白い病室。
白い床、白い壁、白い天井、白いシーツ、そして、そこに横たわる白い肌の少女。
日本人にとって美しくも見えるその肌は、現実には病弱さの象徴だった。
そして、その病は確実に彼女の命を蝕んでいる。
「泉ちゃん……」
彼女は祈るような気持ちで自分を見つめる少女の名を呼んだ。
「泉ちゃん、ごめんね……」
春に花を咲かせる桜は、出会いと別れの象徴。
病室の窓から見える枝は、芽吹いてはいるものの、未だ開花に至らない。
「一緒に高校に行けなくて、ごめんね……」
その名に桜を冠する高校に、二人は共に通うはずだった。彼女が健康でさえあれば。
「そんなこと言わないで。一緒に陵桜に行こうよ。友達でしょ!」
泉こなたは彼女の手を握り締め、必死に懇願する。去り行く彼女を離すまいと力を込めて。
「生きていたいんだよね? 私と一緒にいたいって言ってくれたよね?」
「わたしだって、そうしたかったよ……」
こなたの視線から逃れるように彼女が振り向いた先は、窓の外の桜。
「でもわたしは、この桜を見ることさえできない……」
まさに燃え尽きようとする彼女の命は、たった数日の猶予さえ許さない。
「だめだよ。死なないでよ。私と一緒にいてよ!」
こなたの頬に涙が伝う。
「ごめんね。そのお願いは聞いてあげられない」
そして、彼女の頬にも。
「泉ちゃん……わたし、魔法使いになりたかったよ……」
すでに彼女は、自分の最期を理解していた。
「魔法で困ってる人を助けてあげて、戦争も犯罪もなくて、苦しむ人も悲しむ人もいない世界を
作って、泉ちゃんのお母さんも生きてて、わたしはずっと泉ちゃんと友達でいられる……そんな
魔法使いになりたかった……」
彼女の涙は、自分が死ぬことの怖さではなく、友達を残して逝ってしまうことの悔しさ。
「でもね、そんなものにはなれなかった……」
だから、彼女に施せる手段は何一つとしてない。
「わたしが死んだら、泉ちゃんは友達を作って。わたしより大切な友達を作って、わたしのこと
を笑って話してみせて」
「いやだよ、そんな遺言みたいなこと!」
こなたは彼女の手を握り締め、しかし彼女が握り返す力は弱まっていく。
その手を離すまいと強く握り締めるほどに、皮肉にも彼女の命が消えてゆくことを確かに感じ
られてしまう。
「約束、して……」
「うん……」
本当は認めたくない。けれど、認めなければならない。友達だから、約束は違えられない。
「わたし、夜空の星になる。そこからずっと泉ちゃんのこと見守って、泉ちゃんの願いを叶えて
あげるんだ。わたしに祈れば、願いは叶うから……」
それは嘘だ。こなたの願いは、虚しく潰えようとしているのだから。
「泉ちゃんの幸運の星に……」
それが彼女の最期の言葉だった。
桜の梢が花を咲かせるところは見ることなく、彼女は逝った。
白い床、白い壁、白い天井、白いシーツ、そして、そこに横たわる白い肌の少女。
日本人にとって美しくも見えるその肌は、現実には病弱さの象徴だった。
そして、その病は確実に彼女の命を蝕んでいる。
「泉ちゃん……」
彼女は祈るような気持ちで自分を見つめる少女の名を呼んだ。
「泉ちゃん、ごめんね……」
春に花を咲かせる桜は、出会いと別れの象徴。
病室の窓から見える枝は、芽吹いてはいるものの、未だ開花に至らない。
「一緒に高校に行けなくて、ごめんね……」
その名に桜を冠する高校に、二人は共に通うはずだった。彼女が健康でさえあれば。
「そんなこと言わないで。一緒に陵桜に行こうよ。友達でしょ!」
泉こなたは彼女の手を握り締め、必死に懇願する。去り行く彼女を離すまいと力を込めて。
「生きていたいんだよね? 私と一緒にいたいって言ってくれたよね?」
「わたしだって、そうしたかったよ……」
こなたの視線から逃れるように彼女が振り向いた先は、窓の外の桜。
「でもわたしは、この桜を見ることさえできない……」
まさに燃え尽きようとする彼女の命は、たった数日の猶予さえ許さない。
「だめだよ。死なないでよ。私と一緒にいてよ!」
こなたの頬に涙が伝う。
「ごめんね。そのお願いは聞いてあげられない」
そして、彼女の頬にも。
「泉ちゃん……わたし、魔法使いになりたかったよ……」
すでに彼女は、自分の最期を理解していた。
「魔法で困ってる人を助けてあげて、戦争も犯罪もなくて、苦しむ人も悲しむ人もいない世界を
作って、泉ちゃんのお母さんも生きてて、わたしはずっと泉ちゃんと友達でいられる……そんな
魔法使いになりたかった……」
彼女の涙は、自分が死ぬことの怖さではなく、友達を残して逝ってしまうことの悔しさ。
「でもね、そんなものにはなれなかった……」
だから、彼女に施せる手段は何一つとしてない。
「わたしが死んだら、泉ちゃんは友達を作って。わたしより大切な友達を作って、わたしのこと
を笑って話してみせて」
「いやだよ、そんな遺言みたいなこと!」
こなたは彼女の手を握り締め、しかし彼女が握り返す力は弱まっていく。
その手を離すまいと強く握り締めるほどに、皮肉にも彼女の命が消えてゆくことを確かに感じ
られてしまう。
「約束、して……」
「うん……」
本当は認めたくない。けれど、認めなければならない。友達だから、約束は違えられない。
「わたし、夜空の星になる。そこからずっと泉ちゃんのこと見守って、泉ちゃんの願いを叶えて
あげるんだ。わたしに祈れば、願いは叶うから……」
それは嘘だ。こなたの願いは、虚しく潰えようとしているのだから。
「泉ちゃんの幸運の星に……」
それが彼女の最期の言葉だった。
桜の梢が花を咲かせるところは見ることなく、彼女は逝った。
◆ ◇ ◆
「――っていうことがあったんだ」
「うぅ……こなちゃん……」
窓の外に桜並木が見える喫茶店の一席に、三人の女子高生。ちょうど満開になった桜を目当て
に、店の席はそこそこ埋まっていた。その中でこなたたちのいる一角だけ、違う雰囲気が漂って
いた。
こなたはかつての友達について尋ねられ、向かいの席のつかさとかがみにそれを話した。
つかさは止め処なく涙を流し、かがみは瞳を潤ませたまま俯いている。
「私たちは、ずっと……ぐすっ……友達だからねっ。大切な、友達だよ」
「私もこなたの友達よ。もちろんみゆきもね」
「うん……二人ともありがとう」
こなたは親友たちに笑顔で答えてみせる。それが彼女との約束なのだから。
「おーい、泉ちゃーん! 泉ちゃんだよね!」
三人の間に流れる湿っぽい空気を吹き飛ばすかのように、唐突に声が響く。
「やっぱり泉ちゃんだよね! 久しぶり!」
「ど、ドチラサマデショウカ」
陵桜とはデザインの異なる制服を着た少女は嬉しそうなのに対し、こなたは顔を背けている。
しかも棒読みである。
「ひどっ! 泉ちゃんわたしを忘れたの? 魔法使いって言えば思い出す?」
「魔法使いぃ? こなたの友達の?」
「そ、そ、そうだよ。泉ちゃんの友達」
いきなりかがみがこなたを睨んだため、彼女はびびっていた。
「友達を死なすな!」
この後、こなたはかがみにたっぷりと叱られましたとさ。
「うぅ……こなちゃん……」
窓の外に桜並木が見える喫茶店の一席に、三人の女子高生。ちょうど満開になった桜を目当て
に、店の席はそこそこ埋まっていた。その中でこなたたちのいる一角だけ、違う雰囲気が漂って
いた。
こなたはかつての友達について尋ねられ、向かいの席のつかさとかがみにそれを話した。
つかさは止め処なく涙を流し、かがみは瞳を潤ませたまま俯いている。
「私たちは、ずっと……ぐすっ……友達だからねっ。大切な、友達だよ」
「私もこなたの友達よ。もちろんみゆきもね」
「うん……二人ともありがとう」
こなたは親友たちに笑顔で答えてみせる。それが彼女との約束なのだから。
「おーい、泉ちゃーん! 泉ちゃんだよね!」
三人の間に流れる湿っぽい空気を吹き飛ばすかのように、唐突に声が響く。
「やっぱり泉ちゃんだよね! 久しぶり!」
「ど、ドチラサマデショウカ」
陵桜とはデザインの異なる制服を着た少女は嬉しそうなのに対し、こなたは顔を背けている。
しかも棒読みである。
「ひどっ! 泉ちゃんわたしを忘れたの? 魔法使いって言えば思い出す?」
「魔法使いぃ? こなたの友達の?」
「そ、そ、そうだよ。泉ちゃんの友達」
いきなりかがみがこなたを睨んだため、彼女はびびっていた。
「友達を死なすな!」
この後、こなたはかがみにたっぷりと叱られましたとさ。
-おわり-
「――と、話がオチたところで」
「落ちてねえよ!」
もちろんそんなもので誤魔化せるはずもなく、話は続く。
「あんたね! やって良いことと悪いことがあるわよ」
「あうぅ……」
かがみの剣幕に押されてこなたは小さくなっている。
「いくら作り話でも友達を死人扱いするなんて、何考えてんのよ!」
「作り話って……今の魔法使いさんの話は嘘だったの?」
『遅っ!』
つかさの想定外のボケに、他三人の声が重なった。
「ひどいよこなちゃん! そんな嘘をつくなんて!」
「つかさが怒るなんて相当なものね……」
つかさのボケと頬を膨らませた可愛らしさに、いくらか毒気を抜かれたかがみが呟く。
「よくよく考えてみればおかしな点はあったわよね。今際の際なのに医者や家族がいなかったり」
「細かい設定に突っ込むのは無粋ってものだよ」
確かにその通りではあるが、作り話とわかったからにはいくらでもできる。
それよりも重要な事柄がもう一つ。
「あのー……わたし、ここに座ってもいいかな?」
散々おいてきぼりにされてきた彼女が、ようやく自己主張した。
「落ちてねえよ!」
もちろんそんなもので誤魔化せるはずもなく、話は続く。
「あんたね! やって良いことと悪いことがあるわよ」
「あうぅ……」
かがみの剣幕に押されてこなたは小さくなっている。
「いくら作り話でも友達を死人扱いするなんて、何考えてんのよ!」
「作り話って……今の魔法使いさんの話は嘘だったの?」
『遅っ!』
つかさの想定外のボケに、他三人の声が重なった。
「ひどいよこなちゃん! そんな嘘をつくなんて!」
「つかさが怒るなんて相当なものね……」
つかさのボケと頬を膨らませた可愛らしさに、いくらか毒気を抜かれたかがみが呟く。
「よくよく考えてみればおかしな点はあったわよね。今際の際なのに医者や家族がいなかったり」
「細かい設定に突っ込むのは無粋ってものだよ」
確かにその通りではあるが、作り話とわかったからにはいくらでもできる。
それよりも重要な事柄がもう一つ。
「あのー……わたし、ここに座ってもいいかな?」
散々おいてきぼりにされてきた彼女が、ようやく自己主張した。
「あー、あの話ねー」
オレンジジュースを飲みながら話を聞き、彼女は納得したように肯いた。
「それ、泉ちゃんと二人で作った話なんだよね」
「あんたたちって……」
呆れるかがみ。
「『桜の梢』編を話したってことは、『修行の旅立ち』編や『禁断の恋』編は話してないんだ?」
「しかも複数作ってんのかよ……」
聞き捨てならないタイトルがあったような気もしたが、かがみは無視することにした。
「若気の至りってやつでいろいろ作ったんだヨ」
「あんたはそれを現在進行形でやってるだろ。外見的にも」
直前の出来事が出来事なだけに、かがみの突っ込みもいつもより鋭い。
「なんでそんな話を作ったの?」
「もちろん、誰かに聞かせるためだよ」
問われたこなたではなく、共著者である彼女が答えた。
「ちょ、ちょっ……」
「いいじゃない、暴露しちゃおうよ。友達を騙した罰ってことで」
止めようとするこなたに、彼女は取り合わない。
「暴露って、何か隠し事でもあるの?」
「隠し事ってゆうか、恥ずかしくて普通は話さないようなこと。どうせわたしは初対面だから」
そして彼女は、かつての出来事を語り始めた。創作ではない、本当の出来事を。
オレンジジュースを飲みながら話を聞き、彼女は納得したように肯いた。
「それ、泉ちゃんと二人で作った話なんだよね」
「あんたたちって……」
呆れるかがみ。
「『桜の梢』編を話したってことは、『修行の旅立ち』編や『禁断の恋』編は話してないんだ?」
「しかも複数作ってんのかよ……」
聞き捨てならないタイトルがあったような気もしたが、かがみは無視することにした。
「若気の至りってやつでいろいろ作ったんだヨ」
「あんたはそれを現在進行形でやってるだろ。外見的にも」
直前の出来事が出来事なだけに、かがみの突っ込みもいつもより鋭い。
「なんでそんな話を作ったの?」
「もちろん、誰かに聞かせるためだよ」
問われたこなたではなく、共著者である彼女が答えた。
「ちょ、ちょっ……」
「いいじゃない、暴露しちゃおうよ。友達を騙した罰ってことで」
止めようとするこなたに、彼女は取り合わない。
「暴露って、何か隠し事でもあるの?」
「隠し事ってゆうか、恥ずかしくて普通は話さないようなこと。どうせわたしは初対面だから」
そして彼女は、かつての出来事を語り始めた。創作ではない、本当の出来事を。
◆ ◇ ◆
芽吹いてはいるものの花開いてはいない桜の根元に、二人の少女が佇んでいた。
校庭には他に誰もいない。学年が変わろうとしているこの時期、大抵の部活は休みをとっており、
四月を目の前にして、彼女ら三年生もわざわざ卒業を済ませたこの学校に来る理由はなかった。
「泉ちゃん、ごめんね……」
彼女は瞳に涙を溜めて呟いた。
「一緒に高校に行けなくて、ごめんね……」
一滴の涙が、彼女の握り締めた不合格通知を濡らした。
「……陵桜に行ってくれるって言ったじゃん」
こなた自身、わかってはいた。もはやどう足掻こうと一緒に陵桜に通う手段はない。
わかっていても、彼女以外に苛立ちをぶつける場所がなかった。
「わたしだって、そうしたかったよ……」
少なくとも物理的に不可能ではなかった。実現できなかったのは、彼女の力不足ゆえのこと。
「でもわたしは、陵桜の桜を見ることはできない……」
数字が分けた二人の命運。当の二人はその正確な数値を知ることさえできない。
「……それじゃあ、私は陵桜に行くのをやめる。それで二人で同じ高校に」
「だめだよ! そんなことしちゃ駄目」
彼女の瞳から、まだ涙は止まらない。それでも彼女はこなたをしっかりと見据える。
「なんで!? 友達なんだから同じ高校に行きたいのに。一緒に行こうって約束、ちょっと違う
けど叶えられるよ!」
「その約束は叶えられない……泉ちゃんはせっかく合格したんだから、それを不意にしないで」
「学校のランクなんて、褒美につられただけだよ。一緒に行けなきゃ意味なんて」
「そんなこと言わないでよ!」
ほんの僅かな時間の、沈黙。
「ねえ、泉ちゃん……友達を作って。陵桜でわたしより大切な友達を作って、わたしのことを
笑って話してみせてよ。その友達と一緒に、わたしに陵桜がどんなところなのか教えて」
「私は友達なんて……」
「作れるよ。わたしは友達だよね」
桜の梢が花を咲かせるところは見ることなく、半ば一方的な約束を抱えて二人は別れた。
校庭には他に誰もいない。学年が変わろうとしているこの時期、大抵の部活は休みをとっており、
四月を目の前にして、彼女ら三年生もわざわざ卒業を済ませたこの学校に来る理由はなかった。
「泉ちゃん、ごめんね……」
彼女は瞳に涙を溜めて呟いた。
「一緒に高校に行けなくて、ごめんね……」
一滴の涙が、彼女の握り締めた不合格通知を濡らした。
「……陵桜に行ってくれるって言ったじゃん」
こなた自身、わかってはいた。もはやどう足掻こうと一緒に陵桜に通う手段はない。
わかっていても、彼女以外に苛立ちをぶつける場所がなかった。
「わたしだって、そうしたかったよ……」
少なくとも物理的に不可能ではなかった。実現できなかったのは、彼女の力不足ゆえのこと。
「でもわたしは、陵桜の桜を見ることはできない……」
数字が分けた二人の命運。当の二人はその正確な数値を知ることさえできない。
「……それじゃあ、私は陵桜に行くのをやめる。それで二人で同じ高校に」
「だめだよ! そんなことしちゃ駄目」
彼女の瞳から、まだ涙は止まらない。それでも彼女はこなたをしっかりと見据える。
「なんで!? 友達なんだから同じ高校に行きたいのに。一緒に行こうって約束、ちょっと違う
けど叶えられるよ!」
「その約束は叶えられない……泉ちゃんはせっかく合格したんだから、それを不意にしないで」
「学校のランクなんて、褒美につられただけだよ。一緒に行けなきゃ意味なんて」
「そんなこと言わないでよ!」
ほんの僅かな時間の、沈黙。
「ねえ、泉ちゃん……友達を作って。陵桜でわたしより大切な友達を作って、わたしのことを
笑って話してみせてよ。その友達と一緒に、わたしに陵桜がどんなところなのか教えて」
「私は友達なんて……」
「作れるよ。わたしは友達だよね」
桜の梢が花を咲かせるところは見ることなく、半ば一方的な約束を抱えて二人は別れた。
◆ ◇ ◆
「それって……」
「そ。『桜の梢』編は半分実話なの。わたしたちが会ったのはあれが最後だったから、他のやつと
違って実質的に泉ちゃん一人の創作なんだけどね」
恥ずかしいタイトルはともかく、こなたの意外なエピソードにつかさとかがみは驚いていた。
「二人で作った話もあるわけ?」
「わたしたちが登場する話をいくつかね。登場人物は片方がわたし、魔法使いになるの」
「うわぁ……」
かがみはいろんな意味で哀れみを込めた目でこなたを見た。
「人は誰もが黒歴史を持っているものなのだよ……」
中学生といえば、ちょっとオタクが入った子はそんなところに個性を発揮してしまうわけで。
「あんた、なかなか……あれよね……」
この友人もかなり凄い。初対面の人間にこんなことを話した挙句、少しも恥ずかしがっていない。
「わたしのことを聞かれて、泉ちゃんは『桜の梢』編を話したんだよね? それって友達のことを
すごく大切に思ってるってことだよね?」
「うっ……」
こなたが真っ赤になって俯いてしまったので二人は言葉が出なかった。こなたがそんな仕草を
見せるとは。
「約束通り、わたしのこと笑って話したんだから。二人のこと好きなんでしょ。好きって言いなよ」
「…………うん…………好き…………」
こなたの消え入りそうな声に。
「こなちゃんありがとう。私も大好きだよ」
「なななななな、何言ってんのよ! わ、私も嫌いなわけじゃないけど……」
どちらがどちらの反応なのか、言うまでもあるまい。
「わたしにも聞かせてほしいな。泉ちゃんと陵桜のこと」
一陣の風とともに、桜の木が僅かに肯いた。梢が揺れて、花びらを散らせる。
「そうね。こなたの珍しいところも見れたし」
「えっとね、私がこなちゃんと友達になったのは、私が外人さんに話かけられて困ってるとき――」
「そ。『桜の梢』編は半分実話なの。わたしたちが会ったのはあれが最後だったから、他のやつと
違って実質的に泉ちゃん一人の創作なんだけどね」
恥ずかしいタイトルはともかく、こなたの意外なエピソードにつかさとかがみは驚いていた。
「二人で作った話もあるわけ?」
「わたしたちが登場する話をいくつかね。登場人物は片方がわたし、魔法使いになるの」
「うわぁ……」
かがみはいろんな意味で哀れみを込めた目でこなたを見た。
「人は誰もが黒歴史を持っているものなのだよ……」
中学生といえば、ちょっとオタクが入った子はそんなところに個性を発揮してしまうわけで。
「あんた、なかなか……あれよね……」
この友人もかなり凄い。初対面の人間にこんなことを話した挙句、少しも恥ずかしがっていない。
「わたしのことを聞かれて、泉ちゃんは『桜の梢』編を話したんだよね? それって友達のことを
すごく大切に思ってるってことだよね?」
「うっ……」
こなたが真っ赤になって俯いてしまったので二人は言葉が出なかった。こなたがそんな仕草を
見せるとは。
「約束通り、わたしのこと笑って話したんだから。二人のこと好きなんでしょ。好きって言いなよ」
「…………うん…………好き…………」
こなたの消え入りそうな声に。
「こなちゃんありがとう。私も大好きだよ」
「なななななな、何言ってんのよ! わ、私も嫌いなわけじゃないけど……」
どちらがどちらの反応なのか、言うまでもあるまい。
「わたしにも聞かせてほしいな。泉ちゃんと陵桜のこと」
一陣の風とともに、桜の木が僅かに肯いた。梢が揺れて、花びらを散らせる。
「そうね。こなたの珍しいところも見れたし」
「えっとね、私がこなちゃんと友達になったのは、私が外人さんに話かけられて困ってるとき――」
こなたが帰宅すると、ちょうどそのタイミングで携帯電話が鳴る。相手は彼女だった。
「――もしもし」
当時は二人とも携帯電話を持っていなかったから、番号を交換できなかった。電話越しで話す
ことさえ、今まではなかったのだ。
『もしもし泉ちゃーん! 三十分ぶり』
喫茶店のとき以上にテンションが高い声だった。あれでも猫をかぶっていたのだ。
『早速本題に入るけど、泉ちゃんの本命はどっちなの?』
「ぶっ」
あまりにもあまりな質問に、こなたはリアルで吹き出した。
『天然ボケとツンデレ。どっちも可愛くていいよねー。もしかしてハーレムルート狙ってる?』
「私はリアルで同性趣味ないってば。っていうかそういう趣味だったの?」
『わたしもないよ。でも男同士は好き』
「やっぱりそっちに目覚めたんだ……」
『泉ちゃんは違うんだ?』
「私はどうもそっちはね」
『そういえばそうだよね。昔っから男の子寄りの趣味だったもんね。少年漫画とかフィギュアとか』
「最近はエロゲーもやってるよ」
『うわ! そんなのどこで手に入れてんの!? やっぱり泉ちゃんってそっちの趣味が』
「ないってば。確かに私の周りには萌えキャラが揃ってるけどさ。つかさとかがみだけじゃなくて
お嬢様で眼鏡っ娘で成績優秀でドジっ娘っていう友達もいるよ」
『そんなの本当にいるの!? 今度会わせてよ!』
「変なこと言わなければいいよ。あと、今年から従妹が陵桜に通うためにうちに住むことになった
んだよ。ゆーちゃんのこと話したっけ?」
『病弱な女の子だよね? 本当にそれ系の設定じゃない』
「ゆーちゃんも凄く萌えるよ。私にとっては妹みたいなもので――」
近況報告とディープなオタク話はまだまだ続く。
彼女に対して改めて好きだとか大切だとか言うことはない。長年の友達とはそういうものだから。
恐らくつかさやかがみにも二度と言うことはない。彼女たちとは長い付き合いになるだろうから。
今度はみゆきにも魔法使いと桜の梢の、恥ずかしい話をしてみようか。
頭の片隅で、こなたはそんなことを考えていた。
「――もしもし」
当時は二人とも携帯電話を持っていなかったから、番号を交換できなかった。電話越しで話す
ことさえ、今まではなかったのだ。
『もしもし泉ちゃーん! 三十分ぶり』
喫茶店のとき以上にテンションが高い声だった。あれでも猫をかぶっていたのだ。
『早速本題に入るけど、泉ちゃんの本命はどっちなの?』
「ぶっ」
あまりにもあまりな質問に、こなたはリアルで吹き出した。
『天然ボケとツンデレ。どっちも可愛くていいよねー。もしかしてハーレムルート狙ってる?』
「私はリアルで同性趣味ないってば。っていうかそういう趣味だったの?」
『わたしもないよ。でも男同士は好き』
「やっぱりそっちに目覚めたんだ……」
『泉ちゃんは違うんだ?』
「私はどうもそっちはね」
『そういえばそうだよね。昔っから男の子寄りの趣味だったもんね。少年漫画とかフィギュアとか』
「最近はエロゲーもやってるよ」
『うわ! そんなのどこで手に入れてんの!? やっぱり泉ちゃんってそっちの趣味が』
「ないってば。確かに私の周りには萌えキャラが揃ってるけどさ。つかさとかがみだけじゃなくて
お嬢様で眼鏡っ娘で成績優秀でドジっ娘っていう友達もいるよ」
『そんなの本当にいるの!? 今度会わせてよ!』
「変なこと言わなければいいよ。あと、今年から従妹が陵桜に通うためにうちに住むことになった
んだよ。ゆーちゃんのこと話したっけ?」
『病弱な女の子だよね? 本当にそれ系の設定じゃない』
「ゆーちゃんも凄く萌えるよ。私にとっては妹みたいなもので――」
近況報告とディープなオタク話はまだまだ続く。
彼女に対して改めて好きだとか大切だとか言うことはない。長年の友達とはそういうものだから。
恐らくつかさやかがみにも二度と言うことはない。彼女たちとは長い付き合いになるだろうから。
今度はみゆきにも魔法使いと桜の梢の、恥ずかしい話をしてみようか。
頭の片隅で、こなたはそんなことを考えていた。
-今度こそおわり-
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- 魔法使いちゃんのテンションが
ハルヒの分裂の橘さんに似てない? -- 名無しさん (2009-03-10 23:17:28) - 俺の涙を返せwww
見事に騙されました。 -- 名無しさん (2009-03-09 22:04:45) - 序盤で泣きそうになったのに騙されたwww
原作で出ないかな魔法使いちゃん。 -- 名無しさん (2008-08-11 14:54:30)