「あまりいい気分ではないな、こういうのは。
なまじ小柄で綺麗どころのお嬢さんな分、胸にくるよ」
言葉に反して、グラスを傾ける速度は急ぎ足。
かぽり、かぽりと音を立てて、
あめいろの液体は見る見るうちにその水嵩を下げていく。
その傍らにしっととして同じように座っているのは、
これもまた同じように酒をあおる老人。
ただしつがれているものは違うようで、赤鉄色に揺れている。
飲みのペースもどちらかといえば遅く、
あるいは一口として含んでいないかの様。
むしろ、灰皿に押し付けられた葉巻の本数が目立つ。
「そうとはいっても、これは我々の決定事項だろう?
確かに説明は省いたが、聞かれなかったしな。何も問題ない」
「まるでどこかの詐欺師のような言葉だな」
「違いない」
くっくと、陰鬱な笑いを浮かべ、
二人は一息に飲み干す。
吐く息はアルコホルの臭い。
酔った男のだめな愚痴。
「まあ、彼女に言ったのは俺じゃなくてお前だけどな。
どちらにしろ、機密事項だから言えなかった、で済ませれる範囲か」
「教えたところで、あれは命令だからな。
彼女には拒絶する権利もない。
第一伝えたところで何も得がない。
『テストパイロットの過半数が事故死、ないし行方不明にあっている』
『残りのテストパイロットも理由不明の辞退をしている』
なんて、もし伝えたいのならば、隊長の好きにすればいい、わたしは止めんよ?」
「・・・・よしてくれ。
俺もそこまで無神経じゃないし、度胸もない」
もはや何敗目になるのか、本人すら覚えていないが、
ともかく瓶数本を飲み干したダメ男がやっとのことで吐いた言葉がそれだった。
「実際のところ、どうなんだ?
上の連中だかインベーダーどもの工作だかは知らないが、
これで状況に変化が訪れると本気で考えているのか?
俺ぁもうよっぱらっちまったからな、難しいことは考えたくない。
あたまがまわる。まわっちまったら素面じゃあいられん。お前に任せた」
「無神経な押し付けもあったもんだな」
老人も、男ほどではないとはいえ、
同じようにアルコホルが入っていることを知りつつ、
無責任に丸投げをする恥知らずな隊長がそこにいた。
「案外、金を積めば了承するんじゃないか?」
「最悪の答えじゃねーか!」
やはり飲んではいるらしく、老人の答えも酔狂だが、
「いや・・・・まあ、あの子は確かに金払いでニコニコ・オーケーしそうだけどさ」
「だろ?」
「パイロットになれ、ってお前が言って、
すぐさま『じゃあお給料も上がりますか?』だ、
なんつーか、現代っ娘怖い。たくましすぎるだろ」
あながち冗談でもなかったのが一番の問題だった。
「どちらにしろこれは戦争だ、コナン隊長。
何ものかの暗殺がなくても、そもそも危険なことには変わりない。
明日死ぬかもしれない仕事なのだから、覚悟は決めておくべきだ」
「・・・・まあ、そうなんだけどなぁ・・・・
はぁ、軍人はつらいよブラスおじいちゃん、よよよ。
っとと・・・・ちょいと便所いってくる、飲みすぎて尿がやばい」
やや腰砕け気味に席を外す隊長をしり目に、
老人は何本目かになる葉巻へと火をともす。
深く深く、ゆっくりと吸い、やや色味の付いた、
香りの強い煙を吐き出す。
そして目をつぶり、ひくひくと、まぶたの裏で眼球を動かす。
(保護プログラムは組んだ。
さすがにこの基地内での破壊行動は難しい。
この状態でもなお何かをしようというのなら、必ずしっぽを出すはずだ。
あの娘には悪いが、エサになってもらおう。
新規のパイロットが任命されたとなれば、
相手側の動きにも何等かの変化がみられるはずだ。
同時に、今いるパイロット候補生を秘密裏に移す。
巧妙に隠しきれば、相手が狙いを定めるのはあの少女一人になるはず)
老人は、今度こそ、一息で酒を飲み干す。
「いつでも来るといい。我々が相手をしてやる」
決意を固めるように。
なまじ小柄で綺麗どころのお嬢さんな分、胸にくるよ」
言葉に反して、グラスを傾ける速度は急ぎ足。
かぽり、かぽりと音を立てて、
あめいろの液体は見る見るうちにその水嵩を下げていく。
その傍らにしっととして同じように座っているのは、
これもまた同じように酒をあおる老人。
ただしつがれているものは違うようで、赤鉄色に揺れている。
飲みのペースもどちらかといえば遅く、
あるいは一口として含んでいないかの様。
むしろ、灰皿に押し付けられた葉巻の本数が目立つ。
「そうとはいっても、これは我々の決定事項だろう?
確かに説明は省いたが、聞かれなかったしな。何も問題ない」
「まるでどこかの詐欺師のような言葉だな」
「違いない」
くっくと、陰鬱な笑いを浮かべ、
二人は一息に飲み干す。
吐く息はアルコホルの臭い。
酔った男のだめな愚痴。
「まあ、彼女に言ったのは俺じゃなくてお前だけどな。
どちらにしろ、機密事項だから言えなかった、で済ませれる範囲か」
「教えたところで、あれは命令だからな。
彼女には拒絶する権利もない。
第一伝えたところで何も得がない。
『テストパイロットの過半数が事故死、ないし行方不明にあっている』
『残りのテストパイロットも理由不明の辞退をしている』
なんて、もし伝えたいのならば、隊長の好きにすればいい、わたしは止めんよ?」
「・・・・よしてくれ。
俺もそこまで無神経じゃないし、度胸もない」
もはや何敗目になるのか、本人すら覚えていないが、
ともかく瓶数本を飲み干したダメ男がやっとのことで吐いた言葉がそれだった。
「実際のところ、どうなんだ?
上の連中だかインベーダーどもの工作だかは知らないが、
これで状況に変化が訪れると本気で考えているのか?
俺ぁもうよっぱらっちまったからな、難しいことは考えたくない。
あたまがまわる。まわっちまったら素面じゃあいられん。お前に任せた」
「無神経な押し付けもあったもんだな」
老人も、男ほどではないとはいえ、
同じようにアルコホルが入っていることを知りつつ、
無責任に丸投げをする恥知らずな隊長がそこにいた。
「案外、金を積めば了承するんじゃないか?」
「最悪の答えじゃねーか!」
やはり飲んではいるらしく、老人の答えも酔狂だが、
「いや・・・・まあ、あの子は確かに金払いでニコニコ・オーケーしそうだけどさ」
「だろ?」
「パイロットになれ、ってお前が言って、
すぐさま『じゃあお給料も上がりますか?』だ、
なんつーか、現代っ娘怖い。たくましすぎるだろ」
あながち冗談でもなかったのが一番の問題だった。
「どちらにしろこれは戦争だ、コナン隊長。
何ものかの暗殺がなくても、そもそも危険なことには変わりない。
明日死ぬかもしれない仕事なのだから、覚悟は決めておくべきだ」
「・・・・まあ、そうなんだけどなぁ・・・・
はぁ、軍人はつらいよブラスおじいちゃん、よよよ。
っとと・・・・ちょいと便所いってくる、飲みすぎて尿がやばい」
やや腰砕け気味に席を外す隊長をしり目に、
老人は何本目かになる葉巻へと火をともす。
深く深く、ゆっくりと吸い、やや色味の付いた、
香りの強い煙を吐き出す。
そして目をつぶり、ひくひくと、まぶたの裏で眼球を動かす。
(保護プログラムは組んだ。
さすがにこの基地内での破壊行動は難しい。
この状態でもなお何かをしようというのなら、必ずしっぽを出すはずだ。
あの娘には悪いが、エサになってもらおう。
新規のパイロットが任命されたとなれば、
相手側の動きにも何等かの変化がみられるはずだ。
同時に、今いるパイロット候補生を秘密裏に移す。
巧妙に隠しきれば、相手が狙いを定めるのはあの少女一人になるはず)
老人は、今度こそ、一息で酒を飲み干す。
「いつでも来るといい。我々が相手をしてやる」
決意を固めるように。