修学旅行二日目のこと―――
「まもなく、バスは清水寺へと参ります。清水寺があります東山区は、歴史的建造物が数多く並ぶ、都会の過疎地として知られており、清水寺のほかにも、知恩院、八坂神社など、有名な寺院や神社が立ち並んでおります」
はきはきと喋るバスガイドさん。
私は今、清水寺へ向かうバスに乗っている。バスは、クラスごとなので、こなたたちとは別なので残念……というわけでもない気分だ。何故なら、昨日から私は、あの三人に何かを狙われているような気がしてならないからだ。
何を境に、ああなってしまったかは良く分からないが、多分、おふざけだろう。……そうだ、そうなのよ。そうなはずなのよ。……と、言い聞かせている。そうでなきゃ、私が発狂しそうだから。
「清水寺かー。大して面白くもなさそうだし、さっさとおさらばしたいとこだなー」
前の席に座っている日下部があくびをしながら、言った。よく言ったもんね。
「ったく、何いってんのよ。京都でも指折りの観光名所で、世界遺産の一部でもあるのよ? よくもまあ、あんたが言えたもんね。そんな奴がいるから、日本はダメになるのよ」
「ちぇー。柊はかたいなー」
その様子に、峰岸や私の隣に座っている学級委員長がくすくすと笑う。何よ、私、何か変なことでも言った?
……まあともかく、日下部にも困ったもんね。
そうこうしているうちに、既にバスは駐車場へと入っていた。これから、班での自主研修だ。
「駐車場に到着いたしました。皆さん、お疲れ様でした」
バスガイドさんがそう言って、クラスのみんなも各々降りる準備につきはじめる。私は、最後列に座っているので、最後に降りることにした。
大体の人が降りてから、私もバスを降りようと、日下部と峰岸が座っている席の横を通り過ぎていると、
「柊ー。疲れたー」
「はあ?」
後方からの喚きに、私は言いながら振り返る。
「うー。柊ー。背負ってくれよー」
喚きの張本人である日下部は座ったまま、手を伸ばしてなにやら喚いていた。
「何言ってんのよ……」
言いながら、周りを見回すが、バスに残っているのは私と日下部と峰岸だけ。それと、運転手さんがいるけど、運転手さんに迷惑をかけるわけにはいかない。よって、助けを求められるのは峰岸だけ。
うーん、学級委員長と一緒に降りてれば良かったかなあ……なんて思っても、それはもう遅い話で。私は、何らかの対処をしなければいけない。
私は溜息をついてから、日下部の隣でいやにニコニコしている峰岸に、
「ちょっと、峰岸。何か言ってやりなさいよ」
といったが、
「うーん、ごめんね。柊ちゃん。こういうときのみさちゃんは、どうにもできないの」
と、平然と返されてしまう。ここまでこともなげに言われてしまうと、言葉に窮してしまう。
私は二度目の溜息をつこうかと考えていると、
「でも……この際、みさちゃんを置いていこうかしら。……ね?」
……いや、峰岸。だからって、何で、私の腕に自分の腕を回してくるの? そして、何で、自分の胸に私の腕を押し付けようとするの?
「あーっ! あやのーっ! 抜け駆けはダメって言ったじゃねーかー!」
「みさちゃん。約束は破る為にあるの。そして、恋の駆け引きは先手必勝。そして、もうそれは始まっているのよ?」
やけに艶やかな峰岸の声がバスの中に響く。それはいいんだけど、私を抜きに勝手に話すのをやめてくれ、といいたい。そして、運転手さん。さっきから、声は聞こえているはずなんだから、早く助けてくれ。
「ちぇーっ! なら、私だってー!」
日下部はそう言って、峰岸を押し分けて、通路に立つ。もっと言えば、私の目の前である。ついでに、峰岸の腕は放された。
思わず、私は肩を縮こめて、
「……な、何よ」
「実力行使だー!」
といい、私の肩を掴んで強引に向きを変えさせると、強引に私の背中にのしかかってきた。
お、重っ……! ……と、口に出そうになって、慌てて口を押さえる。いや、日下部が特段に重いって訳じゃないんだけど、急にのしかかられたら、こう思ってしまうのが自然って訳で。……私は誰に言い訳をしているんだろう。
と、ともかく、このいわゆる「おんぶ」の体勢、何とかならないのか?
それに……さっきから……
「あ、当たっているんですけど……」
……日下部の胸がさっきからぐいぐいと押し当てられているのだ。それは、思わず敬語になってしまうくらい、差し迫った懸案事項である。
すると、日下部は、
「馬鹿っ! あててんだよ!」
と、言った。
それと同時に、私の頭は茹蛸のように茹で上がってしまい、
「ばっ……。な、何言ってんのよ……!」
としか言えない。
相変わらず、峰岸はニコニコするばかりで、運転手さんはさっきから微動だにしていないようだ。……まさか、死んでいるわけじゃないわよね?
頭を真っ赤にしながら、何を言おうものか、必死で考えていると、
「じゃあ……私たち二人の引き分けにしましょうか」
峰岸はそう言って、また私の腕に自分の腕を回してくる。
「……ん、そうだな。柊は、私たち二人の共有財産だっ!」
ああ、クラスの男子が見たら、「ハーレム状態だー」とか言って羨ましがるんだろうな……。
抵抗することも忘れ、私はこんな馬鹿なことを考えていた。世界一の馬鹿だと思う。
「何だ、柊、日下部、峰岸ー。お前ら遅いぞ、早くしろー」
その声にはっとして、前を見ると、桜庭先生だった。どうやら、私たちが遅いから呼びにきたらしい。
……前言撤回。この状況を見て何も言わない桜庭先生が一番馬鹿だと思う。……やれやれ。
はきはきと喋るバスガイドさん。
私は今、清水寺へ向かうバスに乗っている。バスは、クラスごとなので、こなたたちとは別なので残念……というわけでもない気分だ。何故なら、昨日から私は、あの三人に何かを狙われているような気がしてならないからだ。
何を境に、ああなってしまったかは良く分からないが、多分、おふざけだろう。……そうだ、そうなのよ。そうなはずなのよ。……と、言い聞かせている。そうでなきゃ、私が発狂しそうだから。
「清水寺かー。大して面白くもなさそうだし、さっさとおさらばしたいとこだなー」
前の席に座っている日下部があくびをしながら、言った。よく言ったもんね。
「ったく、何いってんのよ。京都でも指折りの観光名所で、世界遺産の一部でもあるのよ? よくもまあ、あんたが言えたもんね。そんな奴がいるから、日本はダメになるのよ」
「ちぇー。柊はかたいなー」
その様子に、峰岸や私の隣に座っている学級委員長がくすくすと笑う。何よ、私、何か変なことでも言った?
……まあともかく、日下部にも困ったもんね。
そうこうしているうちに、既にバスは駐車場へと入っていた。これから、班での自主研修だ。
「駐車場に到着いたしました。皆さん、お疲れ様でした」
バスガイドさんがそう言って、クラスのみんなも各々降りる準備につきはじめる。私は、最後列に座っているので、最後に降りることにした。
大体の人が降りてから、私もバスを降りようと、日下部と峰岸が座っている席の横を通り過ぎていると、
「柊ー。疲れたー」
「はあ?」
後方からの喚きに、私は言いながら振り返る。
「うー。柊ー。背負ってくれよー」
喚きの張本人である日下部は座ったまま、手を伸ばしてなにやら喚いていた。
「何言ってんのよ……」
言いながら、周りを見回すが、バスに残っているのは私と日下部と峰岸だけ。それと、運転手さんがいるけど、運転手さんに迷惑をかけるわけにはいかない。よって、助けを求められるのは峰岸だけ。
うーん、学級委員長と一緒に降りてれば良かったかなあ……なんて思っても、それはもう遅い話で。私は、何らかの対処をしなければいけない。
私は溜息をついてから、日下部の隣でいやにニコニコしている峰岸に、
「ちょっと、峰岸。何か言ってやりなさいよ」
といったが、
「うーん、ごめんね。柊ちゃん。こういうときのみさちゃんは、どうにもできないの」
と、平然と返されてしまう。ここまでこともなげに言われてしまうと、言葉に窮してしまう。
私は二度目の溜息をつこうかと考えていると、
「でも……この際、みさちゃんを置いていこうかしら。……ね?」
……いや、峰岸。だからって、何で、私の腕に自分の腕を回してくるの? そして、何で、自分の胸に私の腕を押し付けようとするの?
「あーっ! あやのーっ! 抜け駆けはダメって言ったじゃねーかー!」
「みさちゃん。約束は破る為にあるの。そして、恋の駆け引きは先手必勝。そして、もうそれは始まっているのよ?」
やけに艶やかな峰岸の声がバスの中に響く。それはいいんだけど、私を抜きに勝手に話すのをやめてくれ、といいたい。そして、運転手さん。さっきから、声は聞こえているはずなんだから、早く助けてくれ。
「ちぇーっ! なら、私だってー!」
日下部はそう言って、峰岸を押し分けて、通路に立つ。もっと言えば、私の目の前である。ついでに、峰岸の腕は放された。
思わず、私は肩を縮こめて、
「……な、何よ」
「実力行使だー!」
といい、私の肩を掴んで強引に向きを変えさせると、強引に私の背中にのしかかってきた。
お、重っ……! ……と、口に出そうになって、慌てて口を押さえる。いや、日下部が特段に重いって訳じゃないんだけど、急にのしかかられたら、こう思ってしまうのが自然って訳で。……私は誰に言い訳をしているんだろう。
と、ともかく、このいわゆる「おんぶ」の体勢、何とかならないのか?
それに……さっきから……
「あ、当たっているんですけど……」
……日下部の胸がさっきからぐいぐいと押し当てられているのだ。それは、思わず敬語になってしまうくらい、差し迫った懸案事項である。
すると、日下部は、
「馬鹿っ! あててんだよ!」
と、言った。
それと同時に、私の頭は茹蛸のように茹で上がってしまい、
「ばっ……。な、何言ってんのよ……!」
としか言えない。
相変わらず、峰岸はニコニコするばかりで、運転手さんはさっきから微動だにしていないようだ。……まさか、死んでいるわけじゃないわよね?
頭を真っ赤にしながら、何を言おうものか、必死で考えていると、
「じゃあ……私たち二人の引き分けにしましょうか」
峰岸はそう言って、また私の腕に自分の腕を回してくる。
「……ん、そうだな。柊は、私たち二人の共有財産だっ!」
ああ、クラスの男子が見たら、「ハーレム状態だー」とか言って羨ましがるんだろうな……。
抵抗することも忘れ、私はこんな馬鹿なことを考えていた。世界一の馬鹿だと思う。
「何だ、柊、日下部、峰岸ー。お前ら遅いぞ、早くしろー」
その声にはっとして、前を見ると、桜庭先生だった。どうやら、私たちが遅いから呼びにきたらしい。
……前言撤回。この状況を見て何も言わない桜庭先生が一番馬鹿だと思う。……やれやれ。
―――
「これから、班ごとの自主研修にうつる。集合は知恩院。忘れずに来いよ。来なかったら、問答無用で置いていくからなー」
クラス全員を前にして、桜庭先生が言った。やっと、あの二人から解放される……という喜びも束の間だ。
今度は、もっと性質が悪いかもしれない三人を相手にしなければいけない。まあ、私が拒絶してしまえば簡単に済む話なんだけれども、悲しいかな、親友を簡単に拒絶することは私には出来ない相談だった。惚れた方の弱み……じゃない、何ていえばいいんだろうか。
とはいえ、道ならぬ恋に進みたくはない。……はず。ならば、私はどうするべきなのか。目の前に迫りつつあるあの三人を見ながら、私は考える。
しかし、
「かがみんダ~イブッ!」
それは、こなたの急な抱きつきによって、遮られた。
「ゴフッ! ……ちょ、ちょっと痛いじゃないの……」
胸の中にいるこなたに、私は注意する。しかし、やめないどころか、こなたは私の胸に頬をすりすりしてくる。こら、待て。
「そうですよね、やっぱり抱きつくのは優しくじゃないとダメですよね」
みゆき。だからって、後ろから抱きつくのは反則。あ、あんたの胸は反則なんだから……。
押し付けられる胸の感触に私は酔って……って違う! 断じて違う!
「みんなばっかりずるいよ~。私も私も~」
つかさも横から私に抱きついてくる。穢れも何も知らないような純真無垢な笑顔が、私の顔のすぐそばにあった。
傍から見たら、さぞ滑稽な姿に映るだろう。前と後ろと横の三方向から私は抱きつかれているのだ。
というか、何故、誰も止めないんだろうか。それどころか、あちらこちらからカメラで撮られているのは気のせいか。
視線のやり場に困り、辺りを見回すと、学級委員長の姿が目に入った。相手も、こちらにすぐ気付き、微笑みを返してきた。……最強の敵かもしれないわね、これは。
……それにしても、まさか、自主研修中、ずっとこんなことばっかりになるのかしら。
私は頭を抱えながら、上を見上げる。私の心とは裏腹に、太陽がやけにさんさんと輝いていた。
私は仕方なしに、三人から伝わってくる暖かな感触にしばし身を委ねることにした。……いや、認めたわけじゃないのよ。私は……あくまでもノーマルなんだからね。そこのところ、勘違いしないでよ……。
クラス全員を前にして、桜庭先生が言った。やっと、あの二人から解放される……という喜びも束の間だ。
今度は、もっと性質が悪いかもしれない三人を相手にしなければいけない。まあ、私が拒絶してしまえば簡単に済む話なんだけれども、悲しいかな、親友を簡単に拒絶することは私には出来ない相談だった。惚れた方の弱み……じゃない、何ていえばいいんだろうか。
とはいえ、道ならぬ恋に進みたくはない。……はず。ならば、私はどうするべきなのか。目の前に迫りつつあるあの三人を見ながら、私は考える。
しかし、
「かがみんダ~イブッ!」
それは、こなたの急な抱きつきによって、遮られた。
「ゴフッ! ……ちょ、ちょっと痛いじゃないの……」
胸の中にいるこなたに、私は注意する。しかし、やめないどころか、こなたは私の胸に頬をすりすりしてくる。こら、待て。
「そうですよね、やっぱり抱きつくのは優しくじゃないとダメですよね」
みゆき。だからって、後ろから抱きつくのは反則。あ、あんたの胸は反則なんだから……。
押し付けられる胸の感触に私は酔って……って違う! 断じて違う!
「みんなばっかりずるいよ~。私も私も~」
つかさも横から私に抱きついてくる。穢れも何も知らないような純真無垢な笑顔が、私の顔のすぐそばにあった。
傍から見たら、さぞ滑稽な姿に映るだろう。前と後ろと横の三方向から私は抱きつかれているのだ。
というか、何故、誰も止めないんだろうか。それどころか、あちらこちらからカメラで撮られているのは気のせいか。
視線のやり場に困り、辺りを見回すと、学級委員長の姿が目に入った。相手も、こちらにすぐ気付き、微笑みを返してきた。……最強の敵かもしれないわね、これは。
……それにしても、まさか、自主研修中、ずっとこんなことばっかりになるのかしら。
私は頭を抱えながら、上を見上げる。私の心とは裏腹に、太陽がやけにさんさんと輝いていた。
私は仕方なしに、三人から伝わってくる暖かな感触にしばし身を委ねることにした。……いや、認めたわけじゃないのよ。私は……あくまでもノーマルなんだからね。そこのところ、勘違いしないでよ……。
この後の自主研修中に、かがみが頭痛の種を五十個以上作ることになるのは、言うまでもない。
コメントフォーム
- かがみ陥落までもう少し。頑張れ、こなたたち! -- 名無しさん (2008-06-14 18:15:28)
- まさかここで「あててんのよ」が出てくるとはww 傍観者も腐化してるしw
前日からの3人やみさおもさることながら、あやのの変態レベルの高さがGJですw
ツッコミキャラでツンデレのかがみがフェチ対象っていいですね~
(誤解のないように書きますが、こなフェチも好きですよ。) -- 名無しさん (2008-06-01 20:25:15)