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Tiny☆Stars『中編:夏の陰謀』

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だれでも歓迎! 編集
かがみが私を避けている。

そのことに気がついたのは卒業して間もなくのことだった。
5月の連休のときは「まだ、大学にもなじんでないだろうしこっちに来るのは無理だろうな」と気にしていなかった。
けど、さすがに夏休みにろくろく休みを取らなかったときにはピンときた。

メールや電話ではいろいろとやり取りはしてたから、私のことが嫌いになったわけではなさそう。
電話の声やメールの文面にも無理をしている様子はなかったもん。

つかさやみゆきさんからかがみの様子を聞いているから、なんとなく想像がつく。
たぶんだけど、しばらく顔を合わせないでいるうちに会いづらくなっちゃったんだろうなあ。
かがみらしいよホント。

みゆきさんは今いっしょに住んでるんだからから顔を合わせることには抵抗ないだろうね。
つかさはふたごの妹、少しぐらい会わなくたって顔を会わせるのに抵抗があるはずもない。
問題は私、かがみの家から私の家が離れてることもあるし、来るのに理由づけが必要になっちゃったんだろうね。
お店の方も『邪魔しちゃいけない』って思ってるのか、来てくれないし。

そんなこんなで時間がたつうちに、ますます会いに来づらくなっちゃってるんだろう。
どんな顔して会いに来ればいいのか、わかんないんだろうね、きっと。
やっかいだよね、ツンデレってのも。
でも、そこが可愛いんだけどね。

ならばこちらから……といきたかったが、バイトのリーダーになってから一気に休める日が減っちゃった。
かがみに会うどころか、イベントにすら行けなくなってしまったのには参っちゃったよ。
ショップに行く時間すら取りづらくなって、限定品の入手も難しくなっちゃったしね。
おかげで貯金が増えたのは、よかったんだか、悪かったんだか。

そういえばネトゲもインする日が減っちゃったなあ。
お店から帰ると疲れちゃって、夜更かしができなくなっちゃったし。
チャットの時に黒井先生に話したら、笑われちゃった。
まだまだ若いんだから、そんなこと言ってないでがんばれって。

でも、さすがにあれだけ忙しいと、私も限界かも。

バイトのシフトや出欠、食材の在庫確認、器具の点検・清掃、経理などなど。
店長がいない時には代理で業者と話をしたりもする。
困ったお客とのトラブルにも対処しなきゃならないし、ホントに目まぐるしい。

正式に言われてはいないけど、実質的に副店長みたいなもんなんだよね。
新規のバイトの面接にもかりだされたり、店長の代理で会議にも出たりしてるし。

そういえばこの間は雑誌の取材を受けたなあ、名物店員として。
パティたち何人かといっしょにインタビューに答えたり、写真を撮られたり。
いろいろな衣装に着がえさせられたから大変だったよ。
あの日はホント帰って夕食とお風呂を済ませたら、あっという間に朝になってたからなあ。

出来上がった雑誌を見たけど、写真のほとんどがパティだったのには苦笑した。
まあ、その気持ちもわからないではないけどね。

「このお店はこなたがいてこそなのに、編集部はわかってませんね!」

パティもみんなも不満を言ってたけど、私としてはお店の宣伝になればどっちでもいいと思ってる。
それに、いちばん大きな理由はわたしのからだが小さいからなんだと思ってる。
ちょっとアブナイお店に見えてしまうかもしれないって思ったんだろうね。

実を言うと、そこだけちょっと悔しい。

とにもかくにも、この忙しさは凄い。
何が凄いって、私の給料が正社員になりたてのころの倍になっているほどに凄い。
お店の売り上げも上がっているんで、みんなの給料も上がっているけどね。
でも、パティたちが協力してくれなかったら倒れてたかも。

だからといって、何もしないでいたわけじゃないよ。
みゆきさんやつかさとはもちろん、パティやひよりん、黒井先生たちとも連絡を取りあって、何とかしようとしたんだよね。
でも最初の1年は何事もなく過ぎちゃった、残念だけどね。

あ、そうそう、みさきちやあやのんとも連絡取りあってるよ、念のため。
ツテは多い方がいいからね。



かがみと合わなくなって2年めの春がはじまって、すぐのこと。
お店に行く支度をしているところに、みゆきさんからかかってきた電話。
それがきっかけになった。

取り次いでくれたゆうちゃんの顔色が気になったけど、とりあえず出てみる。
足早に階段を降りていく足音からすると、体調のほうは大丈夫みたい。

「みゆきさん、おはよう。どしたの? こんなに朝早く」

 - 泉さん、落ち着いて聞いてくださいね。実は…… -

「……え!?」

そこから先の言葉は出てこなかった。
しかもみゆきさんの言っている言葉も理解できなくなってしまったんだ。
頭の中でいろんな考えが渦巻いてたから。

みゆきさんは病院から電話をかけてきていた。
かがみが階段から落ちて頭を打ったらしいということ、救急車で病院に運ばれて今CTやMRIで検査中だということ。
電話越しの説明を聞いているうちに最悪の事態が頭をよぎる。
ケガはひどいのだろうか?
もし、それで万一のことがあったら?

かがみのいない世界、かがみが『思い出の世界の人』になってしまった世界、かがみが、かがみ、かが……

「……ずみさん! 泉さん!」

みゆきさんの声が聞こえ、ハッと我に返る。
私の受けたショックは大きかったらしい、気がつくと立っていたはずなのに座り込んでたんだ。
こんなんじゃいけないと首を思いっきりふって、改めて電話に出る。

「あ、ごめん、みゆきさん。それで、かがみの容態は?」

検査前にお医者さんが診てくれたけど、背中の打ち身の方がひどいくらいで頭の方はなんともなさそうとのこと。
検査はあくまで『念のため』であり、たいしたことはないみたいだ。
疲れがたまっているようなので、様子見も兼ねてきょうは休ませた方がいいとも言われたらしい。
ひとまず安心だ、と思ったらまた座り込みそうになる。

しゃっきりしろ、泉こなた!

すぐにでもかがみのとこに行きたかったけど、それはやめにした。
さすがに今の状態であったら、かがみの体調に影響が出るかもしれないもんね。

電話を終えて、朝ごはんの準備ができたダイニングに入る。
挨拶をしながら入る私を、お父さんとゆうちゃんが心配そうな顔で見ていた。

「こなた、だいじょうぶか?」

お父さんが心配そうな顔で聞いてくる。
てことは私、そんなに元気のない顔をしているのだろうか、今。
いけない、いけない、お店に着くまでには元気な顔にしておかなくっちゃ。
私が落ち込んでると店の雰囲気が暗くなるらしいからね。

「こなたお姉ちゃん、さっきの電話、みゆきさんからだったよね? なにかあったの?」

ゆうちゃんが澄んだ瞳で私を見つめている
電話越しのみゆきさんの声で、大変なことが起きたらしいことをわかっているだけに、どう説明したものかと悩んでしまう。
うう、そんな目で見つめられると、嘘がつけなくなるよ。
結局、隠しておいても仕方がないことなので、ホントのことを話した。

「お見舞いに行かなくていいの? かがみ先輩のとこ」

私は首を横にふって、まだ会いに行かないと答えた。
ふたりとも理由を聞きたそうだったけど、ちょっと答えをはぐらかした。

「いやあ、高校時代に風邪のお見舞いに行ったとき迷惑かけちゃったからさあ、行きづらいんだよねえ」

ふたりとも苦笑してたけど、納得はしてなかったみたい。
意外と鋭いからね、ふたりとも。
ごまかしきれたとは思っていない。

「ゆうちゃん! そろそろ食べないと遅刻しちゃうよ!」

腕時計を見た私が叫ぶと、ゆうちゃんも自分の腕時計を見て慌てる。
後片付けはやっておくからというお父さんの言葉に甘えて、私たちは急いで食べはじめた。

「いってきまあす!」

朝ごはんを済ませると手早く支度を整え、ゆうちゃんといっしょに駅へと急ぐ。
家を出たのは、普通なら充分に余裕のある時間。
でも、ゆうちゃんにとっては、この時間が遅刻しないギリギリのタイミング。
体力がついてきたとはいえ、まだまだ無理はさせられないからね。



電車に乗り込むと、息を切らしぎみのゆうちゃんを私にもたれかからせる。
体力をつけるために座りたくないというゆうちゃんと、そんなゆうちゃんが心配な私の妥協点。
うっすらと汗ばんで、肩で息をしはじめているゆうちゃんを横目にしばしの休息。

春日部の駅で、ゆうちゃんとはお別れ。
電車を降りるゆうちゃんを、ホームでみなみちゃんたちが待っていた。
表情がぱあっと明るくなったとこを見ると、みんな心配してくれてたんだね。
ゆうちゃんはいい友達を持ったなあ。

ここから先はひとりで秋葉原まで。
お店に着くまでの間に少し考えることに。
なにをって、今のかがみにしてあげられること。

お見舞いに行ったところで、かがみは喜んでくれない気がする。
たぶん『心配かけてごめん』と謝ってくるはず。
私が帰ったあとで落ち込んでしまうんだろうし、無理は禁物。
自重しなければ。

そうすると、何をしてあげたら……と考えているときに、一枚の釣り広告が目に入る。
いつもだったら特に気にすることもないその広告に、私の目は釘付けになった。
ファミレスの新店舗オープンの広告、それを見たとき、私の脳裏に閃きが生まれた。

一度閃くと、あとは早い。
やるべきことを整理しているうちに、あっという間に時間が過ぎていった。



「みんな、おはよう」

明るく挨拶しながらお店に入る。
なんとか気持ちの立て直しがまにあったようで、違和感を訴える表情はなかった。
オーケー、オーケー。

「こなたさん、遅かったですね」

着替えの終わった私に、サブリーダーの子が出欠確認が終わったと言ってくる。
病欠、遅刻、共になしのようだ。
というか、あと少しで私が遅刻するとこだったけどね。

焦りを顔には出さずに、みんなで整列して店長の前に並ぶ。
和装の女給さんがずらりと勢ぞろいした。
数日前からはじまった春の特別イベント、女給さんフェスタ。
エプロンの下の和服は桜をモチーフにしたものを使っている。

店長の簡単な挨拶が終わると、開店準備。
化学雑巾で軽く埃を取り、内装に乱れがないかチェックをしながら時間まで待つ。
時計を確認し、表の扉の「CLOSED」の看板を「OPEN」にする。
表で開店を待っていた人たちに声をかけながらね。

「いらっしゃいませ!」



平日ということもあり、午前中はほとんどお客さんはいない。
店内にのんびりとした空気が漂う。

今のうちにということでロッカールームに行き、新メニュー考案の参考にと持ってきたレシピ本を手に取り出した。
パラパラと本をめくって、目についた料理のレシピを書き写す。
少し手間取ったけど、図解も書き写したよ。

写し終わると、みゆきさんに電話をする。
かがみはみゆきさん家に戻って、すでに寝ているらしい。
どうやら本当に心配なさそうだとホッとしたあと、みゆきさん家のFAX番号を教えてもらう。
ふだんはおじさんが仕事の連絡用に使っているものだということなので、特別に許可をもらって。

それから簡単なメモと書き写したレシピを持って近くのコンビニへ。
教えてもらったFAX番号へレシピを流す。

「ひとまず、こんなとこかな」

とりあえず一安心というところだけど、なんとかしたいなあ。
このままズルズルと会えなくなってしまいそうで、怖い。

でもお昼近くなってからは忙しくなってきたので、考える時間はまるっきりなかった。
夕方にパティ他数名が出てきた時には忘れてるほどに。
で、閉店後ロッカールームに戻って思い出した。

ため息ひとつついていると、パティが声をかけてきた。

「こなた、ゆたかから聞きましたよ。かがみに会いに行かないんですってね。どうしてですか?」

「いや、ね。かがみの気持ちを考えると『今すぐ』って気にならないんだよね。
最初はほんとに忙しかったんだろうけど、今は『一人前になるまで会いに行っちゃいけない』とでも思ってるんじゃないかな。
だから今会いに行っちゃうと、かがみがダメになっちゃいそうな気がするんだよね。
だけど、きょうの様子を聞いてると、かがみのガマンも限界みたい。
私の方もこれ以上待てないし、ちょっと、いろいろやってみようかと思ってる」

パティにウインクして店を出た。



夜、家に帰ってからネトゲ仲間に相談。
いろいろな意見をもらったけど、先生の意見が一番の後押しになった。

「ウジウジ考えとらんと、行動あるのみや!」

ならばということで、次の日から早速行動に。
ひよりんやパティ、その他何人かの知り合いにメールして、目的に合いそうな人への連絡経路を探ることに。
何をお願いするにしても、これが肝心だからね。
つかさやみゆきさんにも頼んで、心当たりをあたってもらった。

ジリジリした思いを内に秘めて、数日が経過。
お店のバイトの子達にもいろいろ聞いてみたけど、心当たりはなさそうだった。
だけど知り合いの知り合いの、そのまた知り合いでもかまわないから、と言って探し続けてもらうことに。
そんなこんなで数週間が経過するうちに、ひよりんのお兄さん経由であたりがつけられそうとのこと。
ひよりんの下のお兄さんの後輩の、友達の先輩の友人の弟に、目的の人物がいる、とのことだった。

細くて頼りないものではあったけれど、ようやく糸がつながった。
その人物の詳細を聞いているうちに、ある企画が頭に浮かぶ。
うまくすれば、ある場所で、そこがダメでも別の場所で、目的は達せられるはず。
細工は流々、仕上げをごろうじろ。

フッフッフ、かがみんよ、待っているがよい!












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  • ゆうちゃんじゃなくてゆーちゃんですよ

    それとGJ -- migu (2009-01-04 02:51:02)

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