「つまり、わたし達ってば最強ね!」
「え、えー……?」
ガタゴトと揺れる林道にて。
真紅の悪魔と言葉を交わしていた
魔王ヴァルハラは、よくわかんない結論に戸惑った。
そういうものだっけと頭を捻る。
そもそも話題は最強がどうとかそーいう物では無かった気もするのだが。
「だって、ただでさえそこそこ強いマーダーのコンビなのよ。
向かうところあんまり敵無しなのは目に見えているじゃない」
「そこそことかあんまりとか、凄く不安になるんだけど。ていうか全然最強じゃないし」
「…………き、気のせいよ、たぶん」
多分。
確かに、真紅の悪魔の能力は低くないようだとヴァルハラは思う。
真紅の悪魔の基本能力はLSロワ参加者中多分最強のレミリア・スカーレットに準じている。
その上、真紅の悪魔は20ちょいの自分のタイトルを技として発動できるのだ。
開始直後にヴァルハラを圧倒した
ギャルゲ写本の半分くらいの能力である。
(強いけど……強いけど………………びみょー)
一応大作書きの書き手らしいので一発一発の効力は大きいのかもしれないが、
じゃあ例えば時止めとか出来るのかと聞くと言葉を詰まらせる始末。
「た、確か書き手ロワ2ndのわたしは時間操り放題好き放題だったわ!」と言い訳するが、
詰まるところ今目の前に居る真紅の悪魔は時間操作なんて出来ないらしい。
一方の魔王ヴァルハラはといえば、こちらは更に微妙な実力である。
魔王ヴァルハラという異名を持ってはいるが、
今のところアイテムの力が無ければ普通に剣を振るうとかその位の能力しかない。
魔力だけ有る剣士という具合である。
持っているエクスカリバー、所謂“約束されし勝利の剣”が有るのは救いだった。
魔力をバカ食いするものの、この聖剣は強力無比な光の斬撃を放つ事ができる。
しかし相性はあまりよろしくない。
彼女が割合活躍させた魔王(そのまんまそういう名前のキャラが居るのだ)は闇属性。
ヴァルハラは機属性最強召還術である。
つまり彼女に適正の有る武器は闇属性とか機械系魔法とかそういう属性なのだ。
エクスカリバーの属性は光で、空想や幻想に近しい。
相性の悪さからどうしても威力が落ちてしまう。
どこかにエクスカリバーを黒く染めてくれる巨乳の後輩になった書き手は居らんかね。
唯一出演したギャルゲロワ2じゃ一話目でカレー爆殺喰らったから無理か。
全裸の上に着ている王者のマントとエッチな下着も寂しい。
転移アイテムのキメラの翼と交換で真紅の悪魔から譲ってもらえた王者のマントは、
強力な防御力に加えて熱、冷気属性軽減効果が有る素晴らしい品なのだが、
真紅の悪魔は「かっこいいけど飛ぶ邪魔になる」という事で持て余していたらしい。
エッチな下着の方は自分の支給品から出てきた。
二つあわせて防御効果は有るのだが、裸マントのような寂しさである。
ぶっちゃけてしまえばヴァルハラは、あんまり強くはない。
繋ぎ寄りとはいえ
RPGロワにおけるトップ書き手でありながら、
この書き手ロワにおいて大した戦闘力を手にしていない。
真紅の悪魔の微妙だが中々の強さを知ったヴァルハラは聞いてみた。
本当にこんな私をコンビに選んで良かったの? と。
真紅の悪魔はうーんと首を傾げて、答えた。
「だいじょうぶよ。多分、あなたは“覚醒”してないだけなのよ。
だってあなたはトップ書き手なんだもの。
今にきっと、わたしなんかよりずっとずっと強い力に目覚められるわ。
わたしがピンチの時でもバーンと助けてくれるくらい強く」
ヴァルハラは、なんだか胸がジーンとなった。
殺し合いを効率的に行う為に組んだ仮の相棒でしか無いはずなのに。
彼女となら戦い抜けるんじゃないかって、そんな気がしたのだ。
「……ありがとう。わたし、頑張る。
頑張って優勝して、帰って……RPGロワを完結させるんだ」
その言葉に今度は真紅の悪魔が驚いた。
「あなた、自分のロワのために帰るの?」
「うん、そう。
……ううん、違うかな。
だってわたしはあのロワが好きなんだもの。
あそこで書きたい。あそこで読みたい!
だからわたしは、元の世界に帰って……RPGロワを、完結させるんだ。
あの場所が、好きだから」
「そうなんだ。……良いなあ、帰るところが有るって」
「……え?」
思わぬ反応にヴァルハラは真紅の悪魔を見つめる。
彼女はヴァルハラの言葉に、目を潤ませていた。
水滴が、零れそうに。
(…………涙?)
真紅の悪魔はハッと我に返り、腕でごしごしと目元をこすった。
「ううん、なんでもないの! それじゃ行きましょう!
レッツ、マーダー道よ! ガンガン殺して欝をばらまいてわたし達が優勝よ!」
「う、うん。判ったわ、行きましょ」
魔王ヴァルハラは疑問を抱きながらも、車のアクセルを踏んだ。
スーパーウェスト爆走ステージ『魂のファイアーボンバー』。
真紅の悪魔の持っていたこの支給品、その効果は。
ギターと拡声器が搭載されたただの軽トラである。
ちなみに真紅の悪魔だと足がアクセルとブレーキに届かない。
それをヴァルハラが操縦して二人は林道を西へ、西へ。
◇ ◇ ◇
バトルフィールドエリア。
マップの西に存在するそのエリアに、今、巨大な異物が聳え立っていた。
切欠は【破天】ワンキューが前フィールドから持ち込んだ、四国。
そこに旗折のKが仕掛けたDG細胞。
そして、墜落してきた八岐大蛇の一首。
それらが渾然と交じり合い、一つの異形が生まれていたのだ。
デビルドラゴン四国。
………………なに、これ。
獣人の女、七市がそれを見た感想はそんな物だった。
テイルズの仲間達と共にフィールド移動をし、逸れた彼女は、
バトルフィールドエリアで起きたその顛末を隠れて目撃した。
そして思う。
七市には欝グロ耐性が無く、テイルズロワのウリである欝を撒く事が難しい。
だが自らの持つ月のフォルスでアレと自らの精神を交換すれば、どうなるだろう?
知性を持った巨大な怪獣として暴れまわり、戦いを広げれば。
もちろんそこに生まれるのは圧倒的な存在に挑み散る熱血死が主かもしれない。
しかしそこに、陰からテイルズロワの
名無し達が手を出せば?
(また、あの人たちの力になれる)
旅の扉の移動中に起こした欝展開のような、あの悪夢の助けになれるならば、
その結果、自分が殺されてしまうとしても。
とてもとても、誇らしい事ではないか。
デビルドラゴン四国に真っ向から挑むワンキューの壮絶な戦いを迂回して、七市は動いた。
精神を入れ替えるのだからやはり頭部を狙わなければならない。
だが月のフォルスの射程内まで近づくのは、なかなかに難しい。
そこはデビルドラゴン四国とワンキューが激闘を繰り広げる戦場だからだ。
七市にそれを掻い潜る特別な手札は無い。
隙を見て駆け寄るしか無いのだ。
(大丈夫、あいつらが互いにダメージを受けて仰け反った時を狙えばいいんだ。
その位なら、私にもできるさ。
タイミングを走って走ればいいんだ。
隙を見て、待って。
時機を見て。
………………今!)
時は来た。
ワンキューの拳とデビルドラゴン四国の尻尾がぶつかりあい、互いを弾き飛ばしたのだ。
七市は脇目も振らずデビルドラゴン四国へと駆け寄る。
それに気づいたワンキューの怒りの叫びももう遅い。
デビルドラゴン四国に至っては完全に動きを止めている。
そして七市は、月のフォルスの射程内に入り込んだ。
(発動! 月のフォル──)
その時、ふと七市の目に何か赤いものが映った。
見てはならないと心が囁いた。
だけどそれでも、お約束からは逃げられない。。
七市は、見て、しまった。
七市に欝グロ耐性は、無い。
「うぐ──」
込み上げた吐き気に七市の動きが止まった瞬間。
ワンキューの投擲した無数の蜜柑が七市の全身に食い込んでいた。
(しま…………)
それが、彼女の最期の思考。
瞬時に絶命した彼女は肉塊として吹き飛ばされた。
◇ ◇ ◇
真紅の悪魔と魔王ヴァルハラは、たまたまその近くまで来ていた。
あんまりすぎる異常事態にさっさと気づけという話も有るが、
彼女達がそこに近づいた時刻は案外早く、四国はまだデビルドラゴン化していなかったのだ。
四国だけでは何がなにやらてんで判らないし、
デビル四国化も根元から広がったため、近寄るまでは判別できなかった。
近くまで寄ったところで目立つ軽トラから降りて歩いていった。
そこで、デビルドラゴン四国とワンキューの激闘開始である。
「貴様はこの俺が躾ける!」「グギャリオオオオオオオオオオオオン!」
「躾は飴と鞭だよなあ? という常識に反逆する! 拳拳拳拳拳ィ!!」
「グガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!」
時々流れエヌマエリシュが飛ぶこの戦場、ヤバイってもんじゃない。
魔王ヴァルハラは慄然となり、真紅の悪魔にいたってがガクガクブルブル状態になっていた。
え? さっきまで溢れていた根拠の無い自信は何処行ったって?
うん、もう無いよ。無い。
「どどど、どうしましょうヴァルハラ!?」
「ゆゆゆすらななないででででっ!! しゃべしゃべべべっ痛いったら!!」
「きゃん」
エクスカリバーの柄で真紅の悪魔の頭をガッツリ殴って落ち着かせる。
真紅の悪魔は頭を、ヴァルハラは口を押さえて(揺すられて舌を噛んだ)涙目になった。
「落ち着いてよ、デビル。あんなインフレ連中の相手なんて出来ないんだから、逃げよう」
「そ、そそそそうね、落ち着いて考えればその通りだわ。流石はヴァルハラね」
ヴァルハラに窘められて真紅の悪魔はようやく我を取り戻す。
別に彼女も頭が悪いわけではない──いやほんと、ほら深淵の教皇とは二人合わせると大バカだけど
見事な騙しあいしてたじゃない、さっきのヴァルハラ慰めたのだって打算ずくだし──けど、
焦って取り乱すと色々と手が付けられないのである。
逆に言うなら落ち着いてしまえば大丈夫。
「ゆっくり急いで神速の匍匐前進で逃げましょう!」
「……全然落ち着いてないね、デビル。トラックまで逃げれば良いじゃない」
「そーなのかー」
と、まあそんな感じでまごまごしている二人のところに。
飛び出してワンキューにやられた七市の死体が。
肉の砲弾となって炸裂した。
「あーれー!?」「きゃああああああああああ!!」
交錯する悲鳴と共に二人は高々と跳ね飛ばされる。
そして二人は星になった。
……んで、墜落。
「あいたたた。だいじょうぶ、ヴァルハラ?」
「うん、わたしは大丈夫。でも、状況は……」
ヴァルハラは周囲を見回して、硬直した。
「あーん? なんだおまえらは?」
「グルオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ」
右を向けばでっかい竜。左を向けばやばい覚悟。
ワンキューとDD四国の丁度中間。
よりによって最悪の場所に落下した。
ワンキューはにやありと笑みを浮かべて、言い放つ。
「まあいいか。死にやがれっ!!」
襲い掛かる暴虐の拳。
次の瞬間から起きた幾つかの出来事をヴァルハラの視点で語るならば、こうである。
真紅の悪魔が咄嗟にヴァルハラを突き飛ばした。
それにより拳はヴァルハラの頭上を通り過ぎ、彼女は一命を取り留めた。
そして真紅の悪魔は転移アイテムであるキメラの翼を放り出し、ヴァルハラに投げ渡した。
ワンキューの怒号と彼女の叫びが交錯する最中。
続けて彼女はワンキューを引き付けて飛行し、彼の注意を引きつけると同時に、
一直線にデビルドラゴン四国へと特攻し、その顔面に体当たりを食らわせた。
最後の瞬間に魔王ヴァルハラを振り返った視線にどんな感情が篭められていたのかは判らない。
ただ、彼女がデビルドラゴン四国の顎に消え、ワンキューがヴァルハラを振り返った時。
ヴァルハラはキメラの翼を放り投げていた。
自分を護ってくれたその意思を、無駄にしない為に。
(ごめんなさい、デビル──!!)
キメラの翼は効力を発揮し、ヴァルハラを戦場から離脱させていた。
◇ ◇ ◇
さて、先ほどの話を真紅の悪魔の視点で語るならばこうなる。
ワンキューが殴りかかってきたのを見た真紅の悪魔はビビリにビビった。
(逃げよう!)
その判断までに掛かった時間は限りなく零に近い。
隣に居たヴァルハラの事など眼中にもなかった。
デイパックの中には王者のマントと交換で得たるキメラの翼が有る。
あれを使えばこれまでに通過した何処かのエリアに移動できるはずだ。
まずは攻撃を避けようと咄嗟に跳躍して。
すっかり存在を忘れていた魔王ヴァルハラに蹴っ躓いた。
この際に手元まで出していたキメラの翼を手放してしまう。
焦る。
マジ焦る。
「死にな!」
「ぎゃーーーーー!?」
迫り来るワンキューから逃げようと真紅の悪魔は自前の翼でひたすら羽ばたいて飛んだ。
ワンキューの拳は空振りし、そして。
何か硬いものにゴッツン頭をぶつけた。
「ぎゃん!? な、なによ痛いじゃない。なんでこんなところに、壁、が……?」
デビルドラゴン四国さんこんにちは。
サーっと青ざめた表情で真紅の悪魔が逃げようと後ろを振り返るがもう遅し。
巨大な顎は真紅の悪魔を内側にして、閉じた。
ぱっくんちょ★
これが真相である。
そんなわけで真紅の悪魔はデビルドラゴン四国に丸呑みにされてしまった。
が、この話にはまだ続きがある。
デビルドラゴン四国は真紅の悪魔をごくんと呑みこみ、
最初はドラゴンらしく消化しちゃおうとしたのだが、ここで一つの事件が起きる。
真紅の悪魔が最初に登場した時、深淵の教皇と揃って何を考えていたか覚えておいでだろうか?
今も状態表の思考の二番目にある一文をご存知だろうか?
ていうか彼女の所持品の方を思い出せばそれでいいのだが。
必須アモト酸。
飲んだひとの頭がパーンってなって死ぬ毒薬である。
次の瞬間、デビルドラゴン四国のドラゴンな頭部がパーンってなった。
────毒★殺!
……と、いうところでもまだまだ終わらないのが曲者である。
なんせDG細胞なのである。
ちょっと頭部の部分がぶっ壊れた位で滅びるわけがない。
ただ、不足分を補う必要が出来てしまっただけだ。
おお? 腹の中に丁度良い生体ユニットが居るじゃない。
と、いうわけで。
にょろんにょろん伸びてきた機械の触手が真紅の悪魔に絡みつき始めた。
「ひやああああぁ!? やめれー!!」
超神さんは健全な内容で抑えたようだが、今回は対象がちと違う。
健全なお話ではなく、けんぜんなおはなしにまではしても良いじゃない。
え、どこが違うのかって?
やだなー、けんぜんなおはなしはけんぜんなおはなしですよ。
「うひゃっ!? ひゃ、あひゃひゃひゃひゃひゃっ、くすぐったいってば!
あはは、はははは、ははははははははは!!」
けんぜんなー、けんぜんなー。
「ノー! ぎぶ、ぎぶ! タップ! ぎゃー! へるぷみいいいいぃ!!」
けんぜん……。
「あーれー! だーれーかーたぁすぅけぇてーーー!!」
…………ダメだ、こいつ色気ねーや。
さんざエロ話書いた書き手でありながらなんだこの体たらく。
はいはい、という事で今回も健全なお話ですよちくしょう。
もう中略でいいよね。
それじゃこの場面切るよー。
1。
2の。
「ひぎぃ」
【真紅の悪魔(カーディナル・デビル)@LSロワ 吸収】
◇ ◇ ◇
中でそんな事が有ったなど知る由も無く、外では真面目な変貌が始まっていた。
まず、デビルドラゴン四国の全身が紅く染まり始めた。
生体ユニットにされたのは真紅の悪魔である。
カーディナル・デビルである。
名前からしてデビルドラゴン四国との相性バッチリなのだ。
デビルドラゴン四国はカーディナルデビルドラゴン四国へと進化を遂げつつあった。
続いてパーンってなった頭が半端に再生し、そして変形する。
ドラゴンの頭部を再生しても、その中身までは再生できない。
代わりに竜の顎が引き裂けそうな程にあんぐりと開いた。
その中には新たな、頭部が存在していた。
口の中に別の顔。割合よく有る怪物っぽい形態である。
生体ユニットをモデルにした以上、その顔は言うまでもなくレミリアである。
巨大なレミリアの顔をしたそれは竜の顎の中で瞳を開き。
その着ぐるみを着たれみりゃみたいなおぞましい(という事にしよう)姿から、
ほんとに身の毛もよだつような咆哮を上げた。
「ぎゃあああああおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお
たああああああああべええええちゃあああああぁあぁあうぅうぅうぅうぅぅぅぅぅ
ぞおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお」
咆哮と共に、ぎゅばっと空に向けて天地乖離す開闢の星(エヌマ・エリシュ)を吐いた。
強烈な破壊の波動は恐るべし威力で天を裂き、地を震わせた。
八岐大蛇の力は尚も健在。
更に二足歩行で立ち上がる怪獣の手には巨大な刀。
真紅の悪魔が持っていた刀銀十字路をDG細胞が模倣しスケールアップして装備したのだ。
真紅の悪魔自身による強化要素が変形変色だけの気はするが、なに、気にする事は無い。
この怪獣には新たな名前を付けなければならないだろう。
カーディナルデビルドラゴン四国では長すぎる。
ここは漢字にして、こうだ。
モケーレムベンベ
──真紅の悪魔竜四国。
……え、読みが変わってるって?
細けぇ事は良いんだよ!!
そして、その恐るべき怪獣に立ち塞がる一人の荒くれ者。
【破天】ワンキュー。
「HAHAHA! 俺を蚊帳の外にして状況を進めやがって良い度胸だ。
今すぐぶちのめして従えてやる。
覚悟はいいか? いいな? いいよなあ!?
答える頭なんて無いだろうが、気にするな。
答えは聞いてねえ!!」
振り下ろされる巨大な刀。
振り上げられる暴虐の拳。
戦いの第二ラウンドが始まった。
【七市@テイルズ2nd 死亡】
【一日目 朝/バトルフィールドエリア北西部】
【
【破転】ワンキュー@
漫画ロワ】
【状態】テンションだけじゃなくボルテージも振り切れてきた!!、全身打撲、両腕火傷、『 軽 症 』
【装備】拳
【道具】支給品一式、ミカン三十個以上
【思考】基本:『覚悟は熱血対主催』という予定調和を裏切る為に皆殺し。主催も殺す。
1:『真紅の悪魔竜四国』を叩きのめして従えるッ!!!
2:ミニチュア日本で失敗したから、今度は敵を待ち受けるッ!!!
3:皆殺しだッ!!! 最終的には開催地もブッ壊すッ!!!
4:ハーグは、かーなーりー驚かして殺すッ!!!
【備考】
※外見は、学生服の上着を引き千切って半裸になっている葉隠覚悟@
覚悟のススメ。
※【破転】漫画ロワ書き手に与えられた称号にして、彼らの『切り札』。
追い詰められなきゃ使用できないと思ってたか!? その予想を裏切るッ!!!
【真紅の悪魔竜四国(モケーレムベンベ)】
真っ赤なドラゴンの着ぐるみを着たレミリアの図です。
DG細胞バッチリです。
巨大な刀を装備しています。
もちろん天地乖離す開闢の星、吐けます。
◇ ◇ ◇
瓦礫と化した城が、見える。
魔王ヴァルハラは始まりの城の近くへと転移していた。
辛うじて、逃げてきたのだ。
真紅の悪魔を置き去りにして。
「カーディナル・デビル……」
さっきはそれどころで考えもしなかった罪悪感が噴き上げてくる。
確かにあの場面、逃げ切れなければ死んでいた。
真紅の悪魔は彼女を逃がすために(という事になっている)散った。
どうしようも、なかった。
……本当に?
「わたしは、臆病者だ」
確かに勝てるような相手ではなかったかもしれない。
判断は正しかったのかもしれない。
それでもエクスカリバーを振り回して戦おうともせずに、逃げた。
なんて、愚かしいんだろう。
「ごめんなさい、デビル……」
「何がごめんなさいなんですか?」
「……え?」
ハッとなって振り返ると、そこには二人の少女の姿があった。
真紅の悪魔と同じロワの舞い踊る車輪と、
なのはロワの
無常の騎士。
ほんの少し前に城で同盟を結び、南の方角に向かったはずの二人だ。
その彼女達が、ヴァルハラ達が向かった西のフォレストエリアから現れた。
「ど、どうしてここに?」
軽トラに乗ってとはいえ、二人がバトルフィールドエリアに移動する程の時間が有ったのだ。
とっくの昔に違うエリアへと移動しているはずだった。
そもそも何故、西から現れたのか。
その問いには、無常の騎士が答えてくれた。
「ああ、少し用が有ってな。ギャルゲ写本を殺してきた」
(…………え?)
殺してきた。
ギャルゲ写本を、殺してきた。
あの、圧倒的なまでの実力を誇る彼女を?
呆然となるヴァルハラに、無情の騎士は怪訝な表情を見せる。
「フン、知り合いだったのか。
まあ、貴様もあの旅の扉を潜った一人だ。奴を知っていても不思議ではないか」
「え……? それって、どういう事?」
「なんだ知らんのか。あの大聖堂にあった旅の扉は、奴の作品だ。
奴が旅の扉を作り出したのだ。
このフィールドでもそれをされたら、また次への脱出者が大量に出てしまうだろう?
一つフィールドを移動して煩悩の数ほど生存者が残っているなど馬鹿馬鹿しい話だ」
「旅の扉を、作った……!?」
魔王ヴァルハラは思わず絶句していた。
そんな出鱈目が出来るとは信じられなかった。
旅の扉の創造は他にも例は有るのだが、彼女がそんな事を知る由も無い。
ただただ圧倒されるばかりだ。
だから、信じられなかった。
(そんな人が、殺された? もう!?)
あの圧倒的な力の持ち主が易々と殺されるなど。
「貴様、奴とはどういう関係なのだ?」
「開幕直後に遭って……挑んだけど手も足も出なかった……」
無常の騎士はなるほどなと頷く。
「あんな強者に真っ向から挑むからだ。
書き手としてのアレの力は、あまりにも強かった。この場においても。
……それでも勝利を掴もうというなら、相手の不意を突く事だ」
ほんの僅かな憂いを含んだ無常の騎士の言葉。
ヴァルハラはいつの間にか俯いていた顔をあげ、彼女の顔を見上げ──。
「それで、あなたはどうしたのですか? 誰か殺せましたか? 真紅の悪魔は何処に?」
横合いから、舞い踊る車輪の問いかけが差し込まれた。
「わたし、は……」
誰も、殺せてなどいない。
あの巨大な竜と戦っていた男は、ほんの一瞬で駆け込んだ誰かを殺害してみせた。
真紅の悪魔は逆に魔王ヴァルハラを護って散った。
「わたしは…………っ!!」
真紅の悪魔。
ヴァルハラにもきっと力が有ると優しい言葉を掛けてくれた、パートナー。
ヴァルハラを助けて竜に呑まれた少女。
目の前にいる舞い踊る車輪と同じロワの出身者。
「……ごめんなさい。…………うぐっ。ひっく。……ごめんな……さい…………っ」
ヴァルハラはただ、舞い踊る車輪に向けて謝る事しか出来なかった。
怪訝な表情を浮かべた舞い踊る車輪が問いかける。
どうしてあなたは謝るのですか、と。
ヴァルハラは答える。
自分を護って真紅の悪魔が竜に呑まれた事を。
車輪は少し黙り込み。
言った。
「彼女、まだ死んでないみたいですけどね」
「え……?」
呆然となる少女に、車輪は答える。
「私と、彼女と、あと静かなる輝星《サイレントスター》にはFラインの繋がりが有りますから。
互いの生死くらいなら判ったり判らなかったりします」
「Fライン……?」
ええ、と頷き。
「私達のロワで、彼女がF軸に居た全てのキャラを一挙に動かした事があります。
タイトルの一文字目にFの付く、三部作で。
私はそれを一文字目にFの付く、三部作で返しました。
彼女は更に一文字目にFの付く、三部作で締めました。
それから、静かなる輝星も一文字目にFの付く話で登場キャラ一人の心理を描いています。
合計すると、Fから始まる十部作という事になるのでしょうかね」
「じゅ、十部……!?」
ヴァルハラは唖然となった。
その強烈なリレーの成果。
車輪は淡々と話すだけ。
「四国が銀色の何かに侵蝕されて、降って来た大蛇と融合しドラゴンになったと言いましたね。
恐らく銀色のそれは、
スパロワではミオ・サスガを取り込んだDG細胞でしょう。
真紅の悪魔もDG細胞の生体ユニットとして取り込まれた可能性が高いですね」
「それじゃ助けられるかもしれないの!?」
「ええ。とはいえ」
車輪はバッサリと。
「私達にとっては放って置いた方が有益でしょう」
仲間の救助を断った。
「ど、どうして!? 仲間なんでしょう!」
必死に食い下がるヴァルハラを、車輪は呆れた瞳で見上げ蔑む。
「だって、私達はマーダーなんですよ。
それほど巨大な怪物が生まれたなら、さぞ多くの参加者を死に追いやってくれるでしょう。
止める理由なんて、有ります?」
「そ、それは……っ」
マーダー。
それも殺し合いを促進する為に同盟を組んだ、冷徹に多くの死を望む殺人鬼集団。
七人の魔女。
だけどヴァルハラは、諦めきれない。
彼女となら心を通わせられると想えた、あの僅かな思い出の為に。
車輪の言葉はそんなヴァルハラを切り捨てる。
「それに、どうせ彼女はこのロワの何処かで果てる定めです。
助ける意味なんてありません」
『そうなんだ。……良いなあ、帰るところが有るって』
デジャ・ヴュ。
「待って! それってどういう──」
「このロワに居る真紅の悪魔という少女はね」
車輪はどこまでも淡々と、まるで感情さえ無いような無機質さで。
告げた。
「現実に在る書き手から切り離された過去なんですよ」
ただ、事を。
「ま、私達も疑わしいと思いますがそれはさておき。
彼女のトリは当人により終了宣言が出ていまして。
少なくとも彼女の名義で新作が投下される事は無いんです。
新しい名義で活動を始めるのかは、この話においては関係ありません。
それは別の名前、別の存在です。
彼女は現実世界の書き手の一部でしたが、そこから切り落とされた存在です。
心地よい例を挙げましょう。
残念ながら行き倒れたロワや、逆に華々しい完結を遂げたロワの書き手。
彼らも形は違えど終了しています。
さて。
終了したロワの書き手は、一体どこに帰るんでしょう?」
「それ、は……」
「答えは簡単。
帰る場所なんてありません。
まあ2ndに継続するなど例外も有りますけど、基本的にはただ消える。
私達の名前はそういうものです。
優勝しても帰る場所が有るのは現在進行形ロワの書き手だけ。
ここはね」
舞い踊る車輪はバッと大きく両手を広げた。
大地を。
空を。
世界を抱き締めるようにして。
「そんな者達にとって、最期を楽しむべき血塗れの楽園なのです」
まるで破滅を愛するように。
そして小首を傾げ、ヴァルハラを振り返った。
「なのに、帰るべき場所を持つあなたが命懸けで彼女を助ける、と?」
ヴァルハラは言葉を失った。
何を選べば良いのか判らなかった。
何を求めれば良いのかも判らなかった。
思考は混迷の渦に呑まれ惑いの海に沈んだ。
それでも。
どうしてか、気づけばヴァルハラは声も無く頷いていた。
「そうですか。では」
車輪は、彼女へと刃を向けた。
ビクりと震える彼女に対して、告げた。
「あなたは私達と袂を分かちました。
何処へなりとも行き、仲間を集い、足掻きなさい。
この世界に生きるあなたの意思と命で」
車輪はただそれだけを告げた。
ヴァルハラは流れる涙を拭おうともせず。
踵を返し、走り出した。
ほんの僅かな時間、共に過ごした仲間を助ける為に。
【一日目 朝/キャッスルエリア西部】
【魔王ヴァルハラ@RPGロワ】
【状態】健康、下着マント
【装備】エクスカリバー@
ギャルゲロワ2、王者のマント@
動物ロワ、エッチな下着@LSロワ
【道具】支給品一式
【思考】
0:真紅の悪魔を助け出す。
1:優勝して元の世界に帰ってロワ完結させる?
【備考】
※外見はナナミ@水滸伝です。
◇ ◇ ◇
ヴァルハラが去った後、舞い踊る車輪と無常の騎士はその場に留まっていた。
これからの行く先を考える為に。
「良いのか?」と無常の騎士が問い、車輪は答えた。
「殺さなかった事なら、問題は有りません。
真紅の悪魔を助けようとするなら、私は何かの役に立つかもしれない。
そもそも彼女の行為はマーダー同盟としては裏切りです。
その迷いは、私達を単なる敵と吹聴する事に制止を掛けてくれるでしょう。
何より、彼女の行為はむしろ好都合です。
彼女が対主催を集めてデビルドラゴン四国に挑むならば、死者はむしろ増えるでしょう。
撃破ではなく救助を目的とするせいでも死者は増えるかもしれません。
生かした方が得ですよ」
無常の騎士はふむと頷いた。
舞い踊る車輪が聞き返す。
「それで、これからどうしますか? 地図の東と西を間違えた大ポカについて」
「そ、それは言うな!」
無常の騎士はフォレストエリアを自分に合った戦場だと考え、
東に向かう百万の愛でられし魔法使いの父とカオスクライに交代を持ち掛けた。
そうして自信満々で“西に位置する”フォレストエリアへと入って行った。
「敵を騙すにはまず味方からという深遠な理由が有るのだと思いましたが、
まさか本気で東に向かっているつもりだとは思いませんでした。
もしかして方向音痴ですか? 天然ボケですか?」
「うぐ……い、言うな」
前フィールドでの行動も思い出してみると良い。
丁度良い所に現れた同じロワの仲間のバイクに乗せて貰って埼玉へ直行。
あれにはそんな理由も有ったのだ、実は。
「手当たり次第に殺していく無差別マーダーは方向感覚など関係無い!」
「ですが同盟を組んだ今、約束上同じ方向には向かえません」
「うっ……」
四方向に散る約束で移動しておいて、同じ方向に移動して鉢合わせしては立つ瀬が無い。
だからやはり西方向は不味かろうとフォレストエリアから東へUターンしたのだ。
幸い、このまま東へ進んだ先のガーデンエリアも植物が多く繁茂している。
少々丈が低いものの、そこでも十分な影が存在しているはずだった。
「しかし幸いにも、西方向は空きました。
真紅の悪魔が呑まれ、魔王ヴァルハラがしばらくマーダーを放り出した事によって」
「……そう、だな」
だから、やはりまた西に向かっても問題は無い。
「それじゃ、どうしましょうか」
【一日目 朝/キャッスルエリア】
【舞い踊る車輪@LSロワ】
【服装】光坂高校の制服@ギャルゲロワ2nd
【状態】健康
【装備】ディアボリックファング@テラカオスロワ
【道具】デイパック、基本支給品一式、刃に塗る毒全ロワセット、GR2制服セット@ギャルゲロワ2nd
【思考】
基本:バトルでは積極的に殺さないマーダー(本人談)。
1:無常の騎士と共に東か西へ向かう。
【備考】
※外見はプレセア・コンバティールのようです。
※ディアボリックファングにはダメージを受ける毒と麻痺毒が塗られています。出展は不明ですが多分RPG系。
※ギャルゲ写本のデイパックをもらいました(不明支給品は無常の騎士が持っています)。
【無常の騎士◆HlLdWe.oBM@なのはロワ】
【服装】パピヨンマスク@なのはロワ
【状態】疲労(小)
【装備】雪走@○ロワ、ガ・ボウ@なのはロワ
【持ち物】デイパック、基本支給品一式、不明支給品0~1(元ギャルゲ写本のもの)
【思考】
基本:殺し合いに優勝する。
1.基本スタンスは暗殺と扇動マーダー。主に後者を優先。
2.
コリジョン・ナンバーズを殺す。
3.舞い踊る車輪と共に東か西へ向かう。
【備考】
※「XANADO」:無常の騎士の持つ異能。暗闇の地形に潜ることができる。
ただし、地形に潜れるのは10秒前後。再度潜るまでにもしばらく間を置かなければならない。
※外見はパピヨン@武装錬金のマスクをつけたフェイト@なのはA'sです。
※実は方向音痴のようです。
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最終更新:2009年08月27日 21:45