「ね、熱なんか無いわよ!
た、ただ、その、あの……あ、あ、アンタに…そんなこと…言われたの………初めてだから……
だから……、ちょっと…」
「ちょっと?」
「…………は、恥ずかし……って、あー!!何でアンタに動揺してんのよ!!」
私を見るのが恥ずかしくなったのか、急に顔に手を当てて私に背を向ける。
ていうか、こっちが恥ずかしいから、台詞の後半は心の中で叫んでくれ。
なんつーか、柊がすんげー可愛く見える。
「だって…さ、柊って、いっつも……妹とか…チビっ子と、一緒のクラスに居ること多いじゃん?
中学ん時も……クラスは一緒だった…けど、二人きりで……話すことも無かったし、
修学旅行ん時も…どっか……行っちまうし………、
もう…さ………、私……柊に嫌われちったんじゃねーかって……考えるようになって…さ…
うっ……うっ……うぅ………」
あれ?何で私、泣いてんのか?泣いてんのか?
目からにじみ出てきた涙が、頬に一条の筋をつくる。
「最近…は…さ……、昼も…うっ…うっ………一緒に……食べることも…減ったし……、」
「日下部……」
涙が止まらない。柊から見れば、突然泣き出した訳わかんねー奴にしか見えていないのだろう。
多分。
こぼれた涙は敷き布団に落ち、そこだけまあるい染みをつくっている。
「ん?」
「柊って…優しいんだな」
すんげー恥ずかしいけど、本当に思ったことを言ってみる。
「へっ?!ちょ、アンタ、また熱上がってるんじゃないの?
ど、どうしたのよ、と、突然………」
柊が動揺している。なんつーか、可愛い。
突然顔を真っ赤にした柊。耳まで赤い。あれ、風邪までうつしちまったかな?
「ね、熱なんか無いわよ!
た、ただ、その、あの……あ、あ、アンタに…そんなこと…言われたの………初めてだから……
だから……、ちょっと…」
「ちょっと?」
「…………は、恥ずかし……って、あー!!何でアンタに動揺してんのよ!!」
私を見るのが恥ずかしくなったのか、急に顔に手を当てて私に背を向ける。
ていうか、こっちが恥ずかしいから、台詞の後半は心の中で叫んでくれ。
なんつーか、柊がすんげー可愛く見える。
「だって…さ、柊って、いっつも……妹とか…チビっ子と、一緒のクラスに居ること多いじゃん?
中学ん時も……クラスは一緒だった…けど、二人きりで……話すことも無かったし、
修学旅行ん時も…どっか……行っちまうし………、
もう…さ………、私……柊に嫌われちったんじゃねーかって……考えるようになって…さ…
うっ……うっ……うぅ………」
あれ?何で私、泣いてんのか?泣いてんのか?
目からにじみ出てきた涙が、頬に一条の筋をつくる。
「最近…は…さ……、昼も…うっ…うっ………一緒に……食べることも…減ったし……、」
「日下部……」
涙が止まらない。柊から見れば、突然泣き出した訳わかんねー奴にしか見えていないのだろう。
多分。
こぼれた涙は敷き布団に落ち、そこだけまあるい染みをつくっている。
柊が羨ましいと思ったことは何度もある。
面倒見がいいこと、真面目でしっかりしていること、勉強も出来ること…etc.
何もかもが、羨ましかった。
私は頭悪いし、それ以前に勉強嫌いだし、
あやのや柊にすぐ甘えるし(兄貴にもだけど)、チビっ子に言われた様にお子様でアホだし、
取り柄と言えば脚が速いこと位か?
もうさ、気が付けば柊の事を考えるようになってたのかも知れない。
1年前だっけな?あやのが兄貴と付き合うようになったのは。
それから休日にあやのと会う機会は減った。いや、ウチによく遊びに来るのでむしろ増えたかな?
でも、あやのと遊ぶ機会ががくっと減った。
それでも、あのエロバカ兄貴にあやのを取られた事に対しては、それほど悔しくなかった。
それ以来、私は柊の事を考えるようになっていた。
柊自信もあの泉っていうチビっ子と一緒のことが多いけど、
かく言う私もチビっ子と最近遊ぶ様になったから、それは別にどうだっていい。
『どうだっていい』って、チビっ子には失礼だけど……。
面倒見がいいこと、真面目でしっかりしていること、勉強も出来ること…etc.
何もかもが、羨ましかった。
私は頭悪いし、それ以前に勉強嫌いだし、
あやのや柊にすぐ甘えるし(兄貴にもだけど)、チビっ子に言われた様にお子様でアホだし、
取り柄と言えば脚が速いこと位か?
もうさ、気が付けば柊の事を考えるようになってたのかも知れない。
1年前だっけな?あやのが兄貴と付き合うようになったのは。
それから休日にあやのと会う機会は減った。いや、ウチによく遊びに来るのでむしろ増えたかな?
でも、あやのと遊ぶ機会ががくっと減った。
それでも、あのエロバカ兄貴にあやのを取られた事に対しては、それほど悔しくなかった。
それ以来、私は柊の事を考えるようになっていた。
柊自信もあの泉っていうチビっ子と一緒のことが多いけど、
かく言う私もチビっ子と最近遊ぶ様になったから、それは別にどうだっていい。
『どうだっていい』って、チビっ子には失礼だけど……。
あれ?今私は何を考えていたんだ?高熱でいつも以上に回転の鈍い頭の中は、
すでに柊のことでいっぱいだ。容量が少ないのですぐにでもパンクしそう。
「ほら、泣くなって」
ハンカチをそっと差し出す柊。布団に入ったままそれを受け取り、顔を拭ってティッシュで鼻をかむ。
「…うっ……うっ……だから…さ、」
「うん」
「柊が……来てくれた時は………すんげー…嬉しかった……うっ……
………だから……私……私………」
うわぁぁぁああああ
「よしよし、ごめんね」
恥ずかしながら、声を出して泣いてしまった。
悲しいから泣いたのではない。嬉しいから泣いたのだ。
泣いている間、柊は私の頭を撫でていた。撫で撫ではやっぱりあやのの方が上手いな。
すでに柊のことでいっぱいだ。容量が少ないのですぐにでもパンクしそう。
「ほら、泣くなって」
ハンカチをそっと差し出す柊。布団に入ったままそれを受け取り、顔を拭ってティッシュで鼻をかむ。
「…うっ……うっ……だから…さ、」
「うん」
「柊が……来てくれた時は………すんげー…嬉しかった……うっ……
………だから……私……私………」
うわぁぁぁああああ
「よしよし、ごめんね」
恥ずかしながら、声を出して泣いてしまった。
悲しいから泣いたのではない。嬉しいから泣いたのだ。
泣いている間、柊は私の頭を撫でていた。撫で撫ではやっぱりあやのの方が上手いな。
そうか、私、今、気付いたよ。柊のこと、好きだってことをね。
「好き」と言っても「恋愛感情で」という意味ではない。しかし、「友達」として好きという意味でもない。
なんだかよくわかんねーけど、強いて言えば、「友達」にも「恋愛」にも当て嵌まらない、もっと大切な関係かな?
「好き」と言っても「恋愛感情で」という意味ではない。しかし、「友達」として好きという意味でもない。
なんだかよくわかんねーけど、強いて言えば、「友達」にも「恋愛」にも当て嵌まらない、もっと大切な関係かな?
ずっと相手にされていないと思って、悲しかった。
真面目でしっかりしている柊が、羨ましかった。
そして、今日、本当にお見舞いに来てくれたことが、嬉しかった。
いつまでも一緒にいたい。これからも、ずっとずっと。
柊とは、もっともっと友達になりたい。いや、親友になりたい。いやいや、もっとそれ以上の関係になりたい。
なれるかな?
なれるよな。
真面目でしっかりしている柊が、羨ましかった。
そして、今日、本当にお見舞いに来てくれたことが、嬉しかった。
いつまでも一緒にいたい。これからも、ずっとずっと。
柊とは、もっともっと友達になりたい。いや、親友になりたい。いやいや、もっとそれ以上の関係になりたい。
なれるかな?
なれるよな。
「うっ……うっ…………柊ぃ…」
「ば…ばか………私まで泣いちゃうじゃない」
柊はもらい泣き寸前のところでこらえている。
顔がこわばっていて、相当我慢しているのが私でも分かる。
この時、私は何を考えていたのだろう。私は、ぼぅーっとする意識の中、柊にこう告白した。
「ば…ばか………私まで泣いちゃうじゃない」
柊はもらい泣き寸前のところでこらえている。
顔がこわばっていて、相当我慢しているのが私でも分かる。
この時、私は何を考えていたのだろう。私は、ぼぅーっとする意識の中、柊にこう告白した。
「柊ぃ」
「ん?」
「ん?」
「すき」
「へ?」
「柊のこと、すき」
「な、何を突然……!!」
「柊は? 好き?」
「………う、うん」
「………う、うん」
「どっち?」
「好きよ」
「好きよ」
「柊ぃ」
「ん?なぁに?」
「ん?なぁに?」
気付いたら私は上半身を起こし、柊にすがりつく様にまた泣いていた。
柊も我慢の限界に達して、泣き出してしまった。
お互い、抱き合うように泣いていた。
悲しいから泣いたのではない。嬉しいから泣いたのだ。
多分、柊も嬉しいから泣いていた……よな。
柊も我慢の限界に達して、泣き出してしまった。
お互い、抱き合うように泣いていた。
悲しいから泣いたのではない。嬉しいから泣いたのだ。
多分、柊も嬉しいから泣いていた……よな。
ほんの20~30分の出来事だと思っていたんだけど、
実は、2時間以上も経っていた。外は真っ暗だ。しまった。
受験生なのに引き留めてしまった。私も受験生だけど。
実は、2時間以上も経っていた。外は真っ暗だ。しまった。
受験生なのに引き留めてしまった。私も受験生だけど。
鳴き声。襖は閉まっていたけど、きっと丸聞こえだったな。
柊はその後も、正座をしながらずっと私の側に居てくれた。
すっかり相手にして貰えなくなったのかと思い、落胆していたのだが、
それは杞憂に終わった。
すっかり相手にして貰えなくなったのかと思い、落胆していたのだが、
それは杞憂に終わった。
襖がゆっくりと開く。
「おはよう、みさちゃん。具合はどう?」
穏やかな笑顔であやのが入ってきた。
「お粥、おばさんと作ったけど、今温めてくるわね」
「あやの…有り難う」
「ほら、日下部、顔洗いなさいよ。真っ赤よ」
「うぅ~身体が起きられない。手伝って~」
「自分で起きなさいよ!!もう、しょうがないわね。ほら、つかまって」
柊に手伝って貰って起きあがる。熱はだいぶ下がったようだが、
泣いていたせいで顔はくしゃくしゃだ。洗面所は水しか出ないので、風呂場で顔を洗う。
「おはよう、みさちゃん。具合はどう?」
穏やかな笑顔であやのが入ってきた。
「お粥、おばさんと作ったけど、今温めてくるわね」
「あやの…有り難う」
「ほら、日下部、顔洗いなさいよ。真っ赤よ」
「うぅ~身体が起きられない。手伝って~」
「自分で起きなさいよ!!もう、しょうがないわね。ほら、つかまって」
柊に手伝って貰って起きあがる。熱はだいぶ下がったようだが、
泣いていたせいで顔はくしゃくしゃだ。洗面所は水しか出ないので、風呂場で顔を洗う。
「今日は、娘のために本当に有り難う。いつも迷惑ばかりかけてごめんなさいね」
「いいえ、こちらこそ。突然お邪魔してすみません」
「日下部、また明日ね。さっさと治しなさいよ」
「うん」
では、失礼しますと言って、二人は玄関を出ようとした。
そのとき、多分無意識に私は柊を呼んだ。
「柊ぃ」
「ん?」
「また、明日な」
「うん、風邪持って来ないでね。さっさと寝なさいよ」
「うん」
二人は帰っていった。時間は9時をまわっている。本当、私のために申し訳ない。
母親が両家の親御さんに連絡を入れる。遅くまで引き留めてしまってすみません。
私からも謝りたいとこだが、もう寝なさいと言われて大人しく寝る。
「いいえ、こちらこそ。突然お邪魔してすみません」
「日下部、また明日ね。さっさと治しなさいよ」
「うん」
では、失礼しますと言って、二人は玄関を出ようとした。
そのとき、多分無意識に私は柊を呼んだ。
「柊ぃ」
「ん?」
「また、明日な」
「うん、風邪持って来ないでね。さっさと寝なさいよ」
「うん」
二人は帰っていった。時間は9時をまわっている。本当、私のために申し訳ない。
母親が両家の親御さんに連絡を入れる。遅くまで引き留めてしまってすみません。
私からも謝りたいとこだが、もう寝なさいと言われて大人しく寝る。
翌日。風邪はすっかり治った。
回復力の早さと脚の速さは誰にも負けない。
回復力の早さと脚の速さは誰にも負けない。
「おーっす、柊ぃ~」
「きゃっ、抱きつくな!!」
「風邪治ったぜ~、それもこれもあやのと柊のお陰なんだぜ」
「す、すがりつくな////お前は猫か!!」
「柊ぃ~柊ぃ~」
「分かったから離れなさいよっ」
「みゅ~~~~あやのー、柊がロシアのツンデレ地帯より冷てぇよぉ~~」
「つ、ツンデレ言うなぁ!!」
「それを言うならツンドラでしょ?甘えたい気持ちも分かるけど、ほどほどにね。
柊ちゃん、本当は嬉しいんだから」
「うん。でもさ、さっき柊が反射的にツッコんだけど、柊って『ツンドラ』なのか?」
「ち、違うわよ。こなたがツンデレツンデレ言って、アンタがツンドラと言い間違えたから、
つ、つい、条件反射で……」
「みゅ~~~~~~あやの~~~柊はやっぱりチビっ子の方がいいんだぁ~~」
「きゃっ、抱きつくな!!」
「風邪治ったぜ~、それもこれもあやのと柊のお陰なんだぜ」
「す、すがりつくな////お前は猫か!!」
「柊ぃ~柊ぃ~」
「分かったから離れなさいよっ」
「みゅ~~~~あやのー、柊がロシアのツンデレ地帯より冷てぇよぉ~~」
「つ、ツンデレ言うなぁ!!」
「それを言うならツンドラでしょ?甘えたい気持ちも分かるけど、ほどほどにね。
柊ちゃん、本当は嬉しいんだから」
「うん。でもさ、さっき柊が反射的にツッコんだけど、柊って『ツンドラ』なのか?」
「ち、違うわよ。こなたがツンデレツンデレ言って、アンタがツンドラと言い間違えたから、
つ、つい、条件反射で……」
「みゅ~~~~~~あやの~~~柊はやっぱりチビっ子の方がいいんだぁ~~」
「あらあら、みさちゃんも柊ちゃんも相変わらずね。
私もしばらくの間は忙しくなりそうね。ふふふ」
私もしばらくの間は忙しくなりそうね。ふふふ」
完
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- 何で毎度みさお系シリアス面でみさおが泣く所あたりで
俺まで泣くんだろう。 -- 名無しさん (2008-08-05 20:21:25) - メタ簿リック光線 -- 名無しさん (2008-03-26 19:12:51)
- いいねぇいいねぇ・・メタリウム光線食らわせてやりたいくらいだ -- ウルトラセブン (2008-01-27 23:58:48)