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シスター・ラブ

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「何かないっすかねー」
ある秋の休日、私、田村ひよりは、大宮の本屋に来ていた。
いつもなら同人誌とかを買いにここへは来るんッスけど、今日は普通の漫画やラノベを
買いに来たッス。

ぶらぶらと本屋の中を歩いて、ラノベの棚のところへ行ってみると…

「……あれっ?」
そこには学校でよく見る先輩の姿があった。
珍しいな、と思って見ていると、他の棚を見ようとしたのか、横を向いた先輩と
目が合った。私が誰かすぐにわかったのか、先輩は「あっ」と言って驚いた後、
私の方へ歩いてきた。

「こんにちは、ひよりちゃん」
「こ、こんにちはッス、柊先輩」
挨拶をした柊先輩――柊かがみ先輩――に、私は慌てて返事をした。

「意外ッスね、先輩がこういう所に来るなんて」
私はさっき思ったことを先輩に問いかけた。

「ああ、今日は私の好きなラノベの発売日なんだけど、家の近くの本屋では
取り扱ってなくてね。 だからここまで来たってわけ」
「そうなんスか」
そういえば、泉先輩が「かがみはラノベが好き」とか言う事を言ってたような……

「ひよりちゃんは、どうして?」
「へ? あ、私は、いつもここで漫画とか買ってるんスよ」
「へぇ、そうなんだ」
「はい。後、ネタになるものはないかと探してるんスよ」
「ああ、そういえば同人誌とか書いてるのよね」
「はいッス。最近なかなかネタが見つからなくって……」
とまで言って、私はある事を思い出し、首をギュンと動かして、辺りを見渡してみた。

「ど、どうしたの? 突然」
「い、いえ……き、今日はどなたと一緒に来たんッスか?」
「えっ? 一人だけど……」
「そ、そうッスか…」
それを聞いて、私はホッと息をついた。
私の行動を見て、柊先輩は不思議そうにしていたけど、
すぐにああ、なるほど、と言って、ポン、と手を打った。

つかさなら来てないわよ。ったく、どんだけつまらないネタを渡してんだ、
あいつは……」
「ハハハ……」
少し乾いた笑いをする私。

「ひよりちゃんも大変よね。つかさに会うたびにそういう心配しなくちゃ
いけないなんて。はっきり断ればいいじゃない」
「いや、どうもあの笑顔で頼まれると、断るにも断れなくて…」
苦笑いで言った私の言葉に、柊先輩は「ああ、なんとなくわかる気がするわ……」
と言って、また納得したような顔になった。

「私もつかさには……」
「あのー、立ち話もなんですから、どこかに座って話をしません?」
「ああ、そうね。長くなりそうだし」
私の提案を柊先輩は了承してくれて、私達は一旦本屋を出て、近くの日陰にあった
ベンチに座って話をすることにした。


「……それで、柊先輩が柊せんぱ……じゃなかった。えっと……」
「下の名前でいいわよ。聞いてるこっちもややこしくなってくるから」
「そ、そうッスか…」
「さっきの話の続きね。私もつかさには結構甘くしちゃうんだよねー。
ダメだってわかってても、あんな笑顔をされたり、涙目になられたりすると、
どうしてもねー……」
と、かがみ先輩も苦笑いをしながら話してくれた。

「そうなんですか。意外ッスねー、かがみ先輩って、誰にでも容赦ない、って
イメージがあったんですが……」
「……どんなイメージだ」
「い、いえ、あ、あくまで、えっと、い、泉先輩から聞いた話を基にしてッスから……」
かがみ先輩にジト目で睨まれ、私は怖くなって、思わずかがみ先輩の友達で
私と同じオタク仲間の先輩の名前を出した。そうすると、かがみ先輩は
「あいつ、また変なことを……」と呆れたように呟いた。
勝手に名前出してごめんなさい、泉先輩。今度、何か奢ってあげますから。

「まあいいわ。とにかく、私はつかさには弱いのよ。さっきも言ったように、
つかさったら、まるで愛玩動物みたいで……」
「そ、それは言い過ぎじゃないッスか?」
つかさ先輩がかわいそうッスよ、と私が突っ込んだら、かがみ先輩はフフッと
微笑みながら、「そうね、言い過ぎだったかもしれないわね」と言った。

「まあ、あいつに甘い理由は、他にもあるんだけどね」
「えっ、そうなんッスか?」
その微笑みのままかがみ先輩が言った言葉に、私は首をかしげた。

「うん。つかさって、いっつもぽわぽわしてて、なんだか危なっかしいじゃない?
料理しか威張れるものないし、ねぼすけだし、天然だし、ドジだし。
そのくせあんまり運もよくないし」
「……悪口にしか聞こえないんスけど……」
「ハハハ……でもね……」
かがみ先輩は一度言葉を切ると、さっきまでの微笑みから、とても柔らかで優しい笑顔に
表情を変え、天井を見上げて、また言葉を紡ぎ始めた。

「でもね、あの子はそういう自分の弱点をちゃんと自覚して――まあ天然は
自覚してないけど――、それをプラスにしていこうと努力してるのよ。
つかさはつかさなりに一生懸命なの。それがたとえうまくいかなくてもね。
だからついつい甘くしちゃうというか……」
ここで言葉を切ると、かがみ先輩はこっちに顔を向きなおして、人差し指で頬を
掻きながら苦笑いをして。

「――あの子を守りたくなっちゃうのよね」

かがみ先輩は苦笑いの顔をほのかに赤く染めて、恥ずかしそうに言葉を続けた。

しばらく沈黙が続く。私の方は、意外すぎるかがみ先輩の表情に驚いて
何も言えなくなってしまったからだけど。

――さて、どうやって話を続けよう。

このまましんみりとした空気で話すのか、それとも空気を軽くすべきなのか。
ちょっと考えた末、私は。

「……かがみ先輩って、妹さん思いなんですね」
「そ、そうかな……」
「はい。でも、言い方を変えれば、シスコンとか、妹Loveとも取れますよね?」
「なっ!?」
場の空気を軽くすることにした。

「バ、バカ言わないでよ! だいたい、今の話のどこにそんな要素があったのよ!」
顔を真っ赤にして反論するかがみ先輩。なんか、可愛いッス。

「え、全部ッスよ全部。つかさ先輩に甘い、とか、つかさ先輩を守る、とか」
「あ、姉なんだから当たり前でしょう! そ、それにシスコンって、妹が姉にべったり、とか、兄が妹に、とかじゃないの!?」
「いえいえ、昔は姉が妹に、の方が主流だったんスよ?」
「だからって……ダァー! もう、まるでこなたと話してるみたいだわ!」
私に向かって怒鳴り散らすかがみ先輩。でも、そんな風に顔を真っ赤にして
照れくさそうにしてると、怒鳴られてもぜんぜん怖くないッスよ? 先輩。
「た、確かにかまい過ぎな気もするけど……」
 ほら、本音が聞こえてますよ?

「……やっぱりかがみ先輩はツンデレッスねー」
「だからそんなんじゃ……もういい、帰る!」
そう言って、かがみ先輩は顔を真っ赤にしながらガタン、と音を立ててベンチから
立ち上がり、スタスタとどこかに行ってしまった。

「……さすがに言い過ぎだったッスかねー」
多少は反省しながら、私はある事が頭に浮かんだ。

「……そうッス。これッスよ! 次の話は、妹思いの姉に、姉にべったりの妹。
王道といえば王道ッスけど、今やれば逆にとてつもなく萌える話に
なるかもしれないッス! さらに双子の姉妹なら、さらに萌える事間違いないッス!
ううぅー、やるッス、やってやるッス!」
そう叫んで、私はダッシュで店の外へ出た。このネタを忘れないうちに
書き始めるために――


あ、あの店で買う予定だった本、買ってくるの忘れたッス。
まあいいッス。今は自分の事の方が大事ッス!







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  • ひよりんの新作、買いたいです!
    双子姉妹のお話を買いたい! -- チャムチロ (2012-10-25 21:43:07)
  • 少し、頭冷やそうか? -- 姉 (2008-11-30 09:38:02)

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