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あふ☆いや ~らき☆すたAfterYears~

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「……く・さ・い・よ・ね……っと。 ……ふ――っ、やっと終わったよ――~~」

鉛筆を投げ出し(と言いたいところだけど、私、PCで原稿書いてるんだよね)、大きく伸びを一つ。
ワープロソフトのツールバー。その右肩にある「コンプ」と書かれた小さなマクロのアイコンをクリック。
たった今書き上げたばかりの原稿が、暗号化つきZipで圧縮され、メールに添付されて飛んでいく。

……よし、今日のお仕事終わりっと。

この雑誌(コンプティーク)の連載ラノベだけは、何をさておいても真っ先に書き上げることにしてる私。
その分、『月刊チェウンス』のほうの原作が遅れて、トミタさんには迷惑かけっぱなしなんだけどね。
……あ、そうだ。そういえば、あのゲームの初回特典書き下ろしの締め切りも近かったな――……

表計算ソフトで作ったスケジュール表に、マウスでぴ―――っと線を引く。
窓から差し込んでいた残暑の白い光は、いつの間にか暖かい色の西日に変わってた。



『あふ☆いや ~らき☆すた After Years~』



…………ふぅ。

私は今、物書きの仕事してる。「日向(ひなた)こなた」って名前でね。
好きなアニメのノベライズすら、読むのをめんどくさがってた私が、今じゃ物書きを生業にしてるなんて……
ゆい姉さんじゃないけど、自分でもびっくりだ。……やっぱり、泉家の血筋なのかなぁ。

――でも。
デビューした頃に感じてた、「創造することの恍惚感」みたいなのはいつしか薄れて、半ば惰性で文章を書き殴る毎日。
ご他聞に漏れず、『職業病』にもかかってる。
腰痛と慢性の腱鞘炎……それと、萌えに対する『不感症』、みたいなもの。
「趣味は仕事にするな」って、よく言ったもんだと思うよ。
ほんの数年前はあんなに入れ込んでたマンガやアニメを、今じゃ参考資料ぐらいな気持ちでしか見てない自分に気づいたときは、ちょっとショックだった。

需要側から供給側へ。
夏冬のコミケ(おまつり)からも足が遠のいて、同人誌もほとんど買わなくなった。
私の作品のファンサークルとは、仲良くしてもらってるけどね。
新刊貰ったり、お忍びの匿名でちょろっと寄稿したり……

学生から社会人へ。
締め切りのなんのと忙しい日々の中、ゆっくりゲームする時間も減ってきた。
そういえばあのネトゲー、アカウント期限切れしちゃってるなぁ……


……あの頃。
まだほんの四年しか経ってないのに、もうずいぶん前のような気がする。
私ももう二十二歳。少しずつ臆病者になるお年頃、ってね。

あの頃のみんなとは、今でも仲良くやってる。
つかさは調理師学校を出て、糟日部の商店街にあるお店で修行中。それ以来、お昼はいつもここ。
みゆきさんは医大の三回生。さすがのみゆきさんでも一浪したけど、無事希望の大学に入学できた。
近い学校じゃないんだけど、毎日実家から通ってる。

――「いつものみんな」は、今でも「いつものみんな」のまんま。
休日には、みんなで遊びに行くことも多い。

……でも、一人だけ。
「いつものみんな」の中で、一人だけ。
ほとんど会えなくなってしまった子がいる……


――そう、かがみ。


高校卒業後、かがみは弁護士を目指して遠くの四年制大学に行った。
かがみは頑張り屋だから、成績は大学(がっこう)でも上のほうだって聞いた。
そろそろ卒業が近くなって、卒論の仕込みや大学院の入試勉強で忙しいみたい。

毎日何通も往復してたメール、三日に一回はかけたりかかってきてた電話。
でも、だんだんとその数も減ってきてる……

PCの電源を落とし、ベッドに身体を投げ出す。
枕元に積み上げた本が崩れたけど、元に戻す気になれない。

ゆたかが卒業して実家に戻った後、私はまたお父さんと二人きりの生活に戻った。
そのお父さんも、今日は担当さんに誘われて連載の打ち上げ。
気がつけばすっかり日も暮れかかって、私のほかに誰もいない家の中は薄暗く、しん……と静まり返っている。

……カナカナカナカナ……

開け放った窓から、蜩(ひぐらし)の声が聞こえてくる。
はしゃぎながら駆け抜けていく、子供たちの歓声。
見上げれば、もくもくと沸き立つ入道雲。

あの頃聴いた、蝉の声。
あの頃見上げた、夏の空。
あの頃と、何も変わってない。


変わったのは……ただ……

「……んっ」

変わったのは……かがみと私……

「……ふ……」


……ね、かがみ。
私、ネトゲーでバーチャル結婚してた、って言ったよね。
結婚相手のハンドル、「Kagami」って言うんだよ……
ツインテールにリボンを装備したHigh-Priestでさ、
かがみと同じ、ツンデレでさ……


「……は……あふっ……」


……ね、かがみ。
私のラノベ、読んでくれてる?
……あの娘、かがみがモデルなんだよ。
かがみのこと、想って創ったキャラなんだよ……


「……あ……あん……んんっ……」


……かがみ……

……寂しいよ……会いたいよぅ…………


……………………


  ×  ×  ×  ×  ×  ×  


「……ん……」

気がつくと、もう日はとっぷりと暮れていた。
耳障りなオケラの鳴声と、ぽつぽつ混じり始めたコオロギの涼しげな声が、庭のほうから聞こえてくる。

あ……そのまま寝ちゃったんだな、私。

ベッドから身を起こして、さっきの事を思い出す。
しっとりと濡れた下着が張り付いて、ちょっと気持ち悪い。

……かがみ……

……そうだ。久しぶりに、電話してみよう。
「今忙しい」って、切られるかもしれないけど……

――たまには、いいよね?


たっぷり十回の、呼び出し音。
なんだろ、胸がドキドキする……


「……あ、かがみ?」
『あ、こ、こなた?久しぶりね、あはは;』
「?」

受話器から聞こえてくるのは、ずっと聞きたかった声。
少し上ずった、焦りの色が見え隠れする声。

ずいぶんと音質がよくなった、最近の携帯電話。
かがみの声は少し艶っぽくて、上気した息遣いが聞こえる。

「どしたの?なんだか息が荒いみたいだけど……」
『あ、え、いや、なんでもないわよ!』

変に慌てた、その声の調子。
少し鼻にかかった、甘い声。

……もしかして……

「……もしかして、お邪魔だったかナ?」
ちょっと茶化して、言ってみる。
胸の奥が、ずきん、と痛む。

……そうだよね。
ぱっと見、とっつきにくい感じがするだけど、根は可愛くて寂しがり屋のかがみ。
……大学の四年間で、彼氏の一人ぐらいできても、おかしくないよね……

『いや、あの、そういうわけじゃ……』
「……また、掛けなおすね?」

まずいなぁ。今の声、ちょっと涙声混じっちゃったかも。

『……ね、こなた?』
「……何?」

『その……ちょっと、話さない?』

そう言ったかがみの声は、さっきよりも落ち着いて……

……さっきよりも、もっと色っぽくて。


……あ、そうか。
かがみも、私と同じだったんだ。
ちょっとばかり、タイミングがズレてただけで……


遠く離れていても、"想い"は同じだったんだ。


そう思ったら……

「……うんっ」

急に、心が軽くなった。



  • Fin.-




(BGM:竹内まりや『AFTER YEARS』)
2007/05/26 15:10修正



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