私の好きな人には好きな人がいる。
「かがみ達のお弁当は今日もおいしそうだね、つかさが作ったの?」
こなちゃんはチョココロネをかじりつつ、羨ましそうにお姉ちゃんのお弁当を見て言った。
「うん、そうだよ」
「悪かったわね、どうせ私が作ったらまずそうよ」
お姉ちゃんはそっぽを向いて、唐揚げを一つ口に運ぶ。
「かがみが作ったのには、裏に努力が見えてそこに萌えというプラス要素が入るのだよ」
その様子を見ながら、こなちゃんはケラケラと笑う。
こなちゃんはチョココロネをかじりつつ、羨ましそうにお姉ちゃんのお弁当を見て言った。
「うん、そうだよ」
「悪かったわね、どうせ私が作ったらまずそうよ」
お姉ちゃんはそっぽを向いて、唐揚げを一つ口に運ぶ。
「かがみが作ったのには、裏に努力が見えてそこに萌えというプラス要素が入るのだよ」
その様子を見ながら、こなちゃんはケラケラと笑う。
本当に嬉しそうな笑顔。
私じゃ作る事のできない笑顔。
「あっそう、勝手に言ってろ」
お姉ちゃんも口では怒った風だけど、本当に怒っているわけじゃない。
微笑ましい。客観的に見ればそう思うはずの光景。
でも私は、そんな二人を見ていると、胸が苦しくなる。逃げ出したくなる。
お姉ちゃんも口では怒った風だけど、本当に怒っているわけじゃない。
微笑ましい。客観的に見ればそう思うはずの光景。
でも私は、そんな二人を見ていると、胸が苦しくなる。逃げ出したくなる。
「てか、そもそも『萌え』って何よ」
「ん~日本語って難しいなぁ」
「何よ、あんた良く知らないで使ってるわけ?」
「それを自然に捉えられるのがオタク。っていうのが私の意見」
「よかった、私は良くわからないわ。つかさもそうでしょ?」
「え? ああ、うん」
私は、ただ話に合わせる為に曖昧に頷いた。
「はいはい、どうせ私はオタクですよ」
ほっぺたを膨らまし、こなちゃんはチョココロネにかじり付いた。
拗ねるこなちゃんを見て、お姉ちゃんは穏やかに笑う。
「ん~日本語って難しいなぁ」
「何よ、あんた良く知らないで使ってるわけ?」
「それを自然に捉えられるのがオタク。っていうのが私の意見」
「よかった、私は良くわからないわ。つかさもそうでしょ?」
「え? ああ、うん」
私は、ただ話に合わせる為に曖昧に頷いた。
「はいはい、どうせ私はオタクですよ」
ほっぺたを膨らまし、こなちゃんはチョココロネにかじり付いた。
拗ねるこなちゃんを見て、お姉ちゃんは穏やかに笑う。
そして私は笑顔を作る。
―片想いの行方―
「かがみってさ、好きな人とかいるのかな?」
こなちゃんはゲーム画面を見ながら、唐突にそう言った。
この為にお姉ちゃんが出かけてる日に遊びに来たのかな、なんて冷静な考えが頭をよぎる。
「どうして……?」
私は平静さを意識して質問を返す。
本当はわかっていた。どうしてかなんて一つしかない。
私は平静さを意識して質問を返す。
本当はわかっていた。どうしてかなんて一つしかない。
「私、かがみの事が好きみたい」
こなちゃんはゲームを続けながら、まるでゲームの話をするように答えた。
こなちゃんはゲームを続けながら、まるでゲームの話をするように答えた。
わかっていたことを改めて言われると、どう反応したらいいのかわからなくなる。
「そうだったんだ……たぶんいない……と思うよ」
「驚かないんだね」
その言葉で私の心臓は今頃驚いた。
そうかもっと大げさに驚くべきだったんだ。
でも、何故こんなに冷静でいられるのか、自分でも不思議だった。
その言葉で私の心臓は今頃驚いた。
そうかもっと大げさに驚くべきだったんだ。
でも、何故こんなに冷静でいられるのか、自分でも不思議だった。
「そんなことないよ、驚いてるよ。」
驚いてるよと落ち着いた声で言ってもなんて信憑性がないんだろう。
顔を見られていない事が唯一の救いだけれど、それでカバーできているかどうか……。
驚いてるよと落ち着いた声で言ってもなんて信憑性がないんだろう。
顔を見られていない事が唯一の救いだけれど、それでカバーできているかどうか……。
しかし、それで信じてくれたのが幸か不幸か。こなちゃんは続けて訊いてくる。
「かがみに言ったらなんて言うと思う?」
なんて残酷なんだろう。それを私に訊くなんて。
「かがみに言ったらなんて言うと思う?」
なんて残酷なんだろう。それを私に訊くなんて。
「お姉ちゃんも、こなちゃんのこと……好きだと思う」
だってこなちゃんと居る時のお姉ちゃんは、楽しそうだもん。他の誰と居る時よりも……。
だってこなちゃんと居る時のお姉ちゃんは、楽しそうだもん。他の誰と居る時よりも……。
「うん、私も嫌われてはいないって思う。でも、そういう好きとは違うから」
「きっとお姉ちゃんだって――」
違う好き。そう続くべき言葉を私は口にできなかった。
しかしその続きをこなちゃんは読み取って「ありがとう」と言った。
「きっとお姉ちゃんだって――」
違う好き。そう続くべき言葉を私は口にできなかった。
しかしその続きをこなちゃんは読み取って「ありがとう」と言った。
「つかさは好きな人とかいないの?」
わざと聞いてるの? だとしたら酷い人だ。
わざと聞いてるの? だとしたら酷い人だ。
「……いるよ」
目の前に。私はその言葉を飲み込んだ。
目の前に。私はその言葉を飲み込んだ。
「ホントに!? 誰?」
突然こなちゃんは振り向くと、大きく目を見開いて、先ほどとは打って変わって明るい声になった。
突然こなちゃんは振り向くと、大きく目を見開いて、先ほどとは打って変わって明るい声になった。
「それは……内緒」
私がつくり笑いでごまかすと、こなちゃんは口をとがらせて「私は言ったのにー」と嘆きながらゲームに
戻った。
私がつくり笑いでごまかすと、こなちゃんは口をとがらせて「私は言ったのにー」と嘆きながらゲームに
戻った。
「エヘヘ、ごめんね」
言ったらきっと後悔する。私もこなちゃんも。
言ったらきっと後悔する。私もこなちゃんも。
「あっくそっ死んだー! ぐあっセーブしたのダンジョン入る前じゃん!」
後ろを向いていた間に倒されてしまっていたらしい。
ゲームオーバーの音が流れて、こなちゃんはもうその話を続けなかった。
だから私も、それ以上その話には触れなかった。
後ろを向いていた間に倒されてしまっていたらしい。
ゲームオーバーの音が流れて、こなちゃんはもうその話を続けなかった。
だから私も、それ以上その話には触れなかった。
***
「今日ゲマズ寄って帰ろうかと思うんだけど、みんなもいかない?」
翌日の放課後、こなちゃんは駅に着くとみんなを誘った。
ゆきちゃんは用事があるからと断っていたけど、そもそもああいう店でゆきちゃんが何か買うって想像で
きないかも。
「そういやフルメタの新刊今日だなー寄ってくかー。つかさも寄って帰る?」
「あー」
適当な言葉を発しながら頭の中で一考し、
「ううん、私はいいや」
昨日の事があったからというわけではないけれど、なんだか二人と一緒に居るのは躊躇われた。
それに気づいたのか、こなちゃんは怪訝な表情を浮かべる。
「つかさ……もしか――」
「私は別に買うものもないし、お母さんに買い物頼まれてるから」
こなちゃんの言葉を遮るように、そう付け加え、
「じゃあね、バイバイ、またね」
私は小走りでホームへと向かった。
翌日の放課後、こなちゃんは駅に着くとみんなを誘った。
ゆきちゃんは用事があるからと断っていたけど、そもそもああいう店でゆきちゃんが何か買うって想像で
きないかも。
「そういやフルメタの新刊今日だなー寄ってくかー。つかさも寄って帰る?」
「あー」
適当な言葉を発しながら頭の中で一考し、
「ううん、私はいいや」
昨日の事があったからというわけではないけれど、なんだか二人と一緒に居るのは躊躇われた。
それに気づいたのか、こなちゃんは怪訝な表情を浮かべる。
「つかさ……もしか――」
「私は別に買うものもないし、お母さんに買い物頼まれてるから」
こなちゃんの言葉を遮るように、そう付け加え、
「じゃあね、バイバイ、またね」
私は小走りでホームへと向かった。
***
「あれ、かがみは?」
家に帰ると、まつりお姉ちゃんは一人で帰ってきた私を見て言った。
「買うものあるからこなちゃんと寄り道して帰るって」
「つかさは行かなかったの?」
「うん、買うものもないし」
「ふーん、めずらしいね」
「どうして?」
「だって、つかさはいつも、金魚のふんみたいにかがみにくっついてるじゃん」
金魚のふんって……。お姉ちゃんとよく一緒にいるのは認めるけど。
「私だって一人で行動することだってあるよ」
「ま、そりゃそうか」
台所からパタパタと足音が聞こえ、
「つかさ、ありがとう。丁度買い物行こうと思ってたから助かったわ」
お母さんは私が買ってきた買い物袋を見て言った。
「ううん、料理も手伝おうか?」
「ホントに? ありがとう助かるわ」
今は何かで気を紛らわしていたかった。
こんな私には「ありがとう」なんて言われる資格がないような気がした。
家に帰ると、まつりお姉ちゃんは一人で帰ってきた私を見て言った。
「買うものあるからこなちゃんと寄り道して帰るって」
「つかさは行かなかったの?」
「うん、買うものもないし」
「ふーん、めずらしいね」
「どうして?」
「だって、つかさはいつも、金魚のふんみたいにかがみにくっついてるじゃん」
金魚のふんって……。お姉ちゃんとよく一緒にいるのは認めるけど。
「私だって一人で行動することだってあるよ」
「ま、そりゃそうか」
台所からパタパタと足音が聞こえ、
「つかさ、ありがとう。丁度買い物行こうと思ってたから助かったわ」
お母さんは私が買ってきた買い物袋を見て言った。
「ううん、料理も手伝おうか?」
「ホントに? ありがとう助かるわ」
今は何かで気を紛らわしていたかった。
こんな私には「ありがとう」なんて言われる資格がないような気がした。
***
「つかさーちょっといい?」
夕食を終えて、部屋で漫画を読んでいると、お姉ちゃんが私の部屋へ入ってくる。
夕食を終えて、部屋で漫画を読んでいると、お姉ちゃんが私の部屋へ入ってくる。
そういえば、食事中もやけにお姉ちゃんに見られているような気がしていた。
しかし、気のせいではなかった。
しかし、気のせいではなかった。
その足取りには、少しの怒りが含まれているように感じる重さがあった。
「どうしたの?」
お姉ちゃんはベッドに座る私の前に仁王立ちし、
「こなたから、なんか言われた?」
前置きなしに訊いてくる。
お姉ちゃんはベッドに座る私の前に仁王立ちし、
「こなたから、なんか言われた?」
前置きなしに訊いてくる。
なんか。
それはきっとこなちゃんがお姉ちゃんを好きって話。
それはきっとこなちゃんがお姉ちゃんを好きって話。
「なんかって?」
「私のこと」
即答で答えが返って来る。
「私のこと」
即答で答えが返って来る。
予感は的中。
返答を思案する私に、お姉ちゃんはさらに質問を浴びせる。
「それで今日先に帰ったの?」
「そういうわけじゃ……」
「やっぱ知ってたんだ」
「あっ」
慌てて口をつぐんだが、しまったと思ったときにはもう遅い。
「それで気を利かせたの?」
まるで尋問で「お前がやったんだろう」と自白を迫られているような状況に苦笑する。
「だからそういうわけじゃ……」
「じゃあどういうわけ?」
次々と投げかけられる言葉に、返す言葉を見つける事ができない。
「それで今日先に帰ったの?」
「そういうわけじゃ……」
「やっぱ知ってたんだ」
「あっ」
慌てて口をつぐんだが、しまったと思ったときにはもう遅い。
「それで気を利かせたの?」
まるで尋問で「お前がやったんだろう」と自白を迫られているような状況に苦笑する。
「だからそういうわけじゃ……」
「じゃあどういうわけ?」
次々と投げかけられる言葉に、返す言葉を見つける事ができない。
「余計なことしないでよ」
その言葉に体中の血が一気に湧き上がった。
「なにが余計なの!」
「え……」
私が何も反論しないと思っていたのだろう、私が発した言葉にお姉ちゃんは一瞬たじろいだ。
「え……」
私が何も反論しないと思っていたのだろう、私が発した言葉にお姉ちゃんは一瞬たじろいだ。
「こなちゃんは本当にお姉ちゃんの事好きなんだから! それを応援することのどこが余計なのっ」
「つか――」
「こなちゃんは本気でっ」
「わかってるわよ! わかってるからでしょ!」
そんな私を押さえつけるようにお姉ちゃんも声を荒らげる。
「え……」
「本気だってわかるから…………。私だってこなたのこと好きよ。でもこなたの言う好きとは違う」
「それ、こなちゃんに言ったの……?」
「言った」
「つか――」
「こなちゃんは本気でっ」
「わかってるわよ! わかってるからでしょ!」
そんな私を押さえつけるようにお姉ちゃんも声を荒らげる。
「え……」
「本気だってわかるから…………。私だってこなたのこと好きよ。でもこなたの言う好きとは違う」
「それ、こなちゃんに言ったの……?」
「言った」
はっきりとしたその言葉を聞くのが早いか、部屋を飛び出したのが早いか。
私は家を出て、自転車に飛び乗っていた。
私は家を出て、自転車に飛び乗っていた。
彼女に会うために。
***
こなちゃんの家の前に着き、もう夜だっていうのに、私はチャイムを連打する。
こなちゃんは出てきた途端、私を見て後ずさった。きっと私がはぁはぁと激しく息をしていたから。
「つ、つかさどうしたの?」
私は驚いた表情を見せるこなちゃんに飛びついた。
「ごめんね、こなちゃん! 私が軽々しくあんなこといったからっ」
少し間があって「かがみか……」とこなちゃんは納得したように呟いてから、
「結果的にはこうなっちゃったけど、私は後悔してないよ?」
思いがけない答えが返ってくる。
「え……」
「かがみは真剣に答えてくれたから……、だからそれでいいんだよ」
こなちゃんの声は落ち着いていた。
こなちゃんは出てきた途端、私を見て後ずさった。きっと私がはぁはぁと激しく息をしていたから。
「つ、つかさどうしたの?」
私は驚いた表情を見せるこなちゃんに飛びついた。
「ごめんね、こなちゃん! 私が軽々しくあんなこといったからっ」
少し間があって「かがみか……」とこなちゃんは納得したように呟いてから、
「結果的にはこうなっちゃったけど、私は後悔してないよ?」
思いがけない答えが返ってくる。
「え……」
「かがみは真剣に答えてくれたから……、だからそれでいいんだよ」
こなちゃんの声は落ち着いていた。
そのせいなのか。
「どうしてつかさが泣いてるの。本来泣くのは私のような気がするんだけど」
こなちゃんは困った顔をして、笑いかけてくれる。
「ごめん……」
私は急いで涙を拭った。
「でも、ありがと。つかさ」
こなちゃんの声は優しくて、胸にしみた。
こなちゃんは困った顔をして、笑いかけてくれる。
「ごめん……」
私は急いで涙を拭った。
「でも、ありがと。つかさ」
こなちゃんの声は優しくて、胸にしみた。
やっぱり私には「ありがとう」なんていわれる資格はないと思う。
だって私は……。
嬉しいなんて思ってしまったんだから――。
***
次の日、私達は普通だった。普通なのが不自然だった。
普通なら普通で居られるはずない。なのにどうして。そんな疑問が頭の中を渦巻いていた。
普通なら普通で居られるはずない。なのにどうして。そんな疑問が頭の中を渦巻いていた。
昼休みが終わり、こなちゃんは、お姉ちゃんが教室から出て行くのを確認すると、
「よかった」
溜息混じりに呟いた。
「どうして? ……どうしてそんな普通にしてられるの?」
素直な疑問をぶつけてみる。
「ん~かがみがそういってくれたからかな」
「お姉ちゃんが?」
「ずっと友達なのは変らないからって。だから今までどおり。私もそれでいいって言った、側にいれるなら
それでいいやって。やっぱり好きだからね……」
こなちゃんは呆れたように笑ってから、お姉ちゃんが出て行った扉を愛おしそうに見つめた。
「よかった」
溜息混じりに呟いた。
「どうして? ……どうしてそんな普通にしてられるの?」
素直な疑問をぶつけてみる。
「ん~かがみがそういってくれたからかな」
「お姉ちゃんが?」
「ずっと友達なのは変らないからって。だから今までどおり。私もそれでいいって言った、側にいれるなら
それでいいやって。やっぱり好きだからね……」
こなちゃんは呆れたように笑ってから、お姉ちゃんが出て行った扉を愛おしそうに見つめた。
「どうして……どうしてあきらめないの! 絶対無理なのにっ」
私だったらもっと――そんな気持ちが先走って、独りよがりな言葉が口をつく。
私だったらもっと――そんな気持ちが先走って、独りよがりな言葉が口をつく。
「つかさにはわからないよ」
その言葉は冷たかった。体が凍りつく程に。
その言葉は冷たかった。体が凍りつく程に。
私が一番良くわかってたはずなのに……。好きな人が振り向いてくれない辛さを……。
こなちゃんは私の顔を見ずに席に戻っていった。
「どうしててあきらめないの」なんてそのまま自分に言えば良いのに。
ねぇつかさはどうしてあきらめないの?って。
絶対無理なのにどうしてあきらめないの?って。
ねぇつかさはどうしてあきらめないの?って。
絶対無理なのにどうしてあきらめないの?って。
……最低だね、私。
***
その日の下校時間も、まるでドラマを見ているかのように現実味がない。
ゆきちゃんと別れ、私達は下り電車へと向かい、こなちゃんとお姉ちゃんは他愛のない会話を始める。
何だが英語で話されているかのように頭に入ってこない。
「つかさ?」
お姉ちゃんの声で現実に引き戻される。
「あっごめん、何?」
馬鹿な返答をしてしまった。聞いていませんでしたって言っているようなものだ。
「なんか今日おかしいわよ」
ゆきちゃんと別れ、私達は下り電車へと向かい、こなちゃんとお姉ちゃんは他愛のない会話を始める。
何だが英語で話されているかのように頭に入ってこない。
「つかさ?」
お姉ちゃんの声で現実に引き戻される。
「あっごめん、何?」
馬鹿な返答をしてしまった。聞いていませんでしたって言っているようなものだ。
「なんか今日おかしいわよ」
確かに私はおかしいのかもしれない。でも、こんな演技のようなことをするのが普通なの?
「……おかしいのは二人の方だよ」
私が呟いた言葉で一瞬にして空気が変わる。
二人は答えない。
否、答える言葉を持ち合わせていないのだ。二人には沈黙という答えしか残されてなどいなかった。
否、答える言葉を持ち合わせていないのだ。二人には沈黙という答えしか残されてなどいなかった。
頑張って普通に振舞おうとしているところに私は水をさしている。
それはわかっていたけれど、どうしても私はそれに耐えることができなかった。
それはわかっていたけれど、どうしても私はそれに耐えることができなかった。
「私にはわからないよ、お姉ちゃんの気持ちも、こなちゃんの気持ちも!」
私は走って二人が乗るであろう電車よりも一つ早い電車に飛び乗った。
乗ると同時に扉が後ろで閉まった。
振り返ると、扉の向こうに二人の姿が微かに見える。
私と二人の間には大きな壁があるような気がした。
乗ると同時に扉が後ろで閉まった。
振り返ると、扉の向こうに二人の姿が微かに見える。
私と二人の間には大きな壁があるような気がした。
そして電車は走り出す。
まるで私と二人の距離をさらに広げるように。
ドアにもたれ掛かりおでこをガラスにくっつける。自然と漏れた溜息によって白く曇ったガラスの向こう
に、三人で乗っている時は気にもしなかった景色が今日はやけに目に入った。
に、三人で乗っている時は気にもしなかった景色が今日はやけに目に入った。
「なんであんなこと言っちゃったんだろ……」
私が一番わかってあげられているなんて……お姉ちゃんに振られたら、私のことを見てくれるなんて……。
そんな都合のいいこと私は考えていたのかな……。
溢れ出そうになる涙を堪えるのに必死で、気づくと一駅乗り過ごしていた。
***
家に着いて、玄関の靴を見ると、お姉ちゃんの靴は既にあった。一駅乗り過ごしたせいで、抜かれてしま
ったらしい。
ったらしい。
私は会うのを避けるように、なるべく足音は立てずに階段を上った。
部屋に入り、カバンを放り投げると、ベッドの上に倒れこんだ。
枕を抱え込むように抱きしめて顔を埋める。
枕を抱え込むように抱きしめて顔を埋める。
「つかさにはわからないよ」という、こなちゃんの言葉が、頭の中で何度も私を責めたてる。
私はそれに必死に絶えていた。
私はそれに必死に絶えていた。
しかし、そんな煩悶を打ち切られる。
ドアをノックする音だ。先ほどの努力は無意味だったらしい。
「つかさー入るよ」
私の返事を聞かずにお姉ちゃんはドアをあける。
足音は間近で止まり、ベッドに座ったらしい振動でベッドが波打ったが、私は顔を上げずに俯き続けた。
「こなた心配してたわよ」
心配? 何故? 私はこなちゃんに心配してもらえるような人間じゃない。むしろこなちゃんに酷い事を
言ってしまった。
「言いたいことがあるならはっきり言って。今日みたいなのは迷惑」
そんなこと一番私がよくわかってた。
私の返事を聞かずにお姉ちゃんはドアをあける。
足音は間近で止まり、ベッドに座ったらしい振動でベッドが波打ったが、私は顔を上げずに俯き続けた。
「こなた心配してたわよ」
心配? 何故? 私はこなちゃんに心配してもらえるような人間じゃない。むしろこなちゃんに酷い事を
言ってしまった。
「言いたいことがあるならはっきり言って。今日みたいなのは迷惑」
そんなこと一番私がよくわかってた。
私は起き上がり、枕をぎゅっと抱きしめたまま、
「……お姉ちゃん、こなちゃんのこと本当に好きじゃないの?」
そう切り出した。
「だから好きよ。友達としてね」
「ごまかさないで!」
「ごまかしてなんて……」
お姉ちゃんの歯切れは悪い。
「私、これでもずっとお姉ちゃんと双子やってきたんだよ?」
お姉ちゃんが、他の友達とこなちゃんを区別してるのはわかってる。
「……」
「こなちゃんと居る時のお姉ちゃんは違うもん……」
認めたくなかったけど、それは確かだ。
私の言葉にお姉ちゃんは苦笑して、
「つかさにそう言われちゃうと、反論できないね」
「じゃあどうして!」
「好きなだけじゃダメな事だってあるよ」
トーンを落として答えた。
色々と問題があるのはわかる。いわゆる普通の恋愛ではないのだから。でも――。
「ずるいよ、そんなの……」
好きになってもらえるくせに……。「うん」という言葉だけで、私の欲しいものを手に入れられるのに。
「そうかもね」
お姉ちゃんは目を据えて認めた。
「だったら!」
「じゃあ、つかさはどうなの?」
お姉ちゃんは、矛先を切り返す。
「え……」
私は急に向けられた矛に言葉を失う。
「私はつかさのほうがずるいと思う」
お姉ちゃんの言葉は痛かった。痛くて、動けなくなる。
「……お姉ちゃん、こなちゃんのこと本当に好きじゃないの?」
そう切り出した。
「だから好きよ。友達としてね」
「ごまかさないで!」
「ごまかしてなんて……」
お姉ちゃんの歯切れは悪い。
「私、これでもずっとお姉ちゃんと双子やってきたんだよ?」
お姉ちゃんが、他の友達とこなちゃんを区別してるのはわかってる。
「……」
「こなちゃんと居る時のお姉ちゃんは違うもん……」
認めたくなかったけど、それは確かだ。
私の言葉にお姉ちゃんは苦笑して、
「つかさにそう言われちゃうと、反論できないね」
「じゃあどうして!」
「好きなだけじゃダメな事だってあるよ」
トーンを落として答えた。
色々と問題があるのはわかる。いわゆる普通の恋愛ではないのだから。でも――。
「ずるいよ、そんなの……」
好きになってもらえるくせに……。「うん」という言葉だけで、私の欲しいものを手に入れられるのに。
「そうかもね」
お姉ちゃんは目を据えて認めた。
「だったら!」
「じゃあ、つかさはどうなの?」
お姉ちゃんは、矛先を切り返す。
「え……」
私は急に向けられた矛に言葉を失う。
「私はつかさのほうがずるいと思う」
お姉ちゃんの言葉は痛かった。痛くて、動けなくなる。
「あいつのこと好きなら、明日はちゃんとできるよね?」
お姉ちゃんは立ち上がり、答えることができない私に「おやすみ」とだけ言い残して出て行った。
お姉ちゃんは立ち上がり、答えることができない私に「おやすみ」とだけ言い残して出て行った。
お姉ちゃんの言うとおり、私はずるい、私には何もいう資格なんてない。
私は……私は何もしていない。お姉ちゃんみたいな決断も、こなちゃんみたいな勇気も。
私は何一つできていないのだから。
私は……私は何もしていない。お姉ちゃんみたいな決断も、こなちゃんみたいな勇気も。
私は何一つできていないのだから。
***
翌日の休み時間、まばらになったクラスメイトの中から、こなちゃんは何ごともなかったかのように
私の席へと歩いてくる。
「つかさー何してるの」
いつものように、ごく自然に。
「考え事……こなちゃん、昨日はごめんね」
私は素直に謝ることにした。そうしやすいようにしてくれたんだと気づく。
こういう自然な優しさのせいかな、好きになってしまったのは。
「ううん、私のせいで嫌な思いさせちゃって、こっちこそごめん」
こなちゃんは何も悪くないのに……。
「私ね、こなちゃんの気持ちわかるよ」
「私の気持ち……?」
「好きな人が好きになってくれない辛さ……」
「え……」
私の席へと歩いてくる。
「つかさー何してるの」
いつものように、ごく自然に。
「考え事……こなちゃん、昨日はごめんね」
私は素直に謝ることにした。そうしやすいようにしてくれたんだと気づく。
こういう自然な優しさのせいかな、好きになってしまったのは。
「ううん、私のせいで嫌な思いさせちゃって、こっちこそごめん」
こなちゃんは何も悪くないのに……。
「私ね、こなちゃんの気持ちわかるよ」
「私の気持ち……?」
「好きな人が好きになってくれない辛さ……」
「え……」
「私、こなちゃんが好きだから」
驚いた表情を見せるこなちゃんに、ハッキリと言った。
言ってから、ああ、これって告白だ。なんてまたしても冷静に考えていた。
「つ、つかさ? どうしたの? なんか変な物でも食べたー?」
こなちゃんは、手を阿波踊りみたいに動かし、見るからに動揺していた。
「食べてないよ」
私は苦笑して続ける。
「だから、諦められない事だって本当はよくわかってるよ」
真面目に言ってる事が伝わったのか、こなちゃんは動きを止めた。
「そう……、バカだなぁつかさは……私なんか好きになるなんて。でも……、気持ちがわかるって事はそう
いうことなんでしょ?」
「……うん」
私は頷いて答える。
言ってから、ああ、これって告白だ。なんてまたしても冷静に考えていた。
「つ、つかさ? どうしたの? なんか変な物でも食べたー?」
こなちゃんは、手を阿波踊りみたいに動かし、見るからに動揺していた。
「食べてないよ」
私は苦笑して続ける。
「だから、諦められない事だって本当はよくわかってるよ」
真面目に言ってる事が伝わったのか、こなちゃんは動きを止めた。
「そう……、バカだなぁつかさは……私なんか好きになるなんて。でも……、気持ちがわかるって事はそう
いうことなんでしょ?」
「……うん」
私は頷いて答える。
こなちゃんはお姉ちゃんのことを、諦められない。
同じ様に、私もこなちゃんを好きじゃなくなる、なんてできない。
同じ様に、私もこなちゃんを好きじゃなくなる、なんてできない。
「まるでハチクロだね」
「ハチクロ?」
「ハチクロ?」
「……片想いの連鎖」
「誰も結ばれないの……?」
「うん、でも……人の気持ちは変わるものだから。いい意味でも、悪い意味でも。ってゲームとかの受け売
りなんだけど。でも、本当にそういうものだと思うよ。未来はわからないから、だから頑張れる」
こなちゃんは窓越しに空を見上げてそう言った。
りなんだけど。でも、本当にそういうものだと思うよ。未来はわからないから、だから頑張れる」
こなちゃんは窓越しに空を見上げてそう言った。
私は、パンドラの箱に最後に残ったのは”希望”という名の”予知”
そんな言葉を思い出していた。
そんな言葉を思い出していた。
***
その日の帰り道は久々にちゃんと笑えたような気がする。
「じゃねー、二人とも」
「ばいばいこなちゃん」
「おーまた明日」
こなちゃんと別れ、私とお姉ちゃんは歩き出す。
「ちゃんと笑えてたじゃない」
「……うん。私ね、こなちゃんに好きって言ったの」
「……そう」
お姉ちゃんはまるでその事を知っていたかのように答えた。
「じゃねー、二人とも」
「ばいばいこなちゃん」
「おーまた明日」
こなちゃんと別れ、私とお姉ちゃんは歩き出す。
「ちゃんと笑えてたじゃない」
「……うん。私ね、こなちゃんに好きって言ったの」
「……そう」
お姉ちゃんはまるでその事を知っていたかのように答えた。
「だから、お姉ちゃんも逃げないで」
私は歩きながら言った。しかし、お姉ちゃんは立ち止まる。
私は少し歩いて振り返った。
「お姉ちゃんがダメだったからって、私のところに来るようなこなちゃんは嫌。私はこなちゃんに好きにな
ってもらうように頑張る。私がいいって言ってもらえるように。だからお姉ちゃんも逃げないで」
「つかさ……」
「私の為に身を引こうとか考えてたんだったら……許さないからね!」
私はお姉ちゃんにビシッと人差し指を突きつけて宣戦布告。
そんな私を見て、お姉ちゃんはフッっと笑いを漏らし、
「そんなことしないわよ。……つかさ、自信もてたんだ」
「え……?」
「でも、こなたが好きなのは、わ た し なんだからね」
唇を片方だけ吊り上げてニヤリと笑った。
「負けないもん!」
「それくらい言ってくれないと、張り合いないわね」
ほら、とお姉ちゃんは右手を差し出す。
私はその手をゆっくりと、でもしっかりと握った。
「私だって、よそ見するような奴は願い下げ」
「ふふ、でもどうして握手?」
「なんとなく、正々堂々と戦う時のイメージかしらね」
私は歩きながら言った。しかし、お姉ちゃんは立ち止まる。
私は少し歩いて振り返った。
「お姉ちゃんがダメだったからって、私のところに来るようなこなちゃんは嫌。私はこなちゃんに好きにな
ってもらうように頑張る。私がいいって言ってもらえるように。だからお姉ちゃんも逃げないで」
「つかさ……」
「私の為に身を引こうとか考えてたんだったら……許さないからね!」
私はお姉ちゃんにビシッと人差し指を突きつけて宣戦布告。
そんな私を見て、お姉ちゃんはフッっと笑いを漏らし、
「そんなことしないわよ。……つかさ、自信もてたんだ」
「え……?」
「でも、こなたが好きなのは、わ た し なんだからね」
唇を片方だけ吊り上げてニヤリと笑った。
「負けないもん!」
「それくらい言ってくれないと、張り合いないわね」
ほら、とお姉ちゃんは右手を差し出す。
私はその手をゆっくりと、でもしっかりと握った。
「私だって、よそ見するような奴は願い下げ」
「ふふ、でもどうして握手?」
「なんとなく、正々堂々と戦う時のイメージかしらね」
――――幕は切って落とされた。

第二章「彷徨う心」へ続く。
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- この二人にはズルく立ち回るという思考回路が無いんですな。
天使のような双子すな -- 名無しさん (2011-04-27 02:21:12)
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