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輝く季節へ 5話

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「……」
目を覚ます。目に映し出されたのは見知らぬ天井、薄暗い部屋。
そっか、私、ネカフェに泊まっているんだっけ。
学校を飛び出してから、当てもなく彷徨って、夜になって、
ゆーちゃんに忘れられる事が怖くて、
お父さんに「あなた誰?」という視線で見られることが怖くて、
私は家に帰ることができなかった。
どんどん忘れられていく自分。希薄になる自分。
それは、あのゲームで見た主人公と同じ。
もうすぐ、私も消えちゃうのかな。
ナイトパックの終わり、私はネカフェを出る。
行き先なんてない。あてもなく粕壁の町を歩く。
誰も話しかけてきてくれない。誰も相手にしてくれない。
人から忘れ去られるのと同時、私の存在自身も消えつつある。
まるで、私がそこに存在しないかのように通り過ぎる人たち。
行く場所もなく、本屋で立ち読み。
待ちに待った待望の新作なのに、その内容が頭に入ってこない。
本を閉じ、ため息をつく。
気づけば店内には制服姿が増えてきていた。時間はもう、下校の時間だ。
見慣れた制服姿のなかに覚えのある顔、ひよりんだ。
ひよりんはちらちらと新刊をチェックしながら、
「あ、すみません」
と、私の後ろをすり抜ける。
まるで、見知らぬ人とすれ違うかのように。
「おおっ、あったあった。待望の新作っ。次のコミケはこれに決まりっすかね」
嬉しそうに本を手に取り、私のことなんて空気のように通り過ぎて、田村さんはレジへと向かう。
うん、君もこのよさが分かるのかね。ひよりん。
君が書くこれの同人誌、私も読んでみたかったのにな。
ごめん、私、買えそうにないや。


次第に希薄になる自我。
息が苦しい、体が重い。
薄れ行く自分の気配を感じながら、私の足は学校へと向かっていた。
バスではあっという間の道。
つかさと、みゆきさんと、かがみと、四人で楽しくバスに揺られながら向かった学校への道。
(それも、今日でお別れだね)
いや、それだけじゃない。
岩崎さんとも、
ひよりんとも、
黒井先生とも、
お父さんとも、
ゆーちゃんとも、
みゆきさんとも、
つかさとも、
かがみとも、
みんな、みんなこれでお別れなんだ。
「うあ……」
涙がぼろぼろ零れ落ちる。
そんな私の周りを、こともなげに通り過ぎていく人たち。
もう、私の存在自体が消えかけてしまっている。
このまま私は誰にも気づかれることなく、この世界から消滅する。
いままで生きてきた、その軌跡を何一つ残さずに。
何でだろう。あの時は、あんなに消えてしまうことを望んだのに。
どうしてだろう。あの時は、一人ぼっちでいることなんてなんともなかったのに。
何で……私はこんなに苦しいんだろう。
「はぁ……はぁ……」
涙でにじむ視界の中、やっと校門が見えてきた。
がらんとした校舎。
西日に染まる学校に、人影は少ない。
(最後に、誰かに会いたかったのにな……)
たとえ気づいてもらえることがなくても、私を知っている誰かの側で消えたかった。
この世界から消える、最後の瞬間、大切な友達の姿を目に焼き付けて消えたかった。
でも、それはきっと叶わぬ願いだから……
(あれ?)
霞む視界、向こうに揺れる、二つのリボン。
まっすぐにこっちに向かってくる、釣り目がちの少女。
(かがみ……)
よかった、最後にかがみと会えるだなんて。
もうこんなに私の存在は希薄だから、きっとかがみには私の姿すら見えていない。
でも……それだけで充分。
大事な親友の姿を、目に焼き付けて消えられるんだから。
(あれ?)
かがみの姿が、だんだん近づいてくる。
そんな、かがみには私の姿、見えていないもん。
帰るところだから、校門に向かって歩いているから、こっちに来てるだけだよね。
かがみは私に向かってまっすぐに歩いてくる。
あれ、本当に姿が見えてないのかな?
でも、消えかけているからってさすがにすり抜けちゃったらショックだよね……
そんなことを考えている私の前で、かがみの足が止まる。
かがみの手が、私の肩をぎゅっと掴み……
えっ、私の肩を……
「こなた!! どこへ行っちゃってたの!! この馬鹿!!」
それは、間違いなく私自身、『泉こなた』にかけられた声。
ぎゅっと私の肩を掴み、私を見つめるかがみの瞳に映った私自身。
近くで見てみれば、かがみのそのいつも強気な目には溢れそうなくらい涙がたまっていた。
「かがみ……私が、分かるの?」
「分かるのって、当たり前よ!! みゆきにも、つかさにも、黒井先生にも、
 誰に聞いてもこなたのこと、知らないって言うし、
 いったいどうなってるの、説明しなさい!!」
あふれ出てくる、涙。
そうだったんだ、かがみは、ずっと私のこと……
「うわぁぁ……かがみぃ……」
私はかがみの胸の中に顔をうずめ、ぼろぼろと涙をこぼした。
ずっと会いたかった人、私を忘れないでいてれた人。
やっと、見つかった……


夕暮れの屋上。
ベンチの隣で、ずっと私の涙交じりの話に耳を傾けてくれたかがみ。
「ふぅん、そのゲームの中と同じことが、こなたにも起こってるわけ?」
「うん……信じて、くれる?」
普通の人にこんなことを言ったら、痛いオタクがついに行き着くところまでいっちっゃたかと思われるだろう。
でも、かがみは……
「信じるよ。こなたは結構嘘つきだけれど、こんなときにまで嘘をつく子じゃないから」
泣き笑いの表情で、かがみはくしゃっと私の頭を撫でる。
「それでそのゲーム、ちゃんと主人公は『えいえんのせかい』から戻ってくるのよね」
「うん、ヒロインが一年間、みんなが忘れてしまっても主人公のことを覚えていてくれれば
 戻ってこれる。 きっとかがみが、一年間私のことを覚えててくれれば……」
「はは、私、ヒロインなんて性質じゃないんだけどな」
かがみは恥ずかしげに視線をそらす。
ちょっとだけ、頬を染めて。
「忘れるわけ、ないじゃない。大切な……友達のこと、忘れたりするわけないでしょ」
ぎゅっとかがみを抱きしめて、胸に頭を埋める。
大切な友達。
ううん、きっとそれだけじゃない。
ゲームの中で主人公を覚えててくれた人。
その人は……
「ねえ、かがみ」
「ん?どうしたの?」
「私のこと、すき?」
かがみの胸から顔を上げる。
真っ赤になって、口をぱくぱくさせる、かがみ。
「あ、あんた……え、えと私は……」
「友達としてじゃないよ。私のこと、恋人として……すき?」
かがみは顔を真っ赤にして俯き、ごにょごにょ呟いて……
「好き……」
小さく呟いた。
「初めはつかさの友達ってだけだったのに、つかさが心配だったからお昼顔出してただけなのに、
 いつの間にか、どうしようもなく好きになってて、つかさをだしにしてこなたに会いにきてた。
 お昼のときも、放課後も、海も、花火も、コミケも、あんたが、あんたが……んっ……」
我慢できなかった。
俯き気味のかがみに背伸びして、唇を重ねた。
我慢、できないよ。あんなにかわいいこと言われたら。
私の大好きなかがみに。
「あのね、かがみ」
だけど、ちょっとだけ言い訳。
「あのゲームね、一応18禁だから、その、えっちなシーンもあるんだ。
 こっちの世界に戻ってくる、必須の条件じゃないかもしれないけど、その……」
精一杯の決心をこめて、言う。
「えっちなこと、しよ?」


















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  • やべぇ!!続きが超気になる。
    この期待感は一体何だ?GJ -- kk (2009-10-22 00:29:52)
  • この話最高! -- 伝説の男 (2009-10-21 19:27:52)

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