~~苦の巻 「ツインエッジ・ダブルニンジャ」~~
「ドーモ、初めまして。ファントム・オーガです」
ロボットの手のひらの上に操者が乗っていた。その男は謎の仮面と派手な衣装に身を包み、楔に対して丁寧にお辞儀したのだった。
「……」
黒装束の男・楔は倉庫の屋根の上で腕を組んでいる。
「これこれ、こちらが挨拶したのだから、さあそちらも」
「挨拶する忍がどこにいる」
「挨拶は古式ゆかしい忍の作法でござろう!?」
「……初耳だ」
「挨拶する忍がどこにいる」
「挨拶は古式ゆかしい忍の作法でござろう!?」
「……初耳だ」
結局楔は黙殺した。
「ファントム・オーガというのが貴様の名前か? いったい何の用だ?」
「フ……そう急がずとも、まずは」
『今“ファントム・オーガ”と言ったのか!? スーパーロボットのパイロットじゃないか、確かなのか!?』
「竜蔵寺、会話に割って入るな!」
「取り込み中でござるか……?」
「構わない、続けてくれ」
「フ……そう急がずとも、まずは」
『今“ファントム・オーガ”と言ったのか!? スーパーロボットのパイロットじゃないか、確かなのか!?』
「竜蔵寺、会話に割って入るな!」
「取り込み中でござるか……?」
「構わない、続けてくれ」
楔の耳にかけた骨伝導式のスピーカーからは「ファントム! ファントム!」と、竜蔵寺の子供のような掛け声が聞こえてくる。
「まず紹介からいたそう。拙者はスペインの忍者、ファントム・オーガ。このロボは自慢のファントムでござる!」
このファントム・オーガと名乗る男、正体はガルシア・クリストバル卿という忍者好きな貴族である。
彼はアムステラ神聖帝国の侵攻に際し、私財を投じてスーパーロボットのファントムを建造。
仮面で正体を隠しアムステラと戦う忍者となった異色の経歴の持ち主なのだ。
彼はアムステラ神聖帝国の侵攻に際し、私財を投じてスーパーロボットのファントムを建造。
仮面で正体を隠しアムステラと戦う忍者となった異色の経歴の持ち主なのだ。
名乗りを受けた楔は少し驚いたように応じた。
「スペインだと? まさかバルセロナ忍者の末裔か?」
「いかにm……え、バルセロナ忍者? でござるか?」
「いかにm……え、バルセロナ忍者? でござるか?」
バルセロナ忍者とは、スペインを代表する忍者一派の一つだ。
バルセロナは起源を遡れば、カルタゴのハンニバルに通じる由緒ある土地であり、この稀代の軍人が用いた忍の流れを汲むといわれるのがバルセロナ忍者である。
バルセロナは起源を遡れば、カルタゴのハンニバルに通じる由緒ある土地であり、この稀代の軍人が用いた忍の流れを汲むといわれるのがバルセロナ忍者である。
「ささっ、このように怪しいものではござらぬ。そこもとも名乗られよ」
「断る」
「そう言わずに!」
「断る!」
「断る」
「そう言わずに!」
「断る!」
楔は一顧だにせずに拒絶したが、ファントム・オーガも引き下がらない。
「バルセロナ忍者よ。貴公も忍ならば相手の正体は腕ずくで暴いてみせよ」
「フフフ……そう申すならば仕方ない。いざ、イヤァー!」
「フフフ……そう申すならば仕方ない。いざ、イヤァー!」
気合一声ファントム・オーガが飛翔した!
空中から襲う手裏剣の雨! 楔はこれを両手の指という指に挟んで受け止めた!
空中から襲う手裏剣の雨! 楔はこれを両手の指という指に挟んで受け止めた!
だがこれは囮である。楔と同じ屋根に着地したファントム・オーガは、低い姿勢のままダッシュ! その勢いでスライディングキックを放つ!
楔は軽く跳躍して回避! 羽のように軽やかに着地すると厳かに構え直す。
「ほほぅ、隙がないでござるな」
「バルセロナ忍者と戦うのは初めてだが……現代ヨーロッパの忍が如何程のものか見せてもらおう」
「バルセロナ忍者と戦うのは初めてだが……現代ヨーロッパの忍が如何程のものか見せてもらおう」
再びファントム・オーガが仕掛ける。楔の周囲を輪を描くように走り撹乱!
楔は動じない。そこに右側方からの回し蹴り! 楔は身をよじって回避!
ファントム・オーガは続けて上下にキックを振り分けるが楔は冷静に回避!
フック! ストレート! アッパー! 楔はいずれも的確に防御!
楔は動じない。そこに右側方からの回し蹴り! 楔は身をよじって回避!
ファントム・オーガは続けて上下にキックを振り分けるが楔は冷静に回避!
フック! ストレート! アッパー! 楔はいずれも的確に防御!
数々の攻撃を凌がれて、ファントム・オーガは一旦距離をとりブレイク状態になった。
「なぜそちらは仕掛けて来ぬでござるか?」
「ではこちらも聞こう。なぜ本気を出さない?」
「フッ……見抜かれていたでござるか」
「ではこちらも聞こう。なぜ本気を出さない?」
「フッ……見抜かれていたでござるか」
ファントム・オーガは構えを解き、同時にこの場を支配していた緊張も解けた。
「拙者は日本に援軍として訪れていたのでござるが、先日、日本防衛軍のさるお方に貴殿の素性を探るように依頼されたでござるよ」
それは空軍長官・柳生月心斎の依頼であった。忍者には忍者を当てるのが妥当と考えたのだ。
「少なくとも敵ではないようだな」
「如何にも」
「だが悪い。素性を語る気はない」
「ンムムム弱ったでござるな……かくなる上はジャパニーズ・サムライ奥義のDOGEZAをするしか……」
「如何にも」
「だが悪い。素性を語る気はない」
「ンムムム弱ったでござるな……かくなる上はジャパニーズ・サムライ奥義のDOGEZAをするしか……」
ファントム・オーガが弱り顔でいると、彼の通信機に緊急入電が舞い込んだ。
『ファントム・オーガ殿、こちら日本防衛軍です! アムステラ軍が基地を攻撃しています!』
「なんですと!? 場所は何処でござるか!?」
「なんですと!? 場所は何処でござるか!?」
通信は楔にも届いていた。こちらは竜蔵寺研究所からだ。
『楔さん、マイアです! あなたたちの近くの基地がアムステラ軍の攻撃を受けてます!』
『助太刀に行ってもらえないだろうか?』
「アムステラか……わかった、梟をこちらに送れるか?」
『任せておけ。目的地までのナビのデータも転送しておくぞ』
『助太刀に行ってもらえないだろうか?』
「アムステラか……わかった、梟をこちらに送れるか?」
『任せておけ。目的地までのナビのデータも転送しておくぞ』
「ややっ、もしや貴殿も手伝ってくれるでござるか!?」
「成り行きだ」
「それはありがたい! 拙者はファントムに乗って先に行くでござる!」
「成り行きだ」
「それはありがたい! 拙者はファントムに乗って先に行くでござる!」
ファントム・オーガは、待機させてあった愛機ファントムに乗り込むと、煙幕の中に姿を消した。
「ところで竜蔵寺。アムステラとかいう異星人やらはどんな連中なのだ?」
『知らんのか? 世界中で奴らと戦ってるんだぞ! 忍の里にでも篭ってたか!』
「生憎と知らぬ」
『知らんのか? 世界中で奴らと戦ってるんだぞ! 忍の里にでも篭ってたか!』
「生憎と知らぬ」
竜蔵寺は呆れつつも、突如来襲してきた異星人のことを説明していった。
話は十数年前に最初の接触があったことや、彼らの進んだ文明、地球人との類似や民間人を巻き込まない戦い方をする特徴などにも及んだ。
話は十数年前に最初の接触があったことや、彼らの進んだ文明、地球人との類似や民間人を巻き込まない戦い方をする特徴などにも及んだ。
『戦況は膠着しているが、相手は銀河規模の星間国家だ。予断を許さん。できればお前にも手伝ってもらいたいものだが』
「今回は手を貸す。だが俺の狙いはあくまでも化学ニンジャだ」
『ああ、それはわかってる』
「今回は手を貸す。だが俺の狙いはあくまでも化学ニンジャだ」
『ああ、それはわかってる』
やがて倉庫街に轟音が響き、頭上には漆黒のロボ・梟が飛来していた。
「人には成すべき使命というものがある」
楔はそう呟くと、梟に乗り込み指定された座標へ向かった。
◆◆◆◆◆
そこは日本防衛軍の沿岸基地! 今まさにアムステラ軍の攻撃に晒されている!
飛来するは操兵・空戦型羅甲の編隊。これに基地から発進した迎撃機“ツイスター”が対応した。
両者の間で激しい攻防が繰り広げられたが、旧世代の戦闘機では歯が立たず、被害を出して引き下がっていった。
飛来するは操兵・空戦型羅甲の編隊。これに基地から発進した迎撃機“ツイスター”が対応した。
両者の間で激しい攻防が繰り広げられたが、旧世代の戦闘機では歯が立たず、被害を出して引き下がっていった。
第一陣を突破したアムステラ軍から中距離ミサイルが放たれ、煙の尾を引きながら基地へと襲いかかる。
基地側も即座に対応、迎撃ミサイルが射出された。誘導を受け空中で炸裂し、無数の小型ミサイルをばら撒くと空に爆発光が花火大会のごとく煌めく。
その防御網を突破してきたミサイルに対しては対空機関砲が雨あられと砲弾を浴びせ叩き落とした。
基地側も即座に対応、迎撃ミサイルが射出された。誘導を受け空中で炸裂し、無数の小型ミサイルをばら撒くと空に爆発光が花火大会のごとく煌めく。
その防御網を突破してきたミサイルに対しては対空機関砲が雨あられと砲弾を浴びせ叩き落とした。
この露払いにより日本防衛軍はアドバンテージを取られた。
煙幕を突っ切り飛来した空戦型羅甲は、残った機関砲を潰しにかかる。
基地周辺に配備されている“百八式戦車”が砲撃するが、いかんせん火砲の数が足りず投下される爆雷の餌食となった。
煙幕を突っ切り飛来した空戦型羅甲は、残った機関砲を潰しにかかる。
基地周辺に配備されている“百八式戦車”が砲撃するが、いかんせん火砲の数が足りず投下される爆雷の餌食となった。
空からの攻撃は成功である。
アムステラ軍の侵攻は第二段階に入り、海中から接近していた海戦型羅甲が上陸を開始!
迎撃の手を潰された日本防衛軍は次々と姿を現す羅甲の編隊にたじろぐのだった。
アムステラ軍の侵攻は第二段階に入り、海中から接近していた海戦型羅甲が上陸を開始!
迎撃の手を潰された日本防衛軍は次々と姿を現す羅甲の編隊にたじろぐのだった。
わずかに残った百八式戦車たちが砲撃するも、海戦型羅甲たちは散開しつつ銃撃し戦車をスクラップに変えていった!
この基地には残念なことに地球の主兵力たる5型~7型などの人型兵器が不足していた。
しかも数で優るアムステラに対し散り散りに対応したため効果が見込めない。
援軍の要請は出したが彼らが来るまで持ち堪えられるのか?
しかも数で優るアムステラに対し散り散りに対応したため効果が見込めない。
援軍の要請は出したが彼らが来るまで持ち堪えられるのか?
その時、羅甲一体がミサイル攻撃を受けて爆発!
急な攻撃に驚いた羅甲が一体、振り返ったところにビームの直撃! 損傷を負った羅甲は擱座!
風を切って現れたのは、いち早く援護に駆けつけた“F-44リベンジャー”。扱いは難しいが日本国産の優秀な人型兵器である。
急な攻撃に驚いた羅甲が一体、振り返ったところにビームの直撃! 損傷を負った羅甲は擱座!
風を切って現れたのは、いち早く援護に駆けつけた“F-44リベンジャー”。扱いは難しいが日本国産の優秀な人型兵器である。
「アム公どもぉぉぉぉ!!! ぶち殺してやるぜぇぇぇぇぇぇ!!」
パイロットの犬童一尉は咆哮を上げながら突撃!
リベンジャーの両腕に備わった戦闘機を流用したウェポンユニットが、銃弾を、ミサイルを、ビームを放って二機の羅甲を蜂の巣にした!
リベンジャーの両腕に備わった戦闘機を流用したウェポンユニットが、銃弾を、ミサイルを、ビームを放って二機の羅甲を蜂の巣にした!
するとリベンジャーに対し、頭上から空戦型羅甲のマシンガンが放たれる。
だがリベンジャーのウェポンユニットは、それ自体が推進装置でもあるのだ。ジェット噴射で空中からの攻撃をかわすと、即座にミサイルで応戦!
だがリベンジャーのウェポンユニットは、それ自体が推進装置でもあるのだ。ジェット噴射で空中からの攻撃をかわすと、即座にミサイルで応戦!
獅子奮迅の戦いを見せる犬童のリベンジャー。
しかし、急いで駆けつけたためにウェポンユニットの推進剤は尽き、弾薬も多数の敵の前に撃ち尽くされようとしていた!
しかし、急いで駆けつけたためにウェポンユニットの推進剤は尽き、弾薬も多数の敵の前に撃ち尽くされようとしていた!
「しぇぁぁらくせぇぇぇぇ!!!!」
犬童は両腕のウェポンユニットを敵集団に向けて射出! まとめて炭焼きにすると、近接武装のビームバヨネットソードを抜いて次の獲物に襲いかかる!
……だがここまでが彼の武勇の限界だった。次第に傷つき、囲まれ、アムステラ軍に包囲されてしまう。
……だがここまでが彼の武勇の限界だった。次第に傷つき、囲まれ、アムステラ軍に包囲されてしまう。
「ハンッ、ここが俺の死に場所かよ……一人でも多く道連れにしてやらぁ!」
犬童が覚悟を決めた時、彼を取り巻く操兵の壁が途端に乱れた。
「Wasshoi!!!!」
地面を突き破って現れたのはスペインのスーパーロボット・ファントム! 羅甲数体を岩ごと巻き上げた!
「助太刀致す!」
「スペインの忍者野郎か!」
「拙者だけではござらん!」
「スペインの忍者野郎か!」
「拙者だけではござらん!」
空中から飛びかかるは黒塗りのロボ・梟!
「騎兵烈襲脚!!!!」
強烈な蹴りで羅甲三体をまとめて粉砕!
「忍者が二人だとぉ!?」
犬童が驚いたが、アムステラ軍はもっと驚いた。
この二体のロボットの出現により、すでに決しかけていた戦況がにわかに怪しくなり始めたのだから無理もない。
この二体のロボットの出現により、すでに決しかけていた戦況がにわかに怪しくなり始めたのだから無理もない。
「行くでござる!」
「応っ!」
「助かるぜぇ!」
「応っ!」
「助かるぜぇ!」
形勢は瞬く間に逆転した。
ファントムが縦横無尽に駆けると、操兵たちは次々に切り裂かれ、手裏剣を受け、破壊されていく。
梟が飛び、空中で優位を囲っていたはずの空戦型羅甲が打たれ、砕かれ、爆発四散していく。
犬童もまた負けていない。乱入者にうろたえた羅甲にソードを突き刺し、穿ち、荒々しく打ち倒した。
ファントムが縦横無尽に駆けると、操兵たちは次々に切り裂かれ、手裏剣を受け、破壊されていく。
梟が飛び、空中で優位を囲っていたはずの空戦型羅甲が打たれ、砕かれ、爆発四散していく。
犬童もまた負けていない。乱入者にうろたえた羅甲にソードを突き刺し、穿ち、荒々しく打ち倒した。
『楔よ、マキビシランチャーを使え!』
「応っドクター!」
「応っドクター!」
竜蔵寺により新たに取り付けられたマキビシランチャーは、敵へ向けて無数のマキビシをガトリングじみて放つ兵器だ。
「ガガガッ!」という荒々しい音とともにマキビシが放たれ羅甲の装甲に食い込む。
すると大量のマキビシは次々と爆発していき、羅甲の装甲を、内部の機械をズタズタに引き裂いていった!
弾数は多くないが、十分に効果が見込める武器だ。
「ガガガッ!」という荒々しい音とともにマキビシが放たれ羅甲の装甲に食い込む。
すると大量のマキビシは次々と爆発していき、羅甲の装甲を、内部の機械をズタズタに引き裂いていった!
弾数は多くないが、十分に効果が見込める武器だ。
一方ファントムは蛇腹状の武器“ブレードチェーン”で羅甲を縛り上げる。
一つ一つの刃が“マグナムスチール”でできており、引き絞ると羅甲の装甲はチーズのように切り裂かれた!
一つ一つの刃が“マグナムスチール”でできており、引き絞ると羅甲の装甲はチーズのように切り裂かれた!
「隊長、奴はデータにあるレンジャーロボです! 勝てません!!」
「馬鹿者ぉ! これだけ味方がやられて黙っていられるか!」
「馬鹿者ぉ! これだけ味方がやられて黙っていられるか!」
著しく数の減ったアムステラ軍の中に、一機だけ角の生えた羅甲がいた。指揮官用の羅甲だ。
彼は部下を鼓舞して突撃するが、恐怖に包まれた部下たちはまるでついてこない。
すると、ファントムは音も無く指揮官に近寄り羽交い締めにすると、そのまま跳躍!
空中できりもみ回転しながら敵を地面に叩きつけた!
彼は部下を鼓舞して突撃するが、恐怖に包まれた部下たちはまるでついてこない。
すると、ファントムは音も無く指揮官に近寄り羽交い締めにすると、そのまま跳躍!
空中できりもみ回転しながら敵を地面に叩きつけた!
必殺! ローリングイヅナ!!!
頭からひしゃげた指揮官用羅甲が爆発! それを見たアムステラ軍は完全に戦意喪失し、尻尾を巻いて撤退した。
敵は去った。二人の忍者の助太刀により、日本防衛軍は基地を守り切ることに成功した。
楔はファントム・オーガの見せた“ローリングイヅナ”の姿を思い出す。
あの技にはバルセロナ忍者とカルタゴ忍者に共通するファクター、ハンニバルにちなむ奥義“アルプスドロップ”に通じる遺伝子を感じた。
あの技にはバルセロナ忍者とカルタゴ忍者に共通するファクター、ハンニバルにちなむ奥義“アルプスドロップ”に通じる遺伝子を感じた。
「これがバルセロナ忍者の……ファントム・オーガの腕前か」
「よおアンタら、今回は助かったぜ」
防衛軍の犬童一尉が感謝の念を伝え、親指をグッと立てる。
ファントム・オーガもそれに応えて親指をグッと立てる。
楔はというと応えることもなく背を向けて歩き出した。
ファントム・オーガもそれに応えて親指をグッと立てる。
楔はというと応えることもなく背を向けて歩き出した。
「おぉいおいアンちゃん」
「助かったでござるよ! え~と」
「楔だ。俺の名は楔だ」
「助かったでござるよ! え~と」
「楔だ。俺の名は楔だ」
『敵に打ち込む楔たれ』――そんな言葉を思い出した。
「クサビニンジャ=サン、今後ともヨロシクでござる!」
「よろしくなぁ!!」
「さらばだ」
「よろしくなぁ!!」
「さらばだ」
楔は梟に乗り込むと風のように去っていった。
「それで、その忍者の正体はわからないままなんだね、ファントムくん」
「いやぁ、結局聞き出せなかったでござるよ」
「いやぁ、結局聞き出せなかったでござるよ」
悪びれた様子のないファントム・オーガだが、相手の老人、月心斎も責めることはしない。
ここは日本防衛軍基地の休憩室。ファントム・オーガは出されたお茶を、仮面の口部分だけ開けて器用に飲んでいる。
そしてこぼしている。
ここは日本防衛軍基地の休憩室。ファントム・オーガは出されたお茶を、仮面の口部分だけ開けて器用に飲んでいる。
そしてこぼしている。
「正体はわからなかったけれど、あれは悪しき忍者ではないでござるよ。
また戦場で会えそうな気がするでござる、ニンニン」
また戦場で会えそうな気がするでござる、ニンニン」
ファントム・オーガの予感は近いうちに的中することになるが、それはまた別の話である。
◆◆◆◆◆
「待たせたなみなのものよ……」
そこは地底深く。化学ニンジャ隊の本拠地『機岩城』。
居並ぶ上級忍者たちのオーラに、側にいる報告官は失禁寸前である。
居並ぶ上級忍者たちのオーラに、側にいる報告官は失禁寸前である。
「これより日本に、世界に、そして秩序に挑戦を開始する」
化学ニンジャ隊の名を世に轟かすための大作戦が迫っていた。
四天王を中心とした上級忍者たちは待ちわびた時を迎え高揚している。
彼らが自らの肉体を機械と融合させ、忍の技を研鑽してきた労苦はこの時のためにあったのだ。
四天王を中心とした上級忍者たちは待ちわびた時を迎え高揚している。
彼らが自らの肉体を機械と融合させ、忍の技を研鑽してきた労苦はこの時のためにあったのだ。
「ブラッククロスのために!」
「機械将軍万歳!」
「滅び行く秩序のために!」
「機械将軍万歳!」
「滅び行く秩序のために!」
悪しき歓呼の叫び声が唱和する。彼らの野望を止めるものはいないのか? 走れ、クサビ=ニンジャ!