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あやの の 神様

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だれでも歓迎! 編集



 ある夏の昼下がり。
 私の家に柊ちゃんとみさちゃんが遊びに来た。
 ジュースを取って部屋に戻ってくると、二人はおしゃべりで盛り上がっていた。

「この前、あやのが初チューした時の夢を見てさ」
「おぉ~」
「あれは・・・、アニキだっけ?」
「ほほぅ。 峰岸って、結構大胆なのね?」

 どうやら私が小さい頃、無理やり男の子にキスした時の話をしたみたい。
 2人ともニヤニヤして私を見ている。

「も、もう!!」

 まったく、困っちゃうな。
 みさちゃんて、時々昔の恥ずかしいことしゃべっちゃうんだもん。

 私は赤い顔で、ジュースを注いだコップを置いた。
 その後も2人は他愛もないおしゃべりを続けていて、私は少し離れたところに座って外の景色を眺めた。

 セミの鳴き声が遠くから響いてくる。
 部屋はクーラーが効いてて、とても快適。
 外はきっと炎天下。

 私の初キスの夢・・・か。
 みさちゃんの中では・・・、きっとそうなんだよね。

 私は窓から見える青い空を見上げ、ふと思い出した。
 私が初めてキスをしたときのことを・・・・・・。



                ― あやの の 神様 ―




 あれは、私とみさちゃんが小学校に入る前、みさちゃんの家族と私の家族が、
 一緒にみさちゃんの親戚の家に遊びに来ていた時のことだった・・・。

 私とみさちゃんは、家の中で遊ぶのにも飽き、2人で探検に出かけた。
 アブラゼミの鳴き声が、道のあちこちからうるさいくらいに聞こえている。
 真夏の強い日差しと、地面から立ち上る熱気に、舗装もされていない道を、2人は汗だくで歩いていた。
 すると、石を蹴りながら歩いていたみさちゃんが急に立ち止まり、森のほうを指差して言った。

「ねぇねぇ、あやの。あっちに、でっかいカブトムシいんだゼ」
「そうなの?」
「うん。この前アニキと一緒に見つけたんだ。これから行ってみようよ」
「え? で、でも、私たちだけじゃ危なくない?」
「へーきへーき。そんなに危なくなかったもん」
「でも・・・・」
「大丈夫だって。ね? いこー」
「わ、ま、まってよ、みさちゃん」

 みさちゃんは私の手を引くと、そのまま森に向かって歩き出した。
 背丈ほどもある草をかき分けると、もわっとした草いきれが顔を掠める。
 森の中に入ると、そこには鬱蒼とした木々が広がり、少し薄暗かった。

「あれー? この辺だったと思うんだけどな・・・」
「ね、ねぇ、みさちゃん。・・・そろそろ戻ろうよ」
「大丈夫だって。ほら、あそこから入ってきたんだよ」

 そういってみさちゃんは、後ろの草むらを指差した。
 見ると、確かに私たちが入ってきた部分の草がなぎ倒されている。

「な? だから心配すんなって」
「う、うん・・・」

 みさちゃんに手を引かれ、しばらく周辺を探してみたけれど、カブトムシは見つからなかった。

「おかしいなぁ・・・。この前はいたんだけど・・・」
「ねぇ、また今度来ようよ。今度はお兄さんとか、おじさんと一緒に」
「なぁ・・・。もうちょっと奥に行ってみようか?」
「え~! 危ないよ!」
「大丈夫だって。じゃあ、ここに目印に、私の麦わら帽子置いとけば、すぐわかるじゃん?」
「う~ん・・・・。 じゃあ、ちょっとだけだよ」
「うん! よし、行こう!」

 そういってみさちゃんは私の手を掴んで、森の奥に向かって歩いていった。
 私はちょっぴり怖くて、時々後ろを振り返りながら、みさちゃんの麦わら帽子を確認して歩いた。

「あやの、ここ、少し急だから、ちゃんと前見てね」
「う、うん。わかった」

 目の前には、少し急な坂があった。
 そろりそろりと斜面を降り、ようやく下に着く。

「ね、ねぇ。帽子見えなくなっちゃったよ?」
「ん? 大丈夫だよ。降りてきたところ覚えてるから」
「そ、そう?」

 そのまま森の奥に進むと、一本の大きなクヌギの木があった。

「おお! ここならいるんじゃねー?」

 そう叫ぶと、みさちゃんはクヌギの木に向かって走っていった。

「見ろ、あやの! でっかいのがいたぞ! すげーな!」
「ホントだ!  あっ!みさちゃん!そっちにもいるよ!」
「んー・・・。おお!こんなに大きいのは初めて見た!アニキと見つけたのより大きいかも!」

 私たちは、目の前にいる大きなカブトムシに夢中になって、周辺の木を探して回った。
 どれくらい探していたのかわからないけれど、気がつくと、周囲はさっきよりも薄っすらと暗くなっていた。

「ははは、もう虫かごに入らないや。これだけあれば、きっとアニキもびっくりするな」
「みさちゃん・・・・。なんか、暗くなってきてない?」
「え?  ホ、ホントだ・・・。さっきまで晴れてたのに・・・」

 さっきまで聞こえていたセミの鳴き声もいつしか止んでいて、あたりは急に静かになった。
 私は途端に心細くなり、みさちゃんの腕にしがみついた。

「ね、ねぇ。そろそろ帰ろう?」
「う、うん・・・」

 みさちゃんも、辺りが急に暗くなって不安になったみたいで、すんなりと同意してくれた。

「あ、あれー? どっちから来たんだっけ?」
「え?」

 周りには似たような坂がいくつもあって、どこから降りてきたのかわからない。
 カブトムシ探しに夢中で、いつの間にかさらに奥まで来てしまっていたようだった。

「ど、どうしよう。みさちゃん・・・・」
「だ、大丈夫だって。たぶん、あっちから来たんだよ」

 そういってみさちゃんは、私の手を握って歩き始めた。
 私の手を握るみさちゃんの手は、力が入っていて少しだけ痛かった。

 歩いても歩いても辺りは同じ風景で、どこをどう歩いているのか、まったくわからなかった。
 いくつか同じような土手を登ってみたけれど、目印の麦わら帽子は見つからなくて、何度も降りては登ってを繰り返した。

「はぁ、はぁ、はぁ・・・・。おかしいな・・・・。どこ行っちゃったんだろう・・・」
「みさちゃん。ちょっと休まない?私、疲れたよ」
「あ、う、うん・・・」

 目の前に細い木が倒れていて、私たちはそれに腰掛けた。
 そこでみさちゃんの持ってきた水筒の麦茶を一緒に飲んで、私のポケットにあったビスケットを2人で分けた。
 無言のままビスケットを食べていると、私は次第に不安になっていった。

「・・・みさちゃん・・・・」
「んあ? どうした、あやの?」
「・・・もし、このまま帰れなかったらどうしよう・・・」
「・・・・・・」
「・・・・おじさんたちも見つけられないかもしれないし・・・」
「・・・・・・」
「・・・う、うぇ・・・ぐす・・・うぇぇぇぇぇん」

 私は不安に耐え切れず、思わず泣き出してしまった。

「あ、あやの・・・」

 そんな私をみさちゃんは、ギュッと抱きしめてくれた。
 その身体は温かくて、でも、少しだけ震えていた。

「大丈夫だ! 絶対に帰れるから!」
「・・・ぐすっ・・・う、うん・・・」
「きっと、アニキたちも探してくれるよ。だから、もうちょっとがんばろう?」
「・・・・うん! 私、がんばる」

 今思えば、きっとみさちゃんだって不安だったんだと思う。
 だけどみさちゃんは、そんな気持ちは見せないようにして、私を励ましてくれた。

「ねぇ、みさちゃん。麦わら帽子は見つからないみたいだから、それを探すんじゃなくて、どこか道に出られそうな場所を探さない?」
「そうだね。そうしようぜ」

 ビスケットを食べ終えた私たちは、今度は森から出られそうな場所を探して、もう一度歩き始めた。
 周りをよく見ながら歩いていると、みさちゃんが、遠くに家のようなものを見つけた。

「お? あ、あれ、家じゃないか?」
「え? う、うん。そうだよ。きっとお家だよ」
「やったー! あそこに誰かいるかもしれない。行ってみよう」
「うん!」

 私たちは家を見つけたことが嬉しくて、短い草に足をとられながらも、一生懸命走った。

「はぁっ、はぁっ、はぁっ・・・・・ん? あ、あやの、これって・・・」
「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ・・・・・、ど、どうしたの?   あ・・・」

 目の前にあったのは、古ぼけた小さなお堂だった。
 屋根は所々色が剥げ落ち、壁には小さな穴が無数に空いていた。

「家・・・じゃなかった・・・・」
「・・・・う・・・、う・・、う、うわぁぁぁぁん!!」
「あ、あやのぉ・・・だ、だいじょう・・・・ぶ」
「うぇぇぇ・・・。ひ、ひっく・・・うぇぇぇぇん!」
「う・・、う・・、大丈夫・・・・だか・・・ひくっ・・・ら・」
「う・・ぐすっ・・・もう、帰れないよぉ・・・」
「・・ぐ、ぐすっ・あ・・やの・・・・」
「お父さ~ん!お母さ~ん!」
「・・ん・・・くっ・・・・あ、あやのっ!!」
「っ!!」

 みさちゃんの大きな声に、私は思わず泣き止んだ。
 驚いて顔を上げると、そこには目にいっぱいの涙を溜めて、口を強く結んだみさちゃんがいた。

「あやのっ!! 大丈夫だから!」
「みさちゃん・・・・」
「こういうところには神様がいるって、前にばあちゃんが言ってたから。
 だから、一緒にお祈りしよう!」
「・・・・・・・」
「『お家に帰れますように』って、一緒にお祈りしよう!!」
「・・・・ひ・・ひく・・・う、うん」

 私たちは、お堂の前に座って手をあわせて、一生懸命にお祈りをした。

(お家に帰れますように・・・。お父さんとお母さんに早く会えますように・・・)

 その時、突然空が光った。

「うわっ!!」
「きゃあっ!!」

 思わず2人で抱き合い、空を見上げると、真っ黒な雲が空一面を覆っていた。
 そして、次の瞬間、大きな雷の音が辺りに鳴り響き、空から大粒の雨が降ってきた。

「うわぁぁぁぁ!!」
「きゃぁぁぁぁ!! み、みさちゃん!! こわいよぉ!!」

 思わずみさちゃんに抱きつくと、みさちゃんの身体も震えていた。
 みさちゃんも私を抱き締め、お堂の軒に立ったまま空を見上げている。
 その間も、稲光は容赦なく頭上で閃き、数秒後に大きな音をたてる。
 みさちゃんの服を掴み、不安と恐怖で震えながら、ふとお堂を見ると、扉が少しだけ開いているのが見えた。

「み、みさちゃん。ここに入れるかもしれない」
「だ、だけど・・・、神様に怒られないかな・・・」
「だ、大丈夫よ。きっと神様も許してくれるよ」
「・・・・う、うん・・・」

 恐る恐る中に入ってみると、床がギシギシと音を立てる。
 暗闇の中、室内を見回すと、そこには小さな像が一つだけ置いてあった。
 人の形はしているけれど、今まで見たこともないような不思議な姿だった。

「ねぇ、みさちゃん。これって、神様なの?」
「う~ん・・・。ばあちゃんは神様がいるって言ってたような気がするけど・・・」
「仏様かな?」
「そうだっけ? わかんない」
「わたしも」
「ま、どっちでもいいんじゃん?助けてくれるんだったら」
「なんか、そんなこと言ったら怒られそうね」
「んじゃ、神様仏様、ちょっとだけ雨宿りさせてください。あと、早く家に帰れますように、お願いします。
 ほれ、あやのもお願いしたほうがいいよ」
「う、うん。早くお家に帰れますように。お父さんとお母さんに会えますように」

 私たちは、その像に向かって手を合わせ、その前に隣り合って座った。

 お堂の屋根には、すごい勢いで雨が叩きつけ、外からは雷の大きな音が、ひっきりなしに聞こえている。
 雷の音が聞こえるたびに、私はみさちゃんにしがみついて泣いた。
 みさちゃんもきっと怖かったと思うけど、私を抱きしめながら、ずっと背中をさすってくれていた。

 どのくらい経ったのか、気がつくと、雨の音も雷の音も聞こえなくなり、お堂の屋根から落ちる雫の音だけが聞こえていた。

「み、みさちゃん?」
「ん? あ、雨・・・、止んだのかな?」
「そ、そうみたい」

 お堂の扉を開けると、さっきまでの黒い雲は消え、雲ひとつ無い、真っ青な空が広がっていた。

「うわぁ・・・・」
「きれい・・・・」

 そして、その抜けるような青空には、とても大きな虹が架かっていた。
 それはまるで、がんばった私たちに、神様がご褒美をくれたみたいだった。

 しばらく2人で虹を眺めていると、遠くから声が聞こえてきた。

「あ!あれ、アニキじゃねーか!?」
「え? あっ!本当だ! それにおじさんもお父さんもいるよ!」
「やった!神様が助けてくれたんだ!」
「うん!きっとそうだよ!」

 私たちはもう一度お堂に振り返り、手を合わせた。

「「どうもありがとうございました」」

 そして手を繋ぎ、一緒に走り出した。





 おじさんたちに連れられて家に戻ると、お父さんとお母さんからすごく怒られた。
 横では、みさちゃんもおじさんとおばさんに怒られていて、わたしたちは大きな声で泣き続け、そのまま泣き疲れて寝てしまった。

 翌日、お堂にいたことをみさちゃんのおばあちゃんに話したら、

「困った時は、ちゃんと守ってくれるんだよ。ちゃんとお礼も言えて、偉かった」

 って言って、頭を撫でてくれて、お菓子をくれた。

 お堂のことをおばあちゃんに聞くと、あそこは地元の人もあんまり行かないところだけど、
 もしかしたらと思って、おじさんたちに探すように言ってくれたんだって。

 その後、おばあちゃんに道を聞いて、私はみさちゃんと一緒にあのお堂に向かった。
 手にはバケツと布巾と箒。道に咲いてた綺麗なお花。そして、おばあちゃんからもらったお菓子を持って。

 お堂に着くと、置いてあった像を濡れた布巾で優しく拭き、お堂の中を箒で掃いた。
 像を元の場所に戻し、その前にお花とお菓子をお供えすると、少しだけお堂の中が明るくなった気がした。

「よし。これでいいかな」
「うん。すごく綺麗になったね。神様も喜んでくれるかな?」
「大丈夫じゃねーか?これだけ綺麗にすれば」
「そうだね。ちゃんとお礼・・・   あっ!」

 その時私は、まだちゃんとお礼をしてないことに気がついた。

「ねぇ、みさちゃん?」
「ん?どした?」
「ちょっと目つぶってくれる?」
「こ、こお?」
「そうそう。そのままでいてね」

 チュッ

「んあ? なんかした?」
「うふふ。みさちゃんにありがとって」
「へ? な、なんで?」
「え~と・・・、みさちゃんは、私が怖かったり、泣いちゃったりした時、ちゃんと守ってくれたから」
「ん~・・・。そうだっけ?」
「うん。だから、みさちゃんにもお礼ね。ありがと」
「あはは、ありがと、あやの!」
「えへへ」
「んじゃ、帰ろっか?」
「うん!」

 私たちは手を繋いで、もう一度来た道を戻っていく。
 その時見た青い空はどこまでも透き通っていて、まるでその時の私の気持ちを表しているみたいだった。






 空から部屋に目を戻すと、みさちゃんと柊ちゃんは、まだおしゃべりを続けている。
 お菓子を食べながら、2人はすごく楽しそう。
 その2人を見ながら、私は1人考える。


 私のファーストキスはみさちゃんとだった。
 そして、私の初恋もみさちゃんだった。

 あの時みさちゃんは、私をちゃんと守ってくれた。
 怖くても、逃げないで一緒にいてくれた。
 私はそれが嬉しくて、私はみさちゃんが本当に好きになった。
 だからみさちゃんにキスをした。
 私はみさちゃんが、今でも大好き

 だけど私は今、みさちゃんのお兄さんと付き合っている。

 みさちゃんのお兄さんはすごく優しくて、私を大切にしてくれる。
 たまにケンカもするけれど、すぐに仲直りをしてくれる。
 私はそれが嬉しくて、私はお兄さんが本当に好きになった。
 だからいつまでも一緒にいたいって思ってる。
 私はみさちゃんのお兄さんが、これからもずっと大好き。


 私は、みさちゃんもみさちゃんのお兄さんも、どっちも大好き。
 だけど、その「大好き」はちょっとだけ違う気がする。
 どうして違うんだろう?

 私はみさちゃんとお兄さんのことを考える。

 みさちゃんは柊ちゃんが好きだけど、大好きなみさちゃんが柊ちゃんの事で悩んでると、私はとっても哀しい。
 みさちゃんは柊ちゃんが好きだから、大好きなみさちゃんが柊ちゃんと仲良くしてると、私はとっても嬉しい。

 でも、

 私はみさちゃんのお兄さんが好きだけど、大好きなお兄さんが別な誰かを好きって言ったら、私はとっても哀しい。
 私はみさちゃんのお兄さんが好きだから、大好きなお兄さんが私のことを好きって言ったら、私はとっても嬉しい。


 ああ、そうだ。

 きっと私は、

「大好きなみさちゃんが、幸せになってほしい」って思ってる。
 だから、みさちゃんが柊ちゃんのことを好きでも、私はちっとも哀しくないし、幸せになってほしいと思えるんだろう。

 そして私は、 

「大好きなお兄さんと、幸せになりたい」って思ってる。
 だから、みさちゃんのお兄さんが、私以外の誰かを好きって言ったら、とっても哀しいと思うんだろう。

「大好きな人が幸せになってほしい」のか「大好きな人と幸せになりたい」のか。
 たぶん、それが違うんだと思うし、それだけの違いなんだと思う。

 きっと2人への「大好き」は一緒で、これからもずっと変わらないんだろう。


 私とお兄さんのように、みさちゃんが柊ちゃんと恋人になれるかはわからない。
 だけど、その楽しげな様子を見ていると、私はこの2人が、
 いつかは私たちと同じように恋人になるんじゃないかって思うし、なってほしいと思う。
 だから私はもう一度、大好きなみさちゃんのために、あの神様にお祈りをする。



             ― みさちゃんが柊ちゃんと幸せになれますように ―



 目を開け、顔を上げると、不意にみさちゃんが話しかけてきた。

「なあ、あやの。あの話ってなんだっけ?」
「ん?なんの話?」
「ほら、あれ。えーと・・・、わたしとあやのが小さい頃、森で迷子になった話」
「え・・・・?」

 みさちゃんの口から出た思いがけない言葉に、一瞬唖然としてしまう。

「あんたら、そんなことあったの?」
「うん。確か、夏だったと思うんだけど・・・。
 一緒に虫取りしようとしてて・・・えーと・・、神様がいて・・・・・」
「神様?」
「うん・・・。あやのと2人でお祈りしたような・・・・」
「ちょ、ちょっと! 気になるじゃない!」
「う~ん・・・・・。なんだっけ、あやの?」

 頭を抱えたみさちゃんは、そういって私の方を見る。

「ふふふ。ほら、みさちゃんが、私が止めるのも聞かないで・・・・・・」

 私は話す。
 あの怖くて、不思議で、そして、甘酸っぱい話を。
 だけど、ファーストキスの話は内緒にしとこ。
 柊ちゃんがヤキモチ妬いちゃうかもしれないから。

 私は思う。
 あの私のお祈りが、きっと神様に届いたんだって。
 もしも願いが叶ったら、その時は2人に教えてあげよう。
 私が内緒でお祈りしたことを。

 ふふふ。いつか叶えてくれるよね?
 そしたら、みさちゃんと柊ちゃんを誘って、一緒にお礼にいくから。
 だから、楽しみに待っててね。 神様。



                              了
































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  • まさか公式であやのの初恋がみさおだとは思わなかったなぁ…
    この二人結構好き -- FOAF (2014-02-13 21:53:42)
  • なるほど、
    この二種類の好きは面白いな
    これは百合じゃなく友情として見れる -- 名無しさん (2011-04-14 02:09:08)
  • 丁寧で優しくて本当感動させられます。ありがとう。 -- 名無しさん (2010-05-10 20:33:53)
  • GJなんだぜ -- 名無しさん (2009-08-30 20:31:29)
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