最近毎日が楽しい。
こなたと一緒に学校にいったり、ゲームをしたりした当たり前の日常に幸せを感じていると思う。強引にアニメイトやらとらのあなやら秋葉原につれていかれて、どんどんオタク化していく私は、どうなんだとも思うけど。
このところ気温が低い。埼玉の冬は日本海側と違ってほとんど雪が積もることも雨が降ることもない。天気事態は良好だが空気は乾燥しているし北風は厳しいのだ。
雨戸を閉めているせいで晴れか曇りかの判断は困難だが、湿気があまりないことから今日もピーカンなのだと思った。
こなたと一緒に学校にいったり、ゲームをしたりした当たり前の日常に幸せを感じていると思う。強引にアニメイトやらとらのあなやら秋葉原につれていかれて、どんどんオタク化していく私は、どうなんだとも思うけど。
このところ気温が低い。埼玉の冬は日本海側と違ってほとんど雪が積もることも雨が降ることもない。天気事態は良好だが空気は乾燥しているし北風は厳しいのだ。
雨戸を閉めているせいで晴れか曇りかの判断は困難だが、湿気があまりないことから今日もピーカンなのだと思った。
私は暖房をつけようとベッドから立ち上がる。
――っ!
目の前の世界がぐるぐると回っている。。数歩でたどり着くはずのドアが私の視界から逃げるように消えていく。
起き上がって気づいた。体が重い。鉛を背負っているような感覚。体の制御がきかない。
まるで、私の体がのっとられかけているような――これは、私? 幾度となく目にしたはずの自室は、一種のゲシュタルト崩壊を起こしているのか無機質な、自室によく似た別部屋とすりかえられたような錯覚に陥る。
私の部屋だ。違うことは回転式扉、あるいはメリーゴーランドのように部屋が廻っているだけだ。。それって、「いつも」と言えるのか? 私は冷静だ。あるいは、狂った平静。狂気を正気と思える、そんな壊れた理性でいる。
――あ。
「てゆーか、単に熱なだけよね」
頭が覚醒してくる。同時に私は常識的な判断を下せるまでになった。
目の前の世界がぐるぐると回っている。。数歩でたどり着くはずのドアが私の視界から逃げるように消えていく。
起き上がって気づいた。体が重い。鉛を背負っているような感覚。体の制御がきかない。
まるで、私の体がのっとられかけているような――これは、私? 幾度となく目にしたはずの自室は、一種のゲシュタルト崩壊を起こしているのか無機質な、自室によく似た別部屋とすりかえられたような錯覚に陥る。
私の部屋だ。違うことは回転式扉、あるいはメリーゴーランドのように部屋が廻っているだけだ。。それって、「いつも」と言えるのか? 私は冷静だ。あるいは、狂った平静。狂気を正気と思える、そんな壊れた理性でいる。
――あ。
「てゆーか、単に熱なだけよね」
頭が覚醒してくる。同時に私は常識的な判断を下せるまでになった。
私、なんか変なことを考えていなかったか? いけないいけない。こなたと同類になったら、人として問題があるじゃないか! って、いくらなんでもこなたに失礼か。私はそんなこなたが好きなわけだし。
小さいころに間違ってお酒を飲んで経験した二日酔いのような、不思議な感覚がある。とにかく、つかさを起こしにいこう。回転している、狂っているのは自室ではなく、私のほうだ。頭の回転をさせないと…とにかく、まっすぐ歩けば扉まではたどり着けるはず。
やっとの思いで私は扉を開けた。つかさの部屋まで、一歩一歩、歩く。健康の喜びを実感するのは、病気のとき。換言すれば、人間、失ってはじめて気づくのだ。後悔は先にたたないものだけど。
あとちょっと。あと一歩。
「おーい、つか――」
ばたっ
あ、れ……?
視界がフェードアウトしていく。連続的であるはずの時間は、今この時点において、確実に切断された。
そんな思考も、数秒のうちに消えうせる。
今日学校行けるかな、とかすれゆく記憶にお祈りをした。こなたに会えるかなという祈祷はしかし、絶望的だった。
もう何も見えない。何も聞こえない――。
やっとの思いで私は扉を開けた。つかさの部屋まで、一歩一歩、歩く。健康の喜びを実感するのは、病気のとき。換言すれば、人間、失ってはじめて気づくのだ。後悔は先にたたないものだけど。
あとちょっと。あと一歩。
「おーい、つか――」
ばたっ
あ、れ……?
視界がフェードアウトしていく。連続的であるはずの時間は、今この時点において、確実に切断された。
そんな思考も、数秒のうちに消えうせる。
今日学校行けるかな、とかすれゆく記憶にお祈りをした。こなたに会えるかなという祈祷はしかし、絶望的だった。
もう何も見えない。何も聞こえない――。
「あれー、外で大きな音がしたような…
ふわああっ…眠いよう。でももう7時過ぎてるし、起きないと。
あれ?
いつもならお姉ちゃんが起こしにくる時間なんだけど、もしかしたらお姉ちゃん、寝坊かな?
――もう、仕方ないなあお姉ちゃんは。
もし本当に私がお姉ちゃんだったら――ほらきょうちゃん、朝だよお。ねえ、起きてよう――わあ、すごいことになってるよう!」
つかさは、眠たい眼をごしごしと手でぬぐいながら、扉をあけた。
そこで立ち尽くす。
「え、えええええええええええ?」
つかさは目をぱちくりして、そこで倒れているかがみをみかけた。
「お、お姉ちゃん?」
よく事情を飲み込めないつかさは、ためしに話しかけてみた。かがみからの反応はない。
かがみを持ち上げて、意識がないことを確認する。
―――お、お姉ちゃん?
頭の中で反芻した後、つかさは事態を飲み込む。次にすべきことは。!
「お、お母さああん!
お姉ちゃんが、お姉ちゃんがあ!」
間違いなく、非日常。
つかさはばたばたと階段を駆け下りて、母であるみきのもとへ急いだ。
階段で数回蹴躓いたことは、殊更話題にすることでもなかった。
ふわああっ…眠いよう。でももう7時過ぎてるし、起きないと。
あれ?
いつもならお姉ちゃんが起こしにくる時間なんだけど、もしかしたらお姉ちゃん、寝坊かな?
――もう、仕方ないなあお姉ちゃんは。
もし本当に私がお姉ちゃんだったら――ほらきょうちゃん、朝だよお。ねえ、起きてよう――わあ、すごいことになってるよう!」
つかさは、眠たい眼をごしごしと手でぬぐいながら、扉をあけた。
そこで立ち尽くす。
「え、えええええええええええ?」
つかさは目をぱちくりして、そこで倒れているかがみをみかけた。
「お、お姉ちゃん?」
よく事情を飲み込めないつかさは、ためしに話しかけてみた。かがみからの反応はない。
かがみを持ち上げて、意識がないことを確認する。
―――お、お姉ちゃん?
頭の中で反芻した後、つかさは事態を飲み込む。次にすべきことは。!
「お、お母さああん!
お姉ちゃんが、お姉ちゃんがあ!」
間違いなく、非日常。
つかさはばたばたと階段を駆け下りて、母であるみきのもとへ急いだ。
階段で数回蹴躓いたことは、殊更話題にすることでもなかった。
「――38度4分! お姉ちゃん、大丈夫?」
かがみの熱っぽい顔を見て、つかさは心配そうに尋ねる。体温計は平時とは比べものならない体温を示した。体温計が四十二度までということは、それ以上はたんぱく質に異変をおこし、生命維持が極めて困難になるからである。
最初はおろおろと、どうすればいいかわからなかったつかさも、かがみが単に熱をだしただけだとわかると、幾分落ち着きを取り戻し、他の姉に協力してもらい、かがみをベッドに寝かした。
学校には完全に遅刻だ。
でもそんなことはどうでもいい、とつかさは思う。学校の勉強だってお姉ちゃんがいないと楽しくなんてない。お姉ちゃんが苦しんでいるのに私だけ楽しむわけにもいかない。
「つかさ、後は私がやっとくから」というみきの言葉に、強情に「お姉ちゃんが起きるまでは、そばにいるもん!」と否定した。みきもすぐに折れた。
仕方ないわね…と苦笑した後、「黒井先生と桜庭先生に、かがみの欠席と、つかさの遅刻を連絡しておくわね――起きるまで、かがみのことよろしくね」とつかさに頼み、かがみの部屋からでた。
母親として、つかさとかがみが特別仲がいいことも理解していたし、つかさの心配そうな顔を見たら、どうせ学校の勉強も身にはいらないだろう…と思った。
みきは、時々はかがみの様子を確認しようとは思ったけど、できるかぎりつかさに任せようと思った。かがみもそれを望んでいると、どことなくみきは思うのだ。
それにつかさだって高校三年生だ。みきも信頼はしている。父親であるただおにその旨を説明する。神主であり、世間一般的にも人格者であるただおは「うん…何かあったら連絡して」とだけ言って、みきの判断に肯定した。
最初はおろおろと、どうすればいいかわからなかったつかさも、かがみが単に熱をだしただけだとわかると、幾分落ち着きを取り戻し、他の姉に協力してもらい、かがみをベッドに寝かした。
学校には完全に遅刻だ。
でもそんなことはどうでもいい、とつかさは思う。学校の勉強だってお姉ちゃんがいないと楽しくなんてない。お姉ちゃんが苦しんでいるのに私だけ楽しむわけにもいかない。
「つかさ、後は私がやっとくから」というみきの言葉に、強情に「お姉ちゃんが起きるまでは、そばにいるもん!」と否定した。みきもすぐに折れた。
仕方ないわね…と苦笑した後、「黒井先生と桜庭先生に、かがみの欠席と、つかさの遅刻を連絡しておくわね――起きるまで、かがみのことよろしくね」とつかさに頼み、かがみの部屋からでた。
母親として、つかさとかがみが特別仲がいいことも理解していたし、つかさの心配そうな顔を見たら、どうせ学校の勉強も身にはいらないだろう…と思った。
みきは、時々はかがみの様子を確認しようとは思ったけど、できるかぎりつかさに任せようと思った。かがみもそれを望んでいると、どことなくみきは思うのだ。
それにつかさだって高校三年生だ。みきも信頼はしている。父親であるただおにその旨を説明する。神主であり、世間一般的にも人格者であるただおは「うん…何かあったら連絡して」とだけ言って、みきの判断に肯定した。
――柊家の電話は黒電話である。
かがみが目を覚ましたのは、それから二時間もたった10時ごろであった。
「…なんだ、38度か」
計測完了の音を確認したかがみは、脇から体温計を取り出して、見た。「分」の部分はあえて繰り返さなかった。
「なんだって、なんだじゃないよお姉ちゃん! 38度だよ!? 普通より2度も高いんだよ!」
「大丈夫よつかさ、それほど辛くはないわ」
そういって無理やりかがみは立ち上がろうとする。しかし、一歩歩く前に足はふらつき、倒れそうになる。
それをつかさが「お姉ちゃん、危ない!」といってかがみが倒れる前に支え、半ば強引にベッドに寝かした。
普段のつかさからは想像できないような、必死の思いでつかさは叫んだ。
「もうお姉ちゃん! 今日は寝てなきゃだめだよ! それにもう先生は欠席の連絡したから! お姉ちゃんが倒れたら、私…、わたし!」
「――ごめん、強情だった」
38度4分が普通でないことくらい、かがみだってわかっていた。
それでも、学校に行きたかった。こなたに会いたかったし、壊れてしまいそうな日常を精一杯楽しんでみたいと、自己中心的な態度をとってしまったのだ。
そんな感情も、かさの目を見て、気持ちを感じて、すぐに萎えた。次に湧き上がってきた感情はどうしようもない罪悪感だった。
絶対にかがみを学校に行かせないという毅然とした態度よりかは、懇願に近い感情でつかさは訴えた。その瞳から、涙が洪水のように流れていた。
「うう…嫌だよう。お姉ちゃんがいなくなったら、嫌だよう」
大粒の涙がかがみの寝具にこぼれて滲む。
「…ごめん。
――つかさの言うとおりにする。心配かけて、ごめん」
「ううん。私こそごめんね。泣いちゃって」
その言葉が痛い。小さいころ「つかさを泣かすのは許さない!」とできるかぎりお姉ちゃんでいようと勤めてきたのに、その私が――私のせいで――つかさを泣かしてしまった。
そしてつかさに「泣いちゃってごめん」なんていわせるなんて、私、どうかしてる。
いや、そんな生易しい言葉で自分を庇護してもしかたないとかがみは思った。
「…なんだ、38度か」
計測完了の音を確認したかがみは、脇から体温計を取り出して、見た。「分」の部分はあえて繰り返さなかった。
「なんだって、なんだじゃないよお姉ちゃん! 38度だよ!? 普通より2度も高いんだよ!」
「大丈夫よつかさ、それほど辛くはないわ」
そういって無理やりかがみは立ち上がろうとする。しかし、一歩歩く前に足はふらつき、倒れそうになる。
それをつかさが「お姉ちゃん、危ない!」といってかがみが倒れる前に支え、半ば強引にベッドに寝かした。
普段のつかさからは想像できないような、必死の思いでつかさは叫んだ。
「もうお姉ちゃん! 今日は寝てなきゃだめだよ! それにもう先生は欠席の連絡したから! お姉ちゃんが倒れたら、私…、わたし!」
「――ごめん、強情だった」
38度4分が普通でないことくらい、かがみだってわかっていた。
それでも、学校に行きたかった。こなたに会いたかったし、壊れてしまいそうな日常を精一杯楽しんでみたいと、自己中心的な態度をとってしまったのだ。
そんな感情も、かさの目を見て、気持ちを感じて、すぐに萎えた。次に湧き上がってきた感情はどうしようもない罪悪感だった。
絶対にかがみを学校に行かせないという毅然とした態度よりかは、懇願に近い感情でつかさは訴えた。その瞳から、涙が洪水のように流れていた。
「うう…嫌だよう。お姉ちゃんがいなくなったら、嫌だよう」
大粒の涙がかがみの寝具にこぼれて滲む。
「…ごめん。
――つかさの言うとおりにする。心配かけて、ごめん」
「ううん。私こそごめんね。泣いちゃって」
その言葉が痛い。小さいころ「つかさを泣かすのは許さない!」とできるかぎりお姉ちゃんでいようと勤めてきたのに、その私が――私のせいで――つかさを泣かしてしまった。
そしてつかさに「泣いちゃってごめん」なんていわせるなんて、私、どうかしてる。
いや、そんな生易しい言葉で自分を庇護してもしかたないとかがみは思った。
私は最低だ。
「本当にごめんね、つかさ。もう大丈夫だから、心配しないで。今日は休む」
「うん…それがいいよお姉ちゃん」
「ほら、涙、拭いて」
そういってかがみは自分の指先をつかさの目じりまでよせる。そうしてつかさの涙をぬぐった。
「えへへ…なんか不思議な気持ち」
ぬぐった涙をかがみは、舌で舐めた
つかさは「お姉ちゃん…?」とその行動を不思議に見つめていた。
――しょっぱい。この痛みは、忘れないようにしようとかがみは深く思った。
「うん…それがいいよお姉ちゃん」
「ほら、涙、拭いて」
そういってかがみは自分の指先をつかさの目じりまでよせる。そうしてつかさの涙をぬぐった。
「えへへ…なんか不思議な気持ち」
ぬぐった涙をかがみは、舌で舐めた
つかさは「お姉ちゃん…?」とその行動を不思議に見つめていた。
――しょっぱい。この痛みは、忘れないようにしようとかがみは深く思った。
「え、今日休むの?」
つかさは、かがみの体調を確認しにきた、みきに伝えた。
「お願い、お母さん」
「…仕方ないわね」
つかさの切実な思いを感じ、またも慈愛に満ちた判断を下す。それが正しいかはわからないが、少なくてもみきは今はそうでもいい、と思った。
「――でも、黒井先生にはつかさから連絡しなさいよ。それくらいはできるよね」
「う…うん、わかった」
「つかさ、本当に休むの? つかさは学校にいっていいんだよ?」
かがみが心配そうにたずねる。熱のせいかいつもの覇気はなく、どことなく弱々しげだった。
「うん。今日はお姉ちゃんと一緒にいる。ううん、一緒にいたいの」
かがみの部屋から廊下にでた。その足取りは少し重い。
もう、ばか…とかがみの部屋から聞こえた。
――黒井先生に電話かあ、なんていえばいいんだろう。風邪…かな? お母さんは特に病状を言わず「遅刻していきます」と告げただけらしいから、それでいこう。
つかさは、かがみの体調を確認しにきた、みきに伝えた。
「お願い、お母さん」
「…仕方ないわね」
つかさの切実な思いを感じ、またも慈愛に満ちた判断を下す。それが正しいかはわからないが、少なくてもみきは今はそうでもいい、と思った。
「――でも、黒井先生にはつかさから連絡しなさいよ。それくらいはできるよね」
「う…うん、わかった」
「つかさ、本当に休むの? つかさは学校にいっていいんだよ?」
かがみが心配そうにたずねる。熱のせいかいつもの覇気はなく、どことなく弱々しげだった。
「うん。今日はお姉ちゃんと一緒にいる。ううん、一緒にいたいの」
かがみの部屋から廊下にでた。その足取りは少し重い。
もう、ばか…とかがみの部屋から聞こえた。
――黒井先生に電話かあ、なんていえばいいんだろう。風邪…かな? お母さんは特に病状を言わず「遅刻していきます」と告げただけらしいから、それでいこう。
「つかさ、かがみ。泉さんたちがお見舞いにきたわよ」
午後6時。黒井先生に欠席の連絡を伝えてから、つかさずっとかがみの部屋にいた。
お姉ちゃんの看病は私がするんだから、と意気込んでいたが、其のうちの半分はかがみのベッドにもたれかかって、寝てしまっていた。
寝言で「うう…お姉ちゃん、大丈夫?」と呟くつかさを見て、かがみはつかさの髪を優しく梳きながら人知れず枕をぬらした。
「ありがとうね、つかさ」
――どたどたと、階段を上る音がする。その音は複数ある。きっといつものメンバーがやってくるのだろう。
嬉しさや期待と、二人だけの空間が壊されることに少しだけ残念だった。
私とつかさ。双子の空間に。
午後6時。黒井先生に欠席の連絡を伝えてから、つかさずっとかがみの部屋にいた。
お姉ちゃんの看病は私がするんだから、と意気込んでいたが、其のうちの半分はかがみのベッドにもたれかかって、寝てしまっていた。
寝言で「うう…お姉ちゃん、大丈夫?」と呟くつかさを見て、かがみはつかさの髪を優しく梳きながら人知れず枕をぬらした。
「ありがとうね、つかさ」
――どたどたと、階段を上る音がする。その音は複数ある。きっといつものメンバーがやってくるのだろう。
嬉しさや期待と、二人だけの空間が壊されることに少しだけ残念だった。
私とつかさ。双子の空間に。
「やっほーかがみ、あれ、起きていいの?」
こなたが私に話しかける。私はうん、昼間、眠ってたからさと答える。
「ちぇえ、またかがみの寝言を堪能しようと思ったのになあ」
こなたは私がおきていることにがっかりしたのか、口をとんがらしていった。
「宿題がどうのとかいったら、殴るからな」
「はいはいわかってますよ。私だって賞味期限の切れたネタはつかわないよ。でも本当に寝てなくていいの?」
こなたは気を取り直して私の体を心配してくれる。私は「うん、つかさが看病してくれたから」と素直に言った。
「そのわりには寝てるみたいだけど?」
私のべっどに寄りかかって寝ているつかさを見て話しかける。
「そ、それだけ、私のために看病してくれたってことよ。つかさの悪口いったら、許さないんだからね!」
「んー、今日のかがみんはなんか怖いなあ」
「あ、ごめんこなた。わざわざお見舞いにきてもらったのに」
「いーよー別に。それはそれでツンデレで萌えるし♪ 私とかがみんの仲じゃないか~――てゆーかつかさも風邪じゃなかったの?」
ぎくっ、と私は狼狽する。
つかさは黒井先生に風邪と偽って連絡したらしい。いまさら隠すことでもないし、親友に嘘をいってもしかたない。
「あれ、仮病よ。つかさのやつ、馬鹿だからさ――私の看病するって聞かなくて」
そういう私は、こなたに指摘されないでも赤くなっていると思う。熱で赤いのか、それとも恥ずかしくて真っ赤なのか…。
そんな心地が私は幸せだった。
「それにしてもかがみさんとつかささんが元気そうで安心しました。これ、お見舞いと今日のノートのコピーです。お二人の分ですが、かがみさんに渡しておきますね」
みゆきはそういって、紙とお花を手渡し、言葉を続ける。。
「かがみさんのノートは、峰岸さんからお借りしました」
「うん、みゆき、ありがと」
みゆきは本当にお体は大事にしてくださいねと、微笑みかけてくれた。こなたはこなたなりに私を心配してくれる。
たまには風邪を引くのもいいのかな、なんて思ってしまう。
「でも本当にかがみんも頼むよ~。かがみがいないと学校つまらないんだからさ」
「そうですね…今日の泉さんはとても落ち込んでいらっしゃいました」
「そ、そうなの?」
こなたのことだから私のことなんて気にせず今日もいつもの調子だと思った。
こなたは心外といった風に私を見つめ返してくる。
「あのさかがみん。つかさも休みだったんだよ? 二人がいないのに楽しいわけなんてないじゃん」
「そ、そっか…あ、ありがとっていえばいいのかな?」
いつものようにツンデレかがみ萌え! と抱きつこうとする。私は風邪だからといって振りほどく。こなたは不満そうに、それでも「とにかくお大事にね」といってくれた。
こなたが私に話しかける。私はうん、昼間、眠ってたからさと答える。
「ちぇえ、またかがみの寝言を堪能しようと思ったのになあ」
こなたは私がおきていることにがっかりしたのか、口をとんがらしていった。
「宿題がどうのとかいったら、殴るからな」
「はいはいわかってますよ。私だって賞味期限の切れたネタはつかわないよ。でも本当に寝てなくていいの?」
こなたは気を取り直して私の体を心配してくれる。私は「うん、つかさが看病してくれたから」と素直に言った。
「そのわりには寝てるみたいだけど?」
私のべっどに寄りかかって寝ているつかさを見て話しかける。
「そ、それだけ、私のために看病してくれたってことよ。つかさの悪口いったら、許さないんだからね!」
「んー、今日のかがみんはなんか怖いなあ」
「あ、ごめんこなた。わざわざお見舞いにきてもらったのに」
「いーよー別に。それはそれでツンデレで萌えるし♪ 私とかがみんの仲じゃないか~――てゆーかつかさも風邪じゃなかったの?」
ぎくっ、と私は狼狽する。
つかさは黒井先生に風邪と偽って連絡したらしい。いまさら隠すことでもないし、親友に嘘をいってもしかたない。
「あれ、仮病よ。つかさのやつ、馬鹿だからさ――私の看病するって聞かなくて」
そういう私は、こなたに指摘されないでも赤くなっていると思う。熱で赤いのか、それとも恥ずかしくて真っ赤なのか…。
そんな心地が私は幸せだった。
「それにしてもかがみさんとつかささんが元気そうで安心しました。これ、お見舞いと今日のノートのコピーです。お二人の分ですが、かがみさんに渡しておきますね」
みゆきはそういって、紙とお花を手渡し、言葉を続ける。。
「かがみさんのノートは、峰岸さんからお借りしました」
「うん、みゆき、ありがと」
みゆきは本当にお体は大事にしてくださいねと、微笑みかけてくれた。こなたはこなたなりに私を心配してくれる。
たまには風邪を引くのもいいのかな、なんて思ってしまう。
「でも本当にかがみんも頼むよ~。かがみがいないと学校つまらないんだからさ」
「そうですね…今日の泉さんはとても落ち込んでいらっしゃいました」
「そ、そうなの?」
こなたのことだから私のことなんて気にせず今日もいつもの調子だと思った。
こなたは心外といった風に私を見つめ返してくる。
「あのさかがみん。つかさも休みだったんだよ? 二人がいないのに楽しいわけなんてないじゃん」
「そ、そっか…あ、ありがとっていえばいいのかな?」
いつものようにツンデレかがみ萌え! と抱きつこうとする。私は風邪だからといって振りほどく。こなたは不満そうに、それでも「とにかくお大事にね」といってくれた。
「――ねえかがみ」
みゆきがお手洗いにいっている間、小声で私に話しかけてきた。私は何よと、顔をあげた。
「キス、してよ」
「は、はあ?」
「私達、恋人だよね。さっきはみゆきさんのいる手前ああいったけど、私だって本当は、本当に寂しかったんだからね。かがみ携帯にも連絡してくれなかったし」
「こなた…」
そういえば朝から携帯には一度も触っていない。つかさが一緒にいてくれるのに携帯を使うのは不謹慎だと思ったし、必要もなかった。
みゆきがお手洗いにいっている間、小声で私に話しかけてきた。私は何よと、顔をあげた。
「キス、してよ」
「は、はあ?」
「私達、恋人だよね。さっきはみゆきさんのいる手前ああいったけど、私だって本当は、本当に寂しかったんだからね。かがみ携帯にも連絡してくれなかったし」
「こなた…」
そういえば朝から携帯には一度も触っていない。つかさが一緒にいてくれるのに携帯を使うのは不謹慎だと思ったし、必要もなかった。
そう、私とこなたは付き合っている。
私はこなたのことが好き。こなたと一緒にいたいいから学校に行きたい。
脆弱な日常。壊れてしまいそうな平穏。それを必死にしがみつきたいから私は登校する。
そうして、女の子を泣かした。
私は自分自身のけじめとして「うん…治ったらでいい?」というのだった。
こなたは「むう…」と納得のいかない顔だったが「でもまあ、かがみのことだし、何か理由があるんだろうしね」といってその場を取り繕う曖昧な笑いを見せた。
それから、これくらいはいいよねといって、私の指をとって、こなたがふんわりとキスをした。
私はこなたのことが好き。こなたと一緒にいたいいから学校に行きたい。
脆弱な日常。壊れてしまいそうな平穏。それを必死にしがみつきたいから私は登校する。
そうして、女の子を泣かした。
私は自分自身のけじめとして「うん…治ったらでいい?」というのだった。
こなたは「むう…」と納得のいかない顔だったが「でもまあ、かがみのことだし、何か理由があるんだろうしね」といってその場を取り繕う曖昧な笑いを見せた。
それから、これくらいはいいよねといって、私の指をとって、こなたがふんわりとキスをした。
ごめんね、こなた。
今日だけは、つかさのお姉ちゃんでありたいんだ。
今日だけは、つかさのお姉ちゃんでありたいんだ。
「ふわああああ、あれ、朝?」
つかさが目をさめるなりつぶやいた。時刻は8時。こなた達も帰っていたころである。かがみは「よく寝られた?」とつかさにたずねる。
つかさは「あ、あはは…私、寝ちゃってた。ごめんね、お姉ちゃん」と苦笑気味に言う。
「ううん、馴れないことして、疲れたのよ。もう、学校まで休んで、何やっているんだか」
「あはは…お姉ちゃん、風邪は大丈夫?」
「まだ熱はあるけど、だいぶ楽になったわ」
「よかった~」
「あしたは、学校いきなさいよね。私はまだちょっと、無理そうだけど」
「うん、わかってる。お姉ちゃんも元気なってきて、私も安心したし」
――違う。
そんなことじゃなくて、私がいま、言わなければいけないこと。朝から切実に感じてきた、私の思い。
「あ、あ、あのね、つかさ」
「? なあに?」
かがみは一呼吸置く。恥ずかしくてしどろもどろ。黙ってしまう。
かがみはもう一度つかさの顔をみた。不思議な顔をしてかがみの顔を見つめてくる。言おう。かがみは心の中で強く決意して拳を握った。
「つかさ、今日は本当にありがとう! 迷惑かけてごめん! でもね、でもね…
つかさ、大好き!」
つかさは驚いた顔をみせたが、すぐに泣いているのような笑っているような、そんな幸せな顔を見せた。
瞳からにじみ出てきた涙を手で拭う。
「うん、お姉ちゃん。私も、お姉ちゃんのこと大好きだよ。だから、早く元気になって、また遊ぼうね。私、いつもお姉ちゃんに助けてもらったから――こんなときでしか、お礼ができないけど――私も、お姉ちゃん、いつもありがとう」
もう我慢しなくてもいいや、とかがみは思った。
涙腺が決壊してぽろぽろと涙が流れる。幸せと涙のカタルシス。
おろおろとするつかさの顔が妙にいじらしくて、「大好き」とだけいった。
つかさが目をさめるなりつぶやいた。時刻は8時。こなた達も帰っていたころである。かがみは「よく寝られた?」とつかさにたずねる。
つかさは「あ、あはは…私、寝ちゃってた。ごめんね、お姉ちゃん」と苦笑気味に言う。
「ううん、馴れないことして、疲れたのよ。もう、学校まで休んで、何やっているんだか」
「あはは…お姉ちゃん、風邪は大丈夫?」
「まだ熱はあるけど、だいぶ楽になったわ」
「よかった~」
「あしたは、学校いきなさいよね。私はまだちょっと、無理そうだけど」
「うん、わかってる。お姉ちゃんも元気なってきて、私も安心したし」
――違う。
そんなことじゃなくて、私がいま、言わなければいけないこと。朝から切実に感じてきた、私の思い。
「あ、あ、あのね、つかさ」
「? なあに?」
かがみは一呼吸置く。恥ずかしくてしどろもどろ。黙ってしまう。
かがみはもう一度つかさの顔をみた。不思議な顔をしてかがみの顔を見つめてくる。言おう。かがみは心の中で強く決意して拳を握った。
「つかさ、今日は本当にありがとう! 迷惑かけてごめん! でもね、でもね…
つかさ、大好き!」
つかさは驚いた顔をみせたが、すぐに泣いているのような笑っているような、そんな幸せな顔を見せた。
瞳からにじみ出てきた涙を手で拭う。
「うん、お姉ちゃん。私も、お姉ちゃんのこと大好きだよ。だから、早く元気になって、また遊ぼうね。私、いつもお姉ちゃんに助けてもらったから――こんなときでしか、お礼ができないけど――私も、お姉ちゃん、いつもありがとう」
もう我慢しなくてもいいや、とかがみは思った。
涙腺が決壊してぽろぽろと涙が流れる。幸せと涙のカタルシス。
おろおろとするつかさの顔が妙にいじらしくて、「大好き」とだけいった。
―ー38度4分の体が火照っている。
つかさの優しさが暖かくて、ぽかぽかだ。
つかさの優しさが暖かくて、ぽかぽかだ。
ありがとう、つかさ。
元気になったら、一緒にでかけようね。
元気になったら、一緒にでかけようね。
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- とても良いお話です! -- チャムチロ (2012-10-15 07:59:36)