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シロツメクサの咲くころに

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 今日はこなたの誕生日だ。
 5月28日。梅雨真っ盛りのこの季節には珍しく目覚ましを止め、目を覚ましてカーテンを開けると陽光が部屋の中に差し込んできた。
 前日までは雨続きで、地面はぬかるんでいたが数日振りのお日様は湿度も低く、過ごしやすい天候となった。
 その日、私は学校をサボった。

 つかさには私とこなたの関係はまだ知られていない。
 いつまでも隠し通せる仲ではないけれど、それまでは私とこなた、二人だけの秘密の間柄でいたい。

「…何を買えばいいんだろう」
 私は大手のデパートを目の前にしてうなだれる。もちろんこなたと秘密の契約、超えてはいけない一戦を超える前からも、誕生日プレゼントはあげていたし、この年になってとも思うがつかさと誕生日の交換プレゼントを行っている。
 それでも今年の5月28日は違う。
 こなたの長いまつげを私は想像する。愛しい唇を私は思い浮かべる。舌と舌が絡み合う濃厚なキスの場面が立ち尽くすデパートの前で執拗に再生される。

 ホモとヘテロ。どれが正しいかなんて私にはわからない。ホモで何が悪い、ヘテロで何が悪い。現実社会ではいわゆるノンケが大半であるけれども、私みたいな厄介者もいるのだ。
 私は私だ。好きで何が悪い。
 非生産的な愛の営みが、そんなに悪いことなのか。一応断っておくけれども、私は腐女子ではない。ただ、こなただけは、嫌いになれないのだ。嫌いじゃない…ううん、大好き

 デパートから一回の食品売り場へと足を伸ばす。こなたはチョココロネ好きだ。よくもまあ飽きないなと私はお昼休みに小さな手で忙しくチョココロネを頬張るいつものこなたを描いた。
 食品売り場のレジから前方へ三十メートルほど進み、右折すると安くておいしいと(こなたも絶賛していた)ベーカリーショップが見える。チョココロネは150円できれいに並べられておかれていた。
 縦に10列、横に5個づつ置かれたチョココロネは、ところどころ虫食い状態にチョココロネが買われていっている。物を買うときにあえて一番最初に置かれたものではなく、二番目三番目を選ぶのと同じ心理なのだろうか、と思った。
 その光景を目にしていると、いつかこなたが言った「絶望感を覚えるよ…」という台詞を思い出して私はくすりと笑みを漏らした。

 こなたはきっと、今日もチョココロネを食べているのだと思う。私が想像したとおりの手つきで、しっぽから食べたり、頭から食べたり。
 だから今買っても、飽きてしまうだろう。

「これ、二つください」

――それでも買ってしまう私。
 後悔なんかしていないんだからね。
 ひとつは私の分。もうひとつは、こなたの分。
 こなたがおいしそうに頬張っている姿を想像すると、財布は自然と手に握られていた。それどころか硬く硬く握られていた。

 私はいろいろな店とウインドウショッピングしながら、いくつかの候補を選ぶ。
 最後に花屋に立ち寄った。
 お花屋さんって、素敵だと思う。
 私はつい現実利益を考えしまうし、花なんて綺麗なものは似合わない。きっとこなたなら「かがみんは花より団子だよね~」とかなんとか言いながら、私のお腹をぷにっと触ってくるだろう。ううん、断じてぷにっとできるほど出ていない、と付け加えておくのだけど。
 花に囲まれた生活。好きな人には、きっとたまらなく幸せな時間。
 こなたの悪戯な笑みを眺めていられるような、そんな時間。

「いらっしゃいませー。ご用件を承りますわ」
「えっと、誕生日プレゼントにしたいんですが」
「彼氏にですか?」
 屈託のない笑顔で、店員さんは言った。胸ポケット辺りにクリップで「研修中…雨宮」と書いてあった。
 それ、すごく、ぐさっとくる…
「え、えと――その、いえ、なんでもないですっ!
 …はい、そうなんだと思います」
 ああ、取り乱してしまう。そんな私を長い髪が印象的な店員さんは、安らかな微笑をたえて、笑っていった。
 ごまかすのは、もうやめにした。
 彼氏ではないけれど、私にとっては彼氏みたいなものだから。たぶん、きっと合ってる。
 間違っているはずなんてない。だって好きになるって、そういうこと。
「そうですね――こちらの花なんて、どうですか?」
 手渡された花は、とても綺麗な花だった。白い、小さな花。可憐な花だった。
「シロツメクサですよ。本当は売り物ではないんですが…ほら、ここを見てください」
 店員さんはシロツメクサの花が咲く花瓶を持ち上げて、葉っぱの部分を私にみせた。
「クローバー…」
 それは、四葉のクローバーだった。小さいときにつかさがはしゃいで持ってきたもの、見つけると幸せが訪れるという、戯れの伝説。
「ついつい、嬉しくなって、こうして飾ってあるんですよ。ちょっと味気ないですが幸せのクローバーとして。どうですか?こちらはいつもご贔屓の感謝の気持ちとして、差し上げますよ。」
「え、別に、私は頻繁に利用しているわけでは」
「いいのいいの」

 結局私は言いくるめられて丁寧に丁重された、シロツメクサの花をもらった。
 どことなく「シロツメクサ」の響きに、既視感というのだろうか。そんな日本語が存在するかは怪しいが、既聴感というとより正確。どこかで、この言葉を聴いたような、そんな気がした。 誰かと一緒に、その言葉を聞いた気がした。
 その偶然の邂逅は、おそらく幸せの思い出だったと思う。、


「ねえ、かがみ。どうして今日は休んだのさ」
 いえに飾り付けられている時計は午後四時を随分回った時刻。学校からまっすぐ帰ると大体この時間だ。
 こなたはつかさと一緒に私の家に来た。
「ノックくらいしてよ」
「なにいってるのさ~、私とかがみの仲でしょ?」
 そういうこなたからは失望の色が見て取れた。
「ちょっと、体調悪くて」
「嘘でしょ。かがみ、元気じゃん」
 小さな体を一歩前に進める。私とこなたは向かい合う。やっぱりこなたは、不満顔だった。
「うん、まあたまにはね」
「…そっか。まあ、かがみがどうしようと、私は構わないけどさ」
 そういってこなたはそっぽを向く。
 腰まで届くような綺麗な髪が不満げに揺れていた。
「怒ってる?」
 私は恐る恐る聞いてみる。
 こなたは、平静を装って「別に――ただ、今日、何の日かわかるかなって」

「5月28日? 祝日でもなんともない思うけど」
「そっか、そうだよね」
 こなたは私の顔を直視し、それから寂しげに呟いた。

――忘れるわけ、ないよ。
 気恥ずかしくて、その言葉がいえなかった。そうしてこなたはご機嫌なナナメにふくれている。
 いつもからかわれているから、本当はちょっと仕返ししたかったという単純な理由。
 でも、その瞳を見ていると、そんな気まで失せてしまう。
 からかわれるのは慣れても、からかうことは一生慣れないのかな。
 私はするよりされるほうが幸せなのかもしれない。こなたのためなら私はいつだって、何にだって篭絡されるのだ。
 すねてるこなた、しおらしいこなたよりも、私に無理難題を押し付けてくるこなた。そういって私を怒らせながら、有無を言わせないような愛しい言葉を囁いているくれるこなたが好き。

「こなた」
「なあに?」

 私は精一杯、顔を見つめないように努めた。そんなことをしたら、きっと私は意地をはってしまう。
 だから私は、またこなたにツンデレって言われるのだろうと内心苦笑と高揚を伴いながら――。

「チョココロネ、今日、こなたの誕生日だよね。
 私がこなたの誕生日、忘れるわけないでしょ?」
「…覚えていたんだ」
「当たり前じゃない」
「かがみん…」
「べ、別に、嫌なら食べなくてもいいんだからね!
 こなたは今日もチョココロネ食べたんだろうし、そうなら私が食べるもん」
「…ツンデレすぎる」
 こなたは「私の嫁だ~」とかなんとか呟いて、私の方に突進してくる。
 こなたの小さい胸と私の胸が触れ合った。
 大好きな人に、抱きつかれていた。

 わ、わわわ。

「やっぱりかがみんはツンデレだね~最初から覚えてるっていってくれればいいのに」
「ちょ、こなた、あ、暑いって!」
「何いってるのさ~本当は嬉しいくせに~かがみのほっぺ、汗で濡れているけど、そこがなんともエロスだね。
 ほらほら落ちなよ! 『いい、いいのお、そこ』とかなんとか」
「ば、ばか、何いっているのよ! あれげーは頭の中だけにしろって!」
 こなたは抵抗する私を全身の力をかけて押さえ込む。こなたの体重は知らないが、ダイエットと無縁なこと、小柄なら体躯から見ても私より断然軽いだろう。
 羨ましいとか、そういうことはさておき。
 そのこなたによって、私はベッドに押し倒されてしまった。

 こなたの長い後ろ髪が、私の胸あたりに落ちる。私の両腕はこなたの幼い手によって押さえられている。身動きはできず、ただただこなたの大きい瞳に目線がぶつかり恥ずかしいくらいに紅潮した。こなたの口元がとても可愛い。
「ち、近い、わよ…っ」
「それがいいんだよ~どれどれ、味見っと」
「変態か、お前は!――あ、きゃあっ」
 小さく息を漏らす。こなたの左手が、私の胸のまで移動し、乳房をわしづかみにした。
 ふにゅふにゅ、くにくに。

「あ、ちょ、こなたあ~、ああんっ」
 淫靡な声が自然とでてしまう。オナニーくらいなら私だって経験済みだ。それでも、自分で触れることと、他人に触られることでは、感触がぜんぜん違う。
 気持ちいいとかそういうことでなく、「他人に触れられている」という認識が私を別感覚に陥らせた。
 好きな人に触られている。それだけで、全身で感じてしまう。当たり前だと思う。想像するだけであそこが濡れてしまうときもあるし、我慢できずにしてしまう時もあるのだ。
 私はもう、呼吸も乱れて、はあはあとせわしく息をしている。こなたも興奮したのか、心拍数が上がり、それに伴い呼吸が荒くなっていた。

「むう…やっぱりでかい」
「ちょ、感想はいいわよ、その…恥ずかしいし」
「なになに、もっと触って欲しいと?」
「ち、違う! あ、こら!」
 こなたは左手を私の腰あたりまで移動し、上着の裾に手をかける。「えいっ」と言って一気にそれをまくしあげた。私のヘソが外気にさらされる。そのまま肩あたりまで、上着はまくりあげられた。
 ブラがこなたの前にさらされる。こなたはそれをしげしげと見つめながら、なだめまわした。ブラの頂点からホックにいたるまでこなた視線がいったりきたりしている。
「ちょ、ちょっとまってよ!」
 背中に指を這わせ、ブラのほっぐを外そうとするこなたを、なんとか静止した。
「なんで? これからリアルでひぎぃ展開に持ち込んで、そして伝説になるのに」
「意味わかんないわよ、それ」
 えいっ、と私はこなたを押し戻す。その後、体を落として向き合った。
「あのさ、こなた。先に、言わせてよ」
「なにを?」

「誕生日おめでとう、こなた。これ、ちょっとちゃっちいかもしれないけど、は、花よ。」
「…」
「…何か、いってほしいんだけど」
 こなたは黙って私の顔を不思議そうに見つめてきた。

 だめだ、かわいい。

「あのさ、かがみん」
 こなたはそういいながら私の手を持ち上げて、自分の手を絡ませた。
 こなたの手のひらの温もりが感覚器官を通して脳にまで伝わってくる。
「あ、な、なによ…手なんて握っちゃって」
「私、やっぱりかがみんんこと大好きだああああああああああああ」
「あ、きゃ、きゃあああ」
「襲ってやる!犯ってやるぞ~
 ふはは! 覚悟したまえ!」
「うわ、ちょ、こなた! てゆーかキャラ違うとおも――ひひひぎぃ!」


 スポーンっ! と勢いよく服を脱ぎ捨てたこなたが襲いかかってくる。
「…!」。
 キスの味。レモンの味。
 胸と胸が触れ合って、乳房が揺れる。
 こなたのあそこは、想像以上に綺麗で素敵で、あまあまで、いとおしかった。

 ねっとりとしたキス。ふれんちきす。
 こなたの味を、下の口で感じた。

「そういえばかがみん…」
「何よ」
 セックスという言葉が正しいのかはわからないけれど、そんな行為を終えた後、こなたはパンツも履かずに私の髪を愛でながら呟いた。
「どうして、シロツメクサの花なんて買ってきたの?」
「それは――店員に、勧められたから」
「それだけ?」
「あと、どこか懐かしい気がした…」
 そう、白詰草という響きに感じた思い出。どこかで聞いた記憶。
 どこかで聞いた気がする。私を惹きつけたその花を、つかさやみゆき――何よりもこなたと一緒に聞いた。
「しろつめくさの花が咲いたら~~♪」
「え、その歌」
「アニメの主題歌だよ。そういえば、いつごろだろ。かがみんと一緒に見たよね。珍しくかがみも熱心に見てた奴だよ。私も好きなアニメだけど。
―――あれからどれくらい? どこでフラグ、たったんだろうね?」
「…嫌、だった?」

 ううん、とこなたは呟いた。
「あのときのこと、覚えていたんだね」
 こなたは私の方に顔を寄せる。私は目を閉じる。こなたが目の前にいる、きっといる。
 ほっぺたに柔らかな感触。「これが答えだよ」とこなたが言う、そんな気がした。






















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  • これこそ、お手本のような
    かがみ!素晴らしいです!! -- チャムチロ (2012-10-14 03:58:01)
  • 「雨宮」につきましては、性格含めて昔お遊びで書いていたものからのゲストだったりします。 -- 42-519 (2009-05-21 17:57:43)
  • 店員の苗字が雨宮・・・。
    最高速ランナーやってそうだ・・・。
    GJ!!
    (車ネタすいません><) -- 名無しさん (2009-05-20 17:00:35)
  • 花屋の店員が雨宮・・・サイコの小説版を思い出した -- 名無しさん (2009-05-20 12:06:29)
  • 書き手にとって最大級の賛辞をありがとうございます。
    かがみがかなりデレてますが、それもありかなと。 -- 42-519 (2008-04-30 20:19:47)
  • 久しぶりに萌え死にそうになったじゃねーか
    てか他の作品には無い何かを感じた…これすっごく好きだ -- 名無しさん (2008-04-30 05:09:18)

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