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だれでも歓迎! 編集
つくるものじゃない
繋がりはいつも
そっと結ばれるリボンで
いま風になびいて 仲良くゆれてる



「ワウワウ」
チェリーが尻尾を振りながら飛びついてくる。
私はいつものように愛犬を受け止める体制に入った。
「きゃっ」
あろうことか手を広げて待つ私の横を抜けて客人へとまっしぐら。
ショックでふらつきかけたがなんとか持ち直して
目いっぱいの声で叫んだ
「チェリー、だめ!!」
100メートル先まで届くだろう、自分でもびっくりするくらい大声が出た。
恐る恐る後ろを向くと
「きゃっ。もうそんなにくっついたら苦しいよお」
なんて言いながらもじゃれ合うゆたかとチェリー。
手入れの行き届いたきれいな芝。
今日も平和だ。

私をよそに仲良く遊ぶふたりを見てひとつ息をついた。
「とりあえず荷物を入れよう」
「そうだね。でもこの犬すごい人なつっこくて可愛いなぁ。なんていう名前なの?」
「チェリー。ちょっと興奮してるけどいい犬だよ。行こうか」
「またね、チェリー」
「ワウ!」
はぁ、チェリーも男の子ってわけだろうか。
少々ショックな場面だったが
相手がゆたかなら、まぁ仕方ないということにしておこう。
スーパーで買った野菜を冷蔵庫に入れ、リビングで一休みすることにした。

お母さんが入れてくれた紅茶を飲み、さっき買ったプチチーズケーキの箱を空ける。
ふいにお菓子コーナーでのやりとりを思い出し、また笑いがこみ上げてくる。
その表情を読み取ったのだろう
「どうしたの、何かあった?」
「ふふ、いやプチチーズケーキが・・」
「あー、お姉ちゃんって呼んだやつでしょ。あれはノーカウントなの、ノーカウント!」
と言ってゆたかは顔を紅くさせて紅茶を一気に飲み干した。
そりゃチェリーも飛びつくわけだ。
リビングに流れるビートルズの曲はとても優しくこの空間を包み込んでいて
お菓子をかじる手を止め、ふたりで聞き入った。
「私この歌好きだなぁ」
「お父さんが好きなんだ」
「そうなんだ。みなみちゃんの家ってなんかオシャレだね」
「そんなことないよ。でもゆたかもこの歌好きなんだ」
「うん。たまにテレビとかでも流れてるよね」
「良かった」
それから3曲くらい、ゆったりとリバプールの波に揺られた。


コツ、コツという音でチェリーが窓から呼んでいるのに気づいた。
一緒に遊ぼうと誘っているのだろう。
ゆたかも乗り気でリビングの窓から直接庭へ出た。
サンダルは少し大きめだったろうか。
「チェリーおいで」
出会った頃の興奮もだいぶ冷めたようで、ゆたかに飛びかかることもなく
フリスビーを追いかけて笑っているチェリー。
私も混ざり一緒になって庭を駆け回ると息を上げて緑の芝に寝転んでしまった。
皆に遊んでもらうの、久しぶりだもんね。
「水をあげないと」
「私があげてもいい?」
「いいよ」
「最初は驚いたけど、ホント人なつっこくていい犬だね」
水を飲むチェリーを撫でて上目遣いで見られると
人なつっこいのはあなたの方ですよと言いたくなるけれどちょっと照れくさいのでやめた。
「ここまで懐くのは初めてだよ。ゆたかのこと好きになったみたい」
「本当に?なんか嬉しいなぁ。チェリー、水おいしい?」
「ワン」
チェリーはいつもより元気よく答えた。
確かにこの子は人なつっこい方だけど、会ってすぐブンブン尻尾を振り回すこともない。
犬は匂いに敏感だから私と同じ年の子の匂いを嗅ぎ分けてこんなにすぐ懐いたのだろうか。
もしかして私の匂いがゆたかにもついているからとか?
ただこの匂いに関する仮説は後日田村さんが家に来てあっさりと崩れ去るのだった。

チェリーを家に入れると、時計の針は12時を少し回っていた。
そろそろ昼ごはんを作る時間だとお母さんに急かされ
エプロンに着替えて、カレーを作りだした。
「小学校のキャンプ思い出すね。私は野菜を切る係りだったよ」
少し大きめのエプロンを身に着けたゆたかがピーマンを切る。
「私は火をおこしてた」
今は並んでジャガイモの皮を剥いている。二人とも野菜係りだ。ご飯は炊飯器に任せておけばいい。
「みなみちゃんならテキパキやれそうだね」
「熱かったなぁ。でも楽しかった」
「そうだよね、キャンプ楽しいよね。あ、今度の夏休みキャンプ行かない?」
「うん。今度計画たてよう」

材料を切って、軽く炒めて鍋に入れる。
この一見簡単そうな手順を実際やってみるとやはり楽だった。
カレーにしたのは正解だったみたいだ。
少し大きめのエプロンを着けるゆたかも手慣れた手つきで包丁を扱っている。
料理はあまり上手くない、という言葉は謙遜だろう。
私はいつもより小さめにジャガイモを切って大きさを確かめてみた。
「これくらいでいいかな?」
「うん。ちょっと小さいかもだけど、うちも大体それくらいだよ」
お互いに大きさを合わせようとすればするほど具は小さくなり、普段と比べて半分くらいになってしまった。
最初に確認したのと比べ二回りくらい小さくなった材料を鍋で軽く火に通し水を入れた。
「思ったよりも小さくなっちゃったね」
「これはこれでおいしくなるよ、大丈夫」
「料理って楽しいな、色んなメニュー作れるようになりたくなったかも」
「私も、二人で作ったら他のも作りたくなった」
「こなたお姉ちゃんに教えてもらわなきゃ」
「泉先輩・・・」

料理への誓いを一通り済ませ、鍋にルーを入れ数分したらいい匂いがしてきた。
お母さんサラダを作ってくれて、三人で食卓を囲む。
お皿にご飯を盛って、ルーをかけようと鍋を覗き込むと
「あ・・・」
「どうしたの、みなみ?」
「お母さん、カレーが何か変」
「あら、これは――」
「どうしたの、みなみちゃん」
私たちは確かに切ったはずだ。
うん、キャンプの約束もしたし、大きさだって考えた。あれは夢じゃあない。
なのに、具がない。にんじんやお肉、ナスは見えるけど他の具が消えた?
「バイツァ・ダスト・・・。具を入れたという事実さえ、消し飛ばしたの?」
ああ、ゆたかが訳の分からないことつぶやいている。今度は青ざめた顔で。
「これは野菜とジャガイモが溶けちゃったのね」
「溶けたんですか?」
「そうねぇ、ちょっと具が小さすぎたのかしら」
「よかった。せっかく切った具がどこかに行っちゃったのかと思いました」
「ふふふ。そんなわけないじゃないの。でも味は良いハズでしょ?二人が作ったんだから」
一安心して、テーブルに座りなおした。
目の前には色は偏っているけど、力を合わせて作ったカレー。
おいしい、おいしいはずだ。
「いただきます」
ゆたかとほとんど同時にスプーンですくって口に入れる。
顔を見合わせ
「おいしい!」
「これおいしいよ!」
溶けた玉ねぎ、ジャガイモ等の具材が味を引き立て
冷蔵庫からこっそり使ったちょっと高そうなヒレ肉はもちろん、
お母さんが最後に入れたナスの食感や小さいにんじんも甘くて柔らかい。
何より二人で作ったという重み、おしゃべりやゆたかの野菜を切るときの真剣な眼差しが
最高のスパイスになっていて「おいしさ」の根源に触れたような気持ちになった。
「おいしい」
「うん、おいしいね」
「たまには具の溶けたカレーもおいしいわね。またご飯作りに来てね、ゆたかちゃん」
三人が口を揃えて褒めちぎった、カレーも満足しているはず。

さて、ゆたかにも手伝ってもらって片づけを済ませ私たちは、リビングへ戻った。
途中廊下で寝ていたチェリーは遊びつかれたのだろうか。
昼ごはんも上手くできたし一息つくにはぴったりの時間、午後2時。
天気は庭にシートでもひいて昼寝したいほどの晴れやか。
中学の頃の話とか棚に並んだDVDの中でどれが好きかとか、他愛のない話をしていて
せっかくだから何か見るかという話になった・
「ゆたかはどれが見たい?」
「うーん。色々見たいけど決められないからみなみちゃんの見たいのがいいな」
「最近見てないのはこれとこれかな」
「私これ見たことあるよ」
二枚選んだうちゆたかが指さしたのは“DEEP BLUE”というイギリスのドキュメンタリー映画だ。
「すごく綺麗な海が出てくるんだよね。でもアホウドリが出てくる所で寝ちゃったなぁ」
「別のにする?」
「そうだね。また寝ちゃうかも」
「じゃあこっちの映画でいい?」
「スタンダバイミー、これ見たことない」
スティーブン・キング原作の青春映画。お父さんが好きで小さい頃一度だけ一緒に見たことがある。
男の子が線路を歩いてる場面しか覚えてないので、まぁ初見みたいなものだ。

「この男の子可愛いね」
「うん、私もほとんど覚えてないから楽しみ」

一時間半後、エンドロールまで見終えた私たちの表情は多分同じだったと思う。
「良かった」
「うん、すごくいい映画だったね」
ここで泣くんですよ!って場面はなかったけれど
確実に私の胸を暖かくさせるような感動と男の子へのちょっとした憧れを抱いた。
「やっぱいいなぁ、男の子って」
「うん。本当に」
やっぱり。私もゆたかも同じこと考えてた。
私は女の子で良かったよ。だってこうやってゆたかと友だちになれたんだから。
「じゃあ私そろそろ帰るね」
「ゆたかちゃん、また遊びに来てね」
「はい、今日はとっても楽しかったです。ありがとうございました」
いつの間にか一緒に映画を見ていたお母さんもゆたかのことが気に入ったみたいだ。
「帰りは駅までおくって行くからね」
「ではお言葉に甘えて」
「ほらみなみ、行くわよ」
車の中で今日のことを話した。
キャンプの約束やカレーのことや映画のこと。
もっと遊んでいたかったけどゆたかがこう言ったから
「みなみちゃん、また明日」
「うん、また明日」
続きは、また明日。






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  • なんか、みなみの口調が、、、 -- チャムチロ (2012-09-03 08:39:37)
  • 爽やかでGJ -- 名無し (2010-03-09 21:24:38)

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